神社 - みる会図書館


検索対象: オトナになるだろ ! 青桃院学園風紀録
35件見つかりました。

1. オトナになるだろ ! 青桃院学園風紀録

「食欲不振、治ったかよ」 「えへへ、イマヒトッ」 「原因、わかったかよ」 「えへへ、竹中のタイへン ? 」 「このままオレとプロレスできなくっても構わないかよ」 「えへへ、えへ ? 」 かし えへ ? と言ったきり首を傾げる剣に向かって、朱雀は夜の闇に乗してのアタックだ。「わ きさらぎしっと からないんなら、この際カラダに訊いてやるぜ」と〃如月を嫉妬させてやるぜ作戦〃をおもむ ろに中止して、 「ハダカのプロレス、するせ」 「うひや ? 」 すもう 「マワシ抜きの相撲でもいーぜ . ろ だ 「うひやひや ? 」 る 「帯だけの柔道でもかまわないぜ」 ナ 「ひやっ卩オピだけっ ? ソレってなんだかタイへン、しゃなくてヘンタイな感し ? 」 とつじよ たけとりじんじやけいだい オ 月夜の竹取神社境内で突如繰り広げられる、真夏の夜の格闘アバンチュール。周囲を囲む一 かた・の 同が、固唾を呑んでの観戦だ。

2. オトナになるだろ ! 青桃院学園風紀録

133 オトナになるだろ ! っ御面が剣の手のなかで、キラキラと輝いていた。 それはおそらく、竹取神社の宝物の。 「し、信しられない。梅之助ちゃんがヒーローだったなんてつ」 ちょぼう 「千代坊 : : : 」 正体を知られたからには逃げても仕方がないと、その場にあぐらをかいて座り込む梅之助で ある。 「見てのとおり、ク御面みはオレだ」 煮るなり焼くなり好きにしてくれと、覚悟を決めた顔で白状した。 ぼうぜん 竹千代は呆然と梅之助を見つめている。 なぐさ おさななじ 小さいころによく遊んだ、年上の幼馴染み。いしめられて泣いていた自分を何度も慰めてく れた。 『梅之助ちゃん。僕、またパパに叱られちゃった』 『千代坊、元気出せ』 『パパは、ほんとは僕のコトなんかいらないんだ。きっと、僕はパパの子しゃないんだよ。あ みくるま のね、いっか月からお迎えが来ると思うんだ。かわいいクマの引く御車が、星空を渡って僕の トコロへ来るの。それでね、月に住んでる素敵なお兄さまが〃待たせてすまなかったね、かぐ や彦みって : : : 』 ひこ しか

3. オトナになるだろ ! 青桃院学園風紀録

122 だんな 「それより、『稚児村』のこと。竹中の日一那さまは、建設中止にするつもりはないんだろ ? 千代坊はそれでかまわないのか ? 」 「ば、僕は」 「小さいころの千代坊は、月光村の田んばの緑や小川のキラキラが、テディベアと同しくらい 好きだ、って言ってた。あの気持ちは、金持ち学校で暮らすうちになくしちまったってことな のか ? 」 こた しょんばりとうなだれた竹千代は、考えたすえにこう応える。 あとっ 「僕、むかしからパ。ハを怒らせてばっかりだから。跡継ぎの僕が不甲斐ない非美少年でさえな あさって かったら、この『稚児村』計画だって : ・ ・ : 。。、パは明日か明後日には議員のセンセイを御殿に 呼んで、建設の後押しを頼むって : 。ごめんつ、梅之助ちゃん ! みんな僕が悪いんだ 飛び上がるようにして石段を立ち、そのまま駆けだしてしまう竹千代である。 「千代坊つ」 あうん 引き留める梅之助の声も聞かすに、阿吽のクマのあいだを抜けて神社の外へ。 その後ろ姿を見送った梅之助が、風呂敷包みを抱いてひとりごちる。 ひこ 「〃かぐや彦〃・ : ・ : か」 ふが

4. オトナになるだろ ! 青桃院学園風紀録

かれい 『モナムール、密へ : : : 華麗なる愛の書簡その二 パリは晴れているのさ、ポンジュール。 キミのむも央青かい ? みわく シャンゼリゼを魅惑のツーステップで歩いていたら、 リコレでふんどしモデル・デビュー みさお しないかいと誘われたのさ。煌めくステージが手招きしていたけれど、キミへの操を立てるた めに、迷わずノン。 うるわ ああ、密 ! 麗しいキミのふんどし姿を思えば、ムーランルージュも大騒ぎ , というコトで、このあと蚤の市へと出発。 だいそうぐう 掘り出し物との大遭遇を祈っていておくれ。 、リッ子もピックリのキミのプチより ついしん 追伸 : : : 愛の形見は着せ替え自由かっ、携帯に便利なポータブル・タイプなのさ』 月光村上空を行く百合柄ヘリコプターから降ってきた〃愛の落下物みの下で、勇気ある式神 ネズミがあえなく失神。スケスケ衣装を纏う巻き毛のワラ人形を、御霊寺は即刻、地中深くへ ほうむ と葬り去る。 と、そのあいだに神社の境内を、新たな参拝者が訪れたようだ。 のみいち きら

5. オトナになるだろ ! 青桃院学園風紀録

らないで、どうするんだいつ」 御殿を出てしばらく駆けたあとは、竹千代を先頭にゆっくりと月光村散策を楽しんだ。 ふだん暮らす青桃院学園も人里離れた山のなかだが、ここには、いつも目にしているのとは おもむき また違った自然の趣がある。 田んばのなかのところどころに、家が見えていた。 農作業の最中だろう。とちゅう、村人たちと何度かすれ違う。 竹千代が控え目な笑顔で頭をさげると、向こうは顔を見合わせ、なぜだか知らんぶり。 ささや あとからポソボソと囁き声で、 「竹中御殿の息子が帰ってきてるのか」 「なんでも金持ちばっかりの学校に通ってるそうだよ」 「ふん。土地持ちだと思って、いい気なもんだ」 「どうせ親子そろって、オレたちの言うことなんかには聞く耳持たないんだろうな」 ろ お世辞にも好意的とは言えない態度の彼らとそのまますれ違い、集落を遠目に見ながら、や る がて目的の場所へとたどり着く。 ちんじゅもり け古い鳥居のある鎮守の杜である。 たけとりじんじゃ オ 「ここは、竹取神社っていうんだよ」 懐かしそうに鳥居に触って、竹千代がそう教えてくれた。 レ」り・い

6. オトナになるだろ ! 青桃院学園風紀録

「つーか、ちょっとは一一人きりにしてやれよ」 梅之助と竹千代が、バスの外。 ししゅう 梅之助の肩には、竹千代が >äg-@と刺繍を入れた黄色いタオル。 おさななじ 夏の爽やかな風に吹かれて、幼馴染み同士が見つめ合う。 「千代坊」 「梅之助ちゃん」 どちらからともなく、手を取り合った。 「僕 、。、パにキッパリ言う勇気を、梅之助ちゃんからもらったんだ。ありがとね」 「オレこそ、竹取神社を守りたいっていう気持ちは、おまえからもらった気がするよ」 「梅之助ちゃんは小さいころからすっと、僕のコト見守っててくれたよね。僕にとって、梅之 助ちゃんは、まるでお月さまみたいな人なんだ」 「千代 : : : 」 ろ きさらぎ 「あのね、頑張るよ、僕。青桃院学園で、如月たちといっしょに、立派な良家の子弟としてた る ハハが自慢できるような美少年になるよっ。だから、いつまで にくさん学んでくる ! それで、 トも見ててね、梅之助ちゃんっ ! 」 オ いつでも、おまえの帰ってくるところは作って 「ああ、もちろん見てる。だけど、千代坊 : ・ いや、オレがおまえの」 おくからな。この村か : さわ

7. オトナになるだろ ! 青桃院学園風紀録

158 「なってないよ、如月っ ! 後ろを取られたら美少年はおしまいさつ」 たかむら 「おかしいな。僕としたことが、同級生だっていうのに、篁くんの荒々しい攻撃になんだかト キメキを感しちゃう : : : 」 ちょぼう せいとういん いったいどういう学校なんだ。千代坊の通う、青桃院学園」 けれども、格闘アバンチュールの勝敗がつくまえに、惜しくもエレクトリカル大名行列が竹 中御殿へと到着。 「あっ、あっ、なあなあ、朱雀。入っちゃう ! 」 竹麻呂と、お客とが御殿の入り口。 美少年風腰ミノたちに迎えられて、いままさに華々しく入城だ。 「 : : : 時間切れかよ」 舌打ちして朱雀はハダカ・プロレスをあきらめる。 ク行くぞみと顔を見合わせて、神社の境内からすばやく駆けだす、剣たち五人。 きんらん 御殿では金襴竹麻呂が接待に心を砕いていた。 「こちらが我が家でございます、センセイさま」 あら 派手に迎えた県会議員は、たつぶりと脂ののった太っ腹の中年。七色ライトアップをッャッ ヤと弾く見事なハゲ頭で、〃お兄さまみからはかけ離れた容姿だった。 はじ はなばな

8. オトナになるだろ ! 青桃院学園風紀録

Ⅷも「やめて」とは言い出せなかった。 「でもつ、いま梅之助ちゃんに言われて、思い直したよ。やつばりこの場所がなくなるのは嫌 だって 、。、パに言わなくちゃ ! ごめんね、如月に、みんな。せつかく僕のために、ク御面 捕獲作戦まで決行してくれたのにつ」 ふだんは気弱な竹千代が、顔を上げてキッパリ とそう一一一口った。 剣たちに向かって「ヒーローを放してあげて」と頼んだあとに、 「梅之助ちゃん、ありがとう。僕、頑張ってみる」 「千代坊」 「御殿に戻って 、パパにかけ合ってみる。〃思い切って三年くらいべア断ちするから、『稚児 村』建設はあきらめてみって。はら、テディベア収集って、けっこうお金がかかるから。それ で、その三年のあいだに美少年修行をしたら、こんな僕でもけっこうイイ線までいくかもしれ ないし : : : 」 とにかく御殿へ、と竹千代が震える足で神社から歩きだそうとしたときだ。 「なあなあ、あっちから腰ミノがたくさん来るぞ」 剣が田んばの向こうを指さす。 あぜみちどとう 竹麻呂配下の腰ミノ隊が、畦道を怒濤のようにこちらに向かって寄せてくるようだ。 「急げつー こっちへ走ってきたという情報があるぞっ ! 」

9. オトナになるだろ ! 青桃院学園風紀録

146 めのイケニエになる予定なのである。 「僕 : : : もう学園には戻れないのかな。美少年好きの議員のセンセイにカコワレて、一生その まま暮らすのかな。ああ、せめて議員のセンセイがテディベア好きでありますように ! 紅茶 よりも絶対日本茶、イングリッシュ・マフィンよりも断然おせんべい っていう人だったら、 ど、フしよ、つ : : : 」 腰ミノに肌を磨かれながら窓の外を見上げると、青い空が見える。 月は、まだ見えない。 「いっか、僕を迎えに来てくださるハズの、まだ見ぬ〃月のお兄さまみ そのころ、剣たちは月光村青年団会議所のまえ。 「なあなあ、竹中のタイへンなのって良くなったのか ? 」 うめのすけ 剣たちの見送りに、梅之助が出てきていた。 たけとりじんじゃ 昨夜、竹取神社を脱したあとは、この会議所に一泊。村にやってきたときと同じバスを用意 してもらって、これから学園に帰るところである。 きさらぎ にごん せいとういん 「なってないねつ、如月剣 ! 美少年に一一言はないっていうのにつ。竹中くんも青桃院生で、 いさぎよ 美少年の端くれだものつ。潔くタイへンを解決するに決まってるー 朝ご飯にと青年団員が持ってきてくれたおにぎりを、今朝の剣は三個。食欲の回復度として さようなら」

10. オトナになるだろ ! 青桃院学園風紀録

171 オトナになるだろ ! 「どうせ村の青年団の連中かなにかだろう。わしを田んばに蹴り落としたあげく、議員センセ よ、フしゃ めいよ ィさまにご無礼をはたらくとは、なんたるコトだっ。もう容赦するものか ! 器物破損と名誉 きそん 毀損と不法侵入とその他モロモロで、五人まとめてぶち込んでやるぞ ! 」 「や : : : やめて : ・ 「なにをグズグズしているつ、竹千代 ! あらためて別の部屋で議員センセイの接待をするの だっ。『稚児村』建設と竹中家の未来は、おまえにかかって : : : 」 「やめて 〃御面み五人をあらためて取り囲んだ腰ミノ・ムームー隊。 もうぜん その彼らのまえに、いままでにない大声を上げた竹千代が、猛然と飛び出した。 「千代坊っー のどっぱ キッと竹麻呂を見据えて、竹千代はゴクンと喉に唾を飲み込む。 ギュッと拳を握って腰に当て、鹿ヶ谷ばりにググッと胸を張り、 「。、パに言いますっ ! 僕つ、『稚児村』建設には反対ですっ」 建設反対、とキッパ ) ー言い切った。 「僕つ、この村のコトが好きなんです。特に竹取神社が大好きなんです。田んほがあって、 しいところがたくさんあるつ。『稚児村』はそ 川があって、野生のテディベアはいないけど、