電磁プレーキの仕組み ブレーキ スプリング ④リミットスイッチ 0 電磁コイル ブレーキ ドラム 停止状態 0 かごが頂部および底部に衝 突しないように停止させる。 ⑤戸ドアスイッチ 乗場戸およびかご戸の開放 状態を検知し、運転を停止 し、電磁ブレーキを動作さ せる。 ⑥乗場戸施錠スイッチ かごが階に停止していない 場合に、扉をロックする。 ⑦過荷重検出装置 積載荷重を検出し、超過し ている場合には戸を開放し てブザーを鳴動させる。 ⑧緩衝器 かごおよび釣り合い重りが 底部に衝突した場合の安全 装置。 758 図 8 ー 3 エレベ 主 ロ プ ①電磁ブレーキ かご停止中および電源 が切れた場合、電磁コ イルの磁力がなくなり、 バネのカで巻上機のド ラムを抑えつける ( 自 動車のサイドブレーキ と同じ役割 ) 。 ②調速機 かごの異常下降を検出 し、非常止め装置を機 械的に動作させる。 ③非常止め装置 り合いレールをつかんでかご を停止させる。 ⑨非常用照明、インターホン かご天井救出口 ガバナロープ ーターの安全装置
◎風の性質 風の性質として重要なのは、平均風速と風の乱れ、およびそ の高さ方向の分布で、建物周辺の地表面の状況 ( 地表面粗度 ) の影響を強く受ける。 開けた平坦地では地表面の摩擦抵抗が小さいため、地表面付 近でも上空と同様に乱れの少ない風が吹く。一方、市街地のよ うに地表面の摩擦抵抗が大きい場所では、上空に比べ地表面付 近では、風速は遅いがそのわりに乱れた風が吹く ( 図 3 ー 1 ) 。 周辺に大きなビルが存在する場合は、その影響で風の流れが 変化し、風力も大きく変化する。このような風によってビルに はさまざまな力が働いている。 平均風速風の乱れ 600 500 0 地上高さ ( E) 300 200 100 0 住宅地 市街地 図 3 ー 1 高度による風の乱れ 平野 大都市 ◎襁風」の程度 それでは超高層ビルは、どの程度の風速に耐えられるか。 1998 年に公布された改正建築基準法では、建物の高さにかか わらず、最低でも 50 年間に少なくとも 1 回は超える可能性が
構造骨組みへの風荷重は、一般的な建物では風向き方向が大 きい。しかし超高層ビルのように高さ方向に細長く柔らかい建 物では、風向きと直交する方向やねじりの風荷重が無視できな くなる。また、これらの風荷重は建物に同時に作用するため、 相互に組み合わせて設計用風荷重を決める必要がある。 一般建物の場合、建物耐用年限中に遭遇する可能性のあるレ ベル 1 暴風 ( 再現期間 50 年の風 ) に対しては、柱・梁などの 構造部材および外装材カ微な損傷にとどまり、引き続き使用 可能であるものと定められている。 超高層ビルの場合は、レベル 1 の風速の 1.25 倍に相当する レベル 2 暴風 ( 再現期間 500 年の風 ) 、すなわち東京では平均 風速 31m / s 、最大風速 44m/s での影響を確認する。 ◎繰り返しの風荷重に耐える 設計にあたっては、直方体のビルの場合は、最低でも長辺方 向、短辺方向の 2 風向に対して風荷重の評価を行う。一方、平 面形状カ坏整形なビルでは、風洞実験などを用いてより多くの 風向きで風荷重を評価する必要がある。 それぞれの風向きに対して評価された風方向、風直交方向お よびねじれ方向の風荷重を適切に組み合わせて、耐風設計する。 また、建物が損傷し塑性化 ( 80 ページ参照 ) することで建 物の周期が長くなると、一般的に風荷重は元の周期で評価した 風荷重より大きくなる。そのため、長周期化による荷重増加が さらに塑性化を進める可能性がある。加えて、風荷重は長時間 にわたり作用することが予想される。 このため、とくに鉄骨造のビルは、繰り返しの塑性化による 疲労損傷が問題となる場合もある。したがって耐風設計では、 レベル 2 暴風に対しても、構造体がほとんど塑性化しないよう
る建物の揺れの様子の一部始終がキャッチできるようになっ た。これによって、日本のような地震国でも、安全な超高層ビ ルを実現するための技術的な見通しがついてきた。 同時に、空地を設けずに敷地いつばいにビルを建てることの 弊害を指摘する声が高まってきた。 こうして 1963 年に、建築基準法による 31m という高さ制限 が解除され、新たに「容積地区制」が採用された。敷地面積に 対してビルの容積 ( 延べ床面積 ) を地区ごとに規制するという 考え方である。これによって 1 階あたりの床面積を減らせば、 ビルを高層化できる。高層化によって生み出した敷地内の空地 を公共の憩いの場所として提供するという考え方である。 この建築基準法改正は、狭い日本の都市づくりの方向を示し た点で非常に大きな意味を持ち、その後、超高層建築が社会に 受け入れられる素地を作った。 設 耐 2 2 ◎地震に対する安全性の確保 建物の耐震性は震度 5 を境に 2 つに分けて検討される。 一般のビルでは、まず建物耐用年限中に何度か遭遇する可能 性の高い震度 5 弱程度の地震に対しては、軽微な損傷で引き続 き使用できることが求められる。そしてごく稀に起こる震度 6 強程度の地震に対しては、崩壊して人命を損なうことさえなけ れば、大破しても致し方ないという考え方である。 これに対して超高層ビルは、場合によってはその中に同時に 1 万人以上もの人がいることを踏まえて、一般建物よりも厳し
3 ミ超高層ビルでは雷は横から落ちてくる 落雷は空に発生した雷雲から大地をめがけて上から落ちてくる 現象と認識されているが、地上 ] OOm を超えるような超高層ビ ルでは建物の側面に落雷することがある。 このメカニズムは次のようなものと考えられている。雷雲から 発生した先駆放電先端が地表に向かって進む道筋で、地表面と同 じ電位にまで荷電された超高層ビルの側壁が、地表面との同一距 離上に位置していた場合、先駆放電の方向が変わってビル側壁に 落雷するのである。 日本国内では法規制により、地上高さ 20m 以上の建物に対し て、落雷が発生した場合でも雷撃電流を安全に地中に導く設備 ( 避 雷設備 ) を備えることが義務づけられているので、建物と建物内 の人が安全に保護されている。 基点 A 約 1 ・ 2 雷撃足 コラム 雷雲 ev2km 大地面 建築物 ①蓄電された雷電流が A から降下 ②電荷の量により B を中心とする雷撃距離 ( R ) が決定し半球体の包絡面を形 成 ③包絡面と最初に接した点 C に対して A → B → C と雷電流が流れる ( C → B へ も迎えに行く ) ④建築物がある場合、大地面 C より先に接触点 D に包絡面が接すると A → B → D へ雷電流が流れる ビル壁面への落雷メカニズム ノタ 0
第 3 章超高層ビルの風対策 バーなどを上層階に設置すると、大きな風切り音を発生しやす くなってしまう。場合によってはガードレール下の騒音に匹敵 する 100dB を超える大きさでピーピー、ポーボーと鳴り続け る。しかも、上層階周辺には遮るものがなく遠くまでよく伝わ るため、周辺からの苦情の原因となる。 風切り音が発生するおそれがある場合は、風洞実験などで事 前に調査し、音が鳴らない形状を検討する必要がある。 ◎風洞実験 超高層ビルの設計でこれらの風対策を検討するため、しばし ば風洞実験が用いられる。風洞実験では、対象とする建物と周 辺の建物の詳細な模型で建物周辺の風速 , 建物壁面に作用する 風圧力、建物全体に作用する風圧力、建物の振動などを測定す 写真 3 ー 3 模型を使った風洞実験
第 6 章超高層ビルの建設丁事 ◎超高層ビルを支える地盤 作業を安全にかつ効率的に進めるための仮設、準備が完了す ると、いよいよ基礎工事が始まる。 日本のビルを支える地盤は、約 6600 万年前以降の新生代に 形成された沖積層・洪積層・第三紀層である。 沖積層とは「 1 万年前以降の沖積世に形成された地層」を表 す場合と、「河川の堆積作用で形成された」ことを表す場合が ある。軟弱な地盤で、超高層ビルの支持地盤には適さない。 洪積層は約 260 万 ~ 1 万年前の氷期に堆積した地層で、沖 積層より安定している。しかし粘土質の場合は、大きな荷重を ◎杭工事 合によっては基礎杭を 150m 程度まで掘削することもある。 超高層ビルはおもに洪積層・第三紀層で支持されており、場 積岩や火成岩からなる堅い地盤である。 第三紀層は約 6600 万 ~ 260 万年前に形成された地層で、堆 載せれば相当な沈下をすることもある。 れきそう ンチなどに再利用されているほどである。 ると腐敗しない。改築工事などの際に掘り起こされた木杭がべ 木杭が使われた。木杭でも、地中の水面下で空気に触れずにい る。 1940 年ごろまで、鉄筋コンクリート造建物の基礎として く掘るのは不経済であり、杭を打ち込んで建物を支持させてい 一方、表層の地盤が軟弱な地盤では、すべての建物で地下深 せていた ( 次ページ図 6 ー 1 ) 。 地区では 20 ~ 30m 掘削し、東京礫層という洪積地盤に支持さ しい。初期の超高層ビルは、すべて直接基礎とするため、東京 に建てることができる。これを直接基礎といい、もっとも望ま 地盤が強固な洪積層や第三紀層なら、建物は直接、地盤の上
第 7 章超高層ビル建設の立役者タワ レーンも実用化されている。 ◎タワークレーンの解体方法 超高層ビルの建設が終わったあと、あれだけ高いと こ・ろ 0 こ ークレーン ③小さなクレーンで元のクレーンが立っていた基礎を解体し、 を分割・解体して地上に降ろす。 ②新たに設置した少し小さなクレーンを使って、元のクレーン し小さなクレーンを吊り揚げ、屋上で組み立てる。 ①屋上のタワークレーンで吊り揚げられる重量に分割された少 仕組みは以下のとおりである ( 図 7 ー 6 ) 。 いる人も多いだろう。フロアクライミング方式の場合、解体の 置した巨大なクレーンをどのように解体するのか疑問に思って 開口部分を塞ぐ。 ①タワークレーンで部品を吊 り揚げて屋上に小型の解体 用クレーンを組み立てる。 クレーン 解体用 屋上 ↑ 図 7 ー 6 タワークレーンの解体方法 ( フロアクライミングの場合 ) ②タワークレーンを 解体し地上に降ろす ノ 5 ノ ↓
山留め壁は背面の土が自然の状態で動かないように、変形の 少ない剛性の大きな構造とする必要がある。 掘削すると地下水が出る場合は、止水性のある山留め壁とし、 地下水層 ( 帯水層 ) の下の不透水層 ( 粘土など細かい粒子の土 ) まで山留め壁を入れる。 掘削した土は、建設工事で排出される副産物の中でもっとも 量が多い。しかし国土の狭い日本では、この土も重要な資源で、 土地の造成や護岸工事、湾岸での埋め立て工事などに有効利用 している。 ◎逆打工法 ある超高層ビルの工事現場は、敷地がほば正方形だが、 に斜めに地下鉄が横切っており、掘削形状は五角形だった。都 内でも有数の軟弱地盤で、地下 23m まで掘削し、強固な東京 礫層で建物を支持する設計になっていた。さらに近接する地下 鉄構造物に影響を与えないことも求められた。 このような難工事にもかかわらず、要求された工期は通常の 工期より 6 カ月も短かった。そこで採用されたのが「逆打工法」 である。 地下室の一般的な施工方法は、まず地下室の底まで掘削し、 基礎梁から順次鉄筋を組み立て、型枠を造り、コンクリートを 打設する。こうして地下室の構造体が完成してから地上部分の 建設に取りかかる。これに対して、地下工事と地上工事を同時 に行うのが逆打工法である ( 図 6 ー 7 ) 。 まず基礎杭 ( おもに場所打ちコンクリート杭 ) 工事のときに、 地下部分の柱の鉄骨を杭の中に挿入し、地上部分まで鉄骨を出 しておく。この鉄骨柱に鉄骨梁を取り付け、先に 1 階の床を造 る。そこに重機などを載せて、地上部分の鉄骨建方を進められ 720
◎タクト工程 超高層ビルの建設では、同じ平面形状をもっフロア ( 基準階 ) を多数階重ねて計画される場合が多い。基準階では仕事量が各 階ほば同じになるため、一定の作業員数と日数で繰り返し作業 ができ、品質、工程の安定力保しやすい。 そこで工種を 2 ~ 3 種類に絞り、一定日数ごとに作業階を移 るようにしている。これを「タクト工程」といい、超高層ビル 建設の基本的な手法である ( 図 5-4 ) 。 さらに、作業が特定の場所に集中しないようにすることも大 切だ。できるだけ作業内容や日程を分散して、日ごとの作業員 ( 職人 ) の人数をできるだけ平均化するのは、作業計画の重要 A : B EI E2 り効率的な工程に組み換えることで平均化されている。これを たとえば図 5 ー 5 では、計画原案の職人数 ( 山積み ) が、よ なポイントになる。 「職人 ( 数 ) の山崩し」という。 1 N 十 3 階 N 十 2 階 N 十 1 階 2 A B 天 井 下 3 A B C 間 仕 切 4 5 6 C D EI E2 天 井 張 7 D E2 F 壁 ポ 8 EI F G 塗 装 9 E2 F G H 照 明 器 具 10 F G H 床 A 0 1 1 G H J 12 H J 1 3 14 J J 作 業 N 階 ノ 00 A 設 備 配 B C D 建 具 枠 C D EI 天 井 張 建・ 具 取 付 図 5 ー 4 タクト工程表