食欲 - みる会図書館


検索対象: オトナになるだろ ! 青桃院学園風紀録
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1. オトナになるだろ ! 青桃院学園風紀録

「実は僕もつ、『稚児村』ができるのは、嫌なんだ ! 」 〃『稚児村』建設には反対だ。 声を絞り出すようにして、竹千代がそう言った。 一同は目を瞠って驚嘆である。 「うひやっ ? 」 「えええつ」 「なんてコトだいっ ! 〃驚きの新事実 ! 湯煙に潜む美少年の裏切りのワナみ」 「・ : : ・そーかよ」 「ごめんね、ごめんね、みんなっ。でも、とてもしゃないけど、言えなかったんだ。パ。ハは傾 きかけの竹中家のために『稚児村』を造ろうとしてて : : : なのに、息子の僕が、それに反対だ なんて」 消え入りそうな声で告白する、竹千代。 ろ てつきり〃御面〃捕獲とともに事件解決だと信し込んでいた剣は、どうやら〃竹中のタイへ ンみにつづきがありそうだとわかってビックリである。戻りかけた食欲パワーもふたたび遠の トき、思わす朱雀を見上げ、それから元気半減の腹ペコ顔で鹿ヶ谷のはうへと向き直って、 オ 「なあなあ、すざ : : : しゃなくって、鹿ヶ谷い。今度は、どんなふーにタイへンなんだ ? 」 「説明してもらうよっ、竹中くん ! しゃないとお肌に悪いからっ」 みは

2. オトナになるだろ ! 青桃院学園風紀録

殿を出発だ。 「なんだかややこしーコトになってるみたいだぜ 「竹中の父ちゃん、怒ってたぞ。ォメンがヒーローって、スッポンとどーゅーカンケイ ? 」 「なってないねつ、如月 ! 正義のオメンが『稚児村』建設に反対してるっていうコトさつ」 「竹中くんのご実家って、大変そうだね。これしゃあ心ある先輩がたから敬遠されても仕方が ないよ」 「え ? え ? 竹中、タイへンなのか ? だったらどーにかしてやりたいぞ」 「如月・・ : : 」 まだサンドイッチの一つ目をくわえている剣がそう言うのを聞いて、竹千代は半ペソであ 「如月、キミはなんて友達思いなんだろう」 ちっそく ギュウギュウと竹千代に抱きっかれて、剣はサンドイッチで危うく窒息だ。 「うえ ? 苦しーぞ。なんだか腹がいつばいで、今朝はもーごちそーさま」 なか ちかく けつきよくお腹に入れたのは山菜サンド一切れのみ。今朝の剣は、昨晩にひきつづき、地殻 変動の前触れかと思いやられるほどの食欲不振ぶりである。 うち 「それにしても、『稚児村』計画がストップしたら、竹中くんのお家はますます危ないね」 る。

3. オトナになるだろ ! 青桃院学園風紀録

さまよ 「とにかく、篁たちのコトといい、夜の田んばを彷徨うナゾの霊といし のろ 呪われているつ」 御霊寺が竹林のなかで、ふたたびお祓い態勢に突入しているころ。 つるぎ 剣たちは五人そろって朝食の時間を迎えていた。 「ねえ、見てよ。竹中くんの肌のツャ。やつばり昨夜は、あの二人 : 「なってないね ! この時期に不純同級生三角交遊に手を染めるなんて。さすがは成績最低の 如月剣の親しい友達つ」 「うま : : : うんまいな・ : ・・」 朝ご飯メニューは山菜サンドイッチ。 ししがたに しもきたわ 鹿ヶ谷が三つ目、下北沢が二つ目を食べているというのに、剣はまだ一つ目のサンドイッチ をモグモグ噛んでいた。 たけちょ 心配顔の竹千代が遠慮がちに声をかける。 「あのう、如月。もしかして、山菜サンドがロに合わないかい ? 」 味がイマイチかい、 と訊かれて、剣は目を丸くする。 「え ? え ? そんなコトないぞ。すごくうまいぞ、このサンド」 「でも : : : さっきから、あんまり食が進んでないみたいだから。もしかして食欲ないのかな この村は間違いなく

4. オトナになるだろ ! 青桃院学園風紀録

177 オトナになるだろ ! がったとしたら、それは僕のおかげだよー 「どうしよう。ひと夏の経験を積んで、ますます魅力に磨きがかかっちゃった。学園に帰った ら、また上級生のかたがたからの申し込みが殺到しちゃう」 なべ 剣はといえは、今朝は梅之助みすからが握ってくれたおにぎりを三十八個と、イノシシ鍋を からあ たらふくと、山菜サラダと山菜卵焼きと野鳥の唐暢げを山ほど。すっかり回復した食欲にモノ つぶ を言わせて、このまま滞在をつづけては村ごと食い潰しかねない勢いだ。 ひこ みやげ いまは、月光村土産の缶入り山菜クッキー〃かぐや彦の思ひ出〃を開けて、しきりにモグモ グと口を動かしながら、 ・・、つまっ このクッキー : : : うんましな 〃イノシシ鍋味〃も試せば良かった 「、つまっ・ すざく かなー。なあなあ、朱雀う。竹中のガクヒがなくなったら、オレの部屋に二人で住んでもい ーよな 5 」 「 : : : 夜這い、かけにくいぜ」 そろそろバスに乗り込もうかと、一同が梅之助に手を振ろうとするところへ、 「チュチュー ! 」 耳に覚えのある鳴き声が聞こえてきた。 あぜみち 背中に何かを背負って、チョロチョロと畦道を走ってきたのは、一匹の灰色ネズミ。 「あっ、あっ、手紙だぞっ」

5. オトナになるだろ ! 青桃院学園風紀録

146 めのイケニエになる予定なのである。 「僕 : : : もう学園には戻れないのかな。美少年好きの議員のセンセイにカコワレて、一生その まま暮らすのかな。ああ、せめて議員のセンセイがテディベア好きでありますように ! 紅茶 よりも絶対日本茶、イングリッシュ・マフィンよりも断然おせんべい っていう人だったら、 ど、フしよ、つ : : : 」 腰ミノに肌を磨かれながら窓の外を見上げると、青い空が見える。 月は、まだ見えない。 「いっか、僕を迎えに来てくださるハズの、まだ見ぬ〃月のお兄さまみ そのころ、剣たちは月光村青年団会議所のまえ。 「なあなあ、竹中のタイへンなのって良くなったのか ? 」 うめのすけ 剣たちの見送りに、梅之助が出てきていた。 たけとりじんじゃ 昨夜、竹取神社を脱したあとは、この会議所に一泊。村にやってきたときと同じバスを用意 してもらって、これから学園に帰るところである。 きさらぎ にごん せいとういん 「なってないねつ、如月剣 ! 美少年に一一言はないっていうのにつ。竹中くんも青桃院生で、 いさぎよ 美少年の端くれだものつ。潔くタイへンを解決するに決まってるー 朝ご飯にと青年団員が持ってきてくれたおにぎりを、今朝の剣は三個。食欲の回復度として さようなら」

6. オトナになるだろ ! 青桃院学園風紀録

126 腰ミノ、ムームー、『好き好き〃御面み』が入り乱れて、ヒーローの登場をいまか いまかと待ち受ける態勢だ。 ひとけ 剣たちはといえば、その賑わいからははずれて、あまり人気のない村の南側の『美青年の 湯』予定地。 「えへへ、はんとに来るのかなー、オメンー きさら、 「心得が悪いよっ、如月剣 ! 〃信しる美少年は救われるみっていうのにつ」 五人して茂みに身を潜め、こちらはこちらで同しくジッと〃御面み登場を待ち構える。 はやばやと測量作業が始まっているらしいそこには、建設会社の建てたプレハプ小屋ができ ている。なかには泊まり込みの作業員の姿が何人かあるようだ。 周囲はロープが張られて、『関係者以外立ち入り禁止』の立て札。 剣たちは無断でそこを越えて、小屋を望む竹林のなかだ。 ほかく 持ってきた〃御面み捕獲用ロープを握って、剣はいまからウキウキである。食欲のほうは減 退気味だが、持ち前の好奇心のほうは健在とみえて、 「なあなあ、すざ : : : しゃなくって、鹿ヶ谷い。ォメン捕まえると、竹中のタイへンなのって 良くなる ? そしたら、またプロレスとかムエタイとかしはーだい ? そしたらうれしーな、と舌なめすりである。 となりでしょんばりとうつむいている竹千代を振り返り、

7. オトナになるだろ ! 青桃院学園風紀録

だいふんげき ごてん たけまろ しつぶやくは 御殿に帰った竹麻呂は、ムームーに湿布薬を貼らせながら大憤激。 たけなか 「こうなったら、なんとしてでも建設を急ぐぞっ。竹中家再興のためなら、ヒーローの一人や ためら やみほうむ 一一人、いや、五、六人でもつ、躊躇うことなく闇に葬ってやるつ。おいつ、予定していた県会 ちごむら 議員のセンセイとの食事はどうなった ? 『稚児村』建設を認めてもらうために、センセイを村 いいかっ」 にお呼びして、接待責めにするんだー たけちょ 手段は選ぶものかと怒りまくる竹麻呂の剣幕に、竹千代は肩をすくめて小さくなっている。 おめん ろ〃御面〃登場も、田んばに落ちたのも、まるで自分のせいだと言わんばかりの顔色で、 けんめい る 「ど、つしよ、つ : : ハハがまえにも増して『稚児村』開発に一生懸命になっちゃった」 〃御面〃騒動が落ち着かないうちにその夜は明けて、月光村滞在の四日目。 きさらぎつるぎ ナ つもの大食いはどうしたんだいっ ? そんなコトしゃあ、美 「なってないよ ! 如月剣つ。い たたか つつじ オ 青年への脱皮はとてもじゃないけど無理さ ! それどころか、躑躅先輩の愛をめぐって僕と闘 うライバルとしての地位さえ、危ういつ」

8. オトナになるだろ ! 青桃院学園風紀録

せいとういん せいとうかい 青桃院学園における生徒会である、青桃会。 ごりようじひそか みけん その現会長である御霊寺密が、今日も眉間に深い縦皺を刻んでいた。 「ううむむむ。やはりむ配なのだ。 , ( 彼ま、よりによって名誉ある風紀委員。そして、よりによ おうせい はなは ってアレのシモべ。食欲旺盛はまあいいとして、赤点の多さには甚だしく問題がある ! どう たかむら やら友人である篁とは、不純同級生交遊の気配もあり。このまま一一学期へと突入してもらって は、我が青桃院学園の輝ける歴史と秩序に、いっしか多大なる悪影響を与えかねないつ」 ひまご おんみようじ まっえい 学園理事長の曾孫にして、青桃会会長。陰陽師の家系の末裔にして、みずからも霊能力を有 ろ おもも だする彼が、腰まである長い黒髪をサワめかせて苦悩の面持ちだ。 しらかば ゅうがひるがえ そこへおりしも、白樺の緑美しい窓の外から、ヒラヒラと優雅に翻りつつナニかが入ってく 、ト 6 う・よう オ 「むつ ! 凶兆っ ! 」 すばやく胸のまえに印を結んだ御霊寺は、ナゾの物体に向かって厳しい気合いの声を発し 0 いん たてじわ

9. オトナになるだろ ! 青桃院学園風紀録

103 オトナ : なるだろ ! だんな 「あっ、日一那さまっ」 「忤麻呂さまっ、おやめください ! 」 「ええいつ、どけつ」 じゃま いっかっ 邪魔だとムームー秘書を一喝して、竹麻呂は畦道を走りだす。 「これでもむかしは、みすから田植えに精を出した時期もあるつ。目にモノ見せてくれるぞ 〃御面〃 ! 」 そこへ、騒ぎを聞きつけた剣たちも駆けてきた。 しもきわ たけちょ 今日は一日しゅう、美青年講座そっちのけで竹千代救済計画を練っていた剣たち。下北沢の ししがたに あげた上級生人脈はかるく百件を越え、鹿ヶ谷の学内新聞見出し案もまたたく間に一一百例に到 達した。 きざ そのあいだも剣の食欲不振は回復の兆しを見せすに、お昼の山菜ピザとオヤツの山菜ピスケ ットとタ食の山菜すきやきをほとんど。ハス。 きさ、り」 『あのね、如月。言っても信してもらえないかも知れないけどね。昨夜のお風呂でのコトは、 たかむら こホントになんでもないんだよ。僕と篁くんは露天風呂に一一人で入ってただけで。あのときは、 僕の苦手な蛾が飛んできて、それでつい篁くんに抱きついちゃって : : : 』 『なってないね、竹中くん ! みえみえの言い訳 ( ま美少年の恥なのにつ』 きりがみね きたおおじ 『そうだよ。霧ケ峰先輩とのク現場みに北大路先輩が踏み込んできたときでさえ、僕はそんな ふろ

10. オトナになるだろ ! 青桃院学園風紀録

と、思って」 昨夜のコトを気にしているかい ? とさらに訊かれて、剣はサンドイッチの端を噛みなが ら、 「うーんと、山菜のほかにイノシシが入ってると、もっとうれしーな。でもって、昨夜のコトっ たましい なべ てゆーのは、トカゲ先輩の魂が田んばを飛んでスッポン鍋がごちそーさま、ってゆーコトか ? 」 食欲だけでなく、なんとはなしに声にまでいまひとっ元気がないようだ。 すざく ぶあいそう そんな剣の心ばそい食べつぶりをチラと見やる朱雀は、今朝も変わらす無愛想。 竹千代は誤解を解かなければとハラハラ顔で、山菜サンドを一口も食べないままである。 と、そこに、ドスドスと騒々しい足音が聞こえてきた。 むこ 「婿どのおおおおおー どうやら竹麻呂の登場であるらしい ムームーたちを従えてあらわれた今朝の竹麻呂は、昨日までと比べて少しばかり軽装だ。金 ろ ぜいたくうらしまたろう 地竹林柄の着物に腰ミノで、ちょっと見は贅沢な浦島太郎のようである。 る か 6 「このあと急いで出かけなければならないもので、このような外出着姿で失礼します。いや、 けなに、身のほど知らすな村人どもが少々騒いでおりましてな。それはそうと、竹千代。昨晩の しゅび オ 首尾はどうだった ? なんのコトかは言わすと知れているだろう。〃お兄さま〃との肝心のア レコレだ」