支配権 - みる会図書館


検索対象: 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる
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1. 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる

自らの民主主義的システムを奪われる一方で、社会を牛耳るべく現れてくる新しいタイプ の人間はきまってプリュッセル〔ヨーロッパ委員会の所在地〕、フランクフルト、ベルリン幻 支配システムの三つの極ーーの出身で、彼らが登場するたびに、さくらの役目を引き 受ける支社に成り下がったパリが拍手喝采するのです。 では、ドイツが、またもや敵たとでも ? ナチズムが現れる前にドイツがヨーロッパにもたらしたもの、宗教改革と大衆の識字化 が一番に挙けられるでしようが、そのすべてを私は承知しています。 あの国は直系家族、これは子供のうちの一人だけを相続者にする権威主義的な家族シス テムなのですが、直系家族を中心とするひとつの特殊な文化に基づいています。そこに、 ドイツの産業上の効率性、ヨーロ ッパにおける支配的なポジション、同時にメンタルな硬 直性が起因しています。 ドイツは歴史上、支配的なポジションについたときに変調しました。特に第一次世界大 戦前、ヴィルヘルム二世の統治下でビスマルク的理性から離れ、ヨーロッパでヘゲモニー

2. 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる

ヾ、レレ」 1 しこ それもまた現代が産み出した幻影です。過剰な怪奇です。人びとは、グロー 自由経済がトランスナショナルな寡頭支配を生んだと信じ込んでいますね。人類学的な意 味における文化という要素を捨象してしまうから、実は幾つもの異なる寡頭支配層があり、 その間の関係は仮借のない力関係によって構造化されているという事実が見えなくなるの です。 フランスの寡頭支配層の特異性は中央官庁上層部との近さにあります。そのメンバ 必ずしも資産家の子女ではないが、しはしはエリートの高等教育機関であるグランゼコー ルの出身者であり、一般にひどい英語を話し、その生活様態において信じ難いまでに典型 的なフランス人で、そして本物の主人たち、つまりアメリカの寡頭支配者たちに騙され続 るスタンダード & プアーズ、ムーディーズといった大手格付け会社への服従は、アメリカ 仕の寡頭支配層への服従にほかなりません。 漏ドイツの寡頭支配層はというと、これは支配のシステムに新しく参人してきたわけです 富ゞ、 カこのところフランス人たちをただの臣下のように扱う習慣を身につけ始めています 中国の寡頭支配層の特徴は共産党との緊密な絡まりにあります。世界の寡頭支配層のこ ー 79

3. 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる

その例から、現在の寡頭支配者たちは千里も離れています。もしこの言葉が反ユダヤ主 義のスローガンを思わせることがないのならば、金権支配という言い方をするほうが好ま しいでしょ , つ。、 しすれにせよ、次のことをしつかり覚えておきましよう。少数者の支配で あるオリガルキー ( 寡頭制 ) は、語源的に最も優れた者の支配を意味するアリストクラシ ( 貴族制 ) とは違うのです。 需要不足を補って破綻したサブプライム・ローン 寡頭支配者たちは他のカテゴリーの者よりも失うものをたくさん持っていますよね。 非合理性ですべてを説明できますかね ? 家 国 る 社会的なアクターの行動は合理的なものと非合理的なものの間で揺れ動きます 仕二〇〇八年の危機の出発点は、中国その他の国々が、低賃金のおかげで世界の生産の内 漏のますます大きな部分を占有して、それが富裕な国の中での所得の抑制、したがって需要 富の不足を生み出したというところにありました。その結果、世界の生産高は増大するのに、 賃金は低下していったのです。

4. 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる

となのだ。 私はここで、ベルギーの人類学者ピエール・ヴァン・デン・ベルグの政治学概念を取り ご。印天し 上けたい。 HerrenvoIk democracy 、すなわち、「支配者たちのデモクラシー ないでくれたまえ。「支配者たち」という、歴史的に忌わしいイメージの付着したこの言 葉を発したからといって、地球が瓦解するわけではない。私は最近、ドイツの新聞『ディ ・ツアイト』のインタビューを受けたときにも同じ用語を用いたよ 当初、ピエール・ヴァン・デン・ベルグは、エスニック・デモクラシーのこの概念をア 耳パルトヘイトの南アフリカに適用したのだった。アパルトヘイトの南アフリカには、自由 を主義的・民主主義的ルールにしたがって申し分なく機能する平等な市民の集合体があった 大 のだけれども、その自由や民主主義は被支配者たちが存在するという条件でのみ成立して 人種差別時代のアメリカと同じだ。アメリカでは、白人グループ内部の平等が、アメリ カ原住民および黒人に対する支配によって保障されていた同じように、イスラエルも イ 「支配者たちのデモクラシー」としてカテゴライズできるだろう。イスラエルの民主主義 に一体感と自由が存在するのは、敵と見なされるアラブ人たちの集団が存在していること

5. 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる

によってであるから。 ドイツ専用のデモクラシー もし現在のヨーロッパを描かなけれはならないとすれば、もし経済地図を政治的な面で コメントしなけれはならないとすれは、私は一一一口 , つだろつ。ヨーロツ。、、 あるいはドイツ帝 国が「支配者たちのデモクラシー」の一般的な形を取り始めていて、その中心には、支配 者たち専用のドイツ・デモクラシーがあり、そのまわりに、多かれ少なかれ支配されてい て、その投票行動には何らの重要性もないような、諸国民のヒエラルキーが形成されてい る。 このモデルを採用すると、フランスで大統領を選んでも何も起こらないのがなぜなのか、 よりよく分かる。つまり、フランスの大統領にはもはや権限がないのだ。特に通貨システ ムに関して。 かくしてわれわれの前に現れてきているのは、報道、意見、その他の自由が完璧に尊重 されていて、そういう点では何ら問題がないのだが、基本的にいえることとして、システ ムの安定性が支配者グループの内部での下意識的連帯に基づいているようなデモクラシー

6. 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる

き延びている。フランスは六五〇〇万人の住民をドイツ圏に付け加える。ドイツ圏に、大 陸のスケールの中でひとつの限界を越える人口の塊を提供しているわけだ。 ほとんど一一億人の規模 : ということは、われわれはすでにロシアや日本の規模を越えているということだね。 この地図の黒とグレーの塊がドイツのパワーの中心を表している。この塊が、ヨーロッ ハ全体のシステムの中で被支配地域となった南ヨーロッパを従属した立場に置き、抑え込 んでいる。 ドイツはイタリアで、ギリシャで、またたぶん南ヨーロッパ全域で、ドイツが押し付け る財政規律のゆえにひどく嫌われている。しかし、それらの国々は何もできない。なぜな ら、ドイツがその隣接空間とフランスを伴って、いっさいを支配する能力を有しているか らだ。支配されている国々は、この地図では黄色で示されている 「被支配地域」 , | ー南欧

7. 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる

その金融フローの自由化が実際に不平等を信じられないほど増大させました。 この件について、私はトマ・ピケティの学派に敬意を表します。彼らがおこなった世界 規模の比較研究が、アメリカとイギリスで「一 の超富裕層というテーマが浮上するこ とに決定的に寄与したようなのです。 システムがどんなに不透明に見えても、あるグループがどのようにして富の大きな部分 をコントロールしているかを分析すれば、システムの実態に近づくことができます。 そうだとすれは、本質的な問題は、市場自体の問題ではありません。寡頭支配層こそが、 そして寡頭支配層が国家との間に持っている関係こそが、本当の問題なのです。したがっ て、この寡頭支配層を特定し、その構造、その生活様式、その構成を分析する必要がある のです 国ごとに異なる形での寡頭支配ーー左翼が見落としているもの それは特定の土地から離れたクループ、一〇年前にみんなをきよっとさせていた表現 を用いれは、「クロー " ハル匕 ィされたエリートたち」のことですか ? 778

8. 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる

アメリカ vs. 「ドイツ帝国」 : 人口 ( 出典 : EU 統計局 & census Bureau) - 併合途上 - 離脱途上 - 事実上の被支配 - ロシア嫌いの衛星国 自主的隷属 - ドイツ圏 アメリカ合衆国 ん億億億億億 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 アメリカ vs. 「ドイツ帝国」 : 実質 GDP ( 2005 年の恒常ユーロと 2005 年の為替レートにおいて ) ( 出典 : EU 統計局 & BEA) 0 ( ユーロ ) 1 2 兆 - 併合途上 - 離脱途上 - 事実上の被支配 - ロシア嫌いの衛星国 自主的隷属 アメリカ合衆国 1 0 兆 8 兆 6 兆 4 兆 2 兆 1 960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 ドイツに支配されたヨーロッパ vs. アメリカ とくに 2005 年以降に現れたのは、ドイツ以外の国の産業システムが壊滅し、 ドイツだけが得をするという「ドイツー人勝ちのシステム」だ。ヨーロッパの低 質金ゾーンには産業発展の余地がまだまだ存在する。この不均衡をうまく利用 すれば、ドイツはアメリカの産業システムを死に追いやることができる。人口 、アメリカは単独でドイツ支配下にあるヨーロッパに対抗できない。 ( 本文 38 頁以降参照 ) 0

9. 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる

ギリシャの国家が会計をごまかすのを助けたゴールドマン・サックスは高利貸しのよう な振る舞いをしました。今、人びとがギリシャ人を「助ける」と言「ていますが、それは お金を脅し取られる立場に彼らを留め置くということです。ューロ圏の危機を創り出した のは基本的に、借り手の呑気さではなく、貸し手の攻撃的な態度です。 その寡頭支配者たちをあなたはひとつの社会階級のように定義するのですか ? そし てその場合、寡頭支配者たちは階級意識を持っているというのですか ? 寡頭支配者たちはひとつの社会階級のように振る舞います。しかし同時に、彼らの内に は非合理性や、さらには集団的な狂躁のようなものさえも感じられます。 ですから私は、マルクス主義的なイデオロギー分析に拠るべきか、精神医学に拠るべき かを自問しています。とはいえ、特権的な立場にいる社会グループは必すしも頽廃してい す、無責任でもありません。一八世紀のフランス貴族たちは租税免除に執着していました が、それとは違ってイギリスの上層階級は高率の租税圧力を受け人れていました。その彼 らが世界を征服したのです。

10. 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる

ストの安い彼らの労働を用いて自らの産業システムを再編した。 四五〇〇万人の住民を有するウクライナの労働人口は、ソ連時代からの遺産である教育 水準の高さと相俟って、ドイツにとって例外的な獲得物となるだろう。これはとりもなお さす、今後非常に長きにわたってドイツが支配的な地位を保っという可能性、そして特に、 支配下の帝国を伴うことによって今すぐにもアメリカを上回る実質的経済大国になるとい 哀れなプレジンスキー ! 彼の見込みは外れる う可能性にほかならない。 耳ガスハイプライン問題ーーー争点は「ロシア恥ウクライナ」でなく「ドイツ恥南欧」 を では、エネルキー問題のレベルではいかがてすか ? 陸 大 ロ この地図 ( ロ絵参照 ) に主要なガスパイプラインが示されているのは、ひとつの神話を ョ覆すためだ。ガスパイプライン「サウス・ストリーム」の建設によって、ロシアがエネル ギー関係をウクライナによって支配されるのから逃れようとしているという神話があるね。 イ ウクライナを通っているこ 存在するガスパイプラインのすべてのルートを見てほしい。 とだけが共通点ではないよね。ドイツに通じているということも共通点だ。したがって、