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検索対象: 大学生のための「社会常識」講座
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1. 大学生のための「社会常識」講座

セス型に分類される。このような大学のユニバーサル化によって、大学に適応できない学生たちが大 量に入学するようになってきたという問題がある。多くの大学は、このような学生に対して、初年次 に大学に適応させるためのプログラムを用意するようになった。初年次教育の目的の中で重視すべき ものとして、「人として守るべき規範を理解する」という項目があげられている ( 友野三〇一〇【三 五〕 ) 。「規範遵守」教育および「自己防衛」教育がコンプライアンス教育を構成する。ここでは、大 学生の犯罪、不正行為など学生の陥りやすい問題について、初年次教育を意識しながら、学生の自己 防衛意識の啓発の観点から述べてみよう。 大学生活は、自分で組み立てるのが基本である。勉学を中心に大学生活を組み立てる者、 学生の責任 部活・サ 1 クルを中心に大学生活を組み立てる者、大学では授業だけに出てそれ以外は 大学外の世界を中心に生活を組み立てる者などさまざまである。それぞれのスタンスによって、大学 生活のパターンが決まってくる。平均的大学生像をつかむことは容易ではない ( あるべき学生像は多 様にあり、一つの像におさまらない ) 。 大学、および、大学の教職員は、さまざまなタイプの学生の生活にある程度まで責任を負う。ある 程度と表現するのはその境界があいまいだからである。最近、大学内での盗難事件の報告が多くなさ れる。教室で、食堂で、学生ラウンジで、部室で盜難事件が頻発している。盗難事件が起こると、 「学生サポ 1 ト」の部署に届け出るが、犯人の特定や盗まれた物が戻ってくることはほば絶望的であ 2 12

2. 大学生のための「社会常識」講座

めて整理してみよう。 大学生は、大学で勉学に励むことが学生らしさの第一条件になる。だから、勉強しない大学生は学 生らしくない。大学の授業に出席することはもちろん、それ以外の時間でも自らの学問的な興味や関 心をもって勉学に励み、テーマを設定して研究の初歩を学ぶことが大学生らしさの第一条件になる。 サ 1 クル活動があるから授業に出席できないというのは本末転倒である。そうした理由で出席できな いのは例外だという認識をもつべきである。 そして、勉学や大学生活に関係ないことにはできるだけかかわらないことが第二の条件になる。ア ルバイトばかりしていては何のために大学に進学したのかわからなくなるだろう。しばしば学費をま かなうためにアルバイトを行わなければならないという学生がいる。その場合でも、学業の時間を十 分確保した上で、疲労の度合いも考慮しながらアルバイトの時間を設定する必要がある。各種学割や 識 常奨学金制度があるのは、経済的負担の軽減によって学業に専念できる条件作りを目的とするからであ 会 社 る。大学卒業後に社会に出れば嫌でも働くことになることを考え、大学生活を有意義に過ごすよう考 の 活えたい。 大第三に、大学生は社会的に保護され、社会労働等をある程度猶予された存在であるから、その枠組 みの中で振る舞うことが期待される。パチンコ店やその他風俗営業に出入りするのはその枠組みから 座 講逸脱することになる。また、学生社長など学生時代から実業界に首を突っ込む者もいるが、「大学生

3. 大学生のための「社会常識」講座

◎学校教育法施行規則 第二十六条校長及び教員が児童等に懲戒を加えるに当っては、児童等の心身の発達に応ずる等教 育上必要な配慮をしなければならない。 ②懲戒のうち、退学、停学及び訓告の処分は、校長 ( 大学にあっては、学長の委任を受けた学部長 を含む。 ) が行う。 ③前項の退学は、公立の小学校、中学校 ( 学校教育法第七十一条の規定により高等学校における教育 と一貫した教育を施すもの ( 以下「併設型中学校、という。 ) を除く。 ) 又は特別支援学校に在学する 学齢児童又は学齢生徒を除き、次の各号のいずれかに該当する児童等に対して行うことができる。 一性行不良で改善の見込がないと認められる者 二学力劣等で成業の見込がないと認められる者 識 常 三正当の理由がなくて出席常でない者 会 社 四学校の秩序を乱し、その他学生又は生徒としての本分に反した者 の 活④第二項の停学は、学齢児童又は学齢生徒に対しては、行うことができない。 学 大 座 講

4. 大学生のための「社会常識」講座

論調査ーにおいて「自分の生活水準が中の中だと思う」と回答した者の割合は五割以上である ( 『国 民生活に関する世論調査』各年度 ) 。もし、自分が「中流より下。にいると感じるならば、より上をめ ざすために努力するであろう。しかし、豊かな生活を背景に現状に満足しようという意識が、「上で も下でもない」という現状肯定の意識を生みだしたと考えられよう。そして、このような中流意識が 私たちの社会において、社会常識をより学び、より高めるという意欲と姿勢を失わせるのである。加 えて高度経済成長期におけるテレビの普及により、いわゆる「テレビ人間ーが急増して娯楽志向性が 広がったことも、意識して社会常識を学ぶという姿勢を失わせたことも指摘できよう。 この「一億総中流意識」により「学ぶ姿勢 . が失われた対象は社会常識に限らない。それはわが国 の大学教育にも潜在的な影響を及ばしたと考えられる。なぜならば、経済的に大学進学が可能となる 「中流意識層」が増えたということは、「大学へ行くことが ( 中流意識層としては ) 当たり前である」 という意識につながるからである。これは今日多くみられる「まわりが皆、大学へ行くから自分も行 く」という安易な大学進学の考え方の根底となるものである。わが国における高等教育機関への進学 率は伸び続け、平成二一年時点での大学・短期大学への進学率は五六 % を超えるようになった ( 『平 成二一年度学校基本調査速報』 ) 。その背景には、高度経済成長期以来の生活水準の向上が大きな要因と してあげられるが、一方で今、述べたような中流意識にもとづく安易な大学進学意識があることも指 摘できよう。今日では、大学・短大の合格率は九〇・四 % にまで上昇し、実受験者数が入学者定員と

5. 大学生のための「社会常識」講座

ス・スクール出身の経営者は企業としての短期的な利益を追求するあまり、「企業は社会的存在」で ある、という経営哲学 ( 経営理念 ) を忘れ、株主のための経営政策や経営戦略を展開していったため に、多くの従業員を解雇し、企業を & ( 買収 ) によって崩壊させ、さらに消費者や一般市民等か らの信頼を失った。近年のサププライム・ローン問題の端を発した未曾有の世界金融危機は、利益の 追求のみを経営戦略とした経営者の失敗を証明したようなものである。このために、ビジネス・スク ールでは、企業倫理論、論 ( 企業の社会的責任論 ) 、論 ( 社会的責任投資 ) 、「企業と社会」 論、環境経営論、環境会計論等のように、企業の私的利益と社会的利益を有機的に連関させるような、 新しい経営哲学・経営政策・経営戦略が求められている。 「社会人基礎カーを企業にとって欲しい人材を育成するための実践的な能力を開発する有用なプロ てグラムであるが、大学はさまざまな社会事象に対して的確に、かっ、社会的公正の観点から分析し、 9J 問題点を把握し、意思決定を行っていく基本的な能力を育成する場であって、企業の利益のための能 礎力を開発する場でないことを忘れてはならない。したがって、学問的な真理の追求という大学教育の 基 人原点に立って、「社会人基礎力」のような実践的教育を補完的に利用していくということをきちんと 会 社認識して、大学は大学生に社会倫理性の高い知性を教授していくことが必要である。そのことが社会 編における大学の教育的な役割を再認識させるとともに、大学が二一世紀の新しい「社会知性ーの拠点 資となることができるのである。参考までに、「主要企業が求める人材像と社会人基礎力、との関係に 255

6. 大学生のための「社会常識」講座

らしさ」という意味では望ましくなく、両方とも中途半端になってしまうであろう。 学生が何か問題を起こした場合には、法律等によって処罰されるほか、学則等によって 懲戒処分 懲戒処分に処せられることがある。よくみられる問題としては、テスト時の不正行為や 窃盗、インターネットによる不正アクセス、不正乗車などがあり、また、重大な問題には大麻栽培な ど麻薬にかかわる問題や暴行等がある。法律に触れる場合でなくとも、テストの不正行為などのほか、 性行不良や出席常でない場合などに該当すると大学内で処分されることがある。 懲戒処分には、法的効果を伴う懲戒と事実上の懲戒がある。前者には、退学、停学、訓告がある。 退学は学籍の剥奪のことで、停学は学籍を保有させながら、通学を禁じる処分である。訓告は戒める 処分で、通常はそのまま通学できるが、学籍に処分の事実が記載されることになる。懲戒処分がなさ れた学生は、学内にその事実が告知されるが、氏名を公表する大学と、氏名を非公表とし、処分の事 実のみを告知する大学とがある。それら懲戒処分は何を根拠とするのであろうか ? 学校教育法、及 び、学校教育法施行規則は、懲戒処分に関して次のように定めている。 ◎学校教育法 第十一条校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところによ り、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。

7. 大学生のための「社会常識」講座

高校生時代は親にバイトを禁じられていた者も大学生になれば、それほど厳しい制約を受けなくなる。 日本学生支援機構の調査によれば、大学生の七四・五 % がアルバイトに従事している。その内訳は、 男子全体七四・五 % 、女子全体八一・一 % 、国立大学七七・四 % 、公立大学八一・七 % 、私立大学七 このうち、 七・三 % である。女子の従事率が高い傾向にあるが、設置主体別には大きな違いはない。 家庭からの給付で修学可能な者でアルバイトを行う学生は三九・九 % ( アルバイト従事者に占める割合 は五一・四 % ) となり、約半数の学生は生活のためではなく、娯楽や嗜好品購入などのためにアルバ イトを行っている様子が推察できる。 アルバイトをめぐっては、多くの問題がある。まず、アルバイトの時間数や勤務負担が学習の妨げ になりやすいことである。深夜のバイトで朝、大学に行けなかったり、大学に行くことができても睡 眠不足で講義中、居眠りを繰り返したりする学生がいる。一日の労働時間が長すぎると、自宅での学 識 常習時間が確保できなくなり、疲労のために授業に集中できないことがある。バイトはあくまでも副た 会 社 る存在として認識し、学習の妨げにならない程度で行うべきであろう。 活次に、職種に関する問題がある。例えば、風俗店勤務や違法行為に絡む職種、肉体的に危険な職種 大などは学生として避けるべきである。大学の中には、キャパクラ等の風俗店勤務を禁じているところ 1 と禁じていないところがあるが、学生らしさという観点から見れば、風俗店勤務は決して望ましくな 座 講 。また、違法行為に関しては、かってネズミ講に絡むバイトなどがあったが、現在は薬物の販売や

8. 大学生のための「社会常識」講座

売春斡旋などに絡むバイトが問題視される。この種のバイトに共通するのはバイト料の高さである。 そのバイト料につられないよう十分注意し、決してかかわらないようにすべきである。 そして、肉体的に危険なバイトとしては、夜間の工事や高層ビルの窓拭き、夜勤警備員、大型車の 運転などさまざまなバイトがある。これらを一律に禁じることはできないが、できるだけ避けるよう さらに、金銭感覚が麻痺するという問題も指摘できる。女子学生の中には、プルガリの時計やヴィ トンのバック、シャネルのアクセサリーなど大学教員の収入では購入できないような高額商品で持ち 歩く者がみられる。彼女らはバイトで稼いで購入したらしい。そのこと自体は否定すべきでないが、 中には、次第に金銭感覚が麻痺してしまい、遂には高額な負債を抱えしてしまう例もあるので要注意 である。また、学生時代に高額な収入があったために、就職してみると自分の給料の低さに唖然とす ることもある。そうした意味では学生らしい慎ましい生活を保った方がよいといえよう。 経済的に苦しい場合には、日本学生支援機構や地方自治体の奨学金を申請するとよい。また、大学 によっては独自の奨学金制度を設けていることもある。むろん、申請が認められるか否かには学業成 績も影響するので、安易な気持ちでは奨学金は給付されないだろう。詳しくは各大学の学生課などに 相談するとよい。普通、入学当初に学生課等による奨学金説明会が開かれるので、申請希望者が必ず 出席するようにしたい。

9. 大学生のための「社会常識」講座

処分の決定にあたっては、「実体上慎重な判断がなさる : ・べきであり、従って、その手続きにおいて も、懲戒権者の恣意、独断等を排除し、その判断の公正を担保するため、処分を受ける学生に対し、 弁明の機会を与えるなどの事前手続を経ることが望ましい、と指摘した。学生に対する処分を決定す る際に、大学が「教育的で適正な手続き」を確保することは、大学のコンプライアンスの重要で不可 欠な要素なのである。 ( 3 ) 大学生の犯罪と「自己防衛」 大学生の犯罪報道をみれば、薬物汚染、強姦・強制わいせつ、強盗が圧倒的に多い。大学生の犯罪 については、統計上一八歳、一九歳の未成年の学生については追跡可能であるが、成人になった大学 生については難しい。大学生の犯罪は増えているのか、どのような特徴があるのか。この問題につい ては、少年非行事件の統計である「一般事件在学種別暦年比較 , によって推測するしかない。少年犯 罪を年齢別統計でみれば、年長少年 ( 一八、一九歳 ) の平成二〇年度の人員は一万八一二人 ( 平成一六 年度一万六六一九人 ) で、全体の二〇・三 % を占める ( 一四・一五歳の年少少年四一・七 % 、一六・一七 歳の中間少年三七・九 % ) 。年長少年の割合が高い犯罪は、「覚せい剤取締法違反」 ( 六〇・五 % ↑平成一 六年、六四・五 % ) 、殺人 ( 四一・九 % ↑四六・五 % ) 、強盗 ( 三八・三 % ↑三一・一 % ) 、強姦 ( 三八・一 % ↑四六・一 % ) などである。平成一六年度との比較では、強盗を除いて、人員数、割合も減少して 218

10. 大学生のための「社会常識」講座

やガイダンスといった機会に周知させ、掲示等でも公知することなどの措置をとっていれば、安全配 慮義務を果たしているというのが、従来の裁判例の見解である。あとは、自己責任の領域なのである。 学校教育法施行規則第一三条二項は、「懲戒のうち、退学、停学及び訓告の処分は、校長 ( 大学に あっては、学長の委任を受けた学部長を含む。 ) がこれを行う」と規定した上で、懲戒の該当要件を三項 に規定する。すなわち、 識 会①性行不良で改善の見込みがないと認められる者 社 ②学力劣等で成業の見込みがないと認められる者 の 剞③正当の理由がなくて出席常でない者 貪④学校の秩序を乱し、その他学生又は生徒としての本分に反した者 ス 各大学は、不祥事を起こした学生に対する指導と処分の指針を学校教育法、及び、上記施行規則に イ ラ基づいて策定している。本件でも、飲酒にかかわった学生たちに対して、謹慎等の処分を科している。 ン 事件の内容、関与の程度、反省の度合い等を検討し、処分の内容を決定する。 処分の中でもっとも重い退学処分は、学生の権利、ないし、身分を剥奪する重大な処分である。佐 座 講賀大学退学処分事件判決 ( 佐賀地判昭和五〇年一一月二一日訟務月報二一巻一二号二五四八頁 ) は、退学 217