原題 EmmanueI Todd: "le seul pays ン méme de casser la zone euro et sa logique destructrice. c'est la France" 聞き手テオフィル・スールディーユ Théophile Sourdille 初出アトランティコ Atlantico.fr 二〇一四年六月一六日に発表、六月二〇日改訂 付記アメリカの国力の衰弱、の内部分裂、そして国際的舞 台へのロシアの復帰により、地政学的世界地図が描き直さ れつつある。新たなパラダイムの中で、フランスは自らの 位置を見つけあぐねている。

アメリカとの産業上の不均衡 不均衡はドイツ支配にプラスに作用 ドイツ一人勝ちのシステム アメリカと「ドイツ帝国」の衝突 ウクライナは国家として存在していない ウクライナ問題の行方 アメリカによるユーラシア大陸コントロールの鍵ーーードイツと日本 今後二〇年に衝突の危機 アメリカの白人デモクラシー ドイツ専用のデモクラシー 力をもっと非合理的に行動するドイツ 平等と自由をめぐるドイツ・フランス・アメリカ 価値観のちがいが対立を招く ドイツのせいでロシア接近を阻まれた日本 政治指導者にサイエンス・フィクションを勧めたい

そりや、誇張てしようー いや、全然誇張ではない。あれらのメディアは、ヨーロッパ大陸随一の軍事大国の驚異 的な立ち直りについて、世論をまんまと目隠し状態にしたのです。そのようにして、私は 遠慮なく言わせてもらうが、西側メディアはわれわれを危険な状況に置いたのですよ。 O—< にしてからが、もともと持っている偏見に欺かれてしまいました。二〇世紀の終 わりの数十年における人口の激減に目を奪われて、 0—< はロシアが早晩消滅するだろう と踏んだのです。 も同じです。はロシアとその隣国との間の新たな力関係の評価を誤りました。 こんなふうにして、ヘマとしくじりを繰り返し、われわれはクリミアの併合とウクライ ナにおける市民戦争に行き着いたのです。 「プーチン嫌い」が真実を見えなくさせている プーチンの「とを忘れていますね。彼の粗暴なやり方やホモフォピアを :

原題 EmmanueI Todd: la France n'est pas l'Allemagne, ce n'est pas germanophobe de le dire 聞き手フィリップ・コーエン Philippe Cohen 初出マリアンヌ Marianne 二〇一一年一二月一三日 付記アルノー・モントプールの大胆発言から始まった論争を好 機として、人類学者エマニュエル・トッドがフランスの指 導層のドイツ追随を問題にする。彼によれば新条約の輪郭 は、サルコジ、フィョンおよびジュッペが、フランスのプ ルジョワジーに伝統的な自主的隷属から純然たる隷属に移 行したということを示している。あたかも彼らが代表して いるのが、きわめて狭隘な意味でフランスの諸銀行の利益 だけであるかのように。

府会計の証明書を作らなけれはならなかったときにやったようにね : ロシアの安定化を見誤った西側メディア すると、ロシアが活力を取り戻したのは驚くべきことたと仰るのてす ? そうです。まさに驚きです。私の著書『帝国以後』はアメリカをテーマとして二〇〇二 年に上梓した試論ですが、私はあの中に「ロシアの回復」と題する章を設け、その可能性 を検討はしたのです。 しかし、それを裏付け得る統計的データはいっさい持っていませんでした。当時は、ロ シア社会とその家族構造、および国家の構造についての自分の捉え方に、信を置いていた て びだけでした。 見このたびの驚きは、ごく控え目にいっても、わが同胞たちにはまったく共有されていま を アせん。近年私は、西側のメディア、特にフランスのメディアによる烈しいロシア叩きに苛 ロ 立っています。中でも『ル・モンド』紙が中心でね、その錯乱たるやー

ほかでもないこの文脈の中で、通貨における支配的なパワーであるアメリカ合衆国が抵 当権付きローンの狂気じみたメカニズムを発見したのでした。アメリカの多くの世帯がよ り広い家を買うためだけでなく、中国製品を消費し続けるためにも借金を負っていたので す。 そして、二〇〇八年の危機の前夜、アメリカの貿易赤字は八〇〇〇億ドルに上っていま した。このシステムは驚くべきものです。アメリカはその帝国的なポジションを利して、 この赤字を世界規模でのケインズ的レギュレーターとしたのです。 かくして債務が、需要不足を埋め合わせる役目を果たすことになりました。 もちろんローンのメカニズムは最後には弾け、所得も輸人も崩壊します。こんな文脈の 中では、 7 、 (.-5 8 、そしてが準備した景気振興プランは合理的なリアクションでし た。ケインズの勝利と国家のカムバックが歓迎されました。 金持ちたちのケインズ主義 それはあなたのお気に沿うことたったでしようね。 186

を確保しているのは、実はドイツの空間なのだ。アメリカ政府向けに、「プロシアの王様 のために戦争をする」〔骨折り損のくたびれもうけ〕という古い表現を今日化してあげるべ きだろう 今後ニ〇年に衝突の危機 「の文脈において、ドイツ・アメリカ関係にどんな将来があり得るでしようか ? もしあなたが、現在支配的なイデオロギー、つまり『ル・モンド』紙の、フランソワ・ オランドのイデオロギー、それはまた素朴なアンチ帝国主義者たちのイデオロギーでもあ るのだが、そんなイデオロギーで魔法にかけられた世界に生きているならば、アメリカと ヨーロツ。、 日本は今もアメリカの保護下にあるとしてーーーを連結する西側プロックが ロシアを抑えなくてはいけないし、抑えることができると考えるだろう。よき戦略的合意 と強固な協力関係という仮説に立てば、西洋はロシア経済を打ち負かすことができるだろ , つ。そ , つかもしれない・ もっとも、中国、インド、プラジルも存在していて、世界は 広大ではあるからして :

彼はそこで止まりましたね。限定的な目標を達成して、そこで止まる器量のあった稀有の 征服者です。ナポレオンやヴィルヘルム二世とは大違いです。 それでも、ドイツ人たちはすでにドイツ再統一のために高い代償を払ったと感してい るわけで、その彼らが、この上ギリシャやイタリアの赤字まで賄いたくないと思うのは無 理もないですよ。 ドイツの一般人を全体として捉えれは、どんなメカニズムが働いて南欧諸国が大きな貿 易赤字を抱えるようになり、その結果として歳出超過予算の状態に陥ったかを彼らが知ら なくても、それはまったく責められることではありません。まして、ドイツの輸出の好調 さの果実が彼らにはあまり回って行っていないのですから。 フランスがドイツに隷属する背景 フランス政府の服従をどう説明しますか ? モントワール・シンドロームでしよう か ? 〔モントワールⅡシュールⅡルⅡロワールはフランス中部の町。一九四〇年一〇月二四日、 166

2 ロシアを見くびってはいけない 図表 24 男はつらい ( 各国の男女平均余命 ) 60 歳時点での余命 ( 女性 ) ( 歳 ) ス / イン 30 ・ハンガリー イタリア 28 ポーランド ・・ロシア 26 24 22 20 1950 国内で支持される権威主義的デモクラシー その社会では、ソ連時代から継承された高い 教育水準が保たれていて、男子よりも女子のほ うが多く大学に進学しています。また、人口の 流出よりも流人のほうが多いことからも、ロシ ア社会とその文化が、周辺の国々の人々にとっ 0 て魅力的なのだということが分かります これが、他によい言い方がないので私が仕方 なく「権威主義的デモクラシー」と呼ぶものに 繋がっているのです。すなわち、強力で粗暴で さえあるが、それにもかかわらす大多数の国民 から暗黙の支持を受ける体制です。 O はロシアのエリート養成機関 くどいようですが、ソビエトの政治警察で 1990 1980 1970 2010 ( 年 ) 2000 9 一 8

工セル『怒れ ! 憤れ ! 』 ( 村井章子訳、日経社、二〇一一年 ) を念頭に置 あろう〕 憤る者たちといっても、われわれのヨーロッパ社会ではその人数が多くありません。 許せないのはエリートの責任放棄 ます、この社会では、年齢の中央値が四〇歳強 ( フランスで四〇歳、ドイツで四四歳 ) だからです。 また、社会構造がすでに個人単位となり、いわば原子化されているため、集団行動にプ レーキがかかるのです。集団的な異議申し立ての持っパワーを私は信じません われわれに必要なのは強力な意識化であって、社会全般にわたる革命的な転覆ではあり ません。私はエリートたち ( 指導的階層 ) が理性に立ち返るように闘っているのであって、 彼らの地位の転覆を狙っているのではないのです。 私はエリートたちに対し、何ら含むところはありません。しかし、彼らが自分たちの任 階級闘争が現実に存在していることは認めたほうがよい。 務を裏切るのは我漫ならない。 いた問いかけで 222