き延びている。フランスは六五〇〇万人の住民をドイツ圏に付け加える。ドイツ圏に、大 陸のスケールの中でひとつの限界を越える人口の塊を提供しているわけだ。 ほとんど一一億人の規模 : ということは、われわれはすでにロシアや日本の規模を越えているということだね。 この地図の黒とグレーの塊がドイツのパワーの中心を表している。この塊が、ヨーロッ ハ全体のシステムの中で被支配地域となった南ヨーロッパを従属した立場に置き、抑え込 んでいる。 ドイツはイタリアで、ギリシャで、またたぶん南ヨーロッパ全域で、ドイツが押し付け る財政規律のゆえにひどく嫌われている。しかし、それらの国々は何もできない。なぜな ら、ドイツがその隣接空間とフランスを伴って、いっさいを支配する能力を有しているか らだ。支配されている国々は、この地図では黄色で示されている 「被支配地域」 , | ー南欧
ロシア崩壊こそアメリカにとっての脅威 愚かなプレジンスキー ロシア嫌いでドイツの脅威を見誤る 東欧支配で衰退したソ連、復活したドイツ ドイツがヨーロッパ大陸を牛耳る 地図が示す「ドイツ圏」という領域 フランスの協力によって完成した「ドイツ圏」 「被支配地域」ーーー南欧 「ロシア嫌いの衛星国 イギリスに近いデンマーク、ロシアに近いフィンランド 「離脱途上」ーーイギリス ドイツ覇権よりアメリカ覇権の方がマシ ンガリー 「離脱途上」 ウクライナ 「併合途上ー ガスパイプライン問題ー・・・ー争点は「ロシアウクライナ」でなく「ドイツ南欧」 ヨーロッパという階層システム ポーランド、スウェーデン、バルト三国
ストの安い彼らの労働を用いて自らの産業システムを再編した。 四五〇〇万人の住民を有するウクライナの労働人口は、ソ連時代からの遺産である教育 水準の高さと相俟って、ドイツにとって例外的な獲得物となるだろう。これはとりもなお さす、今後非常に長きにわたってドイツが支配的な地位を保っという可能性、そして特に、 支配下の帝国を伴うことによって今すぐにもアメリカを上回る実質的経済大国になるとい 哀れなプレジンスキー ! 彼の見込みは外れる う可能性にほかならない。 耳ガスハイプライン問題ーーー争点は「ロシア恥ウクライナ」でなく「ドイツ恥南欧」 を では、エネルキー問題のレベルではいかがてすか ? 陸 大 ロ この地図 ( ロ絵参照 ) に主要なガスパイプラインが示されているのは、ひとつの神話を ョ覆すためだ。ガスパイプライン「サウス・ストリーム」の建設によって、ロシアがエネル ギー関係をウクライナによって支配されるのから逃れようとしているという神話があるね。 イ ウクライナを通っているこ 存在するガスパイプラインのすべてのルートを見てほしい。 とだけが共通点ではないよね。ドイツに通じているということも共通点だ。したがって、
ロシアにとっての本当の問題は実は、ウクライナだけではなく、ガスパイプラインの到着 点がドイツにコントロールされているということなのだ。そしてそれは同時に、南ヨーロ ハ諸国の問題でもある。 ン。、ゞ ヨーロ 、 / カロシアの熊とだけの間に問題を抱えているひとつの平等なシステムである かのように素朴に捉えるのをやめるならば、ガスパイプライン「サウス・ストリーム」が 建設されないことがドイツの利益でもあるということが分かる。それが建設されると、ド ィッが支配しているヨーロッパの大部分のエネルギー供給が、ドイツのコントロールから 外れてしまうだろう。 「サウス・ストリーム」の戦略的な争点はしたがって、単に東と西の間の、ウクライナと ロシアの間の争点ではない。それはドイツと、ドイツに支配されている南ヨーロツ。、 の争点でもある。 ヨーロッパという階層システム しかし、もう一度言っておきたい。 この地図は最終的な地図ではない。 この地図の目的 は、ヨーロッパの現実に即したとっかかりのイメージをざっと田 5 い浮かべ、今日のヨーロ
によってであるから。 ドイツ専用のデモクラシー もし現在のヨーロッパを描かなけれはならないとすれば、もし経済地図を政治的な面で コメントしなけれはならないとすれは、私は一一一口 , つだろつ。ヨーロツ。、、 あるいはドイツ帝 国が「支配者たちのデモクラシー」の一般的な形を取り始めていて、その中心には、支配 者たち専用のドイツ・デモクラシーがあり、そのまわりに、多かれ少なかれ支配されてい て、その投票行動には何らの重要性もないような、諸国民のヒエラルキーが形成されてい る。 このモデルを採用すると、フランスで大統領を選んでも何も起こらないのがなぜなのか、 よりよく分かる。つまり、フランスの大統領にはもはや権限がないのだ。特に通貨システ ムに関して。 かくしてわれわれの前に現れてきているのは、報道、意見、その他の自由が完璧に尊重 されていて、そういう点では何ら問題がないのだが、基本的にいえることとして、システ ムの安定性が支配者グループの内部での下意識的連帯に基づいているようなデモクラシー
6 ドイツとは何か ? フランスの銀行の利益へのある種の庇護をドイツから引き出すことに腐心しているか とい , っことでした。 私見では、来るべき新たなヨーロッパ条約の最も重要な要素は、もはや絶対に債務のデ フォルトはないということにするあの条項です。金持ちたちを保護するための国際条約。 「スパラシイ時代に生きてるせー」と、ジャンⅡマルク・ライゼ〔フランスの諷刺画家、一 九四一 5 八三年〕なら言ったことでしよう。 ヨーロッパの指導者たちはまたしてもマーストリヒト条約のときと同し幻想に浸り、 ヨーロッパのような大きな地域のすべての問題を、条約なとの文書一本で解決できると思 っているようですね。これは一体なせなのでしよう ? このプロセスの歴史的分析は単純ではありません。ここで話題にしている寡頭支配層は 最近現れてきたのであって、まだ安定してはいません。しかし、フランスとドイツの間の 新しい繋がりは、フランスの上層階級に従来からあるドイツへの傾斜だけでは説明できま 9 せん。フランス側からいうと、自主的隷属から純然たる隷属へ移行したのです。
一・九人ないし二・〇人の水準に接近して行っているのに対し、権威主義的で、かってフ アシズムやコミュニズムに支配されたヨーロッパの地域では、出生率がきわめて低く、同 じ基準での子供の数の平均が一・三人から一・五人なのです。 それにしても、もしドイツがヨーロッパ中央銀行の介人能力に関するどんな交渉にもあ くまで否定的なら、われわれはどうすべきでしようかューロのために死ななくてはいけ ないのでしようか ? そんなバカなことはないでしよう ! 。、ートナーであ ドイツがヨーロッパ中の保守派があの国に捧げる讃嘆の声に酔いながら / るはずの国々を跪かせていくのを目の当たりにするのは悩ましいかぎりですが、強迫観念 に呑み込まれてはいけないと田 5 います。 田 5 い出しましよう。ドイツはもともとはユーロの話など聞きたくもないというふうだっ 家 るたのです。ューロが創出されてからも暫くはすっと、ユーロ圏から離脱するぞという脅か 仕しを繰り返していたではありませんか 第今日では、ドイツの政府と経済界の上層部はすでに、ユーロの終焉があの国にとって決 富定的な打撃になるであろうことを理解しています。なにしろ、ドイツだけが平価切り下げ に踏み切れないでしようから 193
自らの民主主義的システムを奪われる一方で、社会を牛耳るべく現れてくる新しいタイプ の人間はきまってプリュッセル〔ヨーロッパ委員会の所在地〕、フランクフルト、ベルリン幻 支配システムの三つの極ーーの出身で、彼らが登場するたびに、さくらの役目を引き 受ける支社に成り下がったパリが拍手喝采するのです。 では、ドイツが、またもや敵たとでも ? ナチズムが現れる前にドイツがヨーロッパにもたらしたもの、宗教改革と大衆の識字化 が一番に挙けられるでしようが、そのすべてを私は承知しています。 あの国は直系家族、これは子供のうちの一人だけを相続者にする権威主義的な家族シス テムなのですが、直系家族を中心とするひとつの特殊な文化に基づいています。そこに、 ドイツの産業上の効率性、ヨーロ ッパにおける支配的なポジション、同時にメンタルな硬 直性が起因しています。 ドイツは歴史上、支配的なポジションについたときに変調しました。特に第一次世界大 戦前、ヴィルヘルム二世の統治下でビスマルク的理性から離れ、ヨーロッパでヘゲモニー
超えている。デンマークは西の方に目を向けており、ロシアのことをさほど気に病んでい フィンランドはというと、ソ連と共に生きることを学んだ国であり、ロシア人と理解し 合う可能性をなんとしても疑おうとするような理由を持っていない。 たしかにフィンランドはロシアと戦争状態にあったことがある。一八〇九年から一九一 七年の間、ロシア皇帝の帝国に所属したが、それは一つの大公国という形であって、その おかげで事実としてはスウェーデンの支配から逃れていることができたのである る 耳フィンランド人たちにとって、自分たちの国を植民地化しかねない強国は実はスウェー をデンなのだ。だから彼らが本当にスウェーデンのリーダーシップのもとに戻りたいと田 5 っ 大 ているのかどうかを私は疑う。 亠地図の上では、フィンランドとデンマークは南欧諸国と同様に支配されているというこ ョとになる。バカけていると思うかい ? フィンランド経済はすでにロシアに対するヨーロ ツッパの攻撃性の代償を支払っている。また、デンマークはイギリスが離脱していくことで 困難な状況に置かれるだろう。
「ドイツ帝国一の勢力図 自主的隷属 - ロシア嫌いの衛星国 イ事実上の被支配 - 難脱途上 - 併合途上 - 無法地帯 ガスパイプライン フィンランド スウェ ーテ、ン ノルウェー 0 ノース・ストリーム ロシア ナ イ ク ラ ドア " ホ′ー′。 モ ( マュ′ ア一ル ン ア ア ン ロ グ ン モ ア ギブス 工 ) ン ル一 ) ン。 へ。セ . , ラ ( " 。ボい ク、フ 工ストニア ラトア リトアニア テンマーク オランダ アイルランド イギリス チェコ サウス・ストリーム グルジア ポルトガル スへイン トルコ ーギリシャ 0 アルバニア マケドニア 0 9 「ドイツ帝国」の誕生 冷戦崩壊によって生まれた「ドイツ帝国」。 EU の東方拡大によってドイツは、 社会主義政権下で高い水準の教育を受けた良質で安い労働力を活用し、 済を復活させ、ヨーロッパを支配するに至っている。東欧で NATO が安全を 確保しているのは、実はドイツの空間。ロシアは、ソ連時代、東欧諸国を支 配することによる軍事的なコストを経済的な利益で埋め合わせることができず、 かえって弱体化したが、アメリカのおかげで、ドイツにとって、軍事的支配の ( 本文 42 頁以降参照 ) コストはゼロに近い。 ロシア天然ガス・バイプライン問題 ガスパイプラインの真の問題は、ウクライナを通過していることではない。到着 点がドイツにコントロールされていること。「ウクライナ vs. ロシア」よりも、「ド ( 本文 51 頁以降参照 ) イツ vs. 南欧」の問題だ。