ミスティック・クールく 3 〉「人間関係」が驚くほどうまくいく ! ・ が優先されます。これでは、うまくいかないときに非難したくなるのも当然。条件つきの愛 情がすっかり冷めた夫婦が離婚裁判を繰り広げる光景は、すっかりお馴染みになりました。 しかも人間はマイベ 1 スで行動したがるものです。いつも周囲の期待に応えようなんて思わ ないから、裏切られる場面はめずらしくありません。その結果、相手の実像を見誤ることも しばしば。条件つきのつき合いが健全な人間関係の妨げになることが、おわかりいたたけた でしようか。結婚カウンセラーによれば、夫婦関係の改善にとって何よりも大切なのは、お ます。どんな人間関係も例外ではありませ 互いにありのままの姿を受け入れることだといい ん。相手を無条件に受け入れましよう。解放感が得られ、ひいては自分なかでいままで見え なかった部分を発見できるようにもなります。 そして無条件に相手を受け入れるために必要なのが、「相手を許すこと」。良い人間関係を 長続きさせるためには、どんなときでも相手を許さなければいけません。それをためらって いると、せつかくの絆は断ち切られてしまいます。 207
ポジティブな「エネルギー」に満ちた 快適な人生 ! 「人間関係」が驚くほどうまくいく ! 脳は「充実した対人関係」の要にも 「つながり」を失えば成長も止まる 「ロゼト効果」ーー「底抜けに明るい」人間関係は身体にいい ! タバコやメタボより「怖い」こと なせ赤ワインは心臓によく、チキンスープは風邪に効く ? 対人関係の特効薬ー・「ミラーニューロン」 人間関係をよくする 3 つの「万能薬」 いいことづくめの「反射鏡」 〇ミスティック・クール 0 〇ミスティック・クール 0 235 203
ジテイプ心理学やフロイト流分析などの心理療法だけでなく、ビジネスや紛争解決、コミュ ニティ構築、教育理論など、幅広い分野で応用されているアプローチです。 ロジャーズは、相手のどんな面に目を向けるかによって人間関係は決まるものだと考えま した。そして豊富な臨床経験に基づいて、成長に適した条件が与えられたときの人間は、良 い方向におのずとポジテイプな態度で前進するという見解を持つようになりました。これは、 人間は基本的に欠点だらけで悪人だというカルヴァン派の見解とは正反対。ロジャ 1 ズはっ ぎのように語っています。「人間の心のなかには、自分の立場を理解したうえで認識や態度、 行動を良い方向に導こうとする資質が豊富に存在する。そしてわたしたちが適切な態度をと るならば、そんな資質を十分に生かすことができる」 人間関係をよくする 3 つの「万能薬」 成長と共鳴を実現するための環境を創造するために、ロジャーズは 3 つの条件を考えまし た。これは心理療法士とクライアント、親と子、リ 1 ダ 1 とグループ、教師と生徒、管理職 と部下など、あらゆる人間関係に応用できるものです。いうなれば、人間としての成長を目 指すいかなる状況にも適応できるというわけです。 220
要するに、わたしたちの寿命も人間的な絆の深さによって決まることになるわけです。と いうことは、親密な人間関係つまり愛情は、生き残るために必要不可欠な要素というわけで す。だから人間は、誘惑したり説得したり懇願して、愛されようとするのです。 「愛情」イコール「脳のエンジンから発する欲望」 ラトガーズ大学のヘレン・フィッシャ 1 博士は恋愛の仕組みについて生化学と神経学と社 会学の立場から研究したすえに、愛情は感情ではないという結論に達しました。脳のエンジ ンから発せられる欲望であり、そのパワーは性欲よりも強力だといいます。 でも、 いくら人間的に深く結びつこうと思っても、つき合いに条件をつけたり、過去のあ やまちをいつまでも許せなかったりすると、なかなかうまくいきません。本人は意識してい ないのかもしれませんが、人間関係に条件をつけるのは何かを期待するからです。だから期 待に背いた相手とは距離を置くようになり、感情的な結びつきも断ち切られ、関係に終止符 が打たれるのです。 久木件つきとい、つことは、相 ) 于をありのままに認めるとい、つよりは、こちらが勝手に思い描 く理想像を実現してもらいたいわけです。こちらから与えるよりも、相手から得られるもの 206
なりーます。話を聞いてもらったときにミラ 1 ニュ 1 ロンがはたらいて、自分を理解しよう とするようになるのです。 さらに「自分をよく理解して大切にするようになれば、自分自身の経験を素直に受け入れ るようになり、本当の自分、ありのままの自分になれ」ます。こうしてありのままの自分を 土台として人間関係を築くようになれば、そこでもミラーニューロンがはたらいて、相手の ありのままの姿を受け入れることになるでしよう。 3 つの条件がすべて整ったとき、共鳴は実現します。ポジテイプで建設的な人間関係を持 続させるために共鳴が欠かせないことは、ロジャーズの研究で明らかになりました。軍隊も 例外ではありません。アメリカ海軍の実態調査では、「アメリカ海軍で最も有能なリ 1 ダ 1 は、 心が温かくて外交的、感情が豊かで表現力に富み、社交的な人物である」という結論が出て います。 たしかに 3 つの条件をすべて満たすのが容易ではないことは、ロジャーズも認めています。 まずは、日常生活での自分の態度から始めましよう。心がけているうちに、他人を批判した り攻撃したり、自己弁護に終始したり、外見を取り繕うような傾向は弱まっていきます。そ の結果として人間関係が充実してくれば、相手と共鳴するようになっていきます。 224
心の穏やかな人がそばにいると、 自分も安らかな気持ちに 一方、シカゴ大学のジョン・カシオッポは、人間関係が心臓血管や内分泌の機能に対して 影響をおよばすことを発見しました。要するに、人間関係は健康を大きく左右する要素だと いうわけです。良い人間関係を作り上げるためには、ます自分の感情や理性、意思、ボディ ランゲージに対して敏感になりましよう。そこには相手の心に関してミラーニュ 1 ロンが読 み取った情報が映し出されているのですから。 たとえば仲間同士で集まると連帯感が生まれますが、それもじつはミラーニューロンのお かげ。みんなでわいわい騒ぎながらさまざまな感情や意見がやりとりされますが、そんなと きミラ 1 ニュ 1 ロンは、同じ場所にいる人たちの心や体の状態を正確に模倣します。その結 果、全員の心がひとつに結びつき、ついには共鳴という現象が発生します。共鳴していると きのミラ 1 ニューロンは、相手の心を正確に読み取り共感する能力がさらにレベルアップす るので、わたしたちは相手の立場を理解したうえで分別のある対応ができるようになり、中 身の濃いコミュニケ 1 ションが実現するのです。夫婦や親子、医者と患者、リーダ 1 とチ 1 2 1 8
ミルグラム実験では、従順な集団のなかにひとりでも恐れを知らない勇敢な人物がいるだけ で、結果は大きく違ってくることが明らかになりました。地獄に落ちる有害なリーダーの道 連れになるのは真っ平。そんな毅然とした態度をとる人物がひとりいるだけで、川人中の 9 人の盲信者は目を覚ますという結果が出たのです。 カ 造 創 良き人生に至る「カギ」 も っ て と 人間の心が恐れから安らぎへとシフトさえすれば、神経回路も心の状態も正常に戻り、道 あ徳観が復活し、ふたたびベストの状態が訪れるのです。人間関係ももとどおりスム 1 ズにな 刺るでしよう。要するに、脳が健全になれば、わたしたちは良き人生に至る鍵を手渡してもら 分 えるのて 自 つぎの章では、恐れの発信源である感情脳についてお話しましよう。感情脳とはどのよう 質 新 な場所で、わたしたちをどのように支配するのでしようか。それを理解することは、恐れか ② ら安らぎへとシフトするための第一歩なのです。 神 の 内
脳は「充実した対人関係。の要にも 知性が勝るとか聡明とかいう言葉は、周囲から孤立して思索にふけり、他人と感情を交わ すこともなく、社会的なつながりが希薄な人をさす言葉として使われることが多いものです。 ところで、脳の神経回路は人間関係を育み社会生活を営むうえで欠かせない組織であること をご存知でしようか たとえば統合失調症や自閉症になると、人間関係を維持したり連帯感を持ち続けたりする ことがきわめて困難になります。実際、どちらの病気もいまでは脳神経の異常が原因だと言 われています。正常に機能している脳は周囲と積極的に結びつこうとし、それがかなわない ときは不安に駆られます。 霊長類の子どもをストレッサーにさらしてみましよう。見ず知らずの霊長類と一緒にひと つの部屋にしばらく置いておくと、ストレス反応は確実に強くなります。でも家族や友人と 一緒の環境に戻した途端、ストレス反応はおさまります。 かなめ 204
ムなど、どんな人間関係も例外ではありません。 ミラ 1 ニュ 1 ロンが進化したおかげで、わたしたち人間は心も体も飛躍的な進歩を遂げる ことができました。たとえば、不安でたまらない状態がいつまでも解消されないと、実に厄 介ですね。でもそんなとき、同じ場所に心の穏やかな人がいれば、ミラ 1 ニュ 1 ロンがその 状態を鏡のように映し出すので、こちらまで安らかな気持ちになれるのです。 ま 「共鳴してくれる人」がいるということ ! 係 共鳴するためには親密な人間関係が欠かせません。共鳴と不協和音は波のように交互に押 関 邸し寄せてきますが、それを乗り切るために必要なのは忍耐力と信頼、そして気づき。ここで は医学博士のカ 1 ル・・ロジャーズが考案した「人間中心療法ーのアプローチが有効でしょ う。これは医者が患者にあれこれ指示するアプロ 1 チとは正反対のものです。ロジャーズは ク 患者をクライアントと呼び、クライアント本人のパ 1 ソナリティを大切にしました。そして ク クライアントが自ら態度を改めて自己実現することが回復につながると考えたのです。この テアプローチは心理学の分野で最も科学的に有効なアプローチとして高く評価され、ロジャー ズはこの功績によってノーベル平和賞の候補に選ばれたほどです。いまや認知行動療法やポ 2 1 9
「つながり」を失えば成長も止まる スタンフォ 1 ド大学のロバ 1 ト・サポルスキーが、劣悪な環境で育てられて心に深い傷を 負った少年について報告しています。入院したとき、その子の血流中の成長ホルモンはゼロ ま 慢性的なストレスのせいで、成長システムが完全に閉鎖されてしまったのです。入院してか 、と ら 2 カ月間、少年は看護師と親密な人間関係を築きました。もちろん、健全な人間関係なん 驚 がて生まれてはじめての経験です。どうなったでしよう。 係 なんと、ストレスホルモンの数値が正常レベルまで回復したのです。仲良しになった看 関 護師が休暇で留守のときは数値がふたたび下がり、戻った途端に回復しました。「要するに、 この子の骨のカルシウム含有量は、自分がどれだけ安全な状態で愛されているか実感できる レベルによって変化していたわけだ」とサポルスキ 1 は説明しています。 ク 「周囲から孤立すると不安になる。不安を抱えている人は、かならず孤立している」と偉大 ク な社会心理学者のエリッヒ・フロムは書いています。人間は周囲とつながらなければ生きら テれません。脳の神経回路もそのように設定されています。だからつながりを失えば、成長も 止まります。 205