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検索対象: 「ピアノ力」をつける!
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1. 「ピアノ力」をつける!

らえすぎないことが大切です。表情豊かにするためのヒントなのですから、もっと多彩で 体温を感じる言葉として、置き換えてみましよう。 たとえば、同じ力でも、どんな曲のどのようなところについているかで、表現方法は変 わります。「そっとささやくように」弾く、「遠くで響いているよ、つに」弾くとイメ 1 ジす ることで、グッとカの表情が生きてきます。また、 / でも「太い声で朗々と歌っているよ うに」弾く音と「情感が溢れてこみあげてくるようなイメ 1 ジで」弾く音とでは、まった く違った感じがしますね。 極端なことをいえば、物理的な音量が出ていなくても、表情としてほしい「 / 」のイ る メージが伝われば十分なのです。 っ を カ 響く音を出す ア 私たち演奏家の間では、「近鳴りのフォルテ ( / ) 」という言葉があります。近くで聴く とすごい音量が出ているようでも、少し離れると聴こえにくい音のことをいうのです。ほ 章 んとうには響いていない音なんですね。ホールの一番後ろの席まで聴こえるのが、ほんと第 うに響いている音なんです。一流の役者さんは、ささやくような声ですら、大劇場の一番

2. 「ピアノ力」をつける!

一生懸命訓練して、五本の指が均等に使えるようになったとしても、肝心の歌心が育まれ ていなければ意味がありませんし、「ピアノ力」がついたことにはなりません。身体は表 現するための手段に使うものなので、表情豊かに弾けるような手や指を作っていくことが なによりも大切なのです。 たとえば「ハノン」というクラシック系の教本があります。これは同じ音型を低音部か ら高音部まで繰り返す練習曲で、普通に弾くとえらく退屈なものです。 でも、一音一音に心を込めて歌いながら弾くと、それなりに楽しい曲に聴こえてきます。 音階 ( スケールといいます ) や分散和音 ( アルベジオ ) をすべての調で弾けるようにする と、技術的な基礎力がっきますが、これも、「ピアノ力」をつけるという意味合いからす ると、ただ機械的に音のつぶを揃えることだけに気を遣うよりも、美しく抑揚をつけ、歌 うように弾く方が有効です。無味乾燥な音がならぶよりも、表情とともに聴こえる音の方 が、はるかに感じが良いのです。 ハイエルでもそうです。 楽譜を正確に弾くことだけが目的になってしまうと、楽しくないし味気のない音楽にな り、実になる技術はっきません。音楽の知識にも同じことがいえます。音楽表現に活きる、

3. 「ピアノ力」をつける!

人前だと上手く弾けない ? どうも皆さんは、「人前でうまく弾ける」ということを、勘違いされているようです。 たいていの場合、「うまく弾けた」かどうかは、ミスがあったかなかったかという問題の ようなのです。家で弾く時は、こんなにもミスをしないのに、人前だとミスを繰り返して しま、つとい、つことなのでしよ、つ プロはど、つでしよ、つか ? ノーミスで弾いているように見えますか、いつもいつも完璧に弾けているわけではあり ません。人間ですから、身体の調子も含めて、いつもベストの状態を維持できるわけでは ないのです。私たちは、ミスやアクシデントをも魅力にしてしまおうという、前向きな気 持ちでステ 1 ジに立ちます。それは経験からノーミスで弾けば成功、ミスがあれば失敗と 決めつけられるものではないことを知っているからです。 「いつもならうまく弾けるのに、人前だとうまく弾けない」とおっしゃいますが、その 基準はどこにあるのでしようか。昨日と今日の演奏は違うし、明日もまた変化するはずで す。間違える間違えないに関わらず、その音色や表情付け等の音楽的内容は、微妙に違っ てきます。そこが音楽表現の醍醐味でもあります。

4. 「ピアノ力」をつける!

です。 たとえば、《家路》の冒頭にある Largo に注目してみましよう。これは「幅広くゆった りした」という意味です。こどもより経験豊富なおとなは、この言葉とこの音楽から思い 起こされるイメ 1 ジがたくさんあると思います。それを自分なりに表現してみましよう。 美しい音で弾けていますか ? 身体に余分な力が入っていませんか ? 歌いながら弾いていますか ? こんなにカンタンな楽譜の中にも、やるべき練習がたくさんあります。 どんな練習曲でも、ほんとうに、自分が感じるように表現できたのか、強弱の付け方を 何通りもやってみてその変化に気付いたのか、タッチは充分できたのかなど、一曲の練習 内容をもっと濃くしていきましよう。よく、表現は技術を身につけてからだ、と考えてい る人がいますが、表現するための技術として習得していかない限り、たとえ技術だけを身 につけたとしても無味乾燥な演奏にしかなりません。最初から表現するための技術として 身につける必要があるのです。 上達するためには、人にピアノを聴かせるとい、つことも、ぜひ実践していただきたいと

5. 「ピアノ力」をつける!

う感じに変化するのです。イメージは独自の思い込みで構いません。自分なりのイメージ を大切に、それを表していこうとする気持ちが大切なのです。そうすることで、初めて、 イメージを伴ったレッスンというものが可能になります。 やさしい音を出したいと思えばソフトなタッチ、明るく弾きたいと思ったら、ど、つ弾け ばよいかその表現方法をレッスンで教えてもらうことができるわけです。譜面が読めるよ うになるとか譜面通り弾けるようになるのは、独学でもできますが、それ以上のものはレ ッスンでないと体得していくのがなかなか難しいでしよう。 今は一回だけでもという教室もあります。定期的に通うとなると、仕事をしている とどうしても勇気がいるでしようが、たまにでもいいから先生のアドヴァイスを受け、前 、つ 通 述のようなレッスンが展開されると最高ですね。 ン レッスンで、教師の方から、このフォルテ ( / ) を意識してとか、ここはもっと静かに ス 弾きましようと言、つことは簡単なことです。でも、すべてその通りにしてしまうと、それ レ は先生の音楽になってしまいます。それでは、あなたのための個人レッスンにはなりませ章 第 ん。 皆それぞれに、音楽性も感性も違うのですから。自分なりの音楽を、先生といっしょに

6. 「ピアノ力」をつける!

るテキスト、ステップ 1 では弾きやすくするために、極力音を少なくアレンジしていただ 本質だけで迫るしか きました。ですから、私がふだん弾いている音の多いものとは違い、 なかったわけです。私は、音が少ない曲でもこんなに魅力的に輝きますよ、ということを 言明したかったのです。 音色の美しさと表現力勝負の、ほんとうに手を抜けないものでした。表現力の豊かさと 音色の魅力こそが音楽をする意味なのです。 「あの単音だけのメロディが、こんなにきれいになるんですね」 違 勘 「秋に聴く《別れの曲》は、原曲よりこちらの方がグッときますね」 最近は、「ピアノの練習をしているうちに、だんだんと本質がわかってきた」という人大 の て か増えてきたようです。 っ ピアノを弾くのが辛くなるのには、必ず原因があります。その多くが、「ピアノが弾け ア る」という目標に近づく方法を間違えているのではないでしようか 音楽は、音を楽しみながら表現していくもので、技術的なことは表現のための手段にす 章 第 ぎません。音楽の原点から離れ、技術的なことだけに走った時苦しみは始まります。 こどものようには技術をどんどん覚えられないけれど、逆に、こどもと同じではないか

7. 「ピアノ力」をつける!

どんな音色がほしいのかは、演奏する側にイメージができていることが大切です。自由 にイメ 1 ジを膨らませて、多彩な音色を奏でてみましよう。 強い音にもいろいろある 楽譜には、カ ( ピアノ ) 、 ( メゾピアノ ) 、川 ( メゾフォルテ ) 、 / ( フォルテ ) とい った強弱記号というものが付けられています。これを音の大小だけで捉えると味気のない 演奏になってしまいます。 音楽は表現をすることだと再三お伝えしてきましたね〇たとえば、日常生活でも「大 きい音」という表現だけですべてを伝えられるでしようか ? 落雷の音、皿が落ちて割れ る音、応援団の声、車のクラクション、隣で突然始まる夫婦喧嘩等々、身のまわりのさま ざまな音を「大きい音がしました」というひとつの表現でしか言い表わせないとしたら、 いかにも味気ないですね。 音楽も同じことなのです。 、やや小さく ) 、川 ( やや強く、やや大きく ) 、 カ ( 弱くもしくは小さく ) 、 ( やや弱 / ( 強く、大きく ) は、大筋の目安として表記してあるものなので、これを文字通りにと

8. 「ピアノ力」をつける!

「音色の力」をつける 話し方と音楽的表現の仕方はよく似ているといわれます。早ロの人はテンポ感も速いし、 ハキパキしゃべる人はメリハリの効いた演奏をします。話し方のセンスと音楽的センスは、 どこかでつながっているのかもしれませんね。 音色は声の質のようなものです。ピアノの音色とは面白いもので、柔和そうなご婦人か らダイナミックな音色が響いてきたり、大柄の紳士から繊細な音色が響いてきたりします。 声がひとりひとり違うように、ピアノの音色もそれぞれなのです。 演奏を輝かせるためには、豊かな表現力とともに、この音色の魅力は欠かせないもので る す。人の声に魅力があるようにピアノの音色にも魅力があります。 っ そして、意外にも見落されがちなのが日色のですたぶん、技術や表現よりも、その音 を カ 色については、あまり触れられてこなかったからでしよう。 ノ ア 音色を感じ取るセンサーを磨くには、音色というものが存在していることを認めること から始めます。そして、常に音色に関心をもってみましよう。 章 ひと 最初は、柔らかい音色と硬い音色の一一種類が聴き分けられれば充分です。他人の演奏を 聴く時は、その音色に耳を傾けてみましよう。わかろうとしなくていいのです。耳という

9. 「ピアノ力」をつける!

力が入っていないと思っても、実は思っている以上に力が入っているものです。脱力す るためには、カが入っていることに気付くことがとても大切になります。肩、肘、手首の 順にチェックしてみましよう。力が入っていることを意識してから、脱力していきましょ 責任感や向上心が強い人は、カが入っていることか多いそうです。また、そういう人ほ ど指を速く動かしたくなりますので、御用心。 緊張から動かなくなっているのではなくて、肉体的に動きにくくなっている人は、動か ない指を無理やり動かすのではなく、指使いや表現力でカバ 1 するのも、前向きな解決法 のひとっかと思います。 おとなの場合、無理に動かそうとすると手を傷めますから、基本的には先生に相談しな がら、無理なく動かす方法を、また、素敵に聴こえる表現方法を見つけた方がいいでしょ 指を速く動かす 指を速く動かすために、最初はゆっくりと練習してしだいに速くしていく練習方法もあ ノ 40

10. 「ピアノ力」をつける!

活かせるものとして吸収していかなければ、知識が空回りして上達を妨げます。 こどもの場合は、その子が将来プロを目指すのか趣味でいくのか、同じプロでもポップ ス系を選ぶのかそれともクラシック系のア 1 ティストになるのか、本人もまわりも先のこ とはわかりません。ですから、どの方向に目覚めてもいいように、クラシックを基礎とす るオ 1 ソドックスな教材を使った方が良いでしよう。また、音楽高校や音楽大学を目指す 場合には、クラシックをきちんと弾けることが絶対条件になります。 違 でも、おとなの場合は、まったく関係ありません。演歌で入り演歌で終わるピアノ人生 もおつなものだし、ずっと映画音楽を弾きたい人もいるだろうし、クラシックが基本かど大 の て うかなんてこだわる必要はありません。 からだ っ 音楽の基礎作りとは、表現しようとする意欲と情熱を呼び起こし、表現できる身体、手 ノ ア と指を作っていくということなのです。クラシック系で学ぶかポピュラー系で学ぶかとい う問題ではないのです。 章 第