線がふるえて落ち着かない ペンを勢いよく運んでみる 〈分析〉このタイプの字を書いてしまう原因としては、心の持ち方に問題があることが 考えられます。慎重な人、もっといえば完璧主義者に多く見られるタイプなのですが、い つも「この書き方でいいのかな ? 」などとびくびくした気持ちで臨むため、その態度が字 に反映されてしまっているのです。 << は点画の接し方や字形は整っているのですが、線が ふるえているために、読む人は落ち着かない印象を受けてしまいます。この他にも単純な ことですが、ペンの持ち方が悪いことが原因になっている場合もあります。いずれにして もリラックスした気持ちで取り組めば改善されるタイプといえるでしよう。 〈対策〉こうした状況を脱却するためには、字をきれいに書くことにこだわりすぎない ことです。ペンの握り方が定まらないまま、慎重になりすぎるために生じる線ですから、 ペンを楽に持って、思い切りよく書く練習をしてみましよう。少しぐらい字形が崩れても 恥ではないと考えて、グイグイと線を引いてみましよう。
書き順 2 ◇左はらいはいつ書くか ? ◎左はらいを先に書く。 ( 乃・及・扱など ) * 次の字は左はらいがあとになる。 ( カ・刀・万・方・ 別など ) ◇左右の点は、いっ書くか ? ◎中央に点画のある字は、中を先に書く。従って、点 があと。 ( 少・京・示・宗・赤・変・業・楽など ) * ただし、「↑」「火」のように中をあとに書く字もあ る。 ( 性・快・秋・炭など ) ◇「申」の長いたて線の書き順は何番目になるか ? ◎ 5 番目。貫く長いたて線のある字は、たて線を最後 に書く。 ( 神・車・半・羊・平・拝・妻・華など ) * 、、上部・たて線・下部 " の順に書いてよい字もある。 ( 里・野・黒・動・謹など ) ◇「母」の長いよこ線の書き順は何番目になるか ? ◎ 5 番目。貫く長いよこ線のある字は、よこ線を最後 に書く。 ( 女・安・字・毎・海・舟・冊など ) * ただし、「世」はよこ線が 1 番目で、例外。 ( 棄・葉 も同じ ) ◇「廴 ( ちによう ) 」は、いっ書くか ? ◎「廴」を先に書いてから、右上の部分を書く。 ( 起・勉・題など ) ◇「辷 ( しんによう ) 」は、いっ書くか ? ◎右上の部分を先に書いてから「辷」を書く。 ( 建・直など ) 68
第四日目 多字数の連綿 むりに中心に 戻した例 〇 中心より右 下へ流れて 連綿してい る例 〇 適宜中心に 戻して書い ていく すべての字を中心を通して書くわけではない 147
「キ」のたて線は三等分して ほかのへんにも応用できる まず書き順を確かめてみましよう。「才」はよこ・たて・よこの順に書きます。最初の よこ線は、これから書く部分の上から三分の一の高さに書きます。次にたて線を書き、三 画目のよこ線はたて線の下から三分の一の高さで交差させます。よこ線の長さは、たて線 を境にして、左側かニ、右側か一くらいの割合になるように書けばよいでしよう。下のよ こ線は右上がりを強くしてはらい上げるのが一般的で、「牛も同様です。 「↑」の書き順は点 ( 左 ) ・点 ( 右 ) ・たて線の順に書きます。左の点は、たて線との間に 空間をとる用意をしながら、短いたて線のような気持ちで書きます。右の点はたて線と接 するように、よこに倒して書きます。高さは左右ともに、上から三分の一のところに書き ますが、右上がりに打つのがよいでしよう。 「、は上から三分の一のところによこ線を書き、「士」は下三分の一を切り取った形に します。 秘訣 3 164
字の練習はリラックスして 自分にとって楽な姿勢で ペン字や書道の教本類では、ふつう「字を書くときはペンを軽く持って、背筋をピン と伸ばして胸を張り、机と腹の間は握りこぶし分くらいあける」などと解説しています。 しかし、字を書くという一連の動作の中で、これらをたえず意識し続けることは難し 姿勢ばかり気にしていては、かえって体に負担がかかってゆったりした線が書けなく なってしまいます。もちろん姿勢を正して臨むことは大切ですが、これらはあくまでも規 範にすぎず、個人差があって当然です。そこで「字を書く姿勢は、自分にとってもっとも 楽な書きやすい形」にしましよう。 ただひとつだけ注意して欲しいのは、机の上に身を乗り出すように前かがみになりすぎ てはならないということです。机の上にのめり込むと、今書いている字はよく見えても、 紙面全体での字のバランスを見失うことになりかねません。これにも個人差がありますが 「木を見て森を見ず」ということにならないようにしましよう。 ポイント 2
右肩が傾いている字 姿勢を正してゆっくりとペンを運ぶ 〈分析〉 < のように形そのものはそれほど悪くないのですが、カづよさがなく貧弱なタ イプがあります。右肩下がりの形になってしまったために、全体的に安定感に欠け、いゝ にも自信のなさそうな印象を受けてしまいます。 反対にのように極端に右肩上がりのつよい字は多く見られます。右肩をからだの前に つきだすようにして、元気よくべンを運ぶ人によく見られるタイプなのですが、勢いよく ペンを走らせるため、よこ線の右上がりがつよくなってたて線まで傾いてしまうのです。 この字形は不安定でまとまりがありませんから、文章になると中心の通らないばらばらな 印象をあたえるものになってしまうのです。 〈対策〉いずれのタイプも姿勢を正して書くことから始めましよう。からだを紙に対し てまっすぐに置いてゆっくりとペンを運び、よこ線をやや右上がりの方向に書く練習をし ましよう。同時にたて線をまっすぐに書いて背骨を通すようにします。
連綿のリズムのとり方 折れと次の字の書きはじめで息つき 連綿を見ると、切れ目なく字がつながっているという印象を受けます。しかし、よく見 れば一気呵成に書き上げているわけではなくて、一定の法則に基づいて、必要に応じてと めながら、しかしリズミカルに書いてあることがわかるはずです。 字の間に自然な連続性をつけるときのペンの運び方ですが、まず折れの部分や次の字の 書き始めのところで息をつぎ、改めて次の線にとりかかるようにします。左の例では、△ 印のところで一時休止して、改めて次の部分を書きついでいます。上下に並んだ字の組み 合わせに応じて、次の三つのタイプで書き分ければよいでしよう。 ① 連綿線から一気に次の字も書いてしまう。 ( 「く」と「しーへの連絡 ) ②連綿線は次の字の直前でとめて、改めて下の字を単体のときと同様に書き上げる ③連綿線から次の字の一部まで書いて、一旦とめたあとで改めて形をととのえて次の一 字を仕上げる 基本 10 144
第四日目 小さく書くひらかな く悪い例〉 く良い例〉 ワクー杯にきく書くと、過大に見える 131 下部「つ」と同じ形で小さめに 右回しを大きくしない 内部の空間が広いと目立ちすぎる
トな場面でもずいぶんあります。そんなとき、くせ字は嫌われ、字のへたな人が何かにつ けて損をすることが多いのは、周知の事実です。逆に、ていねいに美しく書かれた字が好 感をもって迎えられ、スムースに事が運んだという例を、筆者も数えきれないほど見てき ました。字を書く機会の減少に伴って、美しい字を書ける人が少なくなっているといわれ ます。だからこそ手書きの字の美しさ、すばらしさが光り、同時にその書き手もいっそう 輝いて見えるのです。 字は正しい方法で練習すれば必ず上達します。自分の字の欠点をチェックし、正しい理 論に基づいて練習を重ねていくことがもっとも効果的です。くせ字やヘたな字で思わぬ不 利益をこうむる前に、ぜひ美しい字を身につけたいものです。本書はまさにその指針とし て書かれました。ビジネスなどで忙しい方々のために、たった一週間で美しい字を書く方 法が会得できるように編集されたものです。 さあ、さっそく手にしたこの本を活用して、あなたも美しい字を手に入れませんか。 田寸 , 丹
起筆や点の書き方か字を変える 小さな曲者に警戒せよ ″点や起筆はすべての線の基〃ともいうべきもので、これをしつかり書くことのできる人 は線も正確に書ける人といえるでしよう。起筆とは文字通り書き始めの部分を指します が、ここをしつかり書けるかどうかが、字の生命を左右するのです。必要以上に大きく書 いて目立たせてもいけませんが、重要性を認識して書くことが望まれます。 起筆はたて線もよこ線も四十五度が基準です。場合によっては多少角度を変えたりしま これを基準としてとらえておきまし すが、「将ーのたて線の起筆の角度を見てください。 よう。もうひとつのポイントは点です。一概に点といっても、たて点、ななめ点などさま ざまです。たて点はたて線と同じ要領で短く書き、ななめ点は、角度とそり具合を意識し ながら書きましよう。 これらは独立して字を構成することはありませんが、いわば小さな曲者で、字の形や美 しさに及ばす影響は大きく、 ′たかが点、たかが起筆〃などと侮ることはできません。 極意 15 116