配偶者 - みる会図書館


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1. 日本の税金

ると、これを各相続人の実際の取得割合、例えば配偶者一〇分の五、長男一〇分の三、長女 一〇分の二、というように分担する。 長男が単独で相続しても、長男一人が納税義務を負うだけで、相続税の総額一億円は変わ らない。 つまり、単独相続でも不利にならないように配慮されていることになる。現行制度 か、前述のように、農家の単独相続を不利にしないために導入されたからである。こうして 計算された各相続人の相続税額について、配偶者や一親等の血族以外の者が相続した場合に は二割加算され ( 相続税法一八条 ) 、配偶者や未成年者等が相続した場合には一定の税額控除 がなされ、各人の具体的納付税額が決まることになる。 取得額が同じでも税負担増 このように、現在の課税方式は複雑であるし、いくつかの矛盾を発生させている。本章の 冒頭で紹介したように、取得した額が同じでも、遺産総額が違うと税負担も異なってくる。 実際には三〇〇〇万円しか取得していないのに、法定相続分で取得したと仮定して相続税総 額が計算され、その総額から実際に相続した割合分を負担しなければならないため、さん のように遠慮して三〇〇〇万円しか相続しない場合でも、遺産総額が五億円で相続税総額が 126

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主婦も自分の最低生活費を ( その生活費を支出している夫名義の所得から ) 引いているだけのこと である。これが配偶者控除制度の本来の性格である。優遇でも何でもなく、所得のない者に も基礎控除分の最低生活費を課税上除くエ夫がされているだけの話である。この点を見誤る と、感情論からの課税論になる。 パート労働の壁 しかし、現行配偶者控除に問題がないわけでは決してない。何よりも、配偶者控除の適用 要件が問題である。現行配偶者控除は、配偶者の一方 ( ここでは妻としておく ) が一定金額以下 の所得しかない場合に限って、他方配偶者 ( ここでは夫としておく ) の所得から一定金額を控除 できる免税点方式を採用している。そのため、妻に一定金額までは所得があっても夫の所得 税において配偶者控除が適用され ( 本来は、配偶者の所得が増える分に応じて、配偶者控除の額が 税減額され、両者の合計額が健康で文化的な最低限の生活費に相応する額になっていなければならない ) 、 所 所得のない配偶者の基礎控除分であるという趣旨が薄まってしまっている。しかも、免税占 章 方式なので、一定金額を超えると控除額が一挙にゼロになってしまい、夫の税負担が一挙に 第 増え、多少の収入増ではかえって手取額が減少してしまうことになる。このため妻が一定額

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納税者の控除額 ( 単位 : 万円 ) 36 31 21 16 11 6 3 0 ( 配偶者の給与収入 ) ( 105 ) を ( 110 ) ( 115 ) ( 120 ) ( 125 ) ( 130 ) 円 万 除 控 者 . 偶 ( 135 ) 配偶者 ( 140 ) 特別控除 ( 141 ) 103 万円 141 万円 適用者数 1 , 330 万人 約 18 万人 < 現行の配偶者特別控除制度の仕組み > 〇現行の配偶者特別控除は , 配偶者の給与収入が 103 万円を超え , 141 万円までの場合に適用され , 収入に応じて控除額が増減する仕 組み . これにより , 手取りの逆転現象が解消 〇手取りの逆転現象の解消の具体例 ①夫の給与収入 1 , 08 万円と妻の給与収入 18 万円の世帯と ②夫の給与収入 1 , 08 万円と妻の給与収入 105 万円の世帯の比較 < 配偶者特別控除がない場合 > ①の世帯の手取額 : 987 万円 ( 税負担額 113 万円 ) ②の世帯の手取額 : 981 万円 ( 税負担額 124 万円 ) 世帯収入が 5 万円増えたにもかかわらず手取が 6 万円減少 < 配偶者特別控除がある場合 > ①の世帯の手取額 : 987 万円 ( 税負担額 113 万円 ) ②の世帯の手取額 : 的 1 万円 ( 税負担額 114 万円 ) 世帯収入が 5 万円増えたことにより手取が 4 万円増加 図 1 ー 4 配偶者控除・配偶者特別控除制度の仕組み ( 配偶者が給与所 得者の場合 ). 適用者数は , 国税庁「民間給与の実態 ( 平成 21 年分 ) 」 ( 年末調整を行った 1 年を通じて勤務した給与所得者 ( 納税者 ) ) による . 出典 ) 財務省のホームページ . 37

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表 1 ー 1 人的控除の概要 ( 所得税 ). 基 礎 な 人 的 特 別 な 人 控 除 基礎控除 配偶者控除 一般の控除対象配 偶者 老人控除対象配偶 配偶者特別控除 扶養控除 一般の扶養親族 特定扶養親族 老人扶養親族 . ( 同居老親等加算 ) ・ ( 特別障害者控除 ) : ( 同居特別障害者控 除 ) 寡婦控除 ( 特別寡婦加算 ) 障害者控除 寡夫控除 勤労学生控除 29 創設年 ( 所得税 ) 1947 年 1961 年 1961 年 1977 年 1987 年 1950 年 1950 年 1989 年 1972 年 1979 年 1950 年 19 年 2011 年 1951 年 1989 年 1981 年 1951 年 対象者 ・本人 ・生計を一にし , かっ , 年間所得が 38 万円以下である配偶者 ( 控除対象 配偶者 ) を有する者 ・年齢が 70 歳未満の控除対象配偶 者を有する者 ・年齢が 70 歳以上の控除対象配偶 者を有する者 ・生計を一にする年間所得が 38 万 円を超え 76 万円未満である配偶者 を有する者 ・生計を一にし , かっ , 年間所得が 38 万円以下である親族等 ( 抉養親 族 ) を有する者 ・年齢が 16 歳以上 19 歳未満又は 23 歳以上 70 歳未満の扶養親族を有 する者 ・年齢が 19 歳以上 23 歳未満の扶養 親族を有する者 ・年齢が 70 歳以上の扶養親族を有 する者 ・直系尊属である老人扶養親族と同 居を常況としている者 ・障害者である者 ・障害者である控除対象配偶者又は 扶養親族を有する者 ・特別障害者である者 ・特別障害者である控除対象配偶者 乂は扶養親族を有する者 ・特別障害者である控除対象配偶者又 は扶養親族と同居を常況としている者 ・夫と死別した者 ・夫と死別又は夫と離婚したもので , かっ , 扶養親族を有する者 ・寡婦で , 扶養親族である子を有する者 ・妻と死別乂は離婚をして扶養親族 である子を有する者 ・本人が学校教育法に規定する学校 の学生 , 生徒等である者

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らである。その結果、給与所得控除額分だけ高く見えることになり、このような比較が、課 税最低限の国際比較として使われてきたのである。 ーマンだけ マンであるのは事実であるが、サラリ 所得税の納税義務者の大多数がサラリー の比較で基礎控除の低さを覆い隠してきたのである。この宣伝効果により、二〇〇三年改正 マンの場合でも国際比較をする で配偶者特別控除の割増分が廃止され、その結果、サラリー と、日本はもはや課税最低限が高い国ではなくなっている ( 図 1 ー 3 参照 ) 。 日本の課税最低限が高いかどうかという問題は、基礎控除の三八万円が妥当かどうかとい 、つことから出発しなければならない。 配偶者控除論争 人的控除の中に配偶者控除がある。配偶者控除はその名前からして、日本の伝統的女性像 税である「内助の功」を税法上優遇したものであるかのような主張があるが、それは誤解であ 所 る。なぜなら、昔は配偶者も子どもと同様に扶養控除の対象とされ、一九六一年にようやく 章 配偶者控除が独立の控除項目になり、その際、配偶者控除の方を扶養控除額よりも少し高く 第 し、その差を説明するために「内助の功」が使われたからである。一九七四年以後は扶養控

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除と配偶者控除は同額となり、「内助の功」で説明できる部分はなくなっているのである。 また、ジェンダー研究者による配偶者控除の廃止論も根強く、その主張の多くは配偶者控 除を「働かないということを税制上優遇する制度」とか、専業主婦の夫を優遇するにすぎな い制度と理解して、その廃止を求めている。しかし、このような理解は配偶者控除の正しい 理解とはいえないのである。 憲法は二五条で「健康で文化的な最低限度の生活」を保障し、所得のない者には給付し、 所得のある者には最低生活費を控除することを命じている。これが前述の基礎控除である。 憲法は二五条によりすべての人間に基礎控除を保障しているといえる。ところで、家事労働 が所得を生み出さないということ自体が実は問題であるが、専業主婦には家事労働からの所 つまり 得はないとされ、そして現行の夫婦別産制により夫の給与等に対する持ち分もない。 専業主婦は無所得者であり、基礎控除という制度を利用できない。しかも、国家は専業主婦 に社会給付をするわけではない。そうすると、この人たちの最低生活費はどこか負担してい るのだろうか。いうまでもなく、夫のものとされている、夫名義の所得からである。そこで、 夫の所得から所得のない配偶者の最低生活費分を控除するのが配偶者控除なのである。つま 、勤務をしている女性が自分の最低生活費を基礎控除として引いているのと同様に、専業

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以下に収入を抑えるという現象が生じ、これが俗に「一〇三万円の壁」と呼ばれる弊害を生 み出し、女性の社会進出、女性労働の賃金向上に非常に悪い影響を与えてきた。これは、ま さに税法上の制度が生み出した弊害であり、しかも所得が増えるとかえって手取額が減って しまうという、所得税法上あってはならない現象を生み出してしまったのである。 このような弊害を避けるためには消失控除方式 ( 一定額を超えても控除額を一挙にゼロにする のではなく、増えた分だけ控除額を減らしていく方法。これだと手取額がかえって減少するという事 態はなくなる ) を導入すべきこと等が指摘されてきたが、ようやく一九八七年の配偶者特別控 除制度を通じてこれが実現したのである。 図 1 ー 4 のように、収入が一〇三万円を超えても配偶者特別控除が適用されるため、実質 的な控除額は変わらない。したがって、現行税法についていえば、もはやパートの収入を一 定額に抑える必要は税法上なくなっているのである。にもかかわらず、社会には相変わらす 「一〇三万円の壁」が存在している。その原因には税法に対する誤解、社会保険負担の問題 もあるが、最大の問題は企業の配偶者手当である。配偶者手当の支給条件に税法上の配偶者 控除の要件をそのまま使っているからである。組合関係者も手当の支給条件のあり方を考え るべきであろう。

8. 日本の税金

いずれにせよ、現行の配偶者控除には抜本的な改革が必要である。廃止ではなく、所得要 件を撤廃し、所得の有無にかかわらず、夫婦は自己の所得から基礎控除を控除するか、それ とも他方配偶者の所得から配偶者控除を控除するか、自由に選択できるようにすべきであろ 扶養控除も配偶者控除と同じ問題があるが、それ以上に子ども手当との関係を考えなけれ ばならないので、後ほど検討しよ、つ。 医療費控除等 所得控除には、今まで述べてきた人的控除以外にも、雑損控除、医療費控除などの担税カ を考慮するための控除や、社会保険料控除、生命保険料控除、寄附金控除などの政策的な控 除項目がある。 この、っち、サラリー マンにもっともよく知られているのが、医療費控除である。この控除 は年末調整の対象にはならないので、一定額以上の家族の医療費支出がある場合には自分で 確定申告をしなければならないからである。 医療費控除の対象となる「医療費」の範囲についても問題がある。医療費を伝統的な治療

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次 目 目次 序章私たちは誰のために税を負担するのだろう ? : 申告納税制度 ? / 政権交代・大地震 / 民主主義と税 / まず税制を知ろう 第一章所得税ーー給与所得が中心だが給与所得者は無関心・ 「所得」税と給与所得川 ーマンの必要経費 / サラリー 「収入」と「所得」 / 給与所得控除 / サラリ マンにも実額控除可能 ? / 家族労働の必要経費性 / 住居の維持費 2 誰の所得なのか 夫婦の所得 ? / 課税単位 / 夫婦財産契約 3 「所得」に課税するのか、「人」に課税するのか 総所得金額 / 人税としての所得税 / 基礎控除額で人間が生活できるだろう か / 課税最低限のまやかし / 配偶者控除論争 / パート労働の壁 / 医療費控

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いて算出される「給与所得」は、一体誰の所得なのだろう。独身なら問題はないが、結婚し ーマンであ て妻が子育てと家事労働に専念している場合を考えてみよう。この所得はサラリ る夫だけの所得なのか、それとも夫婦の共有なのだろうか。実際はすべて妻に握られている という事実上の問題ではなく、法律上の問題としてである。 民法では夫婦間で財産契約を締結していれば、その契約が優先するが、夫婦財産契約は婚 姻届出前に締結し、その旨を登記しておかねばならず、しかも婚姻届の後は変更することが できないので、利用している夫婦はきわめて少ない。二〇〇八年の登記件数はわずか六件で、 この一〇年間の平均では毎年四件程度である。 多くの夫婦は財産契約を締結しておらず、そのため、日本の民法が採用している法定財産 制度である別産制に従うことになる。これは、「夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚 姻中自己の名で得た財産は、その特有財産」 ( 七六二条 ) とするもので、婚姻中といえども自己 の名で得たものは自己のものとなり、片稼ぎ世帯の場合には外で労働する者の所得であり、 家事労働に専念する者には所得はない、 とい、つことになる。だから、婚姻中といえども夫婦 の財産は共有ではないのである。最高裁は次のように述べて、現行制度は合憲だとしている。 「夫婦は一心同体であり一の協力体であって、配偶者の一方の財産取得に対しては他方が