ウクライナ問題をめぐるドイツの強硬姿勢 いつの日か、歴史家たちがシュレーダーからメルケルへの大転換に言及することになる でしょ , つか 西側で主要なアクターであるのは、今や間違いなくドイツです。しかしドイツの行動に は揺れがあり、攻撃的な時期があると思えは、妥協的な姿勢をとる退却の時期もあります。 後者はたしかにだんだん短くなってきていますけれども。 現在の局面は、ドイツ外相シュタインマイアーのウクライナ訪問から始まりました。ウ クライナの首都キエフにポーランド外相シコルスキーも姿を見せたということが、シュタ インマイアーの任務がアグレッシプなものであったことの証です。 ポーランドがロシアに対して二極的であるというようなことは到底考えられません。ロ シアに対するポーランドの敵意は恒常的で時代を越え、けっして鬱に転じることがない躁 状態のようなものです。 フランス外相のローラン・フアビウスはといえば、あそこでも例によって自分が何をし ているのか分かっていませんでしたね。彼の失態リストにまた一つ、レインボー・ウォー 1 1 〇
ロシアにとっての本当の問題は実は、ウクライナだけではなく、ガスパイプラインの到着 点がドイツにコントロールされているということなのだ。そしてそれは同時に、南ヨーロ ハ諸国の問題でもある。 ン。、ゞ ヨーロ 、 / カロシアの熊とだけの間に問題を抱えているひとつの平等なシステムである かのように素朴に捉えるのをやめるならば、ガスパイプライン「サウス・ストリーム」が 建設されないことがドイツの利益でもあるということが分かる。それが建設されると、ド ィッが支配しているヨーロッパの大部分のエネルギー供給が、ドイツのコントロールから 外れてしまうだろう。 「サウス・ストリーム」の戦略的な争点はしたがって、単に東と西の間の、ウクライナと ロシアの間の争点ではない。それはドイツと、ドイツに支配されている南ヨーロツ。、 の争点でもある。 ヨーロッパという階層システム しかし、もう一度言っておきたい。 この地図は最終的な地図ではない。 この地図の目的 は、ヨーロッパの現実に即したとっかかりのイメージをざっと田 5 い浮かべ、今日のヨーロ
2074.5 2 ロシアを見くびってはいけない 乳児死亡率の上昇から予見できたソ連崩壊 乳児死亡率が低下し、出生率が上昇しているプーチンのロシア 経済指標は捏造できるが、人口学的指標は捏造できない ロシアの安定化を見誤った西側メディア 国内で支持される権威主義的デモクラシー はロシアのエリート 養成機関 ロシア経済の二つの切り札 人口学的指標が示すロシアの健全さ 3 ウクライナと戦争の誘惑 2 ミ 45 家族構造からみたロシアとウクライナ 国家が機能してこなかった「中間ヨーロツ。、 人口学で確認できるウクライナの解体 「親派」と称される極右勢力 「プーチン嫌い」が真実を見えなくさせている
あれほど消極的で、一般に言われているのとは逆に、ウクライナのいくつかの部分を併合 することを望んでいない。 ロシアは西側による制裁を恐れていない。しかし、中部ウクライナで憎まれることを望 まない。現状ではウクライナの中心部分を成す人びとは、ロシアに対して警戒心を持って いるが、しかし、ロシア人には空間と時間をうまく活用する大きな歴史的能力があること を認めなくてはいけよ、。 ドイツ的ヨーロッパによる処遇を二年間受けた後、キエフの人びとは何を考えるだろう か。もしかすると彼らはモスクワの方を振り向こうとするかもしれない。 崩壊していくシ ステムは踏みとどまること力ない。 。 ~ 崩壊し続ける。 アメリカによるユーラシア大陸コントロールの鍵ーーードイツと日本 話をアメリカに戻しましよう。アメリカシステムはグローバルなパワーではあるけれ とも、ウクライナからは非常に遠くて、したがって、「西側システム」によるウクライナ の統合・崩壊から利益を引き出すことができませんね。
ウクライナの暴走とヨーロッパの破産を止められるのは誰か ? 私が心配しているのは、ウクライナのベトロ・ポロチェンコ大統領と新しい指導者たち が、ウクライナ社会がバラバラになっていくことに途方に暮れるあまり、むやみに先を急 ぐというやり方で事態の打開を図りたくなるのではないかということです。いったい誰な ら、彼らを止めることができるのでしようか。 このウクライナ危機に乗じて、アメリカは Z << O と、あの国がヨーロッパに持ってい るネットワークを再起動しました。しかし私には、アメリカは今では事の展開について行 けす、ネイションの再来に当惑しているように見えます。 オバマ大統領は、ロシアと自国の間の揉め事に決着をつけるべく彼を利用しようとする ドイツの指導者たちによって、煙に巻かれてしまいました。 かくいう私は親米左翼ですぞー また、スウェーデンがロシアに対して、ポーランドと共同戦線を張ろうとしているのも 観察できます。スウェーデンはあたかも大北方戦争二七〇〇 5 一七二一年〕、彼らの王で あったカール一二世がウクライナのただ中、ポルタヴァの戦いで、ロシア軍を主力とする 北方同盟陣営の軍に敗れて終わったあの戦争を再開しようとしているかのようです。 702
ロシア崩壊こそアメリカにとっての脅威 ウクライナ危機がどのように決着するかは分かっていない。しかし、ウクライナ危機以 後に身を置いてみる努力が必要だ。最も興味深いのは「西側」の勝利が生みだすものを想 像してみることである。そうすると、われわれは驚くべき事態に立ち到る。 もしロシアが崩れたら、あるいは譲歩をしただけでも、ウクライナまで拡がるドイッシ ステムとアメリカとの間の人口と産業の上でのカの不均衡が拡大して、おそらく西洋世界 の重心の大きな変更に、そしてアメリカシステムの崩壊に行き着くだろう。アメリカが最 も恐れなければいけないのは今日、ロシアの崩壊なのである。 ところが今日の状況の特徴の一つは、当事者たちが然るべき能力を欠き、自らの行動に ついていちじるしく自覚不足だということなのだ。 私はここで、オ、ハマのことだけを言っているのではない。彼はヨーロツ。、 ノのことが何も 分かっていない。、 ノワイ生まれで、インドネシアで育った人物だし、彼の目に存在してい るのは太平洋圏だけだ。 愚かなブレジンスキー ロシア嫌いでドイツの脅威を見誤る
家族構造からみたロシアとウクライナ しはらく前にはグルジアの機嫌を取っていたヨーロッパの政治指導者たちが、今度は ウクライナの機嫌を取っています。そして一一〇一三年の秋からのユーロマイタンでの騒擾 〔「ユーロマイダン」は首都キエフにある「欧州広場」のこと。二〇一三年 5 一四年にここを中 心に、当時のヤヌコーヴィチ大統領による欧州連合協定調印棚上けに反対して行われた大規模 な反政府デモ〕以来、フランスで、またヨーロッパのほとんどの国々で、世論にもウクラ イナへの強い共感が表れています。人類学者として、この感情を共有しますか ? 誘 人々は地図に目をやり、ウクライナがロシアよりも西にあるのを見ます。そして、ロシ の 戦アよりも西だから当然「西洋的」と思うわけです。それは間違ってはいません。 と ナ ロシアとべラルーシの特徴は共同体家族構造にあります。つまり、家長と息子たちの家 イ ラ族が同じ屋根の下で暮らすのです。 ウ それに対してウクライナは、イギリスや、フランスのパリ盆地で出会う家族構造に類似 、 0 、 0 、 ノとママと子供たちという構造です。 した核家族構造を特徴としています。つまり
ロシア崩壊こそアメリカにとっての脅威 愚かなプレジンスキー ロシア嫌いでドイツの脅威を見誤る 東欧支配で衰退したソ連、復活したドイツ ドイツがヨーロッパ大陸を牛耳る 地図が示す「ドイツ圏」という領域 フランスの協力によって完成した「ドイツ圏」 「被支配地域」ーーー南欧 「ロシア嫌いの衛星国 イギリスに近いデンマーク、ロシアに近いフィンランド 「離脱途上」ーーイギリス ドイツ覇権よりアメリカ覇権の方がマシ ンガリー 「離脱途上」 ウクライナ 「併合途上ー ガスパイプライン問題ー・・・ー争点は「ロシアウクライナ」でなく「ドイツ南欧」 ヨーロッパという階層システム ポーランド、スウェーデン、バルト三国
「テロリストファシスト」の戦争に対して冷静なプーチン ウクライナの暴走とヨーロッパの破産を止められるのは誰か ? 4 ューロを打ち砕くことができる唯一の国、フランス 2 ミ 4.6 パの接近 イラク戦争時のロシアとヨーロッ オバマ大統領による路線転換 極端に振れるドイツの対露外交 ウクライナ問題をめぐるドイツの強硬姿勢 ロシア嫌いの『ル・モンド』紙 西側メディアの非合理的な報道 ロシアの合理的な外交 アメリカは自分が何をしているかを理解していない アメリカから自立したドイツ 米露の協調こそ世界安定の鍵 真のプレーヤーは米・露・独のみ ロシアが好戦的になることはありえない アメリカなしにヨーロッパは安定しない
この基準から見ると、ロシアは世界でも女性の地位が最も高い国の一つであって、スウェ ーデン ( 男子学生一〇〇人に対して、女子学生一四〇人 ) に次いでいるのです。 ロシアの合理的な外交 ウクライナ危機におけるロシアの外交的観点は文化主義的ではなく、非常にシンプルで す。つまり、ロシアの指導層はウクライナに Z < O の基地を望まない。そんなところに 基地を作られたのでは、バルト二国とポーランドから成る包囲網がいっそう強化されてし まうというわけです それだけのことなのです。 ロシアが望んでいるのは平和と安全です。自国の復興を完遂するためにロシアは平和と 安全を必要としていて、クリミア半島で見られたとおり、今ではそれを獲得する手段を持 っているのです。 最後に、人類学者からの助言を一つ付け加えます。自分たちの道徳観を地球全体に押し 付けようとするアグレッシプな西洋人は、自分たちのほうがどうしようもなく少数派であ り、量的に見れば父系制文化のほうが支配的だということを知ったほうがよろしい 1 ー 4