左翼こそ保護主義を主張せよ 保守派が保護主義に関するあなたの考え方をこ都合主義的に取り込むことを心配して いませんか ? 一一コラ・サルコジが、国民を「保護する必要ーということを言い出してい ます。 そういう側面から問題を立てたことはありません。予想しているのはむしろ激烈な選挙 戦〔このインタビューは、二〇一二年四月の仏大統領選の約四カ月前に行われた〕で、それ を通して、左翼が改めて左翼に立ち帰ることがありそうだと思っています。 実際、ある種のファンタジー ( 「左翼の左翼」、トロッキズム等 ) が消えて、これまでに すあまり例のない規律が徹底し、選挙で保守派と対決する陣形が整ってきているように見え 落 陥ます ロ向かい側には、保守派がーーーニコラ・サルコジという大統領の無意味さにもかかわらす ュ 、国民運動連合と 存在しており、その支持層を構成する二つのカテゴリー 国民戦線 (c-æz) はこのところ、非常に近い関係になりました。両者を隔てる壁に多くの 2 01
8 ューロが陥落する日 2 辷叨 左翼こそ保護主義を主張せよ サルコジ的ポピュリズムはもはや支持されない 二つの領域の交差点としてのフランス 社会を崩壊に導くエリートたち 強大で不安定なドイツ ドイツ経・済がヨーロツ。、 ノの民主主義を破壊する ューロ全体主義 戦争なき独裁 もし私がフランス大統領だったら : 許せないのはエリートの責任放棄 編集後記
にしみて感じとったのです。 サルコジはフィョン〔サルコジが大統領だった期間の首相〕を解任できませんでした。 第五共和制の彼以外の大統領は、誰であれ、あんな立場に甘んじることを潔しとしなかっ たでしよう。サルコジはまた、自らの任期の終わり頃、ジュッペ〔保守の大物政治家で、 シラク大統領時代の元首相〕を外務大臣に任命せざるを得ませんでした。その結果、従来 「大統領の領分」とされてきた外政のすべてが彼の手から奪われました。 サルコジは常に強者として自らを提示してきました。しかし、彼は優柔不断です。それ が彼の心理的現実なのですよ。 彼はいつもヒエラルキーの中で位置取りをします。弱者に対しては強腰、強者に対して は弱腰。列強 ( アメリカ、中国、ドイツ ) には服従し、郊外の若者やロマ族〔かってジプシ すーと呼はれた民族〕に対しては強権的になる ! 私は確信しているのですが、人びとはそ 陥のことを知っています。 ロその上、最近、イデオロギー的な断絶が起こりました。欧州レベルの保護主義を唱えた ュことで、ここ一〇年以上、私はある意味で世間から「放逐」されていました。多くの人が ) 声高に述べたところによれば、欧州レベルの保護主義は極右の〈国民戦線〉を利するばか
緊縮財政は「間抜け者の保護主義」 景気浮揚策がそんなふうに債権者たる富裕層に有利なら、逆に緊縮策は貧困層に利益 をもたらしますか ? 確実にいえるのは、たとえばマルティーヌ・オプリ〔リール市長、社会党内左派の代表 と目されている、一九五〇年生まれ〕が体現しているような反緊縮の言説が完全に時代遅 れだということです。 ヨーロッパ各国の政府は、景気浮揚が中国とその他の新興国の経済ばかりを浮揚させる ということを遂に理解しました。しかし依然として、国家レベルでも、セクター別でも、 あるいは欧州レベルでも、保護主義の措置はどんなささやかなものでも拒否しています。 この条件の下では、緊縮は中国の成長に寄与することへの受動的拒否、すなわち私が 「間抜け者の保護主義」と呼ぶ第三の道の選択であるかのようにも見えます。悲しい真実 ですね、われわれは間抜け者たちに統治されているのです。操縦席にいる連中には、やる こと成すことの責任を取ってもらいたいものです。 もっとも、私はメランション派〔ジャンⅡリュック・メランションはフランス左翼の有力 188
ヨーロッパを破壊しつつある力関係を生み出します。そして、国々をそれぞれの経済状況 によって格付けする階層秩序に行き着いてしまいます ですから現段階で、私の選択はヨーロッパ保護主義によるユーロの救出ということにな ります。必要なことはしたがって、フランスがこの解決策を提示してドイツと交渉する勇 気を持っことです。 大陸全体で需要がふたたび伸びるような条件づくりをしなくてはいけません。ヨーロッ ソ。、亠よ、 、こ飛びかかって殴り合うのを止めるためにね。そうすればヨーロ、 ハで諸国民が互しー かって常にそうであったところのもの、すなわち、ふたたびひとつの切り札に立ち戻れる でしよう。今日では構造の分解につながる弱さと見られているもの、つまり人類学的な多 様性が、全体として保護された状況の中で改めてパワーを生み出すことになるでしよう。 とはいえ、この金融・通貨・経済危機が進行するリズムと、緊縮財政によって予定され ているとさえいえる不況を考えると、私の視野にはユーロからの予防離脱が人って来ます。 ースペクテ この点、経済学者ジャック・サピールの見解が正しいと思います。そんなパ イプの中でなら、ドイツは全体の再編成も、ヨーロッパ保護主義も、受け人れざるを得な くなるでしょ , つから 218
なのですから。 結局、私はみなさんに、フランスにとって喜ばしい物語を提示できるのですよ。ただち にではなく、 ューロの失墜から一年後に始まる物語です。一方、ドイツは事態にそう簡単 には対応できないでしよう : ューロ抜きのヨーロッパを信しるのですか ? ツ。、に強い関心があるし、情熱さえ催します 文化的な面では私はヨーロ ところが、今日大陸全体に拡がる怒りのタネである単一通貨は、初めからヨーロッパよ るものの否定だったのです。だから私は初めから単一通貨に反対でした。 日 る ついに容認するに到ったのは、ユーロが救われ得るのはヨーロッパが保護主義を採用す す 陥る場合だけだと確信したからです。ューロを救う必要が欧州レベルの保護主義を促すだろ ロうと考えたのです。 ュ自由貿易は諸国民間の穏やかな商取引であるかのように語られますが、実際にはすべて の国のすべての国に対する経済戦争の布告なのです。自由貿易はあのジャングル状態、今 217
〇〇七年の大統領選の直後、サルコジが富裕層を象徴するこの店で勝利を祝い、一般の顰蹙を 買った〕スタイルの保守なのだが、きっとポピュリズムをやってのけるでしよう。人びと の間に瀰漫している恐怖心と、有権者層の高齢化という要素に賭けるわけです。実際、現 在の有権者層は、フランスでは前例がないほど高齢化していますから。 というわけで、状況全体のこの混乱の中で、ニコラ・サルコジがロ達者なお抱え原稿書 きであるアンリ・ゲノー二九五七年生まれの国民議会議員で、評論家でもある〕に頼んで、 土壇場で繰り出す嘘つばちの演説をいつものようにでっち上げ、保護主義のポーズをとる ことはたしかにあり得ます。ゲノーは二〇〇七年の大統領選挙の際にそれをやったし、さ らに以前にはジャック・シラクのために同じことをやってのけました。前例を思い出しさ えすれは、そうした詐欺は無効化できるはすです。 すでに誰かがスターティング すしかし、もしかするとあなたの言うとおりかもしれない。 陥プロックにいて、おそらく今にもデタラメを繰り出そうとしているのかもー ロ ュ サルコジ的ホビュリズムはもはや支持されない サルコジが立ちはたかってくることは心配しないのですか ? 203
2 ミト 72 7 7 富裕層に仕える国家 「市場」とは「最富裕層」のこと 「一 % 対九九 % 」の格差に奉仕する国家 格差拡大は倫理ではなく経済の問題ーーーピケティ学派の功績 国ごとに異なる形での寡頭支配ーー左翼が見落としているもの 政府債務は富裕層の集金マシーン 寡頭制 ( 富裕層 ) は貴族制とは異なる 需要不足を補って破綻したサププライム・ローン 金持ちたちのケインズ主義 緊縮財政は「間抜け者の保護主義」 ドイツにストップをかけるのがフランスの使命 一九三〇年代の対立が再来 政府債務は返済されなりーー紙幣を増刷するか、デフォルトを宣言するか 政府債務のデフォルトを宣言したらどうなるか ?
の掌握から、警察と憲兵隊の合体に到るまで、すべてです。治安維持の組織が別々に二つ あることは共和主義の偉大な伝統ですが、これがデモクラシーの保障の一つであることが 分かりますね。 こういうわけですから、われわれは戦争なき独裁を経験する可能性があります。すでに そうなっているんじゃないかな : もし私がフランス大統領だったら : あなたが共和国大統領に選はれたと仮定して、主要政策を四つ挙けてみてください。 ①欧州の保護主義的再編成について、ドイツ相手にタフな対話を始める。 す②主要銀行を国有化する。 ③政府債務のデフォルトを準備する。 ロ④国民教育省統括下の学校制度に新たに一〇万のポストをつくる。 ュ 憤る者たち、すべてを失ったときには彼らたけが残るのでしようか ? 〔ステファン・ 22 ー
政治家、一九五一年生まれ〕ではありませんよ。統治にはエリートたちが必要だと信じて いるのでね。問題は彼らを吊すことではなく、正気へと、分別へと導くことです。 フランソワ・ ハロワンやヴァレリ・ペクレス〔いすれもサルコジ政権で閣僚を務めた著名 政治家〕は無能を絵に描いたようなエリートだけれど、たぶん誠実に、均衡予算に戻れば われわれのすべての問題が解決すると確信しているのでしよう。 とはいえ、各国政府が無意識にもう一つ別の選択をした可能性も否定はできません。っ まり、仮に景気浮揚策を採ることができす、保護主義も考えられないとなれば、貿易赤字 国にとって、予算の歳出節減が唯一、貿易黒字の大きい輸出国ーーー大雑把にいってドイツ と中国ですーーをある意味で屈服させ、交渉のテープルに引っ張り出す手段でしよう。 家 国 る ドイツにストップをかけるのがフランスの使命 え 仕 ドイツの社会経済モデルにフランス側が魅了されるという現象は、ドイツ嫌いの擡頭 と対になっていますが : 富 反ユダヤ主義と親ユダヤ主義がユダヤ人問題への病的なまでに過剰な関心の二つのバ 189