権威主義 - みる会図書館


検索対象: 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる
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1. 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる

戦争なき独裁 いわゆる恐怖の均衡が核兵器の領域から金融の領域に移ったように見える今日、われ われはヨーロッパ内で戦争を起こさすに済ませることがてきるでしようか ? 戦争が起こるぞという脅かしは、システムが振り回すさまざまな武具のうちの一つです。 この疲れ果てた大陸で起こりようのないものがあるとすれば、それは戦争ですよ。誰もこ の地域を侵略しては来ません。危険は、生活水準の低下や教育システムの内部炸裂や公共 サービスの破壊から来るのです。 以上のことを確認した上で言うのですが、権威主義的体制が敷かれることはあり得ます。 とりわけフランスでは、緊張関係にある自由主義的な価値と平等主義的な価値の組み合わ せが、ボナバルティズムに帰着することがあり得る。もし生活水準の低下が加速するなら、 もし左翼が金融システムのコントロールの再開や、ヨーロッパの再編成のようなオルタナ テイプを提案する器量を持たないなら、もしその結果、保守派が権力の座に留まるなら、 われわれはいうまでもなく権威主義的な体制に行き着くでしよう。 現在の共和国大統領の決定はすべてそのような体制の確立を目指しています。メディア 220

2. 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる

「財政規律の重視」はドイツの病理 「財政のゴールデン・ルール」と呼ばれている概念は、人間活動のうちの一つの要素をい わば「歴史の外 / 問題の外」に置いてしまおうとするもので、本質的に病的だといわなけ 何 れはなりません。それなのに、フランスの指導者たちはこの病理を助長し、励まし、ドイ ツツの権威主義的文化をそれがもともと持っている危険な傾斜の方へと後押ししたのです。 そういうビジョンは少し古くないですか ? 国民性をそうやってタイプに分ける見方 たび手に人れますからね。そうすると、それらの国の企業がドイツ企業に対しても競争力 ですから、ドイツ経済界のトップたちの振る舞いは合理的かっ実 で上回るかもしれない。 際的です。彼らの意向はユーロの救出であり、アンゲラ・メルケルはそれに従う。 しかし、各国の憲法にまで経済運営の絶対的規則を書き込もうとする意志の内に、私は 不安の表現を感じ取ります。まるで自由な人民と理性的な最高指導者を退場させ、その代 わりに、最終的な権限をもってドイツ人たちの問題を決定する自動的な権威を戴こうとし ているかのようです 163

3. 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる

2 ロシアを見くびってはいけない 図表 24 男はつらい ( 各国の男女平均余命 ) 60 歳時点での余命 ( 女性 ) ( 歳 ) ス / イン 30 ・ハンガリー イタリア 28 ポーランド ・・ロシア 26 24 22 20 1950 国内で支持される権威主義的デモクラシー その社会では、ソ連時代から継承された高い 教育水準が保たれていて、男子よりも女子のほ うが多く大学に進学しています。また、人口の 流出よりも流人のほうが多いことからも、ロシ ア社会とその文化が、周辺の国々の人々にとっ 0 て魅力的なのだということが分かります これが、他によい言い方がないので私が仕方 なく「権威主義的デモクラシー」と呼ぶものに 繋がっているのです。すなわち、強力で粗暴で さえあるが、それにもかかわらす大多数の国民 から暗黙の支持を受ける体制です。 O はロシアのエリート養成機関 くどいようですが、ソビエトの政治警察で 1990 1980 1970 2010 ( 年 ) 2000 9 一 8

4. 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる

政権交代よりも好んで国民一致を実践する国を民主主義的と形容する気には、私は必す しもなれません。しかもドイツでは、国民に規律を重んじる人類学的素質があるおかげで、 こともあろうに社会民主党が給与水準抑制策をたいした抵抗にも遭わすに実施できたので す。 ドイツは申し分なくエゴイスティックな戦略で自由貿易に適応しましたよ。国内産業の 工場を部分的にユーロ圏の外に移転し、フランス、イタリア、スペインに対して競争的な ディスインフレ政策を実施し、それからユーロ圏をまるごと捕獲した市場のように使って、 クラウゼヴィッツの そこから巨額の貿易黒字を引き出したのです。この交易戦略は 別の手段をもってする権威主義的・不平等主義的伝統の継 家『戦争論』に倣っていえは る続です。 え 仕 層 一九三 0 年代の対立が再来 裕 富 ふさけて、私たちを恐がらせようとしているのですか ? ー 91

5. 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる

しかし、価値と呼ばれるものが現実的であれ神話的であれ、価値の問題を脇において、 もつばらカ関係の現実に注目する戦略的現実主義の世界に身を移せば、今日、二つの大き な先進的産業世界の存在を確認することになる。すなわち、一方にアメリカ、他方に新た な「ドイツ帝国」である。ロシアは第二次的な問題でしかない。 したがってこれからの二〇年間は、東西の紛争とはまったく異なるものに直面しなけれ ばならないのだ。ドイッシステムの擡頭は、アメリカとドイツの間に紛争が起こることを 示唆している。これはカと支配の関係に基づく内在的なロジックである。私の考えでは、 る 耳未来に平和的な協調関係を想像するのは非現実的だ。 を この段階で、しかしながらわれわれは改めて価値の概念を再導人することができる。た 陸 。、だしそれは、次のことを強調するためだ。 亠ある意味で現実主義的な人類学者の観点から見て、あるいは数世紀に及ぶ長い期間に注 ョ目する歴史家の観点から見て、アメリカとドイツは同じ諸価値を共有していない。大不況 の経済的ストレスに直面したとき、リべラルな民主主義の国であるアメリカはルーズベル イ トを登場させた。ところが、権威主義的で不平等な文化の国であるドイツはヒトラーを生 み出したのだ。

6. 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる

自らの民主主義的システムを奪われる一方で、社会を牛耳るべく現れてくる新しいタイプ の人間はきまってプリュッセル〔ヨーロッパ委員会の所在地〕、フランクフルト、ベルリン幻 支配システムの三つの極ーーの出身で、彼らが登場するたびに、さくらの役目を引き 受ける支社に成り下がったパリが拍手喝采するのです。 では、ドイツが、またもや敵たとでも ? ナチズムが現れる前にドイツがヨーロッパにもたらしたもの、宗教改革と大衆の識字化 が一番に挙けられるでしようが、そのすべてを私は承知しています。 あの国は直系家族、これは子供のうちの一人だけを相続者にする権威主義的な家族シス テムなのですが、直系家族を中心とするひとつの特殊な文化に基づいています。そこに、 ドイツの産業上の効率性、ヨーロ ッパにおける支配的なポジション、同時にメンタルな硬 直性が起因しています。 ドイツは歴史上、支配的なポジションについたときに変調しました。特に第一次世界大 戦前、ヴィルヘルム二世の統治下でビスマルク的理性から離れ、ヨーロッパでヘゲモニー

7. 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる

2074.5 2 ロシアを見くびってはいけない 乳児死亡率の上昇から予見できたソ連崩壊 乳児死亡率が低下し、出生率が上昇しているプーチンのロシア 経済指標は捏造できるが、人口学的指標は捏造できない ロシアの安定化を見誤った西側メディア 国内で支持される権威主義的デモクラシー はロシアのエリート 養成機関 ロシア経済の二つの切り札 人口学的指標が示すロシアの健全さ 3 ウクライナと戦争の誘惑 2 ミ 45 家族構造からみたロシアとウクライナ 国家が機能してこなかった「中間ヨーロツ。、 人口学で確認できるウクライナの解体 「親派」と称される極右勢力 「プーチン嫌い」が真実を見えなくさせている

8. 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる

と伝統的社会文化の強化を通してでした。 ドイツ文化のニつの危険性 それはそれでよいのですが、権威主義的文化はつねに二つの問題を抱えています。 一つはメンタルな硬直性、そして、もう一つはリーダーの心理的不安です。 すべてがスムーズに機能する階層構造の中にいると皆の居心地がよいのですが、ピラミ ッドの頂点にいるリーダーだけは煩悶に苛まれます あなたの念頭にあるのはヒトラーですか ? いや、むしろヴィルヘルム二世です。また、誰ひとりとして誰がそう決めたのか知らな いうちに戦争に突人してしまった日本軍のことも考えています。 硬直性のほうは、しはしは乗り越え得るものです。 ドイツ経済界のトップたちは、ユーロの死が彼らを危険に陥れることをよく理解してい ます。ューロがなくなれば、フランスやイタリアが平価切り下けに踏み切る可能性をふた 162

9. 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる

次はイギリスだ。私はイギリスを「離脱途上」というように描写した。なせならばイギ リス人たちは、彼らにとってぞっとするものである大陸ヨーロッパのシステムに加人する ことはできない。 彼らはある種のフランス人たちと違い ドイツ人に従う習慣を持っていないのだ。それ だけでなく彼らは、ドイツ的ヨーロッパよりはるかにエキサイティングで、老齢化の程度 もより低く、より権威主義的ではないもう一つの別の世界である「英語圏」、つまりアメ リカやカナダや旧イギリス植民地の世界に属している。 私はある折りに、彼らのジレンマに共感すると述べた。貿易上は格別に重要であるが、 メンタル的にはどうしても和解できないタイプのヨーロッパを前にして、イギリス人であ ることはどれほど居心地の悪いものであるかを語ったのだ。 ドイツ覇権よりアメリカ覇権の方がマシ いっか彼らは LLJD から去ると思いますか ? 「離脱途上」 イギリス

10. 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる

民戦線でした : 自己破壊に向かう資本主義と、何はともあれ自律的構築に向かうヨーロツ。ハの間に、 ひとつの緊張関係を見ますか ? ハワーの場は分析するのが困難で、われわ いや、私に見えるのは全然別のものです , れが知覚するのはもつばら先進諸国に共通のもの、すなわち、不平等の拡大および支配と いう現象です。 アングロサクソンの世界では個人の自由が人びとの体に染みついています。 ッパには、政治的権威と官僚化の表れが存在します。 しかし大陸ヨーロ る ューロ圏、あるいはむしろその弱い部分 ( すなわち、ドイツを除くューロ圏のすべて ! ) す では、われわれはある種の混成形態に直面します。つまり、各国の責任者はベルリンの圧 ロカの下で、政府財政の健全化のために任命されますが、それはゴールドマン・サックスの ュために働いた後でなのです。彼らは支配の二つの領域の交差するところにいます。 ところが、フランスはまさにその交差海域をその場しのぎで航行しています。 209