顔 - みる会図書館


検索対象: 熱の城
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1. 熱の城

ー 118 「もう帰っていいよ」 少したって、全体の一一割くらいだけ起ぎてる声で言われた。 「あたしここにいたらだめですか」 訊いてみた。 楽譜、頭の横にどけて、明かりの眩しい顔して、しかたないっていうみたいに左腕もちあげ て、あたしの右手つかまえて、坂本くんがまた両目つぶって、言った。 「ほんとにいっ帰ってもいいからー 手。握って。離さないですむようにあたしは床に腰おろして。この人やつばり熱がまだ普通 よりあるって思いながら、ずっと座ってた。 たた 顔、叩かれた。指で。痛くないカで。 ( でも指の表面硬くて少し痛い ) あ、あたし寝てた。 目が覚めた。 リビングのソフアによりかかって知らないうちに寝てた。 「朝」 あたしの顔に、指の先ぶつけて、起こしたの坂本くんだった。目があいた瞬間に、朝って言 ま

2. 熱の城

溶かした。普通より濃いめで。 「先生はこれで生き返っててください」 「ああっ。これ、高岡君に入れ知恵されたでしょ げんじ 「あたしに教えてくれたの源司さんです」 のれん オリジナル 「暖簾わけだよ、元祖は高岡君だよ。知ってるよ犯人なんか」 うら にお ちょっと恨めしい顔して青汁の表面の匂いかぎながら、藤谷さんが言った。 「犯人なんですか」 「うん」 「暖簾あるんですか」 「あるよ。かっこいいんだよ」 「かっこいいんだ : 「ユニオンジャックに勝てるよ。むかっくよねー 顔しかめて藤谷さんがグラスのなかみ四分の一になるまで一気に飲んで、いきなりびつくり してた。 「うわ何だろうこれ。必殺だ」 「あっ、あたしの作り方、味ちがってましたか卩 「ううん」

3. 熱の城

いのちが 「テン・プランクをつくることとか。僕は、欲しい人は全力で命懸けで、ひきずってくる」 「全力なんだ」 「そうだったでしょ ? 」 あたしの顔見て、藤谷さんがまじめに言った。あっ。 目の前。 なにかその一瞬、時間戻って違うもの見えた。顔の表面に、フラッシュの光、あたったみた そうでした。 ( 命懸けで ) だってこの人本気で、泣きそうに本気だったから、自分で自信あるかどうかなんか別で、も う逃げられないって思った。最初。 ( 必死に、つくったんだ ) テン・ブランクがシェルター。って坂本くんが言ったの思いだした。 のあたしは、どうなんだろう。 熱 「昨日それと、甲斐さんに言われたことが」 「ええ ? まだあるの ? 何 ? 朱音ちゃんに失礼な話じゃなかった ? 」 さかもと

4. 熱の城

ないのに。どんどん、悪くしちゃうのに : 「でも、わかるから なんとなく、そのとき喉の手前に浮かんだことそのまま答えた。 「気持ちはわかるから」 「・ : ・ : ありがと」 あたしの顔を、じっとみつめて、コキノが言った。 をしいって思 「あのね。朱音ちゃん。わたし : : : だけどテン・。フランクなんか早く壊れちゃえま、 ってるの」 え ? 「テン・ブランクは好き。朱音ちゃんのことも好き。だけど嫌いになったの。ううん嫌いじゃ なくて、今でも好きだけど、の音楽聴いたら泣くけど、今はおなじに憎んでるから 変わらない、じっと視線はずさない表情で、涙のこってる顔で、ユキノが。 本気の一言葉で、言った。 「優しくしちゃだめだよ。ユキノに優しくしたら、きっとあとで朱音ちゃんは困るから。わた しどんな手をつかっても、朱音ちゃん、わたし、もしも朱音ちゃんに殺されても、それでもい いから、どんな悪い手段ででもあの人を手に入れるの。そういう覚悟してるの」 手に入れる覚悟って。 のど

5. 熱の城

そうなんだ。と思ったら。 「えつ、どういう意味卩誰が ? 桐哉が ? 先生が、電話にむかって、普通と違う声できいた。源司さんが一瞬で怖い顔して、先生のほ う見た。 「・ : ・ : うわ信じられない。 : ・俺、協力したくないけど、するしかないって話 ? すごくいや じしつほ だな。かんべんしてよ。じゃあ、交換条件で、俺の相談に乗ってくれる ? そしたら、譲歩し ないこともないよ。そう。じゃあね」 電話、切って。二つ折りの、元に戻して。藤谷さんが何秒間か、考えてた。 あたしと先生のあいだに、電話置いて。困ったなあ、ってひとりごと言って。 「朱音ちゃん何かオーヴァークロームの噂、聞いてる ? 」 「なんにもないですー 「そう ? そうだよね」 : って。それだけで黙られても。話、ハンパなとこまで聞こえてるし。 「先生そこで話止まったら気持ち悪い」 の「うん、僕も気持ち悪い。源司さん、ほんとは情報あるんだよね ? 熱 「俺スか」 源司さん、ヤだなあって顔したけど、あたしと先生に中指で、近く寄れって合図した。すご うわさ

6. 熱の城

たかれた。テレビ局のなかの、広い廊下で。初めて来る場所じゃないけどいちおう緊張して た、から、びつくりした。 両目の大きい、女の子。真っ白い、ふわふわしたセーター着て。そこにいた。光反射する素 材のテープがぐるぐるついた、オモチャみたいな目立っ靴、はいてた。 ( ついさっきこの顔の巨大な看板、駅前で見た ) 目の前にナマの本物。 ひの 日野ヒビキ。 藤谷さんがプロデュースしてる人。十四歳で。 ( 年下に見えない。しつかりしてる ) 「こんにちは。今日、も収録があったんですね。ヒビキもなんです、うれしいな。ョロシ クオネガイシマス ! 煙草、西条さん吸いませんよね ? まさか」 にこにこして言われた。 いつどの場所で会っても絶対かわいい顔してる。 「 : : : あ、うん。バンドの人の。買っとこうかなって」 「タカオカさんのことですか ? つきあってるんですか ? ー 城「え ? ううん全然そういうのとちがう。でもファンだからー 熱「ファンなんだ ? おんなじバンドなのに、おもしろい」 「あたしには、最初からテン・プランクってそういう人達だから」 ろうか くっ ーフェクトだった。

7. 熱の城

たた ヘッドホン両手で首から外して、藤谷さんが痛そうに顔しかめた。熟睡してたのを急に叩き 起こされた人みたいに、調子が戻らない顔してた。ちらかってる床にあぐらかいて、ヘッドホ ン持ってる自分の手を見て。 「坂本君、この曲、二番目のやっさ、今度のシングルにしようよ」 「え ? 」 「いい曲だから売ろうよ」 「シングルは違う、絶対無理 ! 坂本くんが、さっきよりもっと馬鹿なこと叱るみたいに言った。 「いつまでもネジ外れたセリフ言うのやめてよ。自分の分担するとこ捨てないでよ」 「えつ、なんで ? 売りたくないから ? 「じゃなくてタイプ的にそういう商業性高いアプローチは藤谷さんがやってくれないと困る」 「何それ、音楽性の違い ? ちょっとかっこわるいこと言ってるよ坂本君のほうが。僕の曲の 魅力に勝てないって白状したほうがまだいいよ、きみそんなセリフ悔しくないの ? 」 うわ : 城冗談じゃなしに、真顔で坂本くん見上けて先生が言ってて。 熱なんでこの人。わざわざそういう言葉使うんだろう。 狙って打ってる。 しか じゅくすい

8. 熱の城

% か考えてた。ェアコンの風向き、こっちに煙こない場所。 坂本くんは先生と対角線の反対側で、風邪薬をオレンジジュースで飲んでた。薬は水で飲み なよって言ったら、ついでにビタミン o の補給できるしとか、・ほそぼそ理由いわれて。それ、 理由じゃ弱いっていうか、やつばり横着じゃないのかなー ( 風邪なんだ ) ほっさ 睡眠たりないからだよ。気をつけないと喘息の発作くる。心配だけど、あたしが心配っぽい 態度するとヤな顔する。いつも性格難しい。何言ったらいいのか困る。 「頭いいと風邪ひくから困るですね」 みけん あたしが工夫して言ったのに、ますますもっと顔しかめられた。眉間にきつつい皺つくるの やめてほしいんですけど ! あーもういいよ ! もう言うのなしにしときます。 「あっ風邪の人いる ? ごめんね。帰っていいよ。源司さんさ、俺このあとスタジオ行って録 りたい音あるから若い人たち家に送ってくれる ? 「ハーカッ、てめえも帰れ ! とっとと寝れー 「だけどいま俺の頭のカドのここに食いこんでる音だから録っちやわないと俺の脳細胞的に寝 られないよ ! あれつ、いま何時 ? これ午後 ? 今日って昨日の明日 ? 」 ひらて はいはい、って源司さんが平手で先生の頭たたいて、藤谷さんのコート上からかぶせてた。 「あんたも送るからクルマで寝てな」 おうちゃく ゼんそく しわ

9. 熱の城

「了解しました」 「朱音ちゃん何か僕に用事あった ? 」 いきなり訊かれて。 「大丈夫です 反射的に、答えてた。 あれ : : : 大丈夫なのかな ? 自分でもよくわからない。 ふうん、って先生が答えたけど、まだ頭は別のことに行ってるみたいで。 「じゃあ明日スタジオで相談しようよ、俺も考えておくから」 早口に言って立ちあがって、ばたばた大きい足音たてて先生がリビング出ていくから。 「え ? は、はい」 じゃあって。考えておくって ? え ? ( 大丈夫って言ったよね西条 ) 先生何聞いたんだろ・ : 。あたし電波とか発信しましたか。 って思って横にいる坂本くん見たら、全然関係ないって顔された。もうーっ :

10. 熱の城

子に投げた。 煙草と何かの香水と、それとべつに消毒薬つぼい匂いがした。 ( 元気そうだった ) とし、つ力、 ~ 印冫 」こ、ツアー行くとき新幹線で会ったときと、ほとんど変わってなかった。 真崎桐哉、そういう人だった。 自分、どういう人にするか自分で決めてそのとおりの自分でいる。 意地とか根性かもしれない。 あいさっ 「挨拶」 あたしの顔見て、催促した。 「こんにちは」 「つまんねえ挨拶」 おもしろいのなんか知らないよ。 うれ いつも、会うと嬉しいのか困るのか、あたしのなかで、わからない人だった。 : このまえは、ありがとうございました」 の「あいかわらず俺のこと好きか」 熱 「普通です」 「フーン。でも好きだろー さいそく にお