反対 - みる会図書館


検索対象: プロ弁護士の思考術
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1. プロ弁護士の思考術

国会の答弁を見ても、ごまかし、はぐらかし、たぶらかしに熱中して、相手の意見に学ぶ ことをしない。少数者の意見が有益であるとの認識がない。多様な意見を闘わせて、より練 れた解決案を探る伝統がない。 多くの人が意見の対立を嫌うが、意見の対立は、むしろ健全な証拠である。合併にただ一 人反対した役員が、のちに多数派となることもある。 どんな反対であろうと、未熟、過激、非現実的な意見であろうと、参考になる意見を毛嫌 いしてはならない。結果的にそれが利益になる。 ◎ーー反対意見との共存 喫煙者に喫煙の害を説いても、ほとんど耳を貸さないそうである。頭ではわかっていても、 自分と反対の意見を聞くのは不快だからである。自分と違う意見を言われると、人は人格や 自尊心が傷つけられたように感じ、感情的に反発し、相手を非難する。自分と違った存在を 認めるのは難しいものである しかし、他人が自分と反対の意見を抱くことを禁止することはできない。強制的に意見を 128

2. プロ弁護士の思考術

不央な意見に耳を傾けることは、自分のメリットになるのである。 弁護士は、相手の意見を聞く度量がないと失敗する。相手の考えを予測できれば、事前に 準備が可能である。自分と違う見解を知った上で自説を貫くなら、揺るがない。まずいのは、 相手の出方や考え方、反撃を予測せず、不意打ちを受けることである。とくに裁判の証人尋 問で不意打ちを受けるのは最悪である。ビジネスでも、自分に都合よい情報を集める管理職 は凡庸である。 思索は忍耐である。 右利きだからといって左手が不用なわけではない。左利きだからといって右手が不用なわ せいじゃく けではない。双方があってバランスがとれるのである。反対意見を検討しない決定は脆弱 である。 132

3. プロ弁護士の思考術

◎ーー反対意見の聞き方 る す 日本では横並び意識が強いから、異端は嫌われる。権力者にとって、反対者は目障りであ 制 つる。多数派にとって、少数派はうとましい。会社のトップにとって、反対する役員は、煙た 3 い存在である。 を 私もいくつかの会社の役員を勤めたが、役員会ではめったに反対意見が出ない。反対意見 義 のが出ても議事録には載せなかったり、事務局がソフトに修正して載せたりする。このごろは 人 他代表訴訟で役員も訴えられるから、議事に対する賛否は正確に記載すべきなのだが、それを 章しない。議事録の作成を事務局に任せつばなしにしてチェックしないのは危険きわまりない。 第 これらの例でもわかるように、われわれは、反対意見に学ぶことが下手である。 反論を糧に思索を深めるーー反対意見に耳を貸す かて 127

4. プロ弁護士の思考術

反対意見に学ぶ 古くは反公害、男女差別禁止、嫌煙権運動など、時代の風潮や偏見と闘ったのは、つねに 少数者であった。時代の偏見にとらわれない少数者や反対者は、社会にとって貴重な果実を もたらすのである 『沈黙の春』で、化学物質による環境汚染を批判したレイチェル・カーソンや、アメリカの ・リ・ , ー【刀トし 同時多発テロ報復のための軍事行動に、米連邦下院で唯一人反対したバー 例である。時代を見通すのは、一握りの知的少数者であることがわかる。時代の熱狂が冷め たとき、多数者は、はじめて少数者の意見の意味を知る。 有力な少数者のいない社会は必ず暴走する。少数者の存在は、多数の暴走を止める鍵であ る。少数者は健全な組織の維持にきわめて有用である。それなのに多数者は少数者を抑圧す る。 反対意見に接した場合、できるだけ、「なるほどそういう考えもあるのか」「私は反対だが、 あなたの意見はわかった」という態度をとりたいものである。反対意見をあしざまに批判す 130

5. プロ弁護士の思考術

み重ねの上に現在の自分があることがわかるだろう。友人との出会い、就職、結婚などでも、 多くの人知を超える偶然が働いているはずである 「運命が何を考えているのかは誰。 こもわからないのだし、ど、つい、つときに顔を出すかもわか らない」とマキャベリが一言う通りである ◎ーーープロはむたになるような準備も怠らない 弁護士業でもマサカをしばしば経験する。予想に反し、状況が激変することがしばしばあ る。証人の思いもよらない裏切り、相手による反対証拠の提出など、未来はどんでん返しに 満ちている。裁判でも偶然に備えることは大切である たとえば、「売買契約書」という絶対の証拠があるから勝てると思っても、訴訟が進むに つれ、「変更念書」が相手から提出されたりする。「契約が締結後に変更されたことはない」 と依頼者から確認を得ていたのにもかかわらずである。実は担当者が辞めてしまい、「変更 念書」がファイルにも残っていなかったのである。契約があとで変更されたのであれば、こ ちらの主張は根拠を失ってしまう。 当初はこちら側の証人だった人物が、二年後に行われた証人尋問では思いもよらず相手に 156

6. プロ弁護士の思考術

◎ーー低姿勢の効用 「隣家のク 1 ラ 1 の音が夜遅くまでうるさいーと相談を受けた弁護士が、「即刻改善しなけ れば訴える」と隣家に内容証明を送りつけるのは、思慮深いとはいえない。 感情はとりあえず脇に置き、こちらの目的を達するために、最も有効で、時間と費用のか からない手段をとるべきである 要求をぶつけるときには、相手がどう反応するかを見通すことが大切である。すぐ訴える のは現実の解決には有効ではなく、訴訟は次善、三善の策にすぎない。 こちらの目的はあくまで騒音を低くさせることで、感情をぶつけることではない。自分が 正しい場合でも、冷静に自分の立場を主張すればすむのであり、ただちに強硬手段に訴える のは未熟である。 実際、「うるさい」と言ったために相手が硬化し、かえって騒音を出し続ける例も珍しく はない。それを怒っても事態が改善するわけではなく、自分のストレスがたまるだけである。 ありていにいえば、この世の紛争が理屈で決まることはほとんどない。「反対の理屈を持 たない理屈は存在しないー ( ピュロンⅡ古代ギリシャの懐疑主義哲学者 ) からである。 184

7. プロ弁護士の思考術

い意見ーと「多数の意見」 正解よりも最適解を求めるーーサウナ好きとサウナ嫌い 好き嫌いの生理 / 「正解信仰に要注意 かて 反論を糧に思索を深めるーー反対意見に耳を貸す 反対意見の聞き方暫 / 反対意見との共存 / 反対意見に学ぶⅧ / マイナス情 報と不意打ち 4 自分を正しく評価するーー・利発ほどきたなきものはなし / 『葉隠』の教え 「エリートもどきがはひこる / 自分を見ることの難しさ 共感は論理力の一部をなすーー夏に火鉢を抱くⅢ 丿ーダーの資質 / 黒田官兵衛の人間関係カ 攵的共感とはⅢ 第 5 章不、に対して合理的に備えるーーマサカを取り込む 「が起きるかわからない」からど、つするかーー因果は人知を超える の 135 / 自分の評価は他人がするも 145

8. プロ弁護士の思考術

るのは、自信のなさの裏返しである。 情報を集めるには、選り好みをしないことである。嫌いな人の話であっても、もたらす情 報の価値がないわけではない。「何かの手がかりを得られるかもしれないーと考え、先入観 をもたずに耳を傾けることが有用である。「反対意見 [ と受けとらず、「情報収集の一環」と して聞く態度が必要である。 批判に耳を貸すとき、思索は一段と深まる。反対意見を聞くのは、他人のデ 1 タ・べ 1 ス にアクセスするようなものである。 る 制◎ーーマイナス情報と不意打ち っ っ 弁護士にとっては、マイナス情報を収集することがきわめて重要である。 驪優秀な法律家ほどマイナス情報、異質な情報を集め、凡庸な法律家ほどプラス情報を集め のるものである。 人 他反対意見は、一つのマイナス情報である。だから、自分の感情を殺してでも歓迎すべきな 嶂のである。反対意見を吟味すると、交渉や裁判では、相手の出方が読みやすくなる。ビジネ 第 スでは、よりよい解決策をつくりやすくなる。 ほんよ、つ 1 引

9. プロ弁護士の思考術

変えさせることもできない。つまりは少数意見や反対意見と共存していくよりほかはない。 過去と他人は支配できないものと相場は決まっている。とるに足らない反対意見であっても、 何らかの形で共存していくほかはない。 じっと我慢し、聞く耳をもつ、そして、ときには自分の意見をも変える心構えをもっこと が肝要である。 ビジネスの紛争は、必ず平和的手段で解決しなければならない。「暴力に訴えないで解決 すする」という土俵の上で闘っているのだから、相手を根っから敵視しては、まとまるものも 制 つまとまらなくなる っ め いくら説得で圧力をかけても、相手がその気にならなければどうしようもない。自分の考 認 義えが絶対的に正しいと思い込み、反対意見を聞く耳をもたなかったら、この世は暴力、憎悪、 の不信のはびこる世界になってしまう。 人 他 どんな相手であれ、われわれは紛争を通じて相手とコミュニケーションしているのである。 章そういう意識をもたないと、事を始めることはできても、上手に終息させることはできない。 第 129

10. プロ弁護士の思考術

◎ーー「エリートもとき」がはひこる すそうはいっても、反対意見に耳を傾けるのはやはり難し、 しいわゆるエリートほど、自分 制 つの判断に自信をもち、反対意見に目をつぶるものである。 め エリートは、卓越した教養と見識をもつはずである。物事を感情的ではなく、合理的に処 認 義理することができる人物のはずである。 正 の だが、このごろは薄っぺらなエリートもどきがはびこる。一流大学をトップで卒業したと 人 他か、最年少で司法試験を受かったとか、アメリカの一流ロー・スクールに留学したと誇示す 嶂る人物もいる。だが、しよせん、記憶力と多少の論理力をためす試験に勝ち抜いただけのこ 第 とである。すぐれた倫理、知恵、適応力、洞察力が問われたわけではない。生きる知恵と学 4 自分を正しく評価するーー利発ほどきたなきものはなし 133