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検索対象: アジア小農業の再発見
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1. アジア小農業の再発見

る。 持続可能な農業生産を行なうためには、土壌および水を保護し、バイオマスを増やし、有機物を 増やして食物連鎖を確立することによって、土地の生産性を維持・増加させていかなくてはならな アグロフォレストリーは、持続可能な農業生産を目的として、農業に林業を導人したものである。 樹木が農地で果たす役割には次のようなものがある。 〈農場に木を植える効果〉 す 食物連鎖を豊かにする 戻 取緑肥の材料になる を 源 マルチの材料になる 資 の 堆肥の材料になる 域 て 2 ・土壌流失の抑制 し 土手、境界線、等高線に沿って植える 水源や水路に沿って植える 章 海岸部に防風林をつくる 第 3 ・生け垣 197

2. アジア小農業の再発見

第Ⅱ部もうひとつの農業づくりをめざして ーアジア小農民の可能性

3. アジア小農業の再発見

第 3 節技術が自然の力を壊した・児 退化する日本の土・ 自給肥料が入らなくなった・ 第 4 節農薬社会の出現・ 殺す技術としての農薬・ まず農民が侵された・皿 消費が消費を生むシステム・ 第 5 節モノカルチャーがもたらしたもの・明 米麦二毛作が壊れた・明 ここでも二重の環境破壊・ 自己決定権の喪失・ 第 6 節日本農業の現実・ 第Ⅱ部もうひとつの農業づくりをめざして ーアジア小農民の可能性ー 第 1 章生き方を取り戻すタイ農民 はじめに・ 100 岩崎美佐子・ 124

4. アジア小農業の再発見

物の普及と引き替えに、農民は農民として致命的なものを失う可能性が強い。 それは二つの経路で進行する。一つは農業生産にとってなくてはならない種子が農民の手に届か ない存在になってしまうことだ。そのことはすでに一代雑種による高収量品種の拡大で証明されて いる。遺伝子組み換え作物はその総仕上げになる可能性がある。生物多様性の危機について警鐘を 鳴らし続けているバンダナ・シーバは、すべてを特許で囲い込む遺伝子組み換え技術は、「生命の 独占的所有」であり、「生物資源を『共有資源』から『商品』へと転換する」ものである、と述べ、 世界種苗会社・育種家会議の事務局長ハンス・レーンダースの次のような言葉を紹介している。 「たとえ農民が自分の作物から採種した種子を播種用に蓄える権利が、ほとんどの国で伝統的 に認められてきたとしても、変化しつつある状況のもとでは、農民が特許使用料を払わずに商 種子産業は権利保護の強化を求め 業作物の種子を使って栽培することは公正とはいえない。 て激しく闘わなければならないであろう」 もう一つの経路は、多様な農業、多様な生物資源の解体という問題だ。農民は、地域の風土に合 わせて多様な品種をつくりだし、多様な生産方法を発展させて多様な農作物を育ててきた。農業の 本来の姿はこの多様性にある。地域独自の多様な食文化は、そうした多様な農業が生みだしたもの だ。高収量品種はその多様さを崩した。遺伝子組み換え作物は農業の多様さに最後のとどめをさす はずだ。農民の知的財産ともいえる在来品種は駆逐されて姿を消すか、種子産業に特許という形で 囲い込まれてしまうだろう。 2 ろ 2

5. アジア小農業の再発見

ど一 低層】穀物または野菜 飼料または薬草 ( 雨季 ) 高層の木の枝を刈り込み、作物に太陽光線や風が届くようにする。 5 、傾斜地ーー乾燥地 ( 図リ 6 、多雨量の平地 ( 水田中心、図リ 高層】シムル、シロゴチョウなど 中層】桑、釈迦頭など 水田の東側と南側は低い、好日性のマリーゴールドやバジルを植える。 このほかにも、窒素を固定する木を生垣として植える。土壌流失を防ぐため、あぜに沿って植え ることも可能である。 ( 訳責岩崎美佐子、イラスト月原貢三 ) 204

6. アジア小農業の再発見

第 2 章いかにして地域の資源を取り戻すか ォルテンドウー はじめに 今日では誰もが「持続可能な開発」の必要性を語る。それにもかかわらず、経済的、社会的、生 態的ないずれの面においても問題は増大する一方であり、環境の悪化は進む一方である。 経済的な面では、ますます多くの貿易がますます少数の公共、民間の団体によって支配され、主 要な農業生産物の相対価値が工業的に生産された機械機器や農薬・肥料などの投入材との関係で減 少を続けている。社会的な面では、自然資源〈のアクセスや土地をめぐる摩擦が高まっている。健 全でも安全でもない労働条件、児童労働や児童売春、都市や農村の貧困層 ( 特に先住民 ) の立ち退き 問題、等々あげればきりがないほどだ。 生態的なレベルにおける劣化の重要な指標のひとつは、種及び生物のエコシステムの多様性の喪 失である。生物多様性の喪失は、不可避的に生産性や生産システムの安定の喪失につながっている。 ・ T2 ・チャタジー 164

7. アジア小農業の再発見

第 2 章いかにして地域の資源を取り戻すか 保存されていた方法や、発芽可能期間と発芽の確 率などを知り、発芽に要する期間を確認する必要があ る。 発芽テストは以下のように行なう。 種子の表皮が柔らかいものはそのまま蒔く。 2 ・種子の表皮が固いものは一昼夜、水に漬け、 その後、表皮が簡単に破れるかどうか試して みる。 3 ・ 2 の処置をしても傷がっきにくい場合は、以 下のような処置をして蒔く。 紙ャスリで傷をつける。 砂とともに袋に入れて振り、砂で傷つける。 爪切りで傷をつける。この場合、発芽点を傷 つけないよう注意する。 4 ・摂氏八五—九〇度のお湯につけてから蒔く。 5 ・硫酸の水溶液につけ、蒔くときは洗浄してか 3 ら蒔く。 / ヾックかイリ 爿イ野けとけ 1 メ切肥 う・ 8 うク ま定に G り スへ。ーにせ引 = 墨男 - 一 = 彡彡ク る / グ / ( ドして人リ = ヨな、、お引 = 効 け ) 189

8. アジア小農業の再発見

料の増投が必要になる。こうしての品種改良ほ施肥を可能にする品種作りとして始められ モンスーンの高温多湿下での肥料の増投はさまざまな困難を招き寄せる。過繁茂、倒伏、雑草、 病害中の多発などだ。特に栄養成長期の伸び過ぎは生殖成長に結び付かず、十分な結実を妨げ、秋 落ちの原因ともなる。秋落ちとは、稲の茎や葉は繁っているのにそれが収量に結びつかず、逆に収 量が落ちる現象をいう。いずれも、かって日本の西南暖地の稲作が直面した問題である。 ひばい これらの問題を解決するのは、綿密な肥培管理しかない。栄養成長と生殖成長という二つの成長 期のバランスをとる肥料の与え方の工夫、田植、除草、病害虫の防除、生育段階にそった水管理な どだ。さらに、こうした肥培管理を可能にする条件がいる。灌漑設備が整備されていることである。 これは従来の無、あるいは小肥・無管理の粗放型稲作から集約型稲作への転換であり、かってイギ リスの農業革命が機械の論理で進められ、従来の農法を一変したのに対し、アジアにおける緑の革 命は肥料の論理で従来の農法に変革を迫ったものだ、というのが金沢の指摘である。 綿密なフィールドワークと考察に支えられた金沢の主張には教えられるところが多いし、きわめ て説得的である。緑の革命がモンスーン下におけるアジア農業発展のひとつの道筋を示したもので グ あることはまちがいないところである。 ロそこで次に問題になるのは、こうした意味を持っ緑の革命を当事者の農民はどう受け止め、それ プ は農民の暮らしにいかなる社会的、経済的影響をもたらしたか、ということだ。農法の変革、しか

9. アジア小農業の再発見

2 森林保護と再生 森林保護と再生の過程 それでは、森林を増やすにはどうしたらいいのであろうか。 まず第一段階は、現存している森をこれ以上破壊せず、保護することである。一度失われた森林 を取り戻すための費用は、破壊を未然に防ぐためにかける費用より、はるかに大きい 森林再生には、費用だけではなく、長い時間も必要とする。しかも、資金と時間をかけても、森 というのは、森林は人為的につくられたものではな 林を取り戻すことができるという保証はない す く、日光、雨、気温などの自然と、食物連鎖の中に位置している微生物や動物の共同作業によって 戻 取っくられたからだ。それだけに、現存する森林の減少の防止は急務である。 源第二段階は、森林をこわさないよう、今ある耕作地の生産性をあげることである。人間の生活に の必要な木材、薪炭材、飼料などの森林資源を、原生林、保護林から無制限にとってくるのではなく、 て森林資源を生産して需要を満たすよう、耕作地の土地利用を考えなくてはならない。土地の生産性 し にを維持するためには、工業目的の一種類だけの作物を広域に植えるのではなく、アグロフォレスト リーなど持続可能な土地利用を取り入れなくてはならない。 章 第三段階として植林がある。熱帯では微生物の活動が盛んなため、有機物はすぐ分解され、土壌 第 にはあまり蓄積されない。そのぶん、有機物は樹木の中にそのまま蓄えられ豊かな植生を形成する。 181

10. アジア小農業の再発見

韓国自然農業の経営の仕組みは、家族経営を単位とした有畜複合であると述べたが、現代の経済 や社会に仕組みの中では個別経営単独で存続するのは、きわめて困難である。そこで、個別経営を 補完するものとして、韓国自然農業では地域での協同・協業を重視する。主体はあくまで個におき ながら、集団のカでその足りない部分を補っていくというやり方を推奨する。例えば、労働力や土 地の問題で畜産が取り入れられない農家が当然出てくる。その場合は、地域内の畜産農家と組んで 地域内複合という形を追求する。畜産農家同士でも、飼料づくりなどは共同でやるほうがコストや 効率、質の面で有利な場合が多い。機械の利用や生産した農産物の流通・販売、加工でも、個別よ りは共同のほうが力を発揮できる。 高い収益性と所得 韓国自然農業に関する分析としては、途上国農業・農村開発コンサルタントの小山敦史が一九九六 年に行なった経営調査がある。韓国自然農業協会の会員農家一五戸を対象に綿密な経営分析を行な 、韓国の一般農家の実績と比較したものだ。その結論は「自然農業の農家は全国平均と比べて高 い農業所得を得ており、一ヘクタール当たり、労働一時間当たり、経営費一ウオン当たりでみても、 高い生産性を示した。この背景には、第一に、主に畜産部門を導入することによって、機械化後で も家族が農業で働くことが可能になったこと、第二に、作物についてもその生産性が全国平均に比 して高いことが指摘できる」というものであった。 2 2 2