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検索対象: イズミ幻戦記 3
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1. イズミ幻戦記 3

イズミはこれを聞いたら何と答えるのだろうか。その通り、自分には何も怖いものはない、 羨むだけ羨め、とでもうそぶいて笑うのだろうか。 「 : : : 僕には、少なくとも僕には、両目がちゃんと見えるあなたのほうが羨ましい」 ぼつりと省吾が言った。 「そのせいで大切なものを失くしたーーーそんな気持ちなんて、あなたにはわからないに違いな うかが 拓己が、省吾の矗をじっと窺う。利光は返す言葉を持たずにいる。 たんたん 遠くの闇に視線を向け、淡々と省吾が続けた。 「こんな自分たちを羨ましいと言うあなたが何を大切に思っているのか僕にはわからないし、 獄サイボーグになった彼女の気持ちも僕にはわからない。わかるはずがないんです、そんなこと 淵は。永遠にわかるはずがない。それは仕方のないことなんだ」 「そのことであなたを責めようとは、僕は思わない。僕も責められたくないので。ーーー狡いと 言われても主義を変えるつもりはないです」 イ「大人、なんですね : : : 」 つぶや 利光が呟く。大人だったらわざわざこんな言い訳はしていない、と省吾は思う。 「わかんないからって黙ってたらますますわかんないじゃん」 243 ずる

2. イズミ幻戦記 3

しかしそれは風間に対する哀れみだったのかーーーどこへ向けられる痛みだったのかーーー何を 意味するものだったのか。 「それが本当なんだ。そういうわかりあい方しかできないんだ、人間には」 「説教はいし 風間は首を横に振った。そして、顔を上げた。 「俺も七年間、おまえのことだけを考えて生きてきたわけではない。ただ、因果が俺たちを導 いて引きあわせた。俺には俺の、おまえにはおまえの立場がある : : : 〈イズミ〉がジュリアの 『敵』である以上、俺にとってもおまえは敵となるだろう。 これは最後の機会だった。だから利用させてもらった。どうすればおまえが自分から乗り出 獄してくるか : : : それを考えると、まわりくどい手段も使わざるを得なかったが、もしも気に障 淵ったなら謝ろうー 「 : : : 仕方ないな。なにせ脅してもすかしても動きそうにない男が相手だ」 如月は肩をすくめる。 幻 「俺にとっても、これが最後のチャンスだ。おまえに言わなければならないことが、まだ残っ イていたらしい : : : 俺自身、あまりそのことを認めようとしていなかったんだが」 「互いの目的が一致して、この会見が成功したということだな」 風間はアオイをふりかえり、この場を離れるようにと合図した。瞬間、彼女はためらったよ 205 あやま おど さわ

3. イズミ幻戦記 3

あき 呆れた様子で省吾が言う。グラススコープが壊れてしまったので、現在は素顔だ。 「えっ何 ? つまり省吾って如月といつの間にか仲良し ? 」 「ーーーあのなあ拓己 : : : 実力を認めるのと人格を認めるのとは話が別だろ卩」 「なにもムキになって否定しなくたって : : : 」 「拓己と話してるとあまりのバカバカしさに倒れ伏したくなるのを自制心によって抑えようと するために肩に力を入れざるをえない結果として自然にこんな話し方しかできなくなるんだ。 立派な理由だろ」 「よくわからないっ なぐさ 、ことである。拓己はそう納得することによって自分を慰めた。 まあ、省吾が元気なのはいし 獄が、如月たちのいるテントへ向かう途中、焚き火の反対側にある人物を見廿して拓己は立ち 淵止まった。 「省吾」 轆左側ーーー省吾の死角になることに気づぎ、肩に触れて歩みを止めさせる。 にら あんじよう 案の定というか拓己を睨みつけてその手を振り払ってから、省吾も身体の向きを変えて彼女 イを見た。 織田美潮が、そこに立っていた。 少し、疲れているようだ。だがやはり責任を負う者としての張りつめた空気は、失われては 239

4. イズミ幻戦記 3

237 イズミ幻戦記 3 く竜淵煉獄編〉 「よくやった」 イズミが少しだけ驚いたように、ロをつぐんだ。 「よく頑張ったな」 無言のまま、彼は如月を見上げた。 そしてーーーふわりと笑ったようだった。曇りのない笑みを。 だが如月の目に映ったとき、それはすでに残像でしかなかった。イズミの姿はそこから消え 失せていた。

5. イズミ幻戦記 3

188 イズミ。おまえとの約束を守れるかどうか 0 今はわからない。すまない。 すぐ近くで、言い聞かせるように、静かに語りかける声が・ : : ・ある。 そこにいるのか ? ・どこへ行く ? ・ ーーー俺もまだ逃げていたらしい。おまえを勝たせてやるには : : : まず俺自身がその資格を持 へた たなければならなかったんだ。下手に似合わない説教をするものじゃないな。 おまえの言いたいことは、よくわからない。何をしたいのかわからない。どこへ行くつもり なのか説明しろ。行くな、説明しろ ! 待て ( 僕を置いて行くつもりか卩 ) せめてこの眠りが醒めるまで。 無事に帰れたら、その時は祝ってくれ。 如月は笑ったようだった。 無事に帰れなかったらどうなるんだ、この愚か者 : : : 無責任だ、おまえは : こんな、のは、夢、だ : ・ ・ : 認めない。 はっと彼は両眼を見開いた。 おろ : = 乱めないそ

6. イズミ幻戦記 3

「忙しい奴だな」 「・ : : ・あなたにひとつ、言っておきたいことがある」 拓己が去るのを見届けてから、省吾はそう切り出した。 じようちょ 「イズミの情緒不安定は、あなたのせいです」 予想外の一言に、如月は目を瞠った。 冷ややかなほどきつばりと、省五暴続ける。 「ストレスが何で起きるか知っていますか ? 環境に適応しようとする働きが、精神的肉体的 かじようてきおう に負担となるんです。イズミの場合は過剰適応です。つまり、あなたに適応しすぎて、本人が その事実に抵抗を感じている」 「どういうことなんだ ? 」 自然、如月の声はやや厳しくなる。と、省吾はわずかに表情をやわらげた。 「別に、難しい言葉を使って言うほどのことじゃないんですが。ーーー単なるやつあたりです。 あなたのべースにはまりすぎた反動というか・ : : ・どうすれば素直な対応ができるのかわからな くなってやつあたりしているだけなんです。本心の裏返しで : : : 」 「他人のことなら、よくわかるものですね」 みは

7. イズミ幻戦記 3

したわけではなさそうだ。 「美潮に訊きたかったのは、例の : 「響子だ」 きつばりとイズミが訂正した。 「 : : : わかった。その響子様の情報を、どうやって美潮から手に入れるつもりだ ? まさか無 料では美潮も動かないだろう」 「美潮美潮って気安いな」 「以前からの知り合いだ。悪いか ? 」 「誰もそれが悪いなんて言っちゃいないだろうが ! 根性が卑屈だそ、如月 ! 」 編「そうだな、その通りだ」 「 . : : ・僕をからか 0 ているんじゃないだろうな」 から それは逆だ。如月の言葉にいちいち絡んでくるのはイズミのほうなのである。 かんじん 記 だが如月はあえて沈黙を保った。肝心な質問に、イズミはまだ答えていない。 戦 だいしよう 代償だ。 せきばら ズ イズミは小さく咳払いをした。 「もちろん僕は、公正に、紳士的に取引を成立した。文句をつけられる筋合いはない」 「するとつまり、美潮に提供するのはーーー」 ・「キョコ様』の居所か ? こ ひくっ ーー美潮への

8. イズミ幻戦記 3

106 荷物からは小銃もライフルもエネルギーパックも何もかも、武器になる物は抜きとられてい たた 窓は強化。フラスチックが壁にそのまま溶接された造りて 。、卩、こくらいではとても割れてく れない。拓己はガタガタと机ゃべッドを動かし、脱出できそうな箇所を探しまわった。 ( 普通の育ちじゃない ) 人を見下すことに慣れて。 吐き気のしそうな抵抗感を、省吾は無理やりねじ伏せた。 おば 思い出せ。まだ憶えている。一生残る。灼きついた優越の意識。権利ではない。義務でもな 。事実だ。 哀れな大衆を導く者はーーー支配すべき・ : : ・はれた、優、秀、な、 ( 特別な、人間なのだから ) ゅうが 優雅な動きで、彼は面を上げた。美潮を見つめゑよく響く声が告げた ふぜい 「サイボーグ風情か」 「貴様っ " 反射的に美潮は相手の頬を殴りつけていた。改造を受けて強化された、その腕で。 なぐ

9. イズミ幻戦記 3

262 る卩あのね、マジでやばいんですけど " 】省吾っリ省吾さーんリ」 そこまでは単なるじゃれあいに過きなかったのだが。 「げつ」 拓己がひきつる頃になってようやく、省吾も事態を客観的に把握した。 「なっ : 「うわあああ、やばーいっリ」 ・ : この馬鹿っリドサクサで触るなっリ今すぐ離れろつ 「たっ、拓己卩なんなんだっ : 少しは学習しろっリ」 「先に手え出したの省吾のほうじゃんつ 「そういう時は逃げるんだろ、おまえがリ」 「省五旦 = ロってること無茶苦茶じゃないの卩ー 「原因をつきつめていけば拓己だリだから言ったじゃないか、一メーター以上近づくなっ もはやこの状況に対して言及する必要性すらない。 いつ、どこで、どんなタイミングで始まるかは神のみぞ知るーーー案外、ただのはずみかも知 れない のが、これなのだ。 「やつばり俺のせい卩」 さわ はあく

10. イズミ幻戦記 3

じゅんすいりよくど わけはなく、純粋緑土の理想がどうのこうのと続いた説教は銃声のなかに呑みこまれた。 あとはひたすら乱戦である。あまりにもお定まりのパターンに、如月は深い溜め息をつい こ 0 「なななな何何何が一体」 床にへばりついて店主はパ = ックにづている。 「なに、ちょっとした環境保護の宗教団体さ」 カウンターの内側で片膝立ちになり、如月はそう答えてやった。 いつもならこれもっきあいと割りきって応戦しているところだが、ここで余計な手間と時間 を消費させられるのは非常に嬉しくない。天誅どころではないのだ、今は。 編ガシャリ、と如月はライフルの出力源を切り換えた。 淵「まったく、仕方のない連中だ」 その言葉に、慨嘆以上の響きをーーー殺気めいた何かをーー聞きとって、おそるおそる店主が 記顔を上げた時には、すでに彼の姿はそこから消えていた。 ズ イ がいたん