うに、原則としてすべての消費行為を課税対象とするのを一般消費税というが、消費税導入 に伴い廃止された物品税は全くこの逆であった。物品税法の一条では「別表に掲げる物品に は、この法律により、物品税を課する」と規定し、課税する物品を一つ一つ法律に明記して いかなければならない制度だったからである。この制度では、明記されている商品とは異な る新製品が発売されたときには直ちに課税できない。 = = 課税するためには法の改正が必要で、 いわば議会のチェックを一々受けねばならなかった。 租税法律主義の要請からすると、物品税の方が優れた面もあるが、議会が適切にチェック できないと不合理なものにもなりかねないし、課税する立場にとっては新製品が発明される たびに法改正をしなければならないのは大変な手間でもあった。消費税はこの関係を逆転さ せ、原則としてすべての取引に課税するとした上で、六条において「国内において行われる 資産の譲渡等のうち、別表第一に掲げるものには、消費税を課さないー という非課税規定を 設けたのである。これにより今度は例外的に非課税にするものだけを法律 ( 別表 ) に明記すれ ばよいことになった。そうなると、新製品は当然法律 ( 別表 ) には明記されていないので自動 的に課税しうることになる。したがって、一度導入できれば後は議会のチェックを一々受け ることなしに、自動的に課税対象を拡大できることにもなるのである。この意味で、課税す
的な最低限の生活費を課税しないように配慮した制度だが、所得控除なので、どうしても高 額所得者の減税効果が高いし、何よりも、控除されているにもかかわらず、一般納税者には 自覚されにくかった。これに対して、子ども手当は子どものいる世帯に直接支給されてくる ので、子育て世帯には目に見える子どもへの援助になるし、高所得者よりも低所得者にとっ ての援助効果が大きい。その意味で、扶養控除制度よりははるかに優れた制度であった。 ところが、所得制限を設けずに手当を支給したことから、野党やマスコミがばらまきとの ひつばく 批判を展開し、縮小廃止されようとしている。財政を逼迫させた張本人の野党がばらまき批 判をするのも問題だが、扶養控除から子ども手当という制度の転換の意味を市民に伝えなか ったマスコミの責任も大きい。なお、所得制限を設けていないという批判については、こう した制限を設けるより、この手当を課税所得に入れて高額所得者からは税を通じて還元して もらう方法の方が簡便であり、合理的であろう。ねじれ国会における与野党の調整により、 この手当制度の意義は曖昧化しつつある。 さて、このような税額控除額を差し引いた金額が私たちの税額になるが、申告に際して実 際に支払うのは、そこから源泉徴収や事業者がすでに納付した予定納税額を控除した金額で あり、源泉徴収額等の方が多ければ、めでたく還付となる。
第 5 章間接税等 能になった。しかし、こうした制度が今なお酒税確保を名目として存在していること自体が 不合理である。営業用酒の製造免許自体には致酔飲料の規制の観点から一定の合理性はある が、自己のための酒造りやビール造りを規制することに今日どれだけ意味があるのだろう 、冫についてはもう一つ免許がある。販売免許である。これは国家総動員法が制定された一 九三八年に導入された制度で、当時の統制経済を前提にした制度でもあった。この制度も廃 止の方向が二〇年以上も指摘されながら、徐々に規制緩和するだけで、なかなか進まない。 一一〇〇三年九月の規制緩和でも不合理な免許基準の一つが廃止されたものの、免許制度自体 はなお存置されてしまった。同時に、店舗ごとに販売管理者を選任するなどの改正がなされ ている。今後いつまで免許制度が維持されていくのかは不明だが、酒税確保を理由とした規 制の合理性がなくなってきたことだけは確かである。 159
人が自己の財産を受け継がせる権利、つまり被相続人にとっての遺言の自由、処分の自由は この特別規定がなくとも、所有権保障の構成要素として保障されていると解されている。日 本国憲法も所有権を保障している以上、相続制度を否定するのは、理論的にも困難であるし、 現実的にも無理である。 例えば、もし相続を廃止し、被相続人の財産はすべて国家に帰属するという制度を採用し た場合、あなたはどうするだろうか。全部一人で使ってしまう、という人は少数で、家族等 に承継したいと考え、相続を回避するために生前贈与を行うはずである。そこで、国家は生 前贈与を回避行為として規制することになるが、そうなるとあなたはおそらく第三者の介在 した売買の形式を通じて実質的な贈与を行うことになろう。これをも相続回避行為として規 制すると、結局、所有権者の処分そのものに国家が強度に介入せざるを得なくなり、市場経 済そのものの円滑化が阻害されることになる。 税その意味からも、相続制度は必要といえよう。しかし、相続制度は親とはいえ他人の物を 相 自分のものにすることのできる制度で、基本的に不労利得である。相続という法制度によっ 章 て他人の物を自分のものにすることができ、経済的富が増加するのであるから、そのような 5 第 機会のない人との均衡からも税負担を求めるのは不合理とはいえまい。では、どのような制
ーマンであれ事業者であれ、制度上は控除できるものではないのである ( 事業所得者は実際に 控除しているではないか、という意見もあるかもしれないが、家事費を意図的に経費にすればそれは 立派な脱税である ) 。 1 マンが実際に支出している必要経費というのはそれほど多くなさそ そうすると、サラリ マンは現在の給与所得控除によって、必要経費の実額控除と比 うである。大多数のサラリー べると多額の控除の適用を受けているといわざるを得ないのである。 サラリーマンにも実額控除可能 ? ーマンに必要経費 マン訴訟で最高裁は現行制度を合憲としたが、サラリ 前述したサラリー の実額控除の道を開くべきことにも言及した。そのため、大蔵省 ( 現・財務省 ) があわてて導 入したのが特定支出控除である。この制度は一九八八年度に導入されたものだが、ほとんど 税のサラリーマンには無縁の制度である。なぜならこの制度は、給与所得者が支出する通勤費、 所 転居費、研修費、資格取得費、帰宅旅費の合計額である「特定支出額」が給与所得控除額を 章 超えるときには、給与所得控除額に替えて特定支出額を控除できる、というものだったから 第 である。特定支出の範囲が限定されすぎていることと、高い給与所得控除額を超えた場合し
決定しているともいえるからである。それだけに、現行の予算システムの維持を困難にする 要素があるが、税の使い道を納税者自身が決定できる制度は、納税者意識を高めることにな るかもしれない。ただし、濫用すると、高額納税者が自己の税金を社会福祉に回すことを拒 むことにも使える、という問題にも注意しておく必要がある。また、二〇〇八年度 ( 平成二 〇年度 ) から導入された「ふるさと納税」は税を受け取る自治体まで選択できるため、賛否 両論があるが、被災した自治体を援助する制度としても注目された。 なお、すべての寄附行為が寄附金控除等の対象になるわけではなく、 一定の手続が必要な ので、控除を受けたい場合は、事前に確認しておいた方が良い 4 累進税率の意味 超過累進税率 こうして総所得金額から様々な所得控除を差し引いた金額が「課税総所得」金額である。 この金額に次の税率が適用されるのである。
か適用できないので、この制度を適用できるサラリー マンはまずいないし、適用できる人は 本当にサラリ ーマンかどうか疑わしい 事実、初年度は全国で一六人、その後も減り続け、一九九五年にはついに全国でたった一 人となったのである。二〇〇八年には六人と少し増えたが、四五八七万人の給与所得者のな かでわずか , ハ人では、宝くじの当選者より希少価値があることになる。二〇一三年度から特 定支出控除の対象に勤務必要経費 ( 書籍費・被服費・交際費等 ) 等が加えられ、給与所得控除額 の半分を超えている場合に適用されるように改正される予定だか、この制度によって給与所 得者にも必要経費控除の道が開かれている、と強弁するのはあまりにも無理がある。 一般のサラリ ーマンに適用可能な制度として、現行の給与所得控除に替えて、必要経費の 実額控除を選択制として認めるべきなのか、もういっそのことこのような控除制度をやめて 事業所得者と同じように必要経費の実額控除制度 ( その場合、税負担は増えるかもしれないが ) に すべきなのかが、サラリー マン自身に問われているのである。 家族労働の必要経費性 サラリ ーマンには必要経費が認められていないために、妻に給料を支払うこともできない
発泡酒騒動 酒税制度もやはり制度疲労をおこしている。抜本的な解決を図らねばならないのに、相変 わらず場当たり的対策に終始している。近年の発泡酒騒動はその象徴である。サラリー 川柳の二〇〇二年度入選作に「本物のビール買ったら妻激怒」というのがあるが、怒りたい のは、まじめに良質なビールを造ってきたメーカーや安い発泡酒を飲まざるを得ないサラリ ーマンであろう。なぜ、こんなことになってしまったのだろう。 現在のビール類似の発泡酒が売り出されたのは一九九四年頃からである。巧みなテレビコ マーシャルと安い値段で、大蔵省 ( 現・財務省 ) の予想を超えて爆発的に売れ出したのである。 売れた最大の要因はもちろん値段の安さであるが、味がビールと大差なかったことも重要で あろう。なぜ、発泡酒とビ 1 ルは味が大差ないのだろう。また、どうして値段が安くなるの だろう。この仕組みをまず理解していただきたい。 1 税が酒を造る 148
税申告の時に納付されているが、残りの五〇万円 税間のは点あはどこにいくのだろう。これは小売業者の雑益に 課の分限税で っ易で度上免円 課 簡ま年用者万なるのである。このように、簡易課税は課税仕入 0 」 0 「 0 「 本が万幻既 業業 0 を実際の仕入率ではなく、みなし仕入率で計算す 料 る度の 5 開一る万 月 べあ 兄資 す制分隱るので、そこに差が生じ、それが益税というもの 状 件数 1 提 用 ・ /. 1 は 告牛川に業衄を生み出すのである。 既申告ド 2 で簡事、の の税税 - ⑤ ( 申上らま , る度 この簡易課税制度は選択制で、法人の場合は 」 6 易 税月簡 ⑤万万課る月終前々事業年度、個人の場合は前々年 ( 暦年 ) の課税 課 6 的の 易年 税轆あ 4 数 33 に易 牛年は日簡売上高が五〇〇〇万円以下である場合に選択でき 簡絽 費¥年制 5 限引 る。法人の場合は適用事業年度開始の前日、個人 望城者件件芻覩万亠申上嘉 3 、業 3 万万し件 業网分適年网の場合は適用年度の前年の一二月一 = 一日までに税 が業間隱イ業間制元務署に届け出なくてはならないが、税理士等の専 税人期上人事期点り上 税用る税税あ用 1 者 尸家も、つつかりこの選択期限を忘れ、納税者に損 国個課適法す課免で適 業人 , のの , 了の者円の 事 12 こ度 3 終こ業億度害賠償をしなければならない事例が増えている。 個法注注注 また、一度選択すると二年間は変更できないので、
反税の義賊Ⅱロピン・フッドは今 ? 日本の税金を概観してきたが、最後に、私たちは何のために税金を拠出しているのか、も 、つ一度考え直してみよう。なぜ、私たちは税金を「取られる」と感じるのだろう ? 本当に お上に「取られて」いるのだろうか ? 確かに、かっては国王がむりやり国民から取り立ててきたのが税金であった。選挙制度も なかったので、反対するなら、百姓一揆のような抵抗や、イギリスで有名なロビン・フッド のような義賊の抵抗しかなかったわけである。しかし、現代社会は普通選挙制度を導入した。 日本においても一九四五年から二〇歳以上の男女に選挙権が与えられ、選挙民の代表を通じ て税負担も決められることになっている。もはや、国王が私欲のために恣意的に課税するこ とはできないのである。国王の代わりに、私たちの代表者が税制を国民である選挙民の意向 を踏まえて決定している ( はず ) だからである。この民主主義のルールに従えば、税制も、少 数者の権利も配慮しつつ、国民の多数者の意見で決めていくことになる。 そうすると、選挙民の圧倒的多数は中低所得者層なので、富裕層に適切な負担を求め、所 216