◎広がるフロアクライミング方式 フロアクライミング方式では、べースに一定の長さのマスト を設置し、べースごと順次上の階に載せ換えていく。自ら構築 したビルを自分で登っていくように見える。 日本では、一般に鉄筋コンクリート (RC) 造の超高層住宅 ではマストクライミング方式、鉄骨 (S) 造の事務所ビルには フロアクライミング方式が採用されてきた。 RC 造では、建物頂上部のコンクリートが十分に乾いて強度 を発現するまでクライミングができないことや、 RC の梁にタ ワークレーンを設置するための躯体補強がむずかしい。そのた め、マストを建物にそって地上から建てるマストクライミング 方式が長年とられてきたのである。 しかし最近は、すでに強度発現した下層階を頼りにクライミ ングできる機種や、摩擦力でタワークレーンを柱に直接設置す る工法などの開発により、 RC 造でも大型クレーンのフロアク ライミングが普通に行われるようになってきた。 ◎フロアクライミングの手順 フロアクライミング方式では、クレーン本体に取り付けられ た昇降装置により、マストを固定してクレーン本体を昇降させ たり、逆にクレーン本体を固定してマストを昇降させたりして、 尺取り虫の要領でクレーンを持ち上げていく。 昇降装置は上部昇降フレーム、下部昇降フレーム、これらを つなぐ油圧シリンダーで構成されている。いずれの昇降フレー ムにもマストに固定するための油圧式ロックピンが備えられ、 以下の手順を繰り返すことでクレーン本体やマストを昇降させ ることができる ( 図 7 ー 3 ) 。 ノイイ
①柱を切断 1 回に約 70cm の長さを切断 ②ジャッキの伸長 切断した柱の長さだけジャッキを伸長させる 写真 10 ー 6 カットアンドダウン工法の手順 して引き抜く。 ②切断した柱の長さ分だけジャッキを伸長させる。 ③①と②の作業をすべての柱に対して繰り返した後、ジャッ キを収縮させる。 ④③によりビル全体が約 70cm 下降する。 この① ~ ④の手順を繰り返すことにより、 1 フロア分の下降 を完了させ、下降してきたフロアを解体する。解体が完了した ら①の作業にもどる。 この解体工事では柱切断 ~ 建屋降下を 2.5 日、梁床解体を 3.5 日、計 6 日で 1 フロア分の作業を行った。高層ビルが徐々に低 くなっていく様は、まるでダルマ落としだ ( 写真 10 ー 7 ) 。 208
第 6 章超高層ビルの建設工事 管やダクトまで組み込んでユニットとする。 ②設備の縦の配管は 3 ~ 4 階分を数本のユニットとして、各階 の継手を減らし、揚重の効率を上げる。 ③基準階のトイレの配管ュニットを工場で組み立てて、現場に 搬入・揚重する。 ユニット化工法は超高層ビル建設のために開発された技術だ が、現在では通常のビル建設でも活用されている。 0 - 、内装工事 ◎床仕上げ 建物の内装工事は、床、壁、天井に分けて仕上げていく。 オフィスビルでは、コンクリートの構造スラブの上に、耐震 性を考慮した金属製の脚付きの金属製またはセメント系成型板 を置いた二重床 ()A フロア ) が使われている ( 図 6 ー 10 ) 。 OA フロア下の高さは 50 ~ 150mm 程度で、そこに電源や 金属製の脚 各種配線設備 セメント系成型板等 図 6 ー 1 0 OA フロアの一例 配線取り出しロ 727
コンピューターネットワーク配線などが収納されており、床の 孔から直接、接続できる。 また、フロア下を空調空気の通り道にして、床板に吹出口を 設置し、室内に送風するシステムに利用することもある。 一般的に OA フロアの表面には粘着剤のついた 500mm 角程 度のタイルカーベットが敷かれ、簡単に剥がしたり取り替えた りできるようにしている。 ェントランスやエレベーターホールなど共用部分の床仕上げ かこうがん は、見栄えや耐摩耗性などが要求されるため、大理石や花崗岩 などの石材が多く用いられる。 ◎壁仕上げ 各フロアの部屋を区画する間仕切壁には、耐火性、耐震性、 遮音性などが求められる。 図 6 ー 11 は、耐火遮音間仕切壁の構造例である。 まず床コンクリートの上下にランナーを置き、その間にス タッドを建てて軽量鉄骨製の骨組みを造る。この骨組みの両面 に、石膏ボードを金属製ビスまたはクリップなどで貼る。遮音 性能を確保するため、ポードの間にグラスウールを充瞋する場 グラスウール スタッド スタッドスペーサー ランナー 図 6 ー 1 1 ノ 28 下地処理 耐火遮音間仕切壁の構造例 石膏ポード 硬質石膏ポード
第 7 章超高層ビル建設の立役者タワ レーンも実用化されている。 ◎タワークレーンの解体方法 超高層ビルの建設が終わったあと、あれだけ高いと こ・ろ 0 こ ークレーン ③小さなクレーンで元のクレーンが立っていた基礎を解体し、 を分割・解体して地上に降ろす。 ②新たに設置した少し小さなクレーンを使って、元のクレーン し小さなクレーンを吊り揚げ、屋上で組み立てる。 ①屋上のタワークレーンで吊り揚げられる重量に分割された少 仕組みは以下のとおりである ( 図 7 ー 6 ) 。 いる人も多いだろう。フロアクライミング方式の場合、解体の 置した巨大なクレーンをどのように解体するのか疑問に思って 開口部分を塞ぐ。 ①タワークレーンで部品を吊 り揚げて屋上に小型の解体 用クレーンを組み立てる。 クレーン 解体用 屋上 ↑ 図 7 ー 6 タワークレーンの解体方法 ( フロアクライミングの場合 ) ②タワークレーンを 解体し地上に降ろす ノ 5 ノ ↓
第 1 Oä超高層ビルのメンテナンスとリニューア丿レ ネットワークごとの回線 ブラインド アンテナー 空調設備ー 従来の方式 話一 ド 盤 御 イ ブ制 O 照盤 人電 ッ イ - 受 理 管。 退カ 監 入℃ 話 電 0 中央監視室ー ・中央監視 ・セキュリティー 監視 - セキュリティー BA メタル OA サーバ BA サーバ OA - 電話 ーほ V カメラ 各ネットワークを統合した回線 ブラインド 照明 笋劈 L N ポイント 曰空調設備 分電盤プラインド 制御盤 PC 無線 旧電話 PC 旧電話 光ファイバ スイッチ 統合ネット ワーク方式 建物、情報シス テムの遠隔運用、 管理 携帯電話 PHS 0 カメー 旧フロア コントローラ ンタ 入退室管理 ℃カード スイッチ IP フロア コントローラ ア フ 光 スイッチ 中央監視室 受変電設備 EV 制御盤 OA サーバ , 旧電話制御装置 BA サーバ ・統合監視 ー統合回線 ( の ) 旧入出力制御端末 統合ネットワークによるシステム管理例 図 1 0 ー 1 スイッチ 795
①下部昇降フレームがマストに固定された状態で、上部昇降フ レームのロックピンを抜く。 ②油圧シリンダーを伸ばして上部昇降フレームごとクレーン本 体部分を押し上げる。 ③油圧シリンダーが伸びたところで、今度は上部昇降フレーム からマストにロックピンを入れる。 ④油圧シリンダーを少し縮めることで荷重の支持点を上部昇降 フレームに移す。 ⑤下部昇降フレームのピンを抜く。 ⑥油圧シリンダーを縮めて下部昇降フレームを引き上げ、⑦次 の孔位置でピンを入れて固定する。 この昇降装置によって、クレーン全体をフロアクライミング させる手順は次のとおりである ( 図 7 ー 4 ) 。 ①クレーン本体を、マストにそって少し降ろし、建設中の最上 階に預けていったん固定する。 ②べースのアンカーポルトをはずすと、べースとマストはク レーン本体から吊り下げられるような格好となる。ここで昇 降装置を使ってべースごとマストを引き上げる。 ③べースを、次に設置する数フロア上まで引き上げたら躯体に 固定する。このとき、マストはクレーン本体を突き抜けて上 に伸びている状態である。 ④べースを固定したマストにそって、クレーン本体をマスト最 頂部まで上昇させ固定する。 クライミングは、通常 1 カ月弱に 1 回程度の頻度で行われる。 作業は 1 日で終わってしまうことが多いため、クレーン本体を マストが突き抜けた状態のタワークレーンを見かける機会は珍 7 イ
一 . よ韜唯 第 7 章超高層ビル建設の立役者タワークレーン マストを 継ぎ足し ていく べース を上階 に載せ 替えて いく マスト (a) マストクライミング方式 (b) フロアクライミング方式 図 7 ー 2 タワークレーンのクライミング方式 写真 7 ー 2 マストクライミング式 タワークレーン ノイ 3
第 7 章 架台 旋回体 クレーン本体 超高層ビル建設の立役者タワークレーン ①クレーン本体 を少し下げて 躯体に固定す る べース クライミング ⑤クレーン本体を アンカーポルト 図 7 ー 4 アウトリガー 建設中の最上階 ④アウトリガ ーを引き出 しアンカー ポルトで固 定する ③べースをク させる ライミング ②アンカーポルトをはずし アウトリガーを引き込む フロアクライミングの手順 7 イ 7
(b) チュープ架構 (a) ラーメン構造 内側チューブ 外側チューブ 住戸のある内外チューブ間には フロア全体に多数の柱と梁が 縦横に走る 柱や梁がない 図 1 1 ー 1 ラーメン構造とチューブ架構 を厚いスラブ ( 居住空間の床 ) でつないでいる。こうして構造 的に一体化することで、地震や風揺れに強い構造を実現した。 外周部と内周部の 2 つのチュープ ( 輪 ) で構成しているので、 ダブルチュープ架構という。 住戸を仕切る前の工事中の写真を見ると、ダブルチュープ架 構では、梁型がないフラットな構造躯体がよく分かるだろう ( 写 を一ロ 一一イ 一一の チ か 梁 や 、王 4 真 2