ビッチャー - みる会図書館


検索対象: 最強のプロ野球論
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1. 最強のプロ野球論

スピードやコントロールについて述べることはあっても「驚いた」とか「目を見張った」 とい一フコメントは一言も発しなかった。 ては、その自信の裏付けは何か。私見だが、天性とも言えるビッチャーとのタイミング の測り方にある。 より具体的に言えば、彼はどんなピッチャーに対しても、ドンピシャのタイミングて右 足を上げることがてきるのだ。 あたかもカマキリの触角のように、ビッチャーの投球の気配を探りながら右足を始動さ せ、左足、つまり軸足て十分なタメをつくってからスイングに移る。この一連の動作が「自 然体」て推移しているのてある。 ルーキーの頃の松井秀喜と比較してみたい。 高校出身と大学出身、四歳の年齢差 ( プロ入団時 ) はあるものの、それこそバッティングフ オームの完成度には大学院生と小学生くらいの違いがあった。 よそれるが、それについて張本勲はこ その象徴が松井の「定まらない右足」だった。話ー う語ったものだ。 「松井の悪いところは右足てす。彼は右足を上げる時と上げない時がある。まず、これを どっちかにしなければならない。 どっちつかずの状態じやタイミングがとれないんてす。 2 2 8

2. 最強のプロ野球論

ンドベースには足よりもポールの方が早く到着している。考えれば考えるほど盗塁という ものがわからなくなってしまった。 ある日、青木は意を決して阪急プレープス ( 現オリックス・プルーウェープ ) の盜塁王・福本 豊の許を訪ねた。福本は前人未到の九百盗塁に、あとわずかと迫っていた。〃、 代走屋〃の青 木からすれば、雲の上の人てある。 「福本さん、盜塁て一番大切なものは何てしよう ? 」 直立不動の姿勢のまま、単刀直入に青木は切り出した。 福本はきつばりと一一一口い切った。 「目やね。目が一番大切ゃ。ウソやと思うなら何分てもピッチャーをジィーツと見つめと ったらええ。必ず牽制する時とホームに投げる時のフォームが違っとるはずや。そのかわ り、きっちり見んとあかんぞ」 その日から青木のビッチャー観察が始まった。青木はべンチにいる時も塁上にいる時も、 穴の開くほど神経を集中させてピッチャーをにらみつけナ すると、どうだろう。今まて見逃していたビッチャーのフォーム上のクセや動作のクセ が、手に取るようにわかるてはないか。 たとえば、と前置きして、青木は述懐する。 もと 201 職人たちの世界

3. 最強のプロ野球論

キングをめぐって激しいデッドヒートを展開した松井は、この月、一本もフェンスの向こ うに打球を運ぶことがてきなかった。 十四打数四安打、三振一一、四球四 ーの打球を放っていれば、彼はホージーとならぶことが もし、一本てもフェンスオー てきたのてある。入団五年目て初タイトルを手に入れることがてきたのてある。 この頃、スワローズのビッチャーたちの松井への攻めは徹底していた。キャッチャーの 古田敦也は、インサイドにはポール球のストレートのみを投げさせ、腰を引かせておいて、 インローにポール気味の変化球を要求した。 勝負どころてはアウトロー この配球パターンに松井はまんまと引っかかった。バッターポックスて筋肉が硬直して いる様子が手にとるようにわかったものだ その事実を受けて松井は語った。 「正直言ってホームラン王はものすごく意識しました。ある程度、自信があったものてす から、最後の方は強引になり過ぎたのかもしれません。あの頃は技よりもカて解決してや ろうと田 5 っていましたね。もうバッターボックスに入る前から気持ちはライトスタンドに 飛んていました。余裕がなかったといえばなかったのかもしれませんね。まあ、今となっ ′し中い、 し経験てすけど :

4. 最強のプロ野球論

るか出ないかのピッチャーだったんてすから。それが社会人に進んてから百四十七キロも 出るようになったんてす。すべてウェイト・トレーニングのおかげてすよ」 上原浩治ーー川口和久が語る″野手的投手。論 素晴らしいビッチャーてあることは百も承知だが、ジャイアンツの上原浩治について、 私はどこか物足りなさを感じながら見てきた。 もちろん、一年目の一九九九年の、一一十勝四敗、防御率二・〇九という彼の成績に文句 、冫オナカなせか彼のピッチングにはロマンを 級の大舌躍ごっ ' 驀、 をつける気は毛頭ない。 感じなかった。川口和久は自著『投球論』の中て、ピッチャーが立っマウンドとは、誇り、 不安、歓喜、苦悩といった「投手てあること」すべての源泉だと語っている。上原のマウ ーロと語りあった。 ンドからは、なせそういうものが票ってこないのたろうか。ー 「非常に極端な言い方をすれば、上原はピッチャーてはないてすね。あえて言ってしまえ ば〃野手〃てす。〃野手みがマウンドて投げているような印象てす。 2 ろ 9 打者の思想、投手の論理

5. 最強のプロ野球論

山本日日ーー最多勝投手の知恵 「僕は五、六年くらい前からカウント別打率のことばかり考えながら投げているんてす」 中日ドラゴンズの山本昌はそう切り出した。これまてに最多勝のタイトルを三回。九七 年には十八勝七敗一セープ、防御率二・九二という素晴らしい成績て二度目のタイトルに 輝いた左腕てある。 とい - フスポーツは 「だって野球はカウントてすよ。一番重要なことてす。なぜなら、野球 しいくらいなんてすから。 2 ストライクとれればビッチャーの勝ちといって、 たとえば今日はシンカーの調子が悪い。カウントを稼ぐのに使ったら危ないな、という 日ても、追い込んてしまえば使えるんてす。ポールても、 しいから田 5 い切り投げることか、て ものすご きるんてす。逆にバッターはあらゆるポールを想定して待たなければならない。 くピッチャーに有利になるんてすよ。 その差は初球、タイの条件のときと比べて打率にして一割五分くらい違う。三割バッタ ーとひとくちに言いますが、追い込まれるまては四割近く打つものなんてす。 2 ろ 1 打者の思想、投手の論理

6. 最強のプロ野球論

なら左中間てはなく右中間に持っていかなければならないんてす。そのためにはポイント は、インコースもアウトコースもべースの前て平行な線にならなくてはいけない」 この指摘を広島東洋カープの前田智徳にぶつけてみた。前田といえば、天才的な打撃セ ンスて、ここ一番の場面て無類の勝負強さを発揮する、セ・リーグを代表する左バッター てある。 「確かにバッティングは下半身て行うものてす。中ても足の内側の筋肉、つまり内転筋や 足の親指の力が大切だと思います。ただ踏み込みは意識的にてはなく、無意識のうちに行 うもの。打席に立ち、ピッチャーに相対していると、自然と向かっていく気持ちがあふれ てくるものなんてす。そういうリズムの中て踏み込みという動作も行われる。無理して行 うものてはありません」 前田はそう語っ , 驀、 言オカこの際、意識して行うか、無意識て行うかは、おいておこう。ど ちらても いいから、とにかく踏み込みの形がバッターボックスの中てきっちりとてきてい ることが重要なのてある。 た清原のように、ビーンポールまがいのポールてしばしば胸元を襲われているバッタ ーには、ある程度の意識付けが必要だろう。無理してても、「踏み込んてやる」という意識 がなければ、ビッチャーにホームペースの幅四十三センチを自由自在に使われてしまう。 打撃する心

7. 最強のプロ野球論

と考えるのが当然だと思うんてす。 しかし、上原の場合、恐ろしいほど事務的にボールを投げる。テンボかいい 力投げるポールに執着がないというべきか・ 「『なぜビッチャーをやっているんだろう ? 』と質問するより『ピッチャーの楽しみって何 ? 』 って聞いた方かいいんじゃないてすかただ、。 ヒンチになるとしつかりインコースいつば いにストレートをきめられます。そういう技術とか度胸は本当に素晴らしいてすよ」 誤解を恐れずに言えば、上原のピッチングを見て喜んている人はアマチュア野球を支 持している人が多いんじゃないか : と言ってしまっては失礼なんだけど、なぜかとい すがすが うと高校野球のエースのような雰囲気があるからなんてす。あのピュアな燃焼感は、清々 しくはあっても潤いや企みに欠ける。かといって桑田のようなク屈折性みもないてしよう。 同じ一球入魂ても村山実くらいの自虐性があれば美しいけれど、良くも悪くも書生つばく 見、んてしま - フ。上あ、そこが好きだとい - フ人↓いるん′ししょ - フけい」 : 「先ほどおっしやったよ - フに 、ピッチャーというのは普通、エゴのかたまりなんてすよ。 僕が困ったらインコースにストレートを投げていたように、そのピッチャーなりのこだわ りというものが必ずある。かりにそのボールを打たれてしまったとしても、それはそれて 満足てきるんてす。〃オレはこれて生きているんだみという充実感があれば、結果なんて気 し J い - フべ、さ 242

8. 最強のプロ野球論

それにも似た拍手が送られる。昼ド 制だというのに無数のフラッシュが焚かれ、バッターボ ックスまての花道が白く濁る。 まず驚いたのは、松坂のテンポだ。通常、イチローはバッターボックスに入るや足場を 固め、軽くスイングを繰り返したあと、ヘッドの先をあたかも銃口を定めるようにピッチ ャーに向ける。イチローにその意識がないとはいえ、若いビッチャーを威圧するには充分 な仕草だ。これまてイチローと相対する若いピッチャーは、そのほとんどがこのイチロー のリズムに吸い込まれていた。イチローのヘッドのトップの位置が決まってから投球動作 を起こすのては遅すぎるがそう見えることもしばしばごった。ところが松坂は違った。 それまてのふたりのバッターと同じように、自分の間合いて、つまり自らの主導権の下に 投球動作を起こし、記念すべき第一球を投じたのてある。 インコース低めへのストレート。コースをわずかにはずれはしたが、スビードガンは一 四九キロを計測した。続く二球目は真ん中高めのストレート。 見逃せばポール球だが、お そらくイチローは低めのストレートに的をしばっていたのだろう。強振したが、ールは バットの上をかすめ、恐ろしいほどの勢いのファウルポールがバックネットの上てはねた。 三球目はアウトコースのスライター。キャッチャー中嶋聡のミットはインコースを指示し ていたが、ボールは逆方向へ行った。

9. 最強のプロ野球論

二球目。捕手・水沼のサインはカープ。振りかぶった瞬間、石渡のバットがスッと動い 江夏はカープの握りのまま、外角高目にウエスト、ポールを投げ、スクイズにきた石渡の バットに空を切らせた。サードランナー藤瀬は三本間てタッチアウト。局面は一転して二 死二、三塁とかわった。 一球ファウルて粘られた後、四球目をヒザ元に落とすと、石 石渡のカウントは 2 ー 0 。 渡のバットはクルリと弧を描いた。江夏は自らが招いたピンチを、自らのカて解決してみ せたのてある。 辻が説明する。 「あれ、真っすぐの握りやったら技術的にはずせんてすよ。カープの握りだったからこそ、 あんな芸当がてきた。ただし、普通のビッチャーやったら、たとえカープの握りてあって も、アッと田 5 った瞬間にポールを地面に叩きつけてしまってますよ。指先てビュンとスピ ンをかけようとするからね スクリューみオ こいにねじるんて ところが江夏の場合、カープを投げる際の握りが深く、 す。つまり指先てビュンと切らん分、ボールを持っておく時間が長い。ほんの零コンマ何 秒かの間やけど、リリースの瞬間にタメかてきる。これがスクイズはずしの真相やないん

10. 最強のプロ野球論

いてロッテオリオンズの村田兆冶。百五十キロ前後の剛速球と地面に突き刺さるよう なフォークポールを武器に、二十二年の実働生活て二百十五勝百七十七敗三十三セープを コ心録している。 〈セットボジションに構えた時、右手が背中越しにはっきりと見える。ポールを持つ手首 が半回転したらシュート系統。クソ擱みしとったらフォーク。 だがそれが分かってもコイツのボールはなかなか打てん〉 高井がピッチャーの投球フォームの研究に目覚めたきっかけは、、 タリル・スペンサーと の出会いてある。一九六六年、高井は初めて一軍のべンチに入った。そこて目のあたりに したのが、ピッチャーの投球全てに目を光らせるスペンサーの真摯な姿勢だった。 高井は語っご。 「これがホンマのプロというもんやと田 5 ったね。ピッチャーが投げるたびにメモを取るん やから。そこまてするか、とワシはカミナリに打たれたような気分やった。それからや、 ワシがビッチャーのクセを盗むようになったんは。 今日は新人が投げる、と聞くと、ネット裏まて行ってじっとそのピッチャーを凝視する 真正面から見た方が分かりやすいからね。そこて、最初に見るのが手のスジの動きや。ス ジを見れば、ほば球種を言い当てることがてきる。だから、若いピッチャーにはよう言わ 198