地面 - みる会図書館


検索対象: イズミ幻戦記 3
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1. イズミ幻戦記 3

224 0 、 0 けた。 妙、である。 張り出した岩を傘がわりに、上空からはわからぬよう岸壁を掘りひろげた空間ーー 谷底というよりは、地中と呼んだほうがいい場所だ。 ていさっ 夕刻に偵察をしたときは、確かに人間どもの気配がここに満ちていた。それも子供の気配 子供、というのが気に入った。まだ子供を「ぶつ壊し』てみたことはない。「人間』たちと サイズ はどう見ても規格が違うのに、中身に詰まっているのが同じ物体だなんて不思議ではないか ? あれをぶちまけたら気持ちがいいかも知れないのに。 サクラは集落の内部をぐるりと見まわした。 どこへ消えてしまった ? 粗末な小屋や破れたテントなら、そのまま残されている。衣類ら しいぼろ布も、地面に置キ美られ、風で静かに揺れている。 たちだけが、きれいに・ : サクラは通信をオープンにしてみた。今度の演習は「第二段階』だからと、風間祥はあのう ざったい「体と一緒に基地で待機だ。 別にそれはいい。風間が見ていなくても。 カ ショウ

2. イズミ幻戦記 3

編地べたに頬をこすりつけるのは、あまり楽しくも面白くもないものだ。藤井利光はそんな事 淵を考えていた。 彼を地面にたたきのめしたのは、三人組の巨大な男たちだった。巨大、というのは誇張では 記ない。故意に四肢を改造して常人以上の腕力と体格をつくりだした、本職のヤクザたちなの ズ ( 雇われ極道か : : : ) イ 利光は唇を噛みしめようとして、前歯が折れていることに気づいた。みつともない姿だと思 舌打ちして美潮は出口へ向かったが、ふと足を止めた。 「待ちな、一也。何がボコボコなんだって ? こ トシミッ 「は、はいっリ利光さんですリ」 どな 再び一也が声をかぎりに怒鳴る。 美潮はもう一度舌打ちをした。 「それを言わなきや話にならんだろう ! 」 「すんませんリ」 ′」くどう ほお フジイ

3. イズミ幻戦記 3

人間の気配がまわりになくなった。サクラは殺戮の楽しみから意識を少しだけ引き離した。 四方でくすぶる炎。 彼女は視線を広範囲に動かした。ーー・何だ ? 感じたこともないような、プレッシャーが : 亠ハのエネルギーが迫ってくる。強力な存在感が。 まゆ サクラはその眉をわずかにしかめた。あまり面白くない。 淵「生意気 : : ちらりと上唇をなめる仕草。熱風が銀髪をあおる。彼女は威圧する空気にさからい、一歩前 へと足を踏み出した。 直後、彼女の行く手すべてを埋めつくす大爆発が地面から轟きをあげた。 ズ サクラは思わず両腕を盾にして自分の身をかばっていた。たてつづけの爆発か壁となってサ クラをとじこめる。カ場によって攻撃はなんとか防げる。だがギリギリだ。敵の居場所まで へ吸いこまれるように、拓己は気を失った。 たて さつりく この自分に圧力を与える存在なん とどろ

4. イズミ幻戦記 3

132 「何の襲撃なんだ卩」 かたわ 一。田長の矢吹が、素早く傍らに駆け寄ってくる。 ライフルを握り、美潮はテントの外に出た。。 オヤジつぶ ハラバラなんだよう、破裂しちゃってよう : ・ 「オ、親父が潰されちまった : ・ カズャ うった すすり泣きながら訴える声がする。腰がぬけたらしく地面にへたりこんでいるのを、一也が 抱えあげて移動車へと連れてゆく。マーケットの東側にキャンプしていた商人の子供だ。 「東からか ? 」 とこにも。姿を見た奴はみんなして死んじまう 「らしいです。でも見当たらないんだ、、 「照明をもっと増やせ。近くにいるゲリラにも急電を打って知らせるんだ。マーケットにいる 人間を西側に誘導する。に退路を確保させろ」 「承知しました。姉御は ? 「全員が避難するまでわたしがここを動くわけにはいかないさ ! 当然だろう卩」 マッモト しかし、と呟き、矢吹は何か反論しかけた。そこに転がりこむようにして、松本の巨体が吹 つぶや あねご ミシオ ャプキ やっ

5. イズミ幻戦記 3

「名前、なんですけど : : : あの、藤井利光といいます ! キャラ・ハンは四年目です ! 」 「ああわかった、それでだ、藤井″そこの小物〃利光、おまえ確かさっき地面に転がってた奴 どろう」 がつくりと利光は肩を落としたくなった。 今まで彼がそのことに気づいていなかったということ自体が不思議だ。ここまで包帯でぐる ぐるにな 0 て、いかにもケンカに負けましたといった胤で利光が突っ立 0 ているにもかかわ らず、だ。 他人に対してほとんど関心を向けない性分なのだ。おそらく。彼は。 げろう 「あの場にいたなら話は楽だ。確か、あの下郎どもが美潮に妙なことを言っただろう。造り物 の腕力がどうこうってやつをー 考えこみながらイズミがそう続けた。 その瞬間、利光の態度にビリッとかすかな電流が走った。はっと背筋をのばした彼に、イズ けげん ミはほんの少しだけ怪訝な目を上げた。 「そのことだったら」 緊張した声で、利光が答えた。 「俺からは、詳しい説明はできないです : : : だけど」

6. イズミ幻戦記 3

全力をかけた戦いで勝利するのは、これが初めてだ。 自分のカで。 ・ : プラスアルフアも含めて、だが。 「不思議な気分だな」 イズミがひとりごちるのを、如月は耳にした。 「どんな気分だ ? 尋ねられて、イズミが振り返る。 うれ 「わからないな : : : 嬉しいんだか、何なんだか・ : : ・」 全身の裂傷か急速に治ってゆく。・ほんやりと答えてから、イズミは突然相手が如月であるこ 獄とに気づいたように、つけ加えた。 淵「僕が勝つなんて当たり前すぎて、感想なんかないんだよ。当然だろ ? 「そうか ? 俺は単純に喜んでいるんだが」 「それはおまえが僕じゃないからだ、馬鹿者」 にら 居心地が悪そうにイズミは如月を睨みつける。如月は同意の一言葉を返しかけてーー息を止め りようひざ イた。カ尽きてイズミが地面に両膝をついたのだ。 「イズミ : ハズーカを置き、如月は彼の傍に歩み寄る。イズミは片腕で額の汗を拭い、如月を見た。 235 そば

7. イズミ幻戦記 3

せいぎよ 自動制御ザイルを使って、如月は谷底に降り立った。 「今さら何を言う気にもならないわ」 翠が投げやりに呟く。 支えがなければザイルにもっかまっていられないような状態で、あの「マイクロウェー・フ とうせこの男は聞きやしない。 娘』とどうやって戦うのか。無謀だと忠告するのは簡単だが、・ 如月は暗視ゴーグルの調子を確かめ、そして地面からコーティング済みのパズーカ砲を持ち あげた。ここから先は一人だ。 「物わかりがよくて助かる」 せりふ 淵平然とこんな台詞を吐くのが、如月という奴の本性なのだ。翠はすでに諦めの境地にある。 「まかせてちょうだいよ、あんたの知りあい連中のなかでは異例の物わかりを誇ってる自信が あるものねー 「比較の対象が悪いな」 イ「あんたねえ・・・ : ・刻一刻、性格がんでいく気がするんだけれど、 「俺もそう思う。リハビリの必要がありそうだな、これは」 「なんならカウンセラー役くらい、やったげてもいいわよ」 あきら

8. イズミ幻戦記 3

222 たよね。ああやだやだ」 「けっこう元気そうだわよ、この白鳥の王子様ー 「うるさい、やかましいっリ 誠意ってものが感じられないんだよ、おまえの言い方はっリ」 実際、イズミの様子は決して『元気』そうには見えない。 立っていることもできないまま、地面に転がりつつ、死力をふりし・ほって二人を脱出させた というのが真相だろう。 カガサワシズカ ジー。フの運転席に収まっているのは、香ケ沢静だ。不安そうにこちらをうかがっている。如 月は彼に無言の微笑を向けてやり、それからイズミを見おろした。 「どうだ : ・・ : 大丈夫か ? 「直接のダメージはほとんど回復した。だが問題は融合期間の限界だな。かなり強引に力を使 いまくっているから、集中力に負担がかかる」 「・ : ・ : 深刻なのか ? ー 「深刻だったらおまえに言うはずがない」 「なるほど」 要するに心配するなと言いたいらしい。器用なのか不器用なのか・ : 「できれば無茶はしないでくれ。本調子でないなら、特に」 「甘く見るな、如月。僕は常に・ハージョンアップしている」

9. イズミ幻戦記 3

148 より早くサクラのほうがとどめを刺していた。 はうかい つうかく 痛覚がズタズタに裂かれるのを、イズミは自覚した。この先にはすべての崩壊が待ちうけて いる。破減と無が。 逃げてなんかやらない。 「逃げてなんか、やるものかっ : 地面をでき、頭を持ちあげる。乾く瞳を必死にひらき、敵の姿を捜し求める。ぬるりと 濡れた感触が胸に広がり、腕から指先へとったい流れる。体液か ? 触れられたわけでもないのに、い つの間にか細かい傷が全身に走っているのだ。内側からの 裂傷だ。その様子を我が目で確認することは、今のイズミには不可能だった。 イズミは大きく深呼吸をした。 そして、まるでそれがたったひとつの戦法であるようにーー彼は立ち上がった。 傲と、顔をあげて。 だがもう敵の位置さえっかめない。もう何も見えない。 このまま動かない標的と化して爆破 されるだけか。限界なのか、すでに。 そうではないはずだ 「まだ終わらない : つぶや イズミは呟いた。イズミは終わらない。決して終わらない。 れっしよう

10. イズミ幻戦記 3

130 くだ 砕けた。 「まだ足りない」 じやき 邪気のない口調で彼女は呟いた。 「全然足りないね ! 「あ、うわっ : はがたがたと震える手で銃を持ち上げた。 ばか 「くつくつくっ : : ・・馬ー鹿」 嘲笑と共に、爆発が起きた。 吹きとんだのは銃と、ついでに指が数本。内部から異常な圧力がかかり、銃を構成するすべ ての部品が分解したように見えた。 悲鳴をあげる暇さえ、彼女は相手に与えなかった。ぎりぎりまで凝縮した殺意 「もっと派手じゃなきやさ、つまらない」 ぐしゃん、と水風船が割れる時の音がした。 獲物の姿は、すでに彼女の前になかった。そこには内側から破裂した人間のかけらだけが残 された。 濃色の液体がどろりと地面を流れた。こらえきれず、彼女は声をあげて笑いはじめた。 十メートル先に停められたトラックの表面を、細かい光が駆けめぐった。火花だ。金か不 ちょうしよう ひま つぶや