事例に学ぶ トレードオフを勝ち抜くための 総合技術監理のテクニック [ 第 3 版 ] ーリスクマネジメントのすすめ一目次 はじめに 第 I 章誰もが陥りやすいトレードオフのわな ーリスクマネジメントのすすめ トレードオフとは ? リスクマネジメントの基本 総合技術監理とは 出張のリスクマネジメントー東京でのプレゼン 身近な総合技術監理ー朝食をつくろう ! 第 2 章ケーススタディ技術の現場から ートレードオフとの果てしなき戦い 1 旧 09001 認証取得におけるトレードオフ ープロジェクトチーム運営におけるリーダー像 2 洪水災害にみるトレードオフ ー災害の現場に学ぶ 3 都市の安全性と自然環境保全のトレードオフ ー事故の経験が生きた T 池のミティゲーション 4 橋梁保全のトレードオフ 一橋の架替え・補修・補強におけるアセットマネジメント 5 コンクリート構造物におけるトレードオフ ーよいコンクリートを作って利用するために 6 地域冷暖房プラントのトレードオフ 一人の和と技術の融合が危機を救う 7 地震後のインフラ復旧のトレードオフ ー早期復旧と安全の確保 3 2 ′ 0 / 0 っ ") 1 っム 2 28 32 38 第 イ 2 イ 6 50 54
1 ー S09001 認言正取を暑 におけるトレードオフ プロジェクトチーム運営におけるリーダー像 国際化が進展する中 , 企業経営においても旧 0 等の国際規格の認 証取得が盛んである . しかし , その取得活動には時間も費用もか かり , ここにトレードオフが生じる . 旧 09001 認証取得プロジ ックオフ宣言がなされた . 得すべし」との社長の大号令のもと , IS09001 認証取得のキ 建設コンサルタント会社である Q 社でも「是非とも認証取 会社の経営事項審査◆ 3 に関係する可能性もある . 将来 , 建設コンサルタント会社の指名竸争入札の条件や建設 て不可欠な課題である . とりわけ , IS09001 や IS014001 は , めにも大いに役立つ国際規格の認証取得は , 今や企業にとっ 客・消費者からの信頼性が高まり , 企業イメージの向上のた トシステム ( IS014001 ◆ 2 ) の認証取得が盛んである . 顧 品質マネジメントシステム ( IS09001 ◆りや環境マネジメン 建設会社を中心に , 大手企業のみならず , 中小企業を含め , リティの発揮等への要請を受け , 建設コンサルタント会社や わが国の市場開放 , 企業等の品質向上 , 環境アカウンタビ 21 世紀の企業活動のバスポート「国際規格」 ェクトのリーダーは , いかに対応すべきだろうか . 28 システムの国際規格 . 環境マネジメント ◆ 2 旧 014001 る . さないおそれもあ 格の要求事項を満た しすぎると , 旧 0 規 反面 , あまり簡素化 ることにも役立つ . 内に旧 0 を定着させ にもつながるし , 社 コストを下げること ば , 認証取得までの ステムが構築できれ 避けたい . 簡素なシ しまうようなことは 常の業務が遅延して 業に忙殺されて , 日 順書などの文書化作 において , 規定や手 旧 0 認証取得活動 ムの国際規格 . マネジメントシステ って制定された品質 際標準化機構 ) によ Standardization ; 国 Organization fO 「 旧 0 (lnternational ◆ 1 旧 09001
◆ 3 タイムマネジ プロジェクトマネジメントには , 進捗の正確な把握とプロ ジェクトに遅れが出た場合の策定 ( タイムマネジメント ) ◆ 3 , プ 進捗管理や工程管 理ともいい , 定めら ロジェクト全体の活動領域の設定 ( スコーブマネジメント ) れた納期を守るため の管理活動である . プロジェクト内外の情報の適正な流通 ( コミュニケーション ◆ 4 スコーブマネ マネジメント ) リスクの把握と対応策の策定 ( リスクマ シメント プロジェクトの実 ネジメント ) , 組織マネジメント ( ヒューマンリソースマネ 施範囲 ( スコープ ) に何を含んで , 何を 6 , 品質の確保 ( クオリティマネジメント ) ◆ 7 など ジメント ) 含まないかを管理す る活動 . スコープの がある . 変更管理も含む . 衆議院財務金融委員会の参考人質疑において , 前田社長は ◆ 5 コミュニケー ションマネシメント 「想定されるテストと運用はすべてやった」と説明している マネジメントプラ ン , 進捗情報 , 各種 が , 実際には事故の調査報告書 ( 金融庁発表 6 月 19 日 ) によ 報告 ( トラブル報告 , 議事録 , 分析結果 ) ると , 事前のテストが不足していたことが明らかになってお 等を , その情報を必 要とする人に迅速に り , 経営者が事態を正しく把握していなかったことが判明し 伝達する管理活動の ている . 極めて大きな問題といえる . ◆ 6 ヒューマンリ ソースマネシメント 人的資源管理であ り , 組織の維持運営 , 要員の確保と配置計 画を含む . 金融庁の発表した 6 月 19 日の見解によれば , この一連の事 ◆ 7 クオリティマ 件の「根本原因」は旧 3 行の経営陣がシステム統合のリスク ネジメント 品質管理 . 製品の を十分に認識していなかったことにある , とされている . リ 品質を品質要求に合 致させるための管理 スクの認識こそが , 危機を未然に回避する第一歩である . み 活動である . ずほ銀行でシステム統合に関するリスクをきちんと分析して ◆ 8 イベントツリ 一分析 いれば , たとえば振替業務が正常にできない場合にはどのよ ある故障や事故が 発生したとき , 進展 うな影響が発生するか , それによって社会的な信頼がどれだ キー ( たとえば「故 障の検知に失敗す け失われるか , その損害額はどの程度か , どこまでの損害を る」といった内容 ) の結果を確率ととも 許容できるか , といった事前のリスクの評価ができていたは に分岐させていき , 最終到達事象 ( 大規 ずである . 模火災事故 , 小規模 口座振替の銀行業務はいまや I T を利用した装置産業と考 火災事故など ) に至 72 ◆ リスクマネジメントがなかった
第 3 章実践 ! た . 民営化した JR の発足以降では最大の死傷事故となった . 現地は曲率 300m の右カープのため時速 70km 以下の速度制 限がされていたが , 実際には時速 110km 以上の速度で進入し たことが直接の事故原因と考えられている . 再発防止のために必要な人的資源管理 事故の再発防止策として , 速度超過が起きないような信号 保安設備の設置などの技術面だけで解決すると考える識者も 見受けられる . しかし一般に事故原因はその 80 % がヒュー マンエラー 2 であると指摘されているくらい , 人的要素が重 要である . たとえ高機能の技術システムを導入しても , ヒュ ーマンファクター ( 人的要素 ) に対する適切な配慮がなけれ ば , 万全な再発防止策とはならない . 事故直後に JR 西日本 の社員によるボウリング大会等を問題にするマスコミの過剰 反応も見られたが , ヒューマンファクターへの配慮とは , のような形態の責任追及をいうわけではない . この事故の場合 , 事故車両の運転手がなぜ速度超過しなけ ればならなかったか , という背景を考えなければならない . つまり , 人的資源管理における人の行動パターンへの十分な 理解が必要となる . それとともに適切な人的資源計画に基づ く人的資源開発を行う経営体制を確立することが , 十分な再 発防止策となるのである . 齪第は新当当驫第贓当を第 J R 福知山線の運行状況と人的資源開発 福知山線はその近くを走る阪急電鉄の主要路線 ( 宝塚本線 , 神戸本線 , 伊丹線 ) と特に経営面で競合関係にあり , 他の競 リスクマネジメント ◆ 2 ヒューマンエ 人的過誤を意味 し , 目的から逸脱し た行動によって事故 や不本意な結果を生 じさせるミスをい う . 人間工学では事 故原因となる作業員 の過失をいう . うつかりミスを防 ぐ対策として , 強制 的に眠気を起こさせ ない , 小事故による 注意喚起 , モチベー ションの高揚 , 達成 感の保留などが試み られている . 189
ムネオハウス事件を振り返りながら 建設コンサルタントに求められる中立性と業務上の課題をリスクマネ ジメントの視点から考えてみる . が国における建設コンサルタントのリスクを 考えた場合に , 建設コンサルタント業として 企業の置かれている状況から来るリスクや , 業務を 実施していく際に考慮すべきリスクなど , さまざま な場面で全く視点の異なるリスクが考えられる . 前者の事例としては , 新聞やテレビのニュースな どで何度も取り上げられたムネオハウス不正入札事 件がその一つとして挙げられる . この事件では , わ が国の建設コンサルティング業界のリーディング・ カンバニーである日本工営株の社員から逮捕者が出 るとともに , 同社が 3 カ月間にわたって ODA 関連 事業◆ 1 への入札参加と契約締結を見合わせる措置 がとられた , というものである . 一方 , 後者の例としては技術士総合技術監理部門 を受験する際の経験論文として , 建設コンサルタン トに勤務している受験者が , 過去の経験を基に五つ の管理技術についての課題や対応策を述べるととも に , 総合管理技術としてリスクマネジメント技術を 使った事例を提示する場合に , そのテーマとして扱 う内容が挙げられよう . 建設コンサルタントにおけるこれらニつのリスク わ ◆ 1 ODA 関連事業 政府開発援助に関 連した事業 . 計画や 運営等のソフト面 と , 施設の設計や積 算等のハード面のコ ンサルタント業務が ある . 130
図書館システムの 8 トレードオフ 図書館の住民満足度向上策 日常 , 何気なく利用している図書館も , 悩みを抱えながら運営さ れている . 住民にどうしたらもっと利用してもらえるか , 子供が 読書に親しむようになるためには , どうしたらよいか この本はありませんか 図書館でこんな経験をお持ちの方は , 少なくないのではな かろうか . 「『廃棄物のバイオコンバージョン』 1 はありますか」 「専門書はここには , ほとんどありません」 「『防長回天史』◆ 2 はありますか」 「残念ながら , ありません」 このように身近な図書館には , 読みたい本が置かれていな いことが多いのだ . また , こんな笑い話もある . 「『大鏡』ありますか ? 」 「小さい鏡なら洗面所にあります」 いうまでもなく , 『大鏡』は中世の日本史や日本文学を理 解するうえでは極めて重要な文献であるが , これすら知らな い図書館職員が現実にはいるのだ . ◆ 1 「廃棄物のバ イオコン / ヾーショ 微生物など広範囲 な生物機能を利用し て , 種々の廃棄物を 有用物質にバイオコ ンバーション ( 生物 変換 ) する技術に関 する専門書である . 技術士生物工学部門 を受験するには必読 書と言われている ( 矢田美恵子ほか著 , 地人書館 ) . ◆ 2 「防長回天史」 末松謙澄の執筆に よる , 幕末長州の歴 史を記述した書物で ある . 本書には幕末 の豊富な資料が引用 されており , 資料と しての価値が高い . 読みたい本がない 読みたい本をすぐに入手できる図書館が自宅近くにあれ 58
J R 福知山線事故にみる人的資源管理 大事故の後は再発防止策をじっくり考えることが必要だ . 再発防止は 技術面だけで解決するのだろうか . 実は事故原因の 80 % はヒューマ ンエラー , その対策が十分でないと再発を免れることはできない . ューマンエラーに対する対策は , 総合技術監 理における「五つの管理」の中の「人的資源 管理」で扱う . 人的資源管理の内容には , 人材マネ ジメント ( 採用 , 評価 , 人的資源開発等 ) のほか , 組織行動学 , 労働関係法が含まれる . 技術者にとっ て人的資源管理は比較的弱い分野といえるが , いず れ管理職となったときは組織をトラブルなしで円滑 に運営することが求められるので , 習得しなければ ならない事項である . ここでは , 具体的な事故を例に取り , 事故の再防 止策の観点から人的資源管理の課題を考えてみよ つ . 事故の概要 ◆ 1 JR 福知山線 尼崎駅 ( 兵庫県 ) 2005 年 4 月 25 日の午前 9 時頃 , JR 西日本の福知山線◆ 1 の塚 から福知山駅 ( 京都 府 ) に至る 106km の 口駅と尼崎駅との間で列車脱線転覆事故が発生し , 死亡者 鉄道路線で , 西日本 107 名と 500 名を超える負傷者を出した . 脱線転覆によって 7 旅客鉄道 ( J R 西日 本 ) が運行している . 両編成の列車のうち 5 両が脱線し , うち先頭の 2 両は線路脇 大阪から篠山口の間 には J R 宝塚線とい のマンションに激突し原型を留めないほどの形状で大破し う愛称がある . 1 88
第 2 章ケーススタディ技術の現場から ◆ 3 経営事項審査 建設業法第 27 条の 2 3 第 1 項に基づき , 公共性のある施設又 IS09001 認証取得といっても , Q 社には経営工学の専門家 は工作物に関する建 設工事で政令で定め がいないため , 経営コンサルタントに委託することになった . るものを発注者から 直接請け負おうとす IS09001 認証取得コンサルタント料と審査料を併せた見積り る建設業者は , 国土 交通省令で定めると 額は約 1 , 000 万円 . 莫大な費用である . しかし , 社員自らが ころにより , その経 営に関する客観的事 国際規格の内容を一から理解し , 取得までこぎつけるのは容 項について , その許 可を受けた国土交通 易なことではなく , 経営資源 ( ヒト , モノ , カネ ) と時間 大臣又は都道府県知 事の審査を受けなけ もどれくらいかかるか予測がつかなかった . このため , 自社 ればならない . 単独での認証取得によるリスクを回避して , 費用はかかるも ◆ 4 経営資源 品質マネジメント のの堅実に , 経営コンサルタントに委託することとなった . システムを作成する には , 時間と労力が ところが , 経営コンサルタントは , 国際規格の勉強会の開 必要だ . 認証取得ま でのコストを抑える 催や審査員の視点を伝えるのが主な仕事であり , 実際に認証 には自社で作るのが 取得活動に入ると , 規定や帳票の作成は , 結局 , 現場の社員 よいのだが , 経験が ない会社では , 社員 自らが行うことが多いらしい . そこで経営コンサルタントに 自らが勉強しながら まとめるので , 時間 は委託の内容を見直してもらい , 認証取得までの作業につい がかかる . 日常業務 を行いながらの取り ての仕様を明らかにしながら , ねばり強く値下げ交渉を行う 組みとなり , いつに なったら認証取得で こととなった . きるかわからない . そこでコストはかか また当初は , Q 社の総務課を窓口として認証取得活動の対 っても外部に委託す べきか , その判断が 応をしていたが , 現場の代表者が指揮を執ることとなり , K トレードオフになる . 氏が認証取得活動のプロジェクトリーダー 5 となった . ◆ 5 プロジェクト リーダー 認証取得活動は , 技術部門 , 営業部門 , 総務部門等 , 会社 プロジェクトと は , 特定の目的を達 のさまざまなセクションから混成されるプロジェクトチーム 成するための , 臨時 組織による活動であ である . このため , 各メンバーは職能別組織 6 における通常 る . プロジェクトリ ーダーは , 組織上与 の業務を抱えながらの活動となる . プロジェクトチームの活 えられる責任と権限 に関わりなく , プロ 動は業務時間終了後 , もしくは休日を利用して行わざるを得 ジェクトに関する責 任と権限が付与され ない . さまざまな問題点を抱えながらも , K 氏はプロジェク るべきである . トリーダーとして , メンバー共通の目標として , 「すべては 29
第 2 章ケーススタディ技術の現場から 見ができる . ふだんは静かな公園もひとときの賑やかさに包 まれる時だ . 池に目を移すと , ゆったりと水鳥が泳いでいる . 憩いの広場は , 樹木で池とは遮蔽されているので , 軽運動 や屋外での遊びに最適な空間になった . 毎年に夏休みと秋に は , 地元の商工会や育成会などがお祭りを催している . そして公園の管理は , 地元の人たちが積極的に協力してく みんなの公園に れるので , ゴミは散らかっていない . ている . 整備終了から 15 年が経過した現在 , T 池の今後の在 りである . 移入種◆ 8 であるプルーギルが持ち込まれ , 繁殖し 最近 , T 池公園の利用者が急増しているが , その目的は釣 れる自然環境を後世の子供たちに残すことができたのである . かな配慮がなされた結果 , 安全性を確保しつつ , 地域に親しま た後に , またここに戻した . こうした修正措置など , きめ細 水生植物や魚類の一部を別の公園池に移植し , 整備が終わっ の最小化措置によって影響を減らした . また , 造成に際して , したものの , 利用者の遮断 , 水辺の多様化 , 植栽の充実など こでは池面積こそ減少 例はミティゲーション 7 の好例だ . 自然環境を保全しながら活用することは難しいが , T 池の かった . 対照に調査した他の公園に比べ圧倒的に種類が多いことがわ 類を調べた . その結果 , この公園で 35 種の鳥類が確認でき , 整備の終わった公園で , K 氏は 1 年間にわたって毎月 , 鳥 実例をもとにしたフィクションである . り方を再検討する時期に来ている . > 事例の出典 ◆ 6 バリアフリー 障害を持つ人が施 設 , 設備を使おうと したときに邪魔にな る要因 , つまりバリ アを取り除こうとい う考え方 . たとえば , 階段だけの通路に 車椅子が利用できる スロープを設けた り , 段差をなくすよ うな設計 . 最近では , すべての人が使いや すい設計思想として 「ユニバーサルデザ イン」という理念も 使われている . っ した設計プロセスに もリスクマネジメン トの発想が活かされ るであろう . ◆ 7 ミテイケーション 開発事業の早い段 階から行う環境保全 のための配慮方策 で , 回避 , 最小化 , 修正 , 低減 , 代償と いう考え方から構成 されている . この事 例のようなトレード オフの解決策とし て , ミティゲーショ ンは注目される . ◆ 8 移入種 人間によって意図 的 , あるいは非意図 的に運ばれ , 本来生 息していない場所に 定着してしまった 種 . ルアーフィッシ ングの流行やペット ブームの影で , こう した生態系の撹乱が 懸念されている . 参 考文献 : 日本生態学 会編 ( 2002 ) 「外来 種ハンドブック」地 人書館 .
洪水危機管理は , 国土交通省九州地方 整備局の W E B ペー ジがくわしい . http://www.qsr.mlit. go. É/n-kawa&aster/ disaster01. html ①危機管理体制の整 備 ( 広域的な危機管 理体制 , 災害対応訓 練や研修 , 水防活動 の強化 ) , ②災害情 報の開示と共有 ( 災 害情報の事前提供 , 災害時の情報提供 , 防災情報ネットワー ク整備 ) , ③避難誘 導体制の確立 , ④災 害に強いまちづく り , ⑤日常に根ざし た危機管理 ( 地域コ ミュニティの再構 築 , ボランティアと の連携 , 防災教育の 充実 ) などが挙げら れている . 長野北部地域全体 の水防活動状況 . 豊 野町だけでは , 水防 活動延べ 637 人 , 自 衛隊災害派遣延べ 364 人と記録されて いる . 34 常配備の際の出動や水防作業 , 水防で重要となる区域やダ ム・水門 , 水防施設・観測施設などが細かにまとめられてい る . 計画では , 誰がどういう立場で水防にあたるのかという指 揮命令系統から , 通信手段・非常輸送の確保 , 水防倉庫に備 える土のう , スコップの数などに至るまで , 水害に備えるあ らゆる規程が盛り込まれている . 水害に備えるという意味で はリスクマネジメントであるが , いざ非常時という時には危 機管理マニュアル◆ 6 として機能するものが , 水防計画である . この災害事例では , 知事を本部長とする長野県災害対策本 部と 16 市町村の災害対策本部が設置され , 多くの職員が対応 に追われた . 水防活動では , 延べ 12 , 048 人の水防団と地域住 民が活動し , 自衛隊の災害派遣では延べ 570 人 , ヘリコプタ ◆ ー 12 機が投入された . こうした緊急事態では , 大勢の関係者 , 資材・機材を管理 運営するため , 経験に裏付けされた高度なリスクマネジメン トが求められる . 災害に関する情報管理が不適切ならば , ともすればパニッ クを引き起こすことも心配される . 突発的な災害では , 誤っ た情報やデマ , 憶測が住民の不安を助長してしまう . 情報は多ければよいというものではなく , その事態にふさ わしい適切なものをタイムリーに提供することが大切だ . 情 報量が多くなれば必要なことを取り出すのに時間を要し , 迅 速な行動を阻害する . 難解なデータでは住民が理解できない . かといって , 情報が少なければ不安は増大し , 誤情報を生む 7 情報管理におけるトレードオフ