第 9 章中国雲南省の超多収稲作 多収品種との収量差は 10 % 以内であることがわかった。ハイプリッド品種は中国 のこれまでのイネの増産に大きく貢献してきたことは確かであるが、日本で育成さ れた固定品種タカナリは、ハイプリッド品種と遜色ない生産力を持っことが明らか になった。さらに、タカナリは 1989 年に開発された多収品種であるが、近年は北 陸 193 号など、タカナリよりもさらに収量性の高い固定品種が開発されている (Yoshinaga ら 2013 ) 。ハイプリッド品種は種子生産に多くの労働力を必要とする こと、農家は毎年種子を購入しなければならないこと、コメの品質が均一でないこ となどを考慮すると、その優位性は不確かといわざるを得ない。 5. 雲南省の多収要因を探る こまで、超多収イネの姿とその生育パターン、および近年育成された中国の スーパーハイプリッド水稲の生産力を明らかにしてきた。最後に、雲南省がなぜ多 収になるかについて、比較試験の結果をもとに考えてみよう。 京都と雲南の気象条件の違いを、 2003 年度について図 9 ー 7 に示した。 2003 年度 の京都は冷夏であり、例年より気温、日射ともに低く推移した。雲南の最高気温 は、生育前期は京都よりも高く、生育が最も旺盛な生育中盤には京都よりやや低く 推移した。最低気温は生育末期を除き、京都より概して低く推移した。すなわち、 ( MJ/m2/ 日 ) (a) 日最高・最低気温 25 っ 0 っ 0 ワ朝ワ 11 1 気温 (b) 日射量 20 日 15 射 量 10 . ロ、 - 雲南・ - 住・京都 ロ ロ、 5 0 ・雲南 - ・住・京都 50 0 100 150 100 播種後日数 播種後日数 図 9 ー 7 京都と雲南の日最高気温 ( 実線 ) と日最低気温 ( 破線 ) の推移 (a) と、日射 量の推移 (b) 各プロットは 10 日間の平均値を表す。 150 0 50 225
第Ⅳ部資源多投段階の多収稲作 が高い品種といえる。また、インド型水稲と同様に、登熟後期の茎葉部への炭水化 物の再蓄積が少ない。偏穂重型の中粒種で、耐肥性および耐倒伏性は極めて強い が、収量性はコシヒカリやササニシキと同程度である。 このようなアマローの特性は、リべリナ地域の高日射と生育初期の低温条件下の 直播栽培において、安定して多収を得るのに必要な特性と考えられる 4 ー 3 リべリナ地域の多収要因 収量は、成熟期の乾物重 x 収穫指数という図式でとらえることができる。以下、 この図式に従って、リべリナ地域カ多収となる機構を探ってみよう。 3 品種平均収量で認められたリべリナ地域、長野、京都で、それぞれ 14t / ha 、 9t/ha 、 7t/ha という精籾収量の差は、第 1 に収穫時の乾物重、第 2 に収穫指数の 違いを反映して生じている。 乾物生産 第 1 の要因である成熟期乾物重の地域間差異は、全日射量と気温の違いに起因し ている。すなわち、ヤンコでは生育期間の日平均日射量が 24.3MJ / m2 と、京都や 長野の 1.5 倍もあり、またヤンコと長野は生育期間の平均気温が京都より低く、そ のため 3 品種平均の生育期間が京都よりそれぞれ 20 、 10 日長くなっていることが、 乾物重に地域間差異を生じさせた。 さらに、ヤンコでは、膨大な日射量を最大限に活用するため、生育初期より受光 率を高め、多くの受光日射量の確保を目指して、湛水開始 30 日後の茎数 1000 本 / m2 以上を目標に、高密度で播種 ( 150 ~ 180kg/ha) し、初期葉面積を高める栽培 法が用いられている。その結果、ヤンコの日射受光率は 75 % 、受光日射量は京都 や長野の 2.1 倍の 2400MJ / m2 にも達しているが、その反面、無効分げつ数が多く、 過繁茂状態に陥り生産効率の低い生育となっている。 京都のイネは長野より日射受光率が高く、その結果、受光日射量には両地域では ほとんど差異がない。これは、葉面積の生長が、京都では高温のため促進され、長 野では低温のため抑制されるためである。この結果、京都ではヤンコと同様に無効 分げつが多く、容易に過繁茂状態に陥り、生産効率の低い生育となる。一方、長野 は無効分げつが少なく、過繁茂状態に陥りにくい、生産効率の高い生育となる。 生育期間中の全日射量の乾物への変換効率には、長野でやや高い傾向が認められ 日ゞ 248
第 9 章中国雲南省の超多収稲作 数は 200 粒にも達し、この値は京都で栽培された日本晴の 2 倍以上であった。これ ら 2 品種は京都で栽培しても多収となり、一穂籾数が多かった。多収のためには、 穂数が多ければ穂は小さくてもよいとする考えもあるが、近年の多収イネ育種の傾 向を見ても、 15t / ha を超すような超多収には、穂が大きいことが必須の要件であ るように思われる。面積当たり穂数と一穂籾数の積である面積当たり籾数も、雲南 省の多収イネは 7 万粒 / m2 近い値を示した。 雲南での大きな穂数、一穂籾数そして高い収量は、その形成発達に必要な物質生 産があって初めて実現される。イネが一生の間に生産した物質の量は、収穫時の稲 体の地上部乾物重とおおよそ等しい。雲南では、両品種とも実に 24t / ha もの地上 部乾物が生産されたことが分かった。これはわが国の平均的なイネの約 2 倍の重さ であり、比較試験の両品種の京都での値よりも 40 ~ 60 % も高かった。雲南でのこ の高い物質生産は、生育日数が京都よりも長いことによるものではなかった。タカ ナリと両優培九の京都での生育日数がそれぞれ 152 日と 159 日、そして雲南でのそ れらは 149 日と 157 日であり、雲南の方が生育日数は短かった。 そこで、京都と雲南で見られた稲体の地上部乾物重の差異が、生育のどの時点で 表れたのかを、生育に伴う地上部乾物重の変化から調べてみた ( 図 9 ー 3 ) 。その結 果、播種後約 100 日目頃まで (t/ha) ロ種地点に関わらす乾物 は 30 重は同等の値を示していたが、 それ以降出穂期にかけて、雲南 と京都における地上部乾物重の 地 差が急速に開いていった。この 上 乾 播種後 100 日頃は、ほば両品種 重 の穎花分化期に相当する。穎花 分化期から出穂開花期にかけて は、イネの一穂籾数、籾の容積 が決定し、また花粉が形成さ 、れ、出穂後に穂に移行する炭水 化物が稲体に蓄えられる時期 で、収量ポテンシャルが決定す 南南都都 雲雲京京 九リ九リ 培ナ培ナ 優カ優カ 両タ両タ 25 20 15 、◇ 0 10 5 0 200 150 100 播種後日数 図 9 ー 3 両優培九とタカナリの雲南と京 都における地上部乾物重の推移 50 0 219
著者・執筆分担 ( 執筆順 ) 【編著者】 堀江武 ( ほりえたけし ) はしがき、第 1 章、第 2 章、第 6 章 ( 独 ) 農研機構特別顧問、京都大学名誉教授 【著者】 齋藤和樹 ( さいとうかずき ) - ーー第 3 章、第 6 章 Africa Rice Center 研究員 浅井英利 ( あさいひでとし ) ーー第 3 章、第 5 章 国際農林水産業研究センター研究員 本間香貴 ( ほんま こうき ) ーーー第 4 章 京都大学農学研究科講師 辻本泰弘 ( つじもとやすひろ ) 国際農林水産業研究センター 稲村達也 ( いなむらたつや ) 京都大学農学研究科教授 桂圭佑 ( かつらけいすけ ) 京都大学農学研究科助教 大西政夫 ( おおにしまさお ) 文部科学省教科書検定官 白岩立彦 ( しらいわたつひこ ) 京都大学農学研究科教授 第 7 章 研究員 第 8 章 第 9 章 第 10 章 第 11 章
第 9 章中国雲南省の超多収稲作 開過程には大きな差異はなかった ことから ( 図 9 ー 9 ) 、結局、雲南 の高い乾物生産を可能にした第 1 の要因は、同地の高い日射量に基 葉 づくことがわかった。図 9 ー 8 の W と Sa の関係直線の傾きは、太 数 陽エネルギーから乾物への変換効 率 RUE を表す。生育前半の RUE には品種・環境間で大きな差異は 80 見られなかったが、生育後半には 播種後日数 京都のイネの RUE が雲南より低 図 9 ー 9 両優培九とタカナリの雲南と京都 における葉面積指数の推移 下した。その原因としては、雲南 のイネは、登熟末期まで平均して 約 2.9 % もの高い葉身窒素濃度を維持していたのに対し、京都のそれは、同期間を 平均して 2.4 % と低かったことがあげられる。雲南のイネのこの高い葉身窒素濃度 は、生育後半の高い窒素吸収 ( 図 9 ー 4 ) に支えられており、それらはさらに 30 ~ 45t/ha もの大量の有機物投入によるものと考えられる。実際、雲南の地カの高さ は、無肥料で栽培したタカナリが収量で 10.6t / ha 、窒素吸収で 122kg/ha と、極め て高い値を示したことからもわかる。京都でのそれらの値は、それぞれ 7.3t / ha 、 90kg/ha であった。 以上より、雲南省永勝県涛源村で得られた 16t/ha の超多収は、日射量が高いこ と、および有機物を多投入して窒素吸収を促進し、葉身の高い光合成を生育末期ま で維持させたことの 2 つが、主要な要因と考えられる。さらに、雲南省の夜温が低 く経過することも、呼吸ロスを抑え、高い日射変換効率に寄与したと考えられる。 これらの要因以外に、現地で稲作に従事して印象的だったのは、水温と湿度の低 さである。水温は京都よりも 2 度程度低く、湿度は京都では 80 % 前後を推移して いたのに対し、雲南では生育前半には 30 ~ 40 % 、中盤から後半も 50 ~ 70 % と低 く推移していた。これらは根の活性を生育後半まで高く維持させ、養水分の吸収や 植物体内の水循環を促進させるのに貢献したであろう。これらの点が収量性にどの ように作用しているのかは、さらなる調査・研究が待たれるところである。 ( m2/m2) 8 0.. 南南都都 雲雲京京 九リ九リ 培ナ培ナ 優カ優カ 両タ両タ 6 2 0 0 160 120 40 225
第Ⅳ部資源多投段階の多収稲作 雲南は気温の日較差が京都より大きかったことがわかった。一方、生育期間平均の 1 日の日射量は、雲南 17.7MJ / m2 、京都 11.3MJ / m2 で、雲南が京都よりも 56 % 高 かった。雲南の高い日射量は天野ら ( 1996 ) および Y ⅲ g ら ( 1998 ) も認めており、 イネ多収地域のひとっとして知られているオーストラリアのヤンコでの測定値 23MJ/m2 (Ohnishi ら 1993 ) には及ばないものの、日本と比べてかなり高いとい える。雲南の稲作気象の特徴は、高い日射と日較差の大きい気温にあるといえる。 雲南のこの強い日射が、イネ収量にどのような影響を与えているかを、簡単な数 式を使って調べてみよう。イネの収量 (Y) は作物が生産した地上部全乾物重 (W) の一部なので、 Y=H x w 、と表すことができる。こで H は w に占める y の割合を示し、収穫指数と呼ばれる。京都のタカナリ、両優培九の H はそれぞれ 0.57 と 0.49 であり、雲南でのそれらの値は 0.54 と 0.58 であった。両地点での H に は大きな違いはないため、雲南での両品種の平均収量 15.8t / ha と京都でのそれ 9.8t/ha との大きな収量差は、主に W の違いによることがわかる。 一般に、生育のある時点における稲体の地上部全乾物重 w は、その時点までに イネが受光した日射の積算値 (sa) に比例し、次のように表すことができる。 W=RUE x Sao ここで RUE は太陽エネルギーから乾物への変換効率である。両地 点、両品種の生育に伴う w と Sa の関係を図にプロットした ところ、図 9 ー 8 のような結果 が得られた。 両品種とも、雲南で最終乾物 重が大きいのは、イネが一生の 間に受光した日射エネルギーが 大きいためである。ある生育時 点までの日射の積算受光量 sa は、葉面積の展開パターンに支 配される日射受光率と、圃場に 到達する日射量の積で与えられ る。両品種の葉面積指数 ( 単位 土地面積あたりの葉面積 ) の展 (t/ha) 25 南南都都 雲雲京京 九リ九リ 培ナ培ナ 優カ優カ 両タ両タ 地上部乾物増加量 . ◇ ロ・ 5 0 0 500 1 , 000 積算受光日射量 (MJ/m2) 図 9 ー 8 両優培九とタカナリの、雲南と京都 における積算受光日射量と地上部乾 物増加量の関係 1 , 500 224
第Ⅳ部 資源多投段階の多収稲作 ら を 写真 9 ー 6 雲南で栽培した両優培九の草姿 害などが収量に影響を与えな いよう適切に管理した。 3 ー 2 多収イネの姿と 生育バターン た、それはどのような生育パ ような姿をしているのか、ま をもとに、多収イネとはどの リ、両優培九についての結果 多肥条件下で得られたタカナ 京都・雲南比較栽培試験の 登熟後期まで葉が直立し、大きな穂は群落中層に位置し ターンのもとに形成されるか ている様子が分かる。 について述べたい。 京都と雲南の 2 地点で、窒素施肥 280kg / ha のもと栽培した「タカナリ」と「両 優培九」の収量、収量構成要素、および成熟期地上部乾物重を表 9 ー 1 に示した。 雲南省で、タカナリ 15. lt / ha 、両優培九 16.5 レ ha という極めて高い籾収量が得られ た。この値は日本の平均収量の 2 倍強に当たる高収量である。この両品種はともに 多収性で、京都でもそれぞれ 9.8 レ ha および 9.7t / ha の籾収量を示した。 15 レ ha を 超える多収品種は、面積当たり穂数、一穂籾数ともに著しく多かった。特に一穂籾 表 9 ー 1 両優培九とタカナリの雲南と京都における収量、収量構成要素および成熟期 地上部乾物重 京都 タカナリ 両優培九 タカナリ 両優培九 収量 (t/ha) 9.8 9.7 15.1 16.5 穂数 (/m2) 369 324 256 243 籾数 38.7 41.3 66.8 69.7 ( x 1000 / m2 ) 登熟歩合千粒重 一穂籾数 160 161 206 189 69.5 73.5 74.5 85.0 (g) 23.3 25.5 22.8 242 成熟期地上部 24.4 24.2 172 14.9 (t/ha) 乾物重 収量は粗籾収量を表し、水分含有率 14 % に換算した。 218
第Ⅳ部資源多投段階の多収稲作 ( kg/ha) 一両優培九一雲南 350 ータカナリー雲南 - - ◇一両優培九一京都 ・・ロ - - タカナリー京都 る重要な時期である。雲南のイネが 大きな一穂籾数と高い収量を生み出 したのは、この時期の稲体乾物重で みた生長速度が高いことによるもの である。このことは、イネ収量の地 域間差異や環境間差異は、出穂前約 2 週間の稲体の生長速度の差異に比 例する、という Horie ( 2001 ) の報 告とも一致する。 加えて、雲南のイネの、穎花分化 100 期から出穂開花期にかけての稲体乾 播種後日数 物重の高い生長速度は、同期間の窒 図 9 ー 4 両優培九とタカナリの雲南と 素吸収を著しく高めていた ( 図 9 ー 京都における地上部窒素蓄積量 の推移 4 ) 。実際、雲南のイネは 2 品種平均 で 300kg/ha もの窒素を吸収したの に対し、京都でのそれは 190kg/ha であった。この高い窒素吸収は籾の形成・発達 に不可欠であるとともに、葉の窒素濃度を高め、高い光合成速度を維持するのに必 要である。さらに、京都のイネが出穂後は窒素をほとんど吸収しなかったのに対 し、雲南のイネは出穂後もかなりの窒素吸収が認められた。この吸収窒素も、登熟 期の葉の高い光合成速度の維持には不可欠である。 以上より、 15t / ha を超す超多収イネの姿として、 1 穂の籾数が極めて大きいこ と、および高い光合成速度の維持に必要な葉身の窒素濃度が高く維持されているこ とが示された。さらに、多収イネのこのような特徴は、穎花分化期頃からの高い乾 物生産速度と窒素吸収速度によって生み出されたことが明らかになった。 4. ハイブリッド品種の特徴と生産力 中国でのイネの多収は、しばしばハイプリッド品種と結び付けて語られる。 で、 1990 年代に中国で始まったスーパーハイプリッドライス育種計画で開発され たハイプリッド品種と、わが国の水稲品種との生産力の違いについて触れておきた 300 地上部窒素含有量 ロ、 50 50 0 0 150 200 220
第Ⅳ部 表 10 ー 4 リべリナ地域、長野、および京都で生育した供試品種の出穂期と成熟期 資源多投段階の多収稲作 栽培地 リべリナ地域 ャンコ 農業試験場 長野県伊那地域 信州大学 農学部 京都府京都市 京都大学 農学部 アマロー ササニシキ コシヒカリ アマロー ササニシキ コシヒカリ アマロー ササニシキ コシヒカリ 品種 栽培年 1991 ~ 1992 年 1994 年 1994 年 移植日 湛水開始日 11 月 20 日 5 月 24 日 5 月 13 日 出穂期 7 月 22 日 4 日 6 日 6 日 8 月 10 日 2 月 17 日 2 月 11 日 2 月 16 日 8 月 8 月 8 月 7 月 25 日 成熟期 3 月 31 日 3 月 27 日 3 月 31 日 9 月 29 日 9 月 22 日 9 月 26 日 9 月 9 日 8 月 28 日 8 月 29 日 ト ( 感光性、感温性、基本栄養生長性等を示すパラメータ値 ) を組み込んで予測し たところ、 3 地域での発育日数をよく説明できた。アマローの発育特性は、日本晴 と類似しているとみなすことができる。 耐倒伏性 収穫直前の豪雨により、コシヒカリやササニシキでは 130kgN / ha を施用した区 で倒伏が認められたが、アマローでは 260kgN / ha を施用した区でもそれが認めら れなかったことから ( 写真 10 ー 6 ) 、アマローの耐肥性、耐倒伏性は極めて強いと いえる。 収量性 表 10 ー 5 の収量および収量構成要素をみると、 3 地域とも、アマローはコシヒカ リやササニシキより穂数が少なく、 1 穂穎花数が多かった。このことより偏穂重型 品種であるといえる。また、アマローは、日射量が多いリべリナ地域ではコシヒカ リやササニシキより精籾千粒重が 3g ほど大きくなり、中粒種であることが明確に なるが、京都や長野では、コシヒカリやササニシキとほほ同程度となってしなう。 m2 当たりの穎花数、登熟歩合および精籾収量は、 3 品種間では明暸な差異は認 められなかった。このことから、アマローの頴花生産能力、登熟能力および収量性 は、コシヒカリやササニシキと同程度であるといえる。 3 品種とも精籾収量の地域 間差異は大きく、リべリナ地域、長野、京都での 3 品種の平均収量は、それぞれ 14t/ha 、 9t/ha 、 7t/ha であった。 246
オーストラリア乾燥地の大規模多収稲作 第 10 章 アマロー、 260kgN/ha コシヒカリ、 130kgN/ha 写真 10 ー 6 収穫直前の豪雨後のコシヒカリ ( 130kgN / ha 施用区 ) とアマロー (260kgN/ha 施用区 ) の様子 コシヒカリでは若干の倒伏が認められたが、アマローでは 2 倍施肥でも 倒伏はほとんど見られなかった ( 写真後方は別品種の別処理 ) 。 表 10 ー 5 リべリナ地域、長野、および京都で生育した供試品種の収量と収量構成要素 穎花数 登熟歩合精籾千粒重精籾収量 穂数 栽培地 (t/ha) ( g) ( x 1 開 / m2 ) ( / 穂 ) (x 1 , 网 / ) 13.4 28.5 リべリナ地域 57.0 82.8 70.6 アマロー 14.8 25.1 69.0 85.6 ササニシキ ャンコ 11.0 62.8 13.4 農業試験場 86.1 24.4 コシヒカリ 63.7 10.3 62.4 27.9 7.7 長野県伊那地域 73.3 37.7 122.5 アマロー 94.0 27.5 信州大学 ササニシキ 33.8 3.8 89.3 10.0 85.7 27.3 農学部 43.0 コシヒカリ 4.3 99.8 6.6 64.7 25.4 京都府京都市 40.4 3.4 118.4 アマロー 6.3 25.6 京都大学 38.5 64.5 ササニシキ 4.3 90.3 72 24.9 69.6 農学部 41.7 4.6 90.5 コシヒカリ ロロ 生態特性 コシヒカリやササニシキと比較して、低温、水ストレス条件下でも アマローは、 大きな初期生育を示し、日射量が多い条件下では、出穂期までに、茎葉部により多 くの炭水化物量を蓄積・貯蔵して、出穂後にそれらを穂に速やかに転流させる能力 247