セロトニン - みる会図書館


検索対象: リストカット : 自傷行為をのりこえる
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1. リストカット : 自傷行為をのりこえる

神経伝達物質とは、神経系の神経細胞同士の接続部分 ( シナプス ) において信号を伝達 する役割を担う化学物質てある。現在、五十種類以上の神経伝達物質が知られており、そ れぞれがさまざまな精神機能と関わっている。ここて主に取り上げられる神経伝達物質 は、セロトニンとドー ハミンてある。 セロトニン系 ( セロトニンによって支配されている神経系 ) の機能低下は、自傷行為や自殺未 遂と関係があることが繰り返し報告されている。攻撃的、衝動的行動とセロトニン系の機 人間ても、自殺や自傷行 能低下との関連は、もともと動物実験において証明されていた 為、衝動的攻撃的行動を示す人てセロトニン系の機能の低下が認められることが報告され せきずい ている。たとえば、自傷行為や自殺未遂の患者て脳脊髄液中のセロトニンの代謝産物 ( 体 内て分解されて生じる物質 ) の濃度が低下していることや、セロトニン生成に関わる遺伝子や 神経細胞の接続部分 ( シナプス ) のセロトニン濃度を調節するたんばく質を生成する特定 の遺伝子が自殺未遂の生じやすさと関連していることが見出されている。 ーパミンも自傷行為との関連が議論されている神経伝達物質てある。実験動物にアン フエタミン ( ド パミン系を活性化する作用をもっ覚醒剤 ) を持続的に投与すると、自傷行為が 生じることか知られている。さらに、ジル・ドウ・ラ・トウレット症候群 ( 若い男性に多い きっこう チックと汚言症〔汚い言葉を反射的に発する症状〕を特徴とする精神疾患 ) ては、ドー ハミン拮抗薬 5 5 第三章さまざまな発生要因

2. リストカット : 自傷行為をのりこえる

感情障害の原因としては、さまざまなものが考えられている。うつ病の生物学的な病態 としては、神経伝達物質のセロトニンやノルエピネフリンによって作動している神経系 ( セロトニン系、ノルエピネフリン系 ) の機能が低下しているという仮説が有力てある。 過剰なストレスやパーソナリティのもろさがあると発症しやすくなると考えられている。 うつ状態は、ほとんどの自傷行為において伴われている精神状態てあり、自傷行為を生 じやすくする精神的要因として筆頭に挙げられるべきものてある。自傷行為に伴う自己評 価の低下、自分を罰しようとする傾向は、うつ状態の表れとして捉えることがてきる。第 五章て示した三つのモデル症例ても、全例て経過中にうつ状態が認められていた。また、 感情障害一般にしばしば伴われる感情不安定は、患者に混乱と苦痛をもたらし、やはり自 傷行為の原因となることがある。 感情障害の治療ては、心理社会的治療 ( 精神療法 ) と薬物療法とを組み合わせることが 基本てある。薬物療法にあたっては、うつ状態にはセロトニン系やノルエピネフリン系の 機能を強める効果のある抗うつ薬が、躁状態には炭酸リチウムなどの抗躁薬 ( 気分調整 とくに注意しなくてはならないのは、その 薬 ) がそれぞれ有効てある。感情障害の治療て 再発てある。躁うつ病および再発傾向の強いうつ病に対しては、抗うつ薬や気分調整薬を 継続的に投与する再発予防がおこなわれている。感情障害の心理社会的治療としては、患 103 第六章精神疾患との関係

3. リストカット : 自傷行為をのりこえる

障害 ( 健忘 ) が出現していたと考えられる。 解離性障害の治療ては、不安や葛藤を減じる精神療法や薬物療法がおこなわれる。 不安障害・外傷後ストレス障害 不安を主な症状とする精神疾患は、不安障害てある。強烈な不安症状が発作的に生じる パニック障害がその代表例てある。それは比較的軽症の精神疾患てあるが、自傷行為や自 殺未遂の要因の一つとして、近年、注目されている。 また、不安障害の一種てある外傷後ストレス障害の患者は、外傷体験の記 慮を打ち消すために、自傷行為をおこなうことが知られている。は、“ 災害や戦 争、傷害事件やレイプなどの強烈な外傷体験 ~ の反応として、回想や夢における外傷体験 の反復的出現、外傷体験を思い出す事物の回避、睡眠障害やイライラといった自律神経症 状が生じる精神疾患てある。 不安障害の治療ては、支持的精神療法や治療教育などの心理社会的治療、そして ( 選択的セロトニン再取り込み阻害薬 ) などによる薬物療法が広くおこなわれている。 摂食障害 108

4. リストカット : 自傷行為をのりこえる

も、呈示された症例の治療ては、精神疾患の性質や治療方法を説明し、治療への主体的な 関与を促す治療教育がおこなわれていた。 ーソナリティ特性に対する治療も重要てある。その一つは、彼らの否定的 問題となるパ ーソナリティ特性に対する患者の自覚 な自己イメージ、衝動的な行動パターンといったパ ーソナ 検討することてある。問題となるパ を促し、それへの対処法について患者とともに リティ特性に対しては、薬物療法も有用てあると考えられている。たとえば、や 気分調整薬には、衝動的行動を減じる効果があるという報告が重ねられている。 自傷行為の治療ては、その発生の素地となった対人関係の間題などの状況的要因や、そ のきっかけとなった出来事への対応が必要になることがしばしばある。モデル症例ても、 家族関係の問題や職場てのトラブルが自傷行為の原因の一つとなっており、患者へのサポ ートを強めるなどの目的て、家族に対する働きかけかおこなわれていた。 自傷行為に対する薬物療法 薬物療法は、第三章の最後て述べたような自傷行為の生物学的発生要因に働きかける治 療てある。現在、もっとも注目されているのは、による薬物療法てある。これに は、衝動的行動を発生させていると考えられるセロトニン系の機能異常を修正する作用が 151 第八章自傷行為の治療

5. リストカット : 自傷行為をのりこえる

うに「リストカットに頼らないてすむように気持ちを立て直す」ことを治療目標とするこ とを提案して彼女の同意を得た。 彼女はその後、ほば定期的に通院しながら、抗うつ薬の一種てある選択的セロトニン再 取り込み阻害薬— ) を服用し、しばらくの間、リストカットの頻度を減らすこと 父親への憎しみを持続的に がぞきた。しかし彼女は、抑うつ気分、通学のプレッシャー 訴えており、姉に家事や身のまわりのことを援助してもらうことてようやく通学てきる状 態だった。そうしたなかて、自分の課題を完全に実施しようとして負担を増やしてしま その結果、精神状態を悪化させることがあった。また、病院て処方された薬を過量服 用する、大量の飲酒をして日課を乱す、といった行動も見られていた。 担当医は、通学を続けようとしていることや、病院を定期的に受診していることなどの 彼女の前向きの姿勢を評価しながら、日課を乱す衝動的行動を彼女自身の問題として認識 することを促した。また、気持ちのゆとりを増やすために「楽な気持ちの時間を少しずつ ても増やすこと」などと助言していた。 受診して三カ月後、マサミは孤独感や父親への恨みを強めて、再びリストカットを頻回 におこなう状態となった。彼女はどうしても「手首に跡を残しておきたいと考えてしま う」のたという。この悪化は、リストカットの傷跡が学校て噂されるようになったことか 137 第八章自傷行為の治療

6. リストカット : 自傷行為をのりこえる

者への治療教育、生活環境や家族などの関係者への介入を含めた精神療法的な働きかけが おこなわれるのが一般的てある。 精神病性障害・精神病状態 精神病状態とは、現実を捉え、正常に判断する能力 ( 現実検討カ ) が精神疾患によって かいり 大きく失われている病的状態のことてある。代表的な精神病の症状は、妄想 ( 現実から乖離 し↓に・り・亠 9 る した考えを信じ込むこと ) や幻覚 ( 実際には存在しない物体や人物を見たり、物音や声を聞、 と ) てある。 精神病状態が主要な症状となっている精神疾患は、精神病生障害と呼ばれている。なか ても統合失調症は、障害される精神機能の範囲が広く、生涯罹患率が一・〇ー一・五パ セントと高く、 精神病性障害の中心に位置づけられる精神疾患てある。 統合失調症は、生物学的な素質に生育史上の間題やストレスが加わって生じると考えら れている。従来から主張されている統合失調症の発病を説明する仮説の一つは、神経伝達 物質のド ハミンによって作動する神経系の過剰活動が発症の原因になるとするドー ン仮説てある。さらに現在ては、セロトニンなどほかの神経伝達物質の異常と統合失調症 との関連の研究が進められている。 104

7. リストカット : 自傷行為をのりこえる

図 5 自傷行為の精神科医療からみた原因 自傷行為 療がおこなわれていた。 傷な為社の 自と ( 打 彼らのリストカットや過量服薬は、抑うつ症 け傷因な 況か自要因 状 ( うつ病 ) がその発生に関与していることが の要因 状っ たき事係的要 明らかてある。彼らては、自傷行為の背景とし しの来行関化的 迫為出流人文況 て慢性的な空虚感や厭世観、自己評価の低下、 窮行るの対会状 罪悪感などの抑うつ症状が認められており、そ 動安 性障 行不価特イ れに対して選択的セロトニン再取り込み阻害薬 的情評 イテ 動感己 (cocox—) などの抗うつ作用のある薬剤が使用 衝、自向リナ されていた ンい傾ナ エリカては、うつ状態と軽い躁状 的一低的ソ 撃夕、責一。 態が出現する気分の波があったのて、躁うつ病 攻パ定自 に有効な気分調整薬が追加投与されていた。さ ・一一立早 らに症例ては、不安感や焦燥感を緩和するため 用食患 コ乱摂疾 神の抗不安薬などの精神安定薬も使用されること 状感 ル存症精 症悪 、依調のがあった。 っ罪 病の失ど これらの薬物療法は、自傷患者の治療の糸口 つ物合な 抑慮 う薬統害 になることがしばしばある。薬物療法以外に 15 0