それでは情報リテラシ 1 、すなわち「情報を活用する能力」とは、具体的にどのようなものであろ うか。「情報リテラシ 1 の定義には、情報機器の操作などに関する観点から定義する場合 ( 狭義 ) と、 操作能力に加えて、情報を取り扱う上での理解、さらには、情報、及び、情報手段を主体的に選択し、 収集活用するための能力と意欲まで加えて定義する場合 ( 広義 ) がある」 ( 総務省〔一九九八二五 七〕 ) 。つまり、 ハソコンなどを使いこなす技術は狭義の「情報リテラシー」であり、そのパソコンを 使ってどのように情報を探すか、また、取得した情報の中から問題解決のためにいかにして必要な情 報を選択するか、さらに、その情報を取り扱うための良識をも指すのは広義の「情報リテラシー」と いうことができる。いうまでもなく—生活においては、どちらの「情報リテラシ 1 」も必要とされ るのである。 今日の大学生は、さまざまな場面でを使いこなすことが求められている。例えば、レポートを 作成する場合、インターネットを使えば必要な情報や資料を簡単に、かっ、すばやく入手することが 可能であろう ( 一連のパソコンの操作やインターネットアクセスの技術は、狭義の「情報リテラシー」とい うことになる ) 。しかし、それだけではレポート作成という目的を達成したことにはならない。なぜな らば、入手した情報の信頼性や情報源の確認など、情報を吟味する作業が必要だからである。インタ ーネット上の情報は、他のメディアの情報よりも新鮮である半面、その精度や信頼度は他のメディア の情報に比べると相対的に低いといえる。というのは、インタ 1 ネット上では誰もが比較的簡単にど 1 ラ 8
パソコンや携帯電話 塚三〇〇六二〕 ) 。インターネットに代表される情報ネットワークの発達と、 をはじめとする情報端末の普及により、われわれの情報処理応力は飛躍的に向上した。すなわち、大 量の情報の中から必要とする情報に瞬時にアクセスすることが可能となり、一方では、自らが情報発 信を行うことも容易となったのである。このように発達した情報社会では、人は常に情報から強い影 響を受ける。情報とのかかわりにおいて、適切な判断・決定・行動がとれることが重要な課題になる。 情報の利用や取り扱いを間違えると、特定の情報に支配されたり、社会秩序の混乱や崩壊に至るなど の危険も起こりうる ( 佐藤三〇〇五二四六〕 ) 。そのような事態を避け、安全で快適な情報社会を築 くためにも「の常識」が求められるのである。 情報社会では、大量の情報を瞬時に処理して必要な情報にアクセスできる半面、有害な情報の流通 やコンピューターウイルスの拡散、不正アクセスなどの増加という負の側面ももつ。これは情報ネッ トワ 1 クがもつ「匿名性」、「不特定多数性」、「時間・空間の超越性」や「無痕跡性ーに起因する ( 大 会 蹴野三〇〇五二四七〕 ) 。すなわち、お互いの素性や顔が見えない「匿名性 , の高い「不特定多数」 活の人間が、地理的制約の無いインターネットを使うことで、遠方の国の人間と一瞬で情報のやりとり が可能となるのである。また、その情報とは電子的情報であるため簡単に消すことができて、痕跡と して残らない ( 同三〇〇五二四八〕 ) 。これは匿名で犯罪を目論む者や不特定多数のインターネッ 座 講ト掲示板等に違法な書き込みを行う者にとって都合がよいことを意味する。そのような事態を少しで
( 3 ) 人付き合いの濃淡 こうして考えると個人を基本におくと単に人付き合いといってもおのずから濃淡ができてくる。親 しさの程度といってもよい。同じように接するといっても、言うは易く行うは難し、である。一方で 自分も付き合うに足る人物か、周囲から評価されていることも忘れてはならない。 これまでは心理学的なアプローチを紹介してきたが、ビジネスの観点からすると別の見方もできる。 人付き合いがうまい人、多くの人が集まってくる人については共通点がある。それは情報の発信量と、 その正確さである。多くの正確な情報をもっている人のところにはおのずから他人も集まってくる。 自ら情報を発信しない者のところには他人も寄ってこないのである。ギブ・アンド・テークという言 葉があるが、ギブ・ギブ・ギブ・ギブ、そして、一つのテークがあると考えた方がよい。 情報を収集する時も同じである。情報が集まる人のところへ情報がほしいと思って寄ってくる者は 会多い。しかし、本人が必要だと感じる情報をもってこない者には知り得た情報を伝えることはないだ のろう。なお、これは金銭的な問題とは別である。欲しいのは金銭ではなく情報だからである。 合その結果、有益な情報を有する者には他人が ( 相性とは関係なく ) 近づき、人付き合いも濃密にな ルる。逆もまた、真なりで発信する情報がない者は人付き合いが希薄になっていくのである。 座 講
のような情報でも公開できるからである。したがって、誰がどのような根拠でどのような発言をして いるかを精査し、他の情報とも比較検討する作業は必須といえよう ( これは広義の「情報リテラシー」 である ) 。 また、例えば、インターネットを活用して他人とコミュニケーションをとることは、今日の国際 化・情報化社会において必須の技術、すなわち、「狭義の情報リテラシー」といえるが、相手と良識 あるコミュニケーションをとる能力やいかにしてインタ 1 ネット上の犯罪に巻き込まれないようにす るかという判断力もまた、「広義の情報リテラシ 1 ーとして必須であるといえよう。 このように、「情報リテラシ 1 」とは、さまざまな情報機器を活用する技術力と、それをいかに正 しく使いこなすかという良識の、どちらもが「常識」として高度に要求されるのである。 識 常 2 生活の基本知識 会 社 の ( 1 ) ソフトウェアのライセンス 活 基本的にパソコンを使うということは、ソフトウェアを使うということと同義といえよう。例えば、 レポートを書くためには、 MicroS0ftWord に代表されるようなワープロソフトが必要となる。表計 座 講算のためには、 M 一 croSoftExce 一をはじめとする表計算ソフトウェアを使うことになる。インタ 1 ネ 159
1 なぜ、の常識が必要なのか 平成二〇年末のわが国のインターネット利用者数は九〇九一万人、人口普及率では七五・三 % とな 三 5 一九歳に限っていえば九五・五 % 、二〇 5 二九歳では っている ( 総務省口一〇〇九二二〇〕 ) 。一 一〕 ) 。今日において、大学生のほば全員がインタ 九六・三 % にまで達している ( 同三〇〇九二二 1 ネットを利用しているといってよいだろう。逆にいえば、すべての大学生はインターネットをはじ めとしたを使いこなすことが「常識」として求められているのである。それを端的にあらわすキ 1 ワードとして「情報リテラシー」があげられよう。リテラシ 1 とは「活用能力」と訳される ( 自由 国民社三〇〇九【七五三〕 ) 。すなわち、「情報リテラシー」とは、「情報を活用する能力」であり、ま さに生活の常識を示すキーワードといえよう。 会 蹴本章のタイトルにもある「」とは「 lnformation Technology 」の略であり、その意味は文字 活通り、「情報技術」である。すなわち、「という単語を聞くと、ともすれば「インターネット や「パソコン , などの先進的な機器やサービスを連想しがちであるが、その基本はあくまでも「情報 を扱うための技術」なのである。そうであれば、その技術を活用する能力が求められることになる。 座 講つまり、「情報リテラシー」が必要とされるのである。 巧 7
講座 4 「コミュニケーション」の方法のための「社会常識」 図 4 ー 2 シュラムの円環型モデル メッセージ 読 解 号 1 = ロ 記号化 解釈者 解釈者 記号化 記号解読 メッセージ ない。「誰が、何を、どのようなチャンネルで、誰に伝えるのか ? といった情報の伝達に焦点があてられていて、受け手から送り手へ のフィードバックが考慮に入れられていないのである。そこで、受 け手からのフィードバックも含めたモデルが考えられた。それがシ ュラムの円環型モデルである ( 図 4 ー 2 ) 。このモデルでわかるよう に、コミュニケ 1 ションにおいては、情報の送り手と受け手とが入 れ替わり、円環的に情報のやりとりが双方向でなされる。つまり、 頁 コミュニケーションとは送り手からの単なる情報伝達ではなくて、 相互作用なのである。 学 この図のように、情報を伝達する送り手のみならず、受け手もま 会 社 ン た、発せられた情報を読みとり、その人なりの意味づけや解釈を行 ョ シ っている。つまり、送り手の情報が受け手に意味が損なわれること ケ = なく完全な状態で伝達されることは不可能であり、そこにズレが生 物じてしまう。そうであるとしても、人々は相手に思いをできるだけ 典正確に伝えようと試みるわけだが、こうした点からすると、コミュ 出 ニケ 1 ションとは相互作用によって新たな意味を作り出す過程とい 127
また、伝える内容については、①情報、②意見、③情感の三つを区別し、整理しておくことも必要 特に、③の情感がこもっていると、聞いている人は話し手に親近感をもってくれる。それにより、 共感が得られ自分の思いが伝わりやすくなる。誰しも感動した体験を人に伝えたいと思うものだ。単 なる事実の羅列ではなく、 ーソナルな部分を伝えることは相手に印象づける効果をもたらす。 二つ目として、「何のために」、「どんな場面で」、「誰に話すのかーという三点を話す前に確認して おかなければならない。「何のために」とは、話す目的のことである。話の方向性や焦点を見定めて おかないと、話しているうちに自分で何を話しているのかわからなくなり、当然、その場合には、聞 き手は話し手の意図をつかむことが不可能になってしまう。「どんな場面で」というのは、話し手が 「どんな役割を期待されているのか」を知ることである。話の場面を認識することで話すべきことが 自然とわかってくる。それに関連して、「誰に」対して話すのかを確認することで、何をどのように = ⅱせ。ししかか変わってくる こうした点を頭に置きながら、日常の言葉で、それでいて、丁寧な言葉づかいを心がけたい。また、 話は簡潔に、そして、緊張しているとつい早口になってしまいがちだが、できるだけゆっくりと間を とりながら話すと相手に伝わりやすい。さらには、大勢の人がいるからといって大声を出す必要はな 。声の大小や強弱、高低、話の緩急、間などで変化をつけながら、聞き手の反応を確かめながら話 を進めていくようにしたい ( 梅津三〇〇九【五一〕 ) 。 136
ることになってしまう。当然ながら、着信履歴から電話番号が収集されてしまうのである。他にも。 UserAgent ( ューザーエージェント。携帯電話の機種名やプラウザ情報 ) を「あなたの個人情報を記録し た」と称して脅かす手段もあるが、 UserAgent は同じ機種の携帯電話を使っている人間であれば、 誰がアクセスしても基本的には同じ文字列しか表示されないため、これは個人情報ではない。しかし、 意味ありげな無機質の文字列が表示されると、不安に感じる人は多いと思われる。 以上のように、本項では「契約者固有」を中心に個人情報とセキュリティについて述べてきた。 「契約者固有」については一見すると技術的な内容である上に、携帯サイトの利用者よりも携帯 サイトの運営者側にとって必要な知識とされる傾向がある。しかし、すでに指摘したように、携帯電 話が大学生のほば全員に普及したことを考えるならば、携帯電話を使う者は情報リテラシーのひとっ として「契約者固有—」について知っておくべきであろう。 5 大学生と犯罪 本節では、大学生によって行われた犯罪について取り上げたい。「最高学府」である大学で学 ぶ者として、このような犯罪に手を染めることがいかに非常識であることを認識してもらいたい。
豊かになるであろうし、好奇心をもって貪欲に知識を吸収することによって自己を高めることがで きる。魅力的な話し手はたくさんの引き出しをもっているものだ。 ・幅広い分野の読書をしよう。読書ノ 1 トを作ってみよう ・メディアに接する際は批判的な目をもとう ・メモを取ることを習慣化しよう ・積極的に人と会って話をしよう、質問をし、情報交換をしよう ③「意思伝達スキル」 インブットした情報や知識をわかりやすく相手に伝える力が「意思伝達スキル ( 技能 ) 」である。 情報を血肉にするためにはアウトブットが必要である。相手が理解しやすいよう工夫をして話をす ることで自分自身の知識として定着する。また、話の内容を過不足なく相手に伝えるためには適切 な言葉づかいが求められる。前に述べたとおり、受け手へのメッセージでは言語情報のみならず非 言語情報も重要な要素となる。相手の五感に訴えて思いを伝えたい。 一分間 ( あるいは、三分間 ) で自己紹介をしてみよう ・話す際にはまず、全体像を説明した上で、枝葉の話に移行しよう ・興味のある新聞記事を選び、それに対して、意見を述べる訓練をしよう 、間などに気を配ってみよう ・話す際には表情、声のトーン、抑揚、メリハリ 148
先の携帯サイトに通知しているのである。しかし、総務省の見解では、契約者固有は個人情報保 護法が定めるところの「個人情報。にはあたらないとしている。契約者固有そのものはランダム な英数字からなる文字列であり、「個人識別性を有しない」 ( 総務省三〇一〇〕四一〕 ) としている。 だが、契約者固有そのものからは個人情報を読みとられることがないとしても、契約者固有 の扱いを疎かにすることが個人情報漏洩の遠因となることが考えられるのである。それについて以下、 述べてゆくこととする。 ( 3 ) 見知らぬメールの—l 携帯電話がインターネットに対応し、携帯サイトへのアクセスや電子メールの送受信が可能になっ たことによって、携帯電話を狙った「迷惑メ 1 ル」が横行することとなった。その内容は、出会い系 やアダルト系などの明らかに怪しいものから、一見すると真面目にみえるものなどさまざまであるが、 そのほとんどがメール本文に書かれている }-a をクリックさせようとするものである。このような をクリックすると、違法な出会い系サイトや薬物販売サイトへ飛ばされることが多い。それだ けでなく、アクセスするといきなり「登録完了画面ーが表示され、登録料を指定の口座に振り込むよ う脅迫まがいの文章で脅すサイトに飛ばされることもある。これがいわゆる「ワンクリック詐欺」と 呼ばれるものである。ワンクリック詐欺サイトの「登録完了画面ーには「あなたの個人情報を記録し 186