「ネ」は最初の点の位置が大切 中心の位置を決めて 「ネ・ネ」などのへんは、初めの点の位置によって中心の位置が決まります。部分の中心 が決まるということは、左はらいやたて線の位置、左右の部分のバランスにも影響を及ば しますから、字形を決めるポイントが凝縮された点として、よく考えて書きましよう。 点の下のよこ線は、右上がりの角度をつよくして、空間を斜めに広くとって書きます。 点の右端まで引いたところで折り返して、左下に向けてはらい出します。次のたて線は、 中心線の線上でま下に引き下ろして、最後はとめます。たて線の書き始めのところに点を つけて完成です。 「諸」の「言」の点とよこ線も同じ考え方で、最初の点の位置を中心にして仕上げます。 点の右下に、よこ線の右端がまっすぐに並ぶような形を目指しましよう。点の向きはたて でも斜めでもよいのですが、空間を広くとってゆったりした字形にするためには、斜めに 打つほうがよいでしょ一つ。 秘訣 4 166
起筆や点の書き方か字を変える 小さな曲者に警戒せよ ″点や起筆はすべての線の基〃ともいうべきもので、これをしつかり書くことのできる人 は線も正確に書ける人といえるでしよう。起筆とは文字通り書き始めの部分を指します が、ここをしつかり書けるかどうかが、字の生命を左右するのです。必要以上に大きく書 いて目立たせてもいけませんが、重要性を認識して書くことが望まれます。 起筆はたて線もよこ線も四十五度が基準です。場合によっては多少角度を変えたりしま これを基準としてとらえておきまし すが、「将ーのたて線の起筆の角度を見てください。 よう。もうひとつのポイントは点です。一概に点といっても、たて点、ななめ点などさま ざまです。たて点はたて線と同じ要領で短く書き、ななめ点は、角度とそり具合を意識し ながら書きましよう。 これらは独立して字を構成することはありませんが、いわば小さな曲者で、字の形や美 しさに及ばす影響は大きく、 ′たかが点、たかが起筆〃などと侮ることはできません。 極意 15 116
第六日目 点や線を省略する 行書 点の方向が 変わる 楷書 点を省略 よくない行書 く行書〉 く楷書 > 211 省略、変形がある 点を線にして上の方に書く 〇、 点を省略して三つで書く
第二日目 書き頂 3 以 YA 左から順に書き進める 右上の点と線は、「点→ 右はらい→点」の順で書く つ卵 中へ入れる点の順番をよく見て この書き順が学校でも教える 標準的なもの 下部は「中央→左→右」の 順に点や線を書いていく 中央の長いたて線を中心に するつもりで書く 必衆飛 69
桑桑 第五日目 「木」を「ホ」にするとよい字 ほば円形に つくる ノ〇 〇 る くす 点にする く良い例〉 長短 どのよこ線を長くするか考えて ヌス ノ〇〇 よこ線長くして、 はらいを点にする 点にする 〇〇 はらいが重なって見苦しいので点にする 169
第六日目 点や線の方向を変える 左側の点を右の点に向かって変化させる ヒ く楷書 > 、、ム / ロ 右側の点を「ロ」 行書 連絡は 最短距離 く行書 > 〇 に向けてはらう 上にはねるところを下に向かうように 207 「氏」の左はらいを左から右に書く
「無」の四つ点は放射状に 足並みを揃えるものもある 「無」はもともとよこ線三本を引いてから、たて線四本を書くのが正しい書き順です。字 形については、活字では二本目のよこ線が長くなっていますが、手書きでは一番下のよこ 線を長く書いて重心をとるのが伝統的なやり方です。さらに最後の四つの点は下に向かっ て放射状に書いて、上の部分を支えるようにします。点の大きさは左から順に、大中小大 の変化をつけましよう さて、「熱」の四つの点を「れつか。と ) しいます。活字でよく見られる形では、一点目 を左向きに、二点目以下は反対方向を向いていますが、これは美しくありません。これも やはり、放射状に下に開く形にするのがよいでしよう。ただし、「鳥・馬」の場合は右下 の同じ方向に向けて打つようにします。これを仮に放射状に書いてしまうと、空間が外に 向かって広がってしまい、しまりがなくなってしまうのです。「練」のいとへんの点も同 様に考えて、大中小の変化をつけて右上がりに同じ方向に書きましよう。 秘訣 7 172
二当災。鯨 第三日目 起筆部の角度と点の書き方 起筆は短く 45 。で く悪い例〉 点の位置も字の形を決める 点が多い字は特にていねいに 117
点画の向きを変える 自然な方向転換でつなぐ 行書では、自然な連続性をつくるためにさまざまの工夫が重ねられますが、そのひとっ として、点や線の方向を変えることがあります。 楷書ではひとつの点画を書き終えて、けじめをつけてから次の点画に移りました。一方 行書はひとつの点画を書きながら、次の点画へ流れをつけるようにペンを運びます。その 心の用意が実線となって、点画の方向を次の点画の方向に向けて最短距離でつないでい く、行書特有の変化になって現れるのです。 「小」のような左右の点は、たて線から左の点に連続させ、すぐさま右の点の上部を目指 して、はね上げます。「治」の「台」の右側の点は「ロ」の一画目のたて線を目指して、 はらいます。いずれも方向を変えるとともに 、形も変えることになります。 あくまで筆の流れに即した方向と形で仕上げることが大切で、自分勝手にやるのはいた だけません。自然で動的な表情を見せる方法ですから、ぜひとも身につけましよう。 基本 5 206
「楽」の「木」は「ホ」にする 点で書いて、ふところを広く 「木」を下にもっ字について考えてみましよう。常用漢字の活字では「木」のように左右 のはらいで書くようになっています。しかし、手書きをするときには伝統的な「ホ」の形 で書いてもよいでしよう。むしろ、手の自然な動きにそっていて書きやすく、行書にする ときにも左右の連絡をつけやすいので、効果的な書き方なのです。 「楽」をはじめ「業・葉」なども「ホ」の形にしますが、左の点を打ってから右の点にペ ンを運ぶときには、目に見えないつながり ( 気脈 ) を通すことを忘れてはなりません。そ して左右の点のふところを広くして、安定させるようにしましよう。 この類は「桑・巣・果」など多数ありますが、いずれも上の部分を小さめにして、 「ホ」のよこ線を思い切り長く引いてバランスをとります。 ちなみに「兼・廉・謙ーなどの最後の二画は、活字では左右のはらいになっています が、手書きでは点で書くのが一般的で、その方が字形としてもよいといえます。 秘訣 5 168