サイボーグ - みる会図書館


検索対象: イズミ幻戦記 3
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1. イズミ幻戦記 3

「じゃあ詳しくない説明ならできるんだな ? 」 すかさずイズミが尋ねる。 「しかし僕はあまり気が長くないんで、結論を代わりに言ってやる。織田美潮って、あいっこ からだ サイボーグ そ身体の半分以上は機械の改造人間だろう。違わないな ? 」 利光はきゅっと唇をひき結んだ。かろうじて頷いた。別にーーー彼女がサイボーグであること あせ は周知の事実なのだから、焦る必要はないのだが・ : 「つてことは、『以前からの知り合い』どころか『御友人』でもなくて『お仲間』じゃないか、 あの馬鹿者」 あまいろ ・ほそぼそとひとりごちて、イズミはくるりと背中を向けた。やわらかい亜麻色の髪をかすか 編に揺らし、足元を見る。 淵「だけど美潮の目は別に緑色でも赤でもない・ : : ・何かが違うんだな、つまり。そういうことだ サイボーグ くな ? 多分、性能とか目的の違いが : : : 改造人間といってもタイプは別にある可能性 : : : 結局 記なにも説明してないんじゃないか、あの馬鹿者は ! 」 ひとしきり自問自答していたと思ったら、いきなりイズミはどこへともなく声をはりあげ ズた。もしかしてこちらの存在は忘れ去られていたりしないか、と利光はなにやら不安になっ それに・ーーイズミが誰を非難しているのかはなんとなく想像できるがーー自分自身について

2. イズミ幻戦記 3

193 共有するが、イズミと省吾は決して同一人物ではない。 そもそも、サイボーグとは何のために存在するのか・ : 罪人なのだ、と静は言った。 さば 「刑罰なの。裁かれて、終身刑を受けたものが、サイボーグと呼ばれることになるの」 それも些細な罪で。 メガロポリス アンドロイド 美しい高度機械化都市を支える労働力として、人工人間たちと同じ扱いを。 死ぬまでの懲役。だが全身サイボーグの彼らは老いることがない。半永久的に、止められた 時を生ぎつづける。いつまでも。いつまでも、狂うことすら許されず 彼らが裁かれた理由は、ただひとつだ。 / 彼らの遺伝子が、〈ジュリア〉の定めた階級基準を 大幅に下まわ 0 ていたという、ただそれだけだ。 淵そして「システム』に言葉と感情を奪われ、生身の肉体を奪われ、時を奪われ、何の希望 どれい もないまま奴隷として彼らは生きる。 「世のため人のために、改造人間はひたすら奉仕するのみか」 幻 イズミはかって如月自身がロにした言葉を、もう一度くりかえす。 イ「ふん、だからって省吾なんかいじめてるあたり、あいつも大人げない」 織田美潮の憎しみは明確に表へ出されているぶん、まだ健康的だ。如月の態度のほうがたち カ悪し けいばっ ちょうえき

3. イズミ幻戦記 3

翠は強引にそう結論づけた。風間は否定も肯定もしなかった。 ひとみ 彼の瞳に残るダークグリーンの影に、翠はその時になって気づく。 ( ふうん : ・・ : そういうお友達 ? •) なにせ予備知識といえば、如月の友人にあたる『風間』がイズミの敵万にまわっている、と いう、その程度の情報でしかない。 如月がもっと自分自身についてお喋りな人物だったら、こんな面倒もなかったのだが。 「ひとっ訊いていいかしら ? あなたたちって三人とも 「あたしをサイボーグなんかと一緒にしないで」 さ、ズ一 せりふ 言いかけた翠の台詞を、サクラが鋭く遮った。ずいぶん勘がいい 「全然違うんだからさ ! 」 淵「どういう違いなのかしらね、それって」 「あなたには関係のないことです」 今度は、冷ややかにアオイが言え 「 : : : なんというか、徹底した女の子たちだこと。実は子守がお役目だったりするの ? そち イらのサイボーグは」 「思いきりの良い方だ」 言葉を選ほうとしない翠を、風間は無表情にそう評した。挑発はきかないらしい しゃべ にもり かん

4. イズミ幻戦記 3

「ハズーカなんかで、あたしをやれつこないんだよっリ」 ざわ 愚かな邪魔者は、さっさと排除してしまいたい。目障りだだがサクラは、その相手が例の サイボーグであることに気づいた。 やっかい マイクロウ = ープが効かない。脅ではないが、倒すこともできない。厄介な奴だ。 イズミは動かない。彼もカ場によって背後からの砲撃を防いでいる。同時に、サクラからの 「殺人波』も。 じっと彼は待っている。無言のまま、読んでいる。襲いかかる激痛に耐え、たたきつける爆 風と衝撃に耐え、華奢な身体をぎりぎりで支えている。 いらだ 標的をひとつに定めず、弾幕を張る要領で、如月は砲撃の手をゆるめない。サクラには苛立 獄ちが生じた。 淵どちらを先に倒してやろうか。どうせイズミには何もできない。イズミを殺してから、あの サイボーグを腕ずくで壊してもいい。 轣「それにしても、邪魔なんだ : : : 」 つぶや いまいましくサクラは呟く。新たな砲弾が目の前で炸裂し、爆風に顔をあおられて、サクラ イはさらに不快感を深めた。 ちくしよ、つ 「畜生、殺してやるつ : サクラの怒りは、如月のほうへと傾きかけた。あいつ、壊してやる。あいつを壊してやる。 231 おろ きやしゃ だんまく さくれつ

5. イズミ幻戦記 3

192 息をつめ、イズミは再び頭を持ちあげた。 ちゅうすう その姿勢を保つだけでも、体重をかけた握り拳が震える。まだ身体の根幹が、神経の中枢が 回復していない。 「説明しろ」 イスミが言った。 「説明してくれ : : : どういうことなのか」 「・ : ・ : わかったわ」 「おい、おまえ」 静を見据える目を細め、イズミは確認する。 「サイボーグなんだな : : : おまえも」 : ええ」 香ケ沢静は、こっくりと頷いた。ゴーグルの内側にダークグリーンの光を宿らせて。 せいぎよ ジュリアの犯したたったひとつの失敗は、おまえたちの精神制御を解いてしまったことだ カ / ウショウゴ 叶省吾はそう言っていた。その真相は、省吾にしかわからない。確かに表層部分の意識なら

6. イズミ幻戦記 3

115 「・ : : ・わたしは腑甲斐ないリ ーダーだな」 ぼつんと美潮が言った。 かわい 「可哀そうだ。この子も。おまえたちも」 「俺は 利光が息を和むようにして、顔を上げた。 あねご 「だ、だけど俺はーー姉御じゃなかったら、嫌です。 : : : 姉御の気持ちわかるなんて言ったら うそ 俺、大嘘つきになるんだろうけど、でも」 でも、その悲しみはわかりたい そう一言葉にできないうちに、美潮が微笑するのを利光は見た。 獄「ありがとうね、利光」 淵ああ、俺はやつばりこの人が本当に好きなんだ。 利光は泣きたくなるほど強い思いを抱きしめた。誰よりも痛ましいのは、年をとることのな い、老いることのないサイボーグの彼女だ。 立派なことを言えるような大人の男ではないけれど、自分は。 イ「あの、俺・ : : ・」 「姉さん、逃げられました ! 誰か手引きした気配で」 せりふ 言いかけた台詞は、とびこんできた松本によって遮られた。美潮の表境か変わった。 ふが さ、ズ、

7. イズミ幻戦記 3

七年前の〈崩壊〉から二か月後に、奇跡的にめぐり会えた、たったひとりの肉親なのだと けれど、と利光は言った。 「けど、お嬢さん、本当は姉御の妹じゃないんです。姉御の『娘』なんです」 キャラスンの人間でなければ知らないことだ。 サイボーグである彼女は年を取らない。いずれ娘は母親を追い越して老いてゆくだろう 美潮は自身を『姉』とり、母親であるという事実を捨てなければならなかった。いっか二 人の間に訪れる悲劇を、少しでも軽いものにするために。 獄「 : : : それも秘密なんですね ? 」 淵省吾が、静かに確認した。 うなす 利光が目を伏せて頷く。拓己は何を言ったらいいのかわからない様子で立っていた。 「わかりました。これで条件は五分五分だ」 あくまで事務的にそう告げてから、省吾はふと思いついて尋ねた。 イ「なんていうんです ? お嬢さんのお名前は」 キョウコ 「はい、あの : : : 京子さんって」 「があーんつ」 245 クライシス

8. イズミ幻戦記 3

106 荷物からは小銃もライフルもエネルギーパックも何もかも、武器になる物は抜きとられてい たた 窓は強化。フラスチックが壁にそのまま溶接された造りて 。、卩、こくらいではとても割れてく れない。拓己はガタガタと机ゃべッドを動かし、脱出できそうな箇所を探しまわった。 ( 普通の育ちじゃない ) 人を見下すことに慣れて。 吐き気のしそうな抵抗感を、省吾は無理やりねじ伏せた。 おば 思い出せ。まだ憶えている。一生残る。灼きついた優越の意識。権利ではない。義務でもな 。事実だ。 哀れな大衆を導く者はーーー支配すべき・ : : ・はれた、優、秀、な、 ( 特別な、人間なのだから ) ゅうが 優雅な動きで、彼は面を上げた。美潮を見つめゑよく響く声が告げた ふぜい 「サイボーグ風情か」 「貴様っ " 反射的に美潮は相手の頬を殴りつけていた。改造を受けて強化された、その腕で。 なぐ

9. イズミ幻戦記 3

178 「如月も保父さんと化してるし。適職なのかしらと思ったのよ。それだけー じようず せつかい 「お節介なうえに子供のあしらいが上手でしよ。特に最近はすっかり身も心も捧げつくしちゃ って手に負えないわね。あらやだ、思い出したら腹が立ってきちゃった。この話題なしにして いただける ? 「変わったな : : : 」 風間が独白した。 意外なところで、意外と重要な反応が引き出せた。翠は彼の本意をつかみかねた。 「ねえ、教えていただけないの ? サイボーグじゃなかったら何なのよ、この子たち ? 駄目で元々だ。しつこく食いさがると、風間祥はどうでもいいことのように口をひらいた。 「人間以上のアンドロイドだ。アーマノイドと呼ばれる」 「アーマノイド : ・・・・何それ ? 「風間 ? 」 つぶや アオイが気遣わしげに呟いた。風間はかえりみもしない。 「人間の遺伝子をモデルに、まったく新しい方法論で〈ジュリア〉が生み出した。改造体とは 根本的に異なる新生命体だ」 「 : : : とんでもない世界だわねー ささ

10. イズミ幻戦記 3

168 「今になって、風間の名前を聞くなんて : : : 」 静は控えめに呟き、話の先を促す。 「じゃあ風間は本当に向こうがわにいるのかしら。本気だったのかしら」 「ジュリアが未だに方針を変えていないとすれば、人間を大幅に逸脱したタイプには、レッテ ルを使う。問題の超能力者たちの瞳は赤色とビンクだ。ジュリアがからんでいると考えたほう が、俺には自然だった」 如月が答える。 瞳の色は、烙印と同じだ。 それまでの模範的なサイボーグーーーナイハーと呼ばれるーーーを超え、強化改造体すなわち ナイハーを生み出した、その時から、〈ジュリア〉は決して消えない烙印を「異質』な瞳の 色によって表すことにしたのである。 生身の人間たちとの、境界線として。 ・ : だが俺は断った」 「風間は俺の助力を必要としていると言ってきた : ・ 如月は言葉を続けた。 風間の申し出を断った理由は、説明する気にならない。かって言ったことのくりかえしにな るだけだ。 「状況が面倒になってきたのは、その後からだな」 らくいん つぶや