周期 - みる会図書館


検索対象: 図解・超高層ビルのしくみ
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1. 図解・超高層ビルのしくみ

第 8 章超高層ビルの設備 の運行制御 ( 予測モデル ) を変化させて、状況にあった最適な 運行制御を行う人工知能制御 ( フアジー制御 ) を導入し運転効 率の向上をはかっている。 ◎エレベーター安全管制システム エレベーターには、地震や火災、または停電時にも乗客の安 全を優先する運転制御 ( 管制運転制御 ) システムが導入されて いる。 火災が発生したときには、途中階には止まらずに、自動的に 避難階 ( 1 階 ) まで直行するようになっている。 停電時にも、自家発電機が自動的に作動して、部分的な運転 が可能となっている。 地震時には、地震の主要動である横揺れ (s 波 ) が到達する 前に伝わる初期の縦揺れ (p 波 ) を検知して、最寄り階に自動 的に停止する。 超高層ビルでは、遠方で発生した大きく長い揺れが続く地震 ( 長周期地震 ) とビル自体の固有周期とが共振して、大きな揺 れが生じる場合がある。この長周期の揺れでは、地震時管制運 転が働かず、事故を未然に防げない場合がある。エレベーター ロープがこの揺れに共振して、昇降路内で大きく揺れ、突起物 などに絡まってエレベーターが停止したり、ロープが切断した りすることもある。 そこで気象庁の「緊急地震速報」を使って、地震が来る前に エレベーターを安全に停止させる制御方法を採用した超高層ビ ルもある。また、建物内に高精度の地震計を設置し、建物の揺 れからロープの揺れを予測してエレベーターを制御する、超高 層建物用の高性能なエレベーター管制システムが開発され、最 新の超高層ビルで導入されている ( 次ページ図 8 ー 5 ) 。 7 引

2. 図解・超高層ビルのしくみ

① ② ③ ④ 図 2 ー 4 超高層ビルの地震動解析例 ◎卓越周期を避ける 図 2 ー 5 は、 1995 年の阪神・淡路大震災 ( 観測地点・神戸海 洋気象台 ) と 2003 年の十勝沖地震 ( 観測地点・苫小牧 ) の観 測記録である。それぞれの建物の固有周期と、その建物が地震 時に実際に揺れた最大速度である。 それぞれの観測点で、阪神・淡路大震災が固有周期 1 秒程度 の建物を大きく揺らしたのに対し、十勝沖地震は 6 ~ 8 秒程度 の長い固有周期の建物を大きく揺らしたことが分かる。言い換 えると阪神・淡路大震災は周期 1 秒、十勝沖地震では周期 6 ~ 8 秒程度の地震波が多く含まれていたことになる。 このように地震波にもっとも多く含まれる周期を卓越周期と いう。一般に関東平野は 5 秒以上、濃尾平野、大阪平野はそれ よりもやや短めが卓越周期だといわれる。ビルは、その場所に 多い地震の卓越波と共振しないようにすることが望まれる。 イイ

3. 図解・超高層ビルのしくみ

に等しいプロポーションである。このように細長いビルでは、 地震や強風時にねじれを伴う大きな揺れを生じる。居住性を考 えると、通常、 5 階建て程度が限度なのだが、 2 台の制震シス テムを屋上に設置して揺れ制御することで、このようなプロ ポーションが実現した。 さらに今日では装置の種類も豊富になり、超高層ビルの必須 アイテムとなっている。 小堀博士の制震構造の提唱は、以下の 5 原則からなっていた ( 図 2 ー 9 ) 。いずれも今日の制・免震構造につながる。 ①地震動の建物への伝達経路を遮断する。 地震時に建物を宙に浮かせるなどして、地震動を完全に遮断 する。 ②地震動の卓越周期から建築物の固有周期をはずす。 ①の実現が困難なことから、遮断層を設けることで①に近い 状態を作り出す。周期の観点からいえば、建物の固有周期を 長周期化することで、地震動との共振を避ける。 ③地震波の周期に応じて建物の固有周期を変化させる。 時々刻々の地震動の振動周期に応じて、構造物の固有周期を 変化させ、共振しないようにする。 ④揺れに対する制御力を発生させる。 建物に制震装置を設置し、建物の振動を打ち消すような制御 力を発生させる。 ⑤エネルギー吸収機構を利用する。 減衰器 ( ダンパー ) を設置し、地震時の振動エネルギーを吸 収して、建物の変形に費やされるエネルギーを減少させ、建 物の損傷を低減させる。 50

4. 図解・超高層ビルのしくみ

第 2 章超高層ビルの地震対策 300 阪神・淡路大震災 揺れ速度 2003 年十勝沖地震 0.0 1 .0 8.0 6.0 7.0 4.0 5.0 2.0 3.0 建物の固有周期 図 2 ー 5 建物の固有周期と地震による揺れ ◎長周期地震動 2003 年の十勝沖地震では、苫小牧の石油備蓄タンクがゆっ くりした揺れ ( 長周期地震動 ) に共振し、タンク内の石油が溢 れて大火災が発生した。 十勝沖地震の際に苫小牧で観測された地震波を、阪神・淡路 大震災での神戸海洋気象台の観測記録と比べると、明らかに ゆっくりとした振動が長時間続いている ( 図 2 ー 6 ) 。 長周期地震動 ( 2003 年十勝沖地震 ) 90 120 60 180 ( 秒 ) 150 30 0 直下型地震動 ( 阪神・淡路大震災 ) 図 2 ー 6 長周期地震動と直下型地震動

5. 図解・超高層ビルのしくみ

第 2 章超高層ビルの地震対策 筋かし、 柱 39 おおむね以下の式で表せる。 く、剛構造物は周期が短くなる。固有周期と建物階数の関係は 建物も、それが揺れる固有周期がある。柔構造物は周期が長 り、長いほど振動数が低くなるからだ。 さに比例して音が低くなる。その弦の長さに固有の振動数があ たとえば弦楽器では、弦の材質や太さ、張力が同じなら、長 また、建物の柔・剛は固有周期 ( 振動数の逆数 ) でも表せる。 ると建物はさらに「硬く」なる。 は「剛」な状態になる。筋かいを太くしたり壁を厚くしたりす これに対して柱・梁のほかに筋かいや壁を設置すると、建物 いので、柔らかさには限界がある。 くできるが、少なくとも建物自体の重さは支えなければならな も「柔らか」な構造になる。柱・梁を細くすればさらに柔らか 図 2 ー 1 建物の構造要素

6. 図解・超高層ビルのしくみ

長周期地震動は関東平野、濃尾平野、大阪平野などにみられ ゆうふつ る地中深部構造が影響している。苫小牧も勇払平野にある都市 で、基本的な地盤構造は似通っている。 これらの平野は直径数十 ~ 100km 、深さ数 km 程度の堆積層 で構成されている。岩盤を伝わってきた地震動が堆積層に入る と、水の入ったバケツの底を叩いてできる波紋のように、堆積 層の中を行ったり来たりして周期の長い揺れが数分間も続く。 長周期地震動は、深さ数十 m の軟弱地盤が原因で生じるピ ンポイントの揺れの増幅とは異なり、平野内に建っすべての建 物に影響を与えることになる。 超高層ビルは、もともと固有振動が長周期にならざるをえな いうえに、堆積平野に建つ以上、長周期地震動の影響は避けら れない。このため想定外の地震動に共振して過大な変形を生じ ることが、まったくないとはいえないのが現実である。 ◎液状化対策 地震では、地盤の液状化にも注意しなければならない。 液状化現象は、臨海部の埋め立て地のゆるい地盤や河川流域 のゆるい堆積地で起こる。地下水位の高い砂地盤に強い揺れが 加わると、振動によって砂の粒子同士がくつつきあい、より締 まった状態になろうとする。このとき、砂地盤の中の間隙水は 行き場がなくなり、高い圧力が加わって上昇し、最後に砂地盤 を破壊して地表に噴き出すことになる ( 図 2 ー 7 ) 。 液状化が起こると地盤が建物を支えきれなくなり、建物は沈 下したり傾いたりしてしまう。 1964 年の新潟地震では県営ア パートが液状化によって転倒した ( 写真 2-2 ) 。 これ以後、地盤改良や堅い地層まで杭基礎を打ち込むなどの 対策が実施されてきた。地盤改良には、杭状に改良体を構築す

7. 図解・超高層ビルのしくみ

建物の固有周期 ( 秒 ) # 0.1 x 建物階数 したがって高い建物は自然に固有周期が長くなり、筋かいや 壁を設置しても、柔らかな建物になる。短い棒は横方向に指で 押して変形させることがむずかしいが、長くなれば簡単に変形 させられることで理解できよう ( 図 2-2 ) 。 これが、超高層ビルがその構造形式や壁の有無にかかわらず、 柔構造になる理由である。 カ 柔 カ 同じ断面の棒に同じ力をかけても、短い棒は変形 しにくく ( = 剛 ) 、長い棒は大きく変形する ( = 柔 ) 図 2 ー 2 棒の長さと柔剛性 ◎ポテンシャルエネルギー論 柔構造 vs. 剛構造論争はなかなか決着しなかったが、 1935 たなはしりよう 年になって、京都大学教授の棚橋諒博士が「ポテンシャルエ ネルギー論」を説いた。 地震の破壊力は、揺れの最大速度の 2 乗すなわちエネルギー に比例する。建物の耐震性は柔・剛の問題ではなく、建物が破 イ 0

8. 図解・超高層ビルのしくみ

第 2 章超高層ビルの地震対策ー 35 日本に超高層ビルが誕生するまで一一 36 2-1 地震のエネルギーと震度 36 / 関東大震災の教訓 3 / / 柔構造 vs. 剛構造 38 / 超高層ビルは柔らか い 38 / ポテンシャルエネルギー論 40 / 地震に よる揺れの克服 4 プ 2-2 耐震設計一一 42 地震に対する安全性の確保 42 / 地震に対する動 的設計法 43 / 卓越周期を避ける 44 / 長周期地 震動 45 / 液状化対策 46 2 , ー、 = = ない建物をめざして一一一 48 = 缸震・免震の発想 48 イ免震・制震の 5 原則 49 / 震構造 5 プ / 制御カ付加タイプの制震構造 ~ 毛 3 / ダンパー ( 減袞 ) 利用タイプの制震構造 、 - 語 6 / スリット壁 60

9. 図解・超高層ビルのしくみ

構造骨組みへの風荷重は、一般的な建物では風向き方向が大 きい。しかし超高層ビルのように高さ方向に細長く柔らかい建 物では、風向きと直交する方向やねじりの風荷重が無視できな くなる。また、これらの風荷重は建物に同時に作用するため、 相互に組み合わせて設計用風荷重を決める必要がある。 一般建物の場合、建物耐用年限中に遭遇する可能性のあるレ ベル 1 暴風 ( 再現期間 50 年の風 ) に対しては、柱・梁などの 構造部材および外装材カ微な損傷にとどまり、引き続き使用 可能であるものと定められている。 超高層ビルの場合は、レベル 1 の風速の 1.25 倍に相当する レベル 2 暴風 ( 再現期間 500 年の風 ) 、すなわち東京では平均 風速 31m / s 、最大風速 44m/s での影響を確認する。 ◎繰り返しの風荷重に耐える 設計にあたっては、直方体のビルの場合は、最低でも長辺方 向、短辺方向の 2 風向に対して風荷重の評価を行う。一方、平 面形状カ坏整形なビルでは、風洞実験などを用いてより多くの 風向きで風荷重を評価する必要がある。 それぞれの風向きに対して評価された風方向、風直交方向お よびねじれ方向の風荷重を適切に組み合わせて、耐風設計する。 また、建物が損傷し塑性化 ( 80 ページ参照 ) することで建 物の周期が長くなると、一般的に風荷重は元の周期で評価した 風荷重より大きくなる。そのため、長周期化による荷重増加が さらに塑性化を進める可能性がある。加えて、風荷重は長時間 にわたり作用することが予想される。 このため、とくに鉄骨造のビルは、繰り返しの塑性化による 疲労損傷が問題となる場合もある。したがって耐風設計では、 レベル 2 暴風に対しても、構造体がほとんど塑性化しないよう

10. 図解・超高層ビルのしくみ

で飛躍的に進歩した。地震による建物の揺れを吸収し、長周期 地震動にも効果を発揮する制震装置の開発をはじめとする、地 震に対する安全性の向上、住まう人、働く人がより快適に過ご せる居住性・利便性の確保など、新たな課題を克服しながら人々 の生活の中へ溶け込んでいった。 また、超高層ビルは周りに公開空地を生み出せる。敷地内に 緑地や空き地を十分確保し、人々の憩いの場、コミュニケーショ ンの場を生み出した。超高層ビルは、こうして都市景観の向上 にも貢献したといえよう。 超高層ビルはオフィスビルから始まったが、すぐ超高層マン ションへの取り組みがスタートしていたことは、あまり知られ ていない。 霞が関ビルをはじめとする超高層オフィスビルは鉄骨造であ る。ところが鉄骨造は柔らかいため、居住性が厳しく求められ るマンションには不向きだ。マンションには風で揺れにくく、 また遮音性に優れる鉄筋コンクリート造が適している。しかし 鉄筋コンクリート造は、高層化はむずかしいといわれていた。 鹿島では、霞が関ビルの完成直後から鉄筋コンクリート造の 高層化の技術開発に取り組み、構造解析、材料、施工法などの 課題を克服していった。そして 1974 年に、日本の高層マンショ ン第 1 号となる「椎名町アパート」を完成させた。 それから約 35 年。今や超高層マンションのほとんどは鉄筋 コンクリート造である。しかも技術や材料の進歩から、柱・梁 のない居住空間を実現し、将来のリニューアルや間取りの変更 にも自由自在に対応する 200 年住宅をも見据えた長寿命住宅 へとつながっている。 「霞が関ビル」が誕生してから 40 年以上をへた現在、日本で も高さ 100m を超える超高層ビルは約 750 棟あまり。東京や大