に長く刻まれただろう。だが今回、いかんせん、言葉を発した の外交当局の相場観だった。そしてそれは、被爆地訪問外交 ( 3 ) その人は政治家であった。それも、公の場でロにした言葉を政 の当事者である米政府も共有する見立てであった。 策として実践し得る権限と能力を兼ね備えたアメリカ合衆国 では日米両政府にとって、ケリー氏広島訪問の「成功」と の大統領だったのだ。理念論や思想表明の一本調子で終わる はいったい何か。それは大まかに言って、二つの重大要素に のではなく、「核なき世界」の実現につながる確かな足がかり よって定義されていた。外相会合の直前、ある日本政府 高官が筆者ら一部記者に言明した次の言葉を紹介しながら、 を築き、あるべき将来の政策形成を志向する具体的ビジョン、 また目下瀕死の状態にある核軍縮の動きを蘇生させる政策提その一一つの重大要素を概説したい。 言が、一つでも二つでもなされて然るべきではなかったか。 一方で、あえてうがった見方をするならば、オバマ氏が広 「広島宣一言と、原爆資料館や平和記念公園を外相らが訪れ 島で核廃絶の具体的な処方箋を示さなかったこと、あるいは る動線はコインの裏と表だ」 「日本は北朝鮮の核の脅威にさらされている。そのために 示せなかったこと、さらに非人道兵器である核兵器が現出す 日米安保の運用を強化してきており、米国の『核の傘』の下 る「核の脅し」に依拠した核抑止論の正統性に真正面から疑 念を差し挟まなかったこと、・あるいは差し挟めなかったこと にある。だから核の抑止力を否定するつもりは全くない」 に安堵した人間や特定の集団が実在したのではないだろうか。 実は、筆者がそう考えたくなる予兆が、オバマ氏の広島訪 ケリー氏広島訪問の「成功」を左右する一つ目の要素は、 で問の五〇日ほど前に観察された。それは、四月一〇、一一両 この高官の指摘した「動線」と深く関連する。原爆投下国の 影 の日の先進七カ国 (UF-) 外相会合に向けた日米外交当局によ 行政府ナンバー 3 であるケリー国務長官が、オバマ氏のいわ ン る水面下の動きだった。日米両国にとって因縁の地と呼べる ば露払い役として爆心地周辺でどのような立ち居振る舞いを 広島で外相会合が開かれたのは今回が初めてで、これも するのか、そして原爆がもたらした人間的悲惨さを世界に告 シ 初となる現職米国務長官ジョン・ケリー氏の被爆地訪問は、 発し続けてきた広島平和記念資料館 ( 通称・原爆資料館 ) をい クオバマ大統領訪問の「外交的前哨戦」として日本政府内で見 かなる態様で見学するかについては、外相会合の直前ま なされていた。つまり、「ケリー氏の広島訪問が成功裏に終 でギリギリの調整が日米間で続けられた。米側がとりわけ神 ア わらずしてオバマ氏の訪問は実現し得ない」というのが日本経質になったのは、ケリー氏の原爆資料館見学がどう報じら
されるどころか逆に人気が高まる。そういう人物がアメリカ 帝国を解体する「最後の大統領」になるかどうか。ソ連が二 〇年前に解体したときに米国も同じことをやるべきだったと いう見方ができる。どっちも核の冷戦の軍産複合体にむしば まれていった。ソ連のほうが先に現実を認めた。 軍産複合体の商売を破綻させなければ、いずれみんな巻き 込まれて大事なものを失いかねない。ペテンタゴンは当然、 オスプレイを日本に買わせようとしている。日本国民が抵抗 すれば、世界史の中でとても有意義な、重要な役割を果たし 得る。だからこそ、日本国民を思考停止のままにしておこう と、オバマの監督たちも必死だし、俳優の彼もそれなりに頑 張っている。残念な頑張りだけれど。 五月一一七日の「岩国演説」と「広島演説」をつなぎ合わせ て、あの一日のオバマの操られ演出の本質を見抜けば、いま の危機的状況があぶり出される。操り人形のそのまた操り人 形が日本の総理であることも見抜いて、独立するために、自 分たちが主権者になり得るために闘うこと。広告と現実を見 分けた上で、行動しなきや。 へ映画のセットのままで終わるのか。いま、、オバマ大統領本 日人わざわざ手で折ったと言われる折鶴が資料館に展示されて しいが、それをどう読み解くのか。 いるらしい。見に行っても、 マ広島の市民、日本の市民のやる気が問われている。 オ 特集 2 表紙の言葉ーー福島はいま 飯舘村飯樋 鈴木邦弘 頭上には抜けるような青空が広がっていた。地上で は、真夏の太陽が容赦なく照りつけ、気温は三〇度ち かくあり、湿気を含んだ空気が体にまとわりついてい た。生活の音が無くなった村には夏の暑さだけが漂っ ていた。時おり聞こえる重機のエンジン音は、私の中 の不快感を増長させた。この音は村のあちらこちらか ら聞こえてきた。これは山を崩している音だった。 除染は、表土を五センチほど削り取った後、その上 を新たな土で三〇センチ以上覆う。この一連の作業が、 村中で行なわれているのだ。この覆土を得るために山 は崩されていた。そして、この除染作業の元受企業は、 以前、原子炉建屋建設の受注をした大手のゼネコンで ある。現場では、原発の建屋建設の時と同じように、 四、五次下請け会社の作業員たちが働いている。 かって飯舘村では、有機農業や畜産などが盛んに行 なわれていた。生活の基盤は村の豊かな自然の中にあ った。しかし、今や村の中で目立っ風景は、表土を削 り、山を崩すものに変わってしまった。 ニ〇一五年夏撮影。放射線量】毎時〇・八マイクロシーベルト いいと
続ける現代に無自覚のままはびこる人間倫理の退廃をも告発米国は明確な道義的責任を負うことになる」と言明している。 原爆投下という人類史上最悪の惨劇をもたらした最高責任者 する啓示として、胸中に響いたからだ。 の一人であるステイムソンのこの言葉は、オバマ大統領が尊 筆者は被爆七〇年の昨年、連載企画記事のリサーチのため、 厳と威厳をもって被爆地で放ったメッセージと不思議な相似 「マンハッタン計画」や原爆投下に至る政策決定過程を記し 形を描く。そのことは、二人の言わんとするところが、核と 世た米国の解禁公文書を、つぶさに検証する機会を得た。その 人類の向き合い方を考える上で、強靱な普遍性と透徹した真 作業の中で、生身の人間、しかも非戦闘員である女性や子ど 理性を帯びていることを示唆していないだろうか。 もにまで核兵器を使うことに対し、深い葛藤と否定しようも ない罪の意識、素朴な良心の呵責を覚えた者が米政権上層部 「動線」めぐり外交戦 に少なからず存在した事実にあらためて気付かされた。 しかしながら、オバマ氏の広島演説を政策面から吟味する ここではその詳細に立ち入らないが、一九四五年五月末か と、残念ながら、その内容はとても十分とは言えない。「核 ら六月にかけ「日本に対する早期の無警告原爆投下」を決め 兵器のない世界の平和と安全を追求する」と力強く言い切っ た最高諮問機関・暫定委員会の議論に参加した高官の中には、 「米国は偉大な人道主義国であり、原爆投下の一一、三日前に事た七年前のプラハ演説と比べると、明らかにパンチに欠け、 ヾード ) と、ま 物足りなさと一抹の寂寞すら感じたのは恐らく、筆者だけで 前の警告を与えるべきだ」 ( 海軍次官のラルフ・ノ はないだろう。絶大な権力と重大な責任を抱く米国の大統領 さにモラルの観点から核兵器の無警告・無差別使用に反対す が被爆地でうたい上げた重要演説、しかも被爆した大勢の死 る者もいた。陸軍参謀総長のジョージ・マーシャルも五月二 者が眠る「聖地」で行った意思表示にしては、「理念先行」 九日、陸軍長官のヘンリー・ステイムソンに、原爆はまず の性格が強すぎる。被爆者らが希求し続けてきた核廃絶への 「純粋な軍事目標」に使うべきだと訴え、無辜の民には退避 道筋を描くための、説得力ある政策提言も、最後まで何ら聞 勧告が与えられなくてはならないとの認識を示している。 かれることはなかった。 また、ステイムソン自身も四月二五日、大統領に就任した 仮にその語り手が哲学者や宗教家、あるいは歴史家ならば、 ばかりのトルーマンに「モラルの向上が技術の進歩に伴わな オバマ氏の広島演説は、核と人類の関わりを考究する上で深 い世界において〔原爆の登場は〕現代文明の完全破壊をもたら 遠なる含意を帯びた名演説として歴史に記され、人々の記憶 す可能性もある。戦争を主導し原爆開発を先導したことで、 せキ、ばく ( 2 )
2 1 3 8 な立場」 ( 『朝鮮通信』六月八日付 ) を説明しは一五日、二〇一五年の北朝詳の 貿易額について前年比一八 % 減の六二億 たと朝鮮中央通信は一日、報じた。 ( 北Ⅱ朝鮮民主主義人民共和国。以下同 ) 翌一日に李洙塘副委員長は習近平国家五〇〇〇万ドルで、特に中国との貿易額 人民武力部、韓国軍当局に通知文を送り、南 主席と会談し、金正恩第一委員長からのが前年比一六・八 % 減の五七億一〇〇〇北軍事当局会談開催のための実務接触に南側 が応じるよう改めて要求。 世あいさっと口頭のメッセージを伝達、党万ドルだったが、中国貿易が全体に占め 同日 ( キューバ ) 金英哲政治局員兼副委員長を 大会の方針について並進路線を含めて説る割合は増加し九一・三 % になったと明団長とする朝鮮労働党代表団、ラウル・カス トロ国家評議会議長と会談。 明、習近平主席は朝鮮との友好関係を重らかにした ( 『読売』六月一六日付 ) 。 5 ・ ( 南ⅱ大韓民国、以下同 ) 国連の潘基文 一方米国は、北朝鮮への圧迫を強化し 視していると述べたと朝鮮中央通信は一一 事務総長、来年肥月の韓国大統領選に出馬す 日、報じた。新華社は、中朝双方が友好ている。五月一六日、国務省は米国民の る可能性を示唆。 関係を確認するとともに、関係国が冷静北朝鮮への旅行を「すべて取りやめるこ 5 ・舛 ( 三重 ) 「伊勢志摩首脳宣言」を採 択。北朝鮮による核実験や弾道ミサイル発射 さと自制を保ち、意思疎通を深めるようとを強く促す」渡航自粛措置を更新する について、「最も強い表現で非難する」。 習近平主席が強調したと一日、報道した ことを明らかにした ( 『読売』五月一八日付 ) 。同日 ( 広島 ) オバマ米大統領、現職大統領とし ( 『毎日』六月一一日付 ) 。 六月一日に米財務省は、北朝鮮を米愛国て初めて被爆地広島の平和記念公園を訪れ、 所感で「我々は核兵器なき世界を追求する勇 北朝鮮が党大会に中国共産党の高官を者法に基づく「マネーロンダリングの主 気を持たなければならない」と決意を表明。 招請したが、中国側が応じなかったため、要懸念先」に指定、金融制裁を強化する同日 ( 北 ) 朝鮮人民軍最高司令部、韓国軍が同 日、朝鮮西海上の軍事境界線を侵犯して人民 すべての外国来賓の招請を取りやめること発表した。手続が完了すると、北朝鮮 軍海軍の連絡船に砲射撃を行ったと非難。 とになったという見方も出ている。北朝は米国だけでなく第三国の金融機関を通 同日 ( 南 ) 韓国外務省当局者、オバマ米大統領 が多くの朝鮮半島出身者が原爆投下で死亡し 鮮が当初招請したのは党序列五位の劉雲じたドル取引も禁止され、資金調達が一 たと言及したことを評価。 山政治局常務委員だったが、中国側が党層困難になるという ( 『来曇六月一一日付 ) 。 5 ・囲 ( 北 ) 「労働新聞」、オバマ大統領の広島 内部の事情を理由に断り、北朝鮮はあら韓国軍合同参謀本部は五月三一日、 」訪問について、「再侵略を追求する日本を引 き入れて米国のアジア支配戦略実現に利用し ためて党政治局常務委員五人の中から誰朝が中距離弾道ミサイル「ムスダン」 ようとする打算がある」と非難。 かが訪朝するよう求めたが、中国側が難と見られるミサイル一発を午前五時一一〇 5 ・四 ( ウガンダ ) 韓国大統領府によると、 色を示したという ( 『東曇六月一七日付 ) 。分ごろ発射したが、失敗したと推定され朝鮮と長年友好関係を維持してきたウガンダ なお、韓国貿易投資振興公社ると発表した。これがムスダンの発射だのムセペニ大統領が、同国を訪問した朴槿恵 ・日誌 ( 5 月四日 56 月日 )
8 もありますし、イランの核問題が昨年のはいないので、日本側は必ずしもそうと。しい」と述べた ) もありましたが、これは 合意で一段落したことで北東アジアへのは受け止めていませんでした。 その発言の文脈からいって日本に対する 関心が高まっていることは間違いない。 その後、二〇一四年にハーグで行なわ指摘でもあることが明らかです。この発 日本のプルトニウムに、今まで以上に注れた核セキュリティサミットでは、全体言にとどまらず、アメリカからは随所で 世目が集まることは十分考えられますね。の共同声明とは別に、日米首脳の共同声日本に対する懸念が表明されています。 明が発表され、これに基づいて一部、高たとえば、大統領補佐官が日本メディア なせ日本はプルトニウムを持つのか 濃縮ウランのアメリカへの返還が実現しのインタビューに応じて懸念を表明して 日本の原子力政策がプルトニウムの観点ました。この共同声明も日本の余剰プル います。にもかかわらず、菅官房長官は、 から疑念を持たれているとの指摘ですが、実トニウムについて直接触れてはいません日本政府に懸念を伝えられたことは「全 際にアメリカではどのように解釈されているが、世界規模で高濃縮ウランや分離プルくない」と述べています。この意識の違 のでしようか。 トニウムの保有量の最小化を日米両国の いはどこから来るのでしよう。 吉田聞く相手によって違うと思います共通の目標としていく旨が記されていま鈴木吉田さんがおっしやったように、 が、外交面で言えば、日本も参加した核す。つまり、アメリカは日本を名指ししこの問題で、アメリカの公式見解の中で セキュリティサミットが二〇一二年にソて批判することこそしませんが、日本に日本が名指しで批判されたことは一切あ ウルで開催された際、オバマ大統領の現余剰プルトニウム問題を強く意識するよりません。しかし私が知る限り、二〇一 地での講演が重要なメッセージだったか うに様々な形でメッセージを送りつづけ三年の日米の原子力政策委員会で非公開 と思います。オバマ大統領は、分離プルており、そしてそれを日本がどう受け止のサマリーが出ており、その中で初めて、 トニウムがテロ集団に渡らぬよう試みてめ、どう行動するかを見つづけていると核兵器に転用可能な核物質の在庫量を減 いる最中に、その物質を大量に増やし続思います。 らすことが記されました。その頃から少 けることは絶対にしてはならないと強調猿田この間の米国側の発言を見ているしすつアメリカ側は日本にメッセージを しました。多くのアメリカの専門家はこと、カントリーマン国務次官補の発言送っていたのでしよう。政策を変えろと の文言は日本を念頭に置いた表現だと理 ( 三月一七日の米上院外交委員会の公聴会で「全 いうのではないが、プルトニウムの在庫 解していました。しかし、名指しされてての国が再処理事業から撤退すれば非常に喜ば量は減らしてほしいというメッセージで 特集 2
世界 8 1946 年 8 月 26 日第 3 種郵便物認可 2016 年 8 月 1 日発行 ( 毎月 1 回 1 日発行 ) SEKAI 岩波書店 2 016 August no. 885 ジャーナリズムが 生き延びるには 「核なき未来」は可能か 東京都知事つまずきの構造 徳並図館 60967030 特集 2 チャールズ・ルイス国谷裕子ディヴィッド・ケ マーティン・ファクラー田島泰彦立岩陽一郎 オバマ大統領 広島訪問から考える 池上雅子アーサー・ビナード鈴木達治 梅林宏道吉田文彦太田昌克猿田佐世 片山善博進藤兵
において、大統領や国防長官の方針がどのように無視され、 月 ) と述べ、また「核兵器のない世界とは、単に『今日の世 総司令官がこの力学を止めることにおいていかに無力であっ 界マイナス核兵器』の世界ではない」 ( 二〇一一年三月 ) と述 たかを回想録に記している。彼は問題の根深さを示す一つの べた。これらは核軍縮外交の困難さ以上の困難を克服しなけ 側面として「違法ではないが倫理的とは言えない」軍部に根ればならないという自覚を、彼らが持っていることを示して 世付く制度的な悪弊を指摘した。「軍部の高官が制服を脱ぐと 主要な軍需産業に入り、逆に主要な軍需産業の役員が国防総 四人の元高官のさらなる背後には、彼らを押し出したフー ー計画 ( 「核兵器のない世界」推進のイニシアチプ。スタンフォード 省の高官になる」。これが「庇い合いや甘い取り引き、軍の 要求の膨張、そして大量契約」が生まれる土壌となる。 大学フーバー研究所で始まった ) の元外交官マックス・カンベル 核兵器国とりわけ冷戦期の両雄であった米ロにおいては、 マン ( 故人 ) がいた。彼は米国こそが人類が正気を取り戻す 核兵器が比類のない破壊力を有しているがゆえに、国家安全 ために率先して動くべきと強く主張した。米国の努力にロシ 保障の名の下に、その周りに巨大な聖域が作られ、そこに今 アや中国が応じるかどうか分からないとしたうえで、彼は も「核の聖職者」が支配するアンタッチャプルなプロセスが 「正気への私たちの努力は、私たちアメリカ人ーーロシア人、 存在している。核兵器国における核軍縮の過程は、このよう 中国人、アフリカ人、ラテン系人、インド人、ドイツ人、フ な聖域を崩しつつ進行しなければならない。 ランス人の子孫であるアメリカ人ーーが人類の尊厳と平和を オバマ大統領が、プラハ演説において「私はナイープな人達成する努力に参加していること、そして、この努力はアメ 間ではない。 ( 核兵器のない世界の平和と安全を追求するという ) こ リカが世界のすべての人々のために示し追求しているもので あることを、世界の人々に確実に伝えるだろうと確信してい の目標は直ちに達成できるものではない」と言いつつ、「世 界は変わらないと我々にささやく声に惑わされてはならない。 る」と主張している。 『我々にはできる』と主張し続けなければならない」と述べ 核兵器国の内部に存在している、このような核兵器ゼロへ たことは記憶に新しい。オバマ大統領を背後で支えたキッシ の原動力を、分水嶺を迎えている核兵器の法的禁止の重要局 ンジャー 面においていかに活用し、核兵器国の継続的な関与を確保す ペリーら四人の元高官も、有名な共著論文に 「 ( 核兵器のない世界を創造するという ) 共同事業は、核兵器国の る動きとして作り上げるかが、国際的な核軍縮運動に問われ 体質を変容させることなどを含む」事業になる三〇〇七年一 ている。容易ではない課題であるが、長期的視野と見識にも
8 な人類的危機が進行しているのだが、それはタブーとして全 世界支配、みえざる「ステルス帝国主義」として本国を含む く触れず、あたかも米国が核のない世界に向かって努力をし 世界中の民主主義を浸食するもの。そして米国の「帝国」 ているかのような印象操作を行っているのだ。米国や一部他としての覇権の基盤は核兵器を始めとする絶大な軍事力 ( 単 の核保有国が進めているとされる核兵器の近代化は、実戦で 独で世界全体の軍事支出の約三六 % ) に依拠する。 世使用できる新型小型核兵器の開発である可能性もある。 五大核保有国が拒否権をもっ安保理事会常任理事国として オバマ大統領の修辞に満ちた広島演説は、実戦で使えない 君臨する国連は、一九四五年以来の核帝国主義の世界秩序を 一一〇世紀型大量破壊兵器への訣別を語って我々に核廃絶の幻 体現している。そのため、やも核実験や原発 想を与える一方、一一一世紀型の「使える核兵器、すでに実戦 による被曝者救済に積極的に動くことはない。現行の核不拡 使用されているかも知れない新型小型核兵器の開発・配備・ 散体制で、五大核保有国はいずれも核抑止戦略を 使用」への問題認識を阻むものだ。その意味でオバマ大統領国防上不可欠と位置づけるが、非核兵器国の国防のための核 の広島演説は、来るべき熾烈な核軍拡競争の現実を隠蔽しつ 抑止は否定する。しかも米国を始めとする核武装国は、核兵 つ、その冷酷な現実を米国民と同盟諸国に受け入れさせるた 器の小型化、精度向上といった近代化で「実戦で使えるスマ めの心理作戦だったアイゼンハワー大統領の「原子力の平和 ト核兵器」の開発に勤しんでいる。核保有国優位の現行の 利用」演説に比肩される。それは、近未来の戦闘やテロで核 国連組織は、五大核保有国の特権を保証する不平等条約とし 兵器が使用され原発がステルス攻撃の標的になる核アナーキ ての核不拡散体制の維持にこそ多大なエネルギー ーへのプレリュードとなるのだろうか。 と資源を投入するが、核保有国が核兵器禁止条約や核兵器使 用の違法化には頑に反対する現状で核兵器廃絶は望むべくも 核帝国主義の超克 ない。真の核兵器廃絶の為には、非核兵器保有国にして被爆 冷戦時代の米国随一の東アジア研究専門家チャルマーズ・ 国でありながら多大な国連分担金を支払い続ける日本が、先 ジョンソン教授は、晩年の一連の著作で米国の軍事覇権主義 ずは国連憲章の敵国条項を削除し、ひいては非核兵器国どし がやがて米国をも浸食してゆく危険を繰り返し警告した。そ て国連安保理常任理事国になることが必須であろう。それは れは「世界一三〇カ国 ( その多くは独裁国家 ) に七三七ー八六 核帝国主義の世界秩序を体現する現行国連組織の根本的転換 〇の軍事基地と五〇万人以上の軍隊やスパイを配し、さらに を意味する。また、非核兵器国は、核保有国が主導する核物 多くの秘密諜報工作機関を展開」する圧倒的軍事覇権による 質管理強化措置などを唯々諾々と受け入れるのでなく、米中 持集 2
ですよ」と喝破する地一兀の人がいる。同空港が面する有明海部隊だ。これが姿を変える水陸機動団も任務は同じ。兵員数 は二、三〇〇〇人に増え、オスプレイ一七機の他に佐賀空港 は養殖ノリの大生産地。板ノリの生産高は全国一。「オスプレ めたばる に近くの陸自目達原駐屯地のヘリ部隊五〇機もそっくり移る。 イ基地ができると海が汚れる。ノリ養殖に大打撃をうける」 と反対するのが佐賀県有明海漁協三〇〇〇人 ) の漁民なのだ。 防衛省は、五月一九日、佐賀空港に隣接する陸自オスプレ 干拓地に空港を作ることになったときもかれらの反対があ イ基地予定地三〇ヘクタールの初の現場調査を行なった。 った。「自衛隊には使わせない」の一札を入れさせた。 地権者で反対派の佐賀県有明海漁協はこの現場調査を拒否 していた。しかし当日は阻止行動はなかった。現場調査が日 佐賀県は九州北西部。福岡県と長崎県に挟まれている。防 衛省が米国のオスプレイ一七機の二〇一八年からの購入を考時を極秘にした抜き打ちだったことと、午前五時半から七時 えているのは、長崎県佐世保に新設する陸上自衛隊水陸機動 という早朝だったせいだった。 団へ配備するため。その基地として手近な佐賀空港に目をつ 《オバマ護衛と横田 0 > け、隣接地に格納庫、隊舎など付属施設を作ろうとしている。 これまででもっとも多くの日本人がオスプレイの飛ぶ姿を 県との交渉は、おととし二〇一四年七月から始まった。当 見たのは、五月二七日夕、オバマ大統領のあのヒロシマ訪問 初は陸自オスプレイ受け入れのほかに沖縄の海兵隊オスプレ イの一部訓練の移転案もあった。「米軍機はいや。自衛隊機 の際、岩国基地から広島へ飛んだときだろう。テレビ各社が なら」との県側の意向で米軍機の利用は実現しなかった。 全国へ生中継したからだ。 リーン・ワンの本物 その後、翌年一月に知事が変わって、陸自オスプレイについ 午後五時前、まず大統領専用へリのマ ても「白紙」の姿勢に戻った。県や地元は「防衛省の説明が とオトリの二機が岩国基地を舞い上がった。続いてオスプレ イ四機が離陸し、二機のヘリの前後を護衛した。広島市内の くるくる変わる。考えがよくわからない」といい、足踏み状 イ態が続いた。二〇一五年末になって、県は「佐賀空港利用の ヘリポートまで約一〇分かかった。 こういうシーンはめったに見られないと思う。大統領専用 プための調査に応じてもいい」と言い出すようになった。 オ 陸自水陸機動団とは、一言でいえば、自衛隊版の海兵隊だ。 ヘリを護衛するときの実際のやり方が眼前で演じられた。 あいのうら す 現在、佐世保の海に面した陸自相浦駐屯地には西部方面普 一方、その四日前、五月二三日に東富士演習場で起きた話 実通科連隊 ( 六六〇人 ) がいる。南西諸島の島嶼を防衛する専任はあまり知られていない。午後四時ごろ、同演習場に一機の
山口オバマ政権にせよ、プレア政権にせよ、リ・ヘラルが えているのではない。あくまでも、国が強くなるために、 国民の大きな期待を集めて政権を取ったけれども、グロー 「一億の民よ、総員奮励努力せよ」と言っている。女性のた ル資本主義のわがまま放題は変えられなかった。だったら自 めの「女性の活躍推進」ではないし、地方のための「地方創 分たちで何か運動しようという人たちが現れている。 生」ではないのです。 浜だからこそ、バナマ文書などは、そうした流れを変え 現実に根ざした社会保障政策を るための大きなテコとして使える面があると思います。 ロ 山口そうですね。たとえば、四月の北海道五区の補欠選 山口アメリカの大統領予備選では、民主党の側でバーニ 挙は、「日本死ねⅢこプログ以降、社会保障への人びとの関 ・サンダース上院議員が非常に健闘しました。サンダース 心が高まるなかで行なわれましたが、サンダース現象にも通 氏の運動を支えたのが若者であり、政策的な柱の一つとして ずる運動が生まれていたと思います。福祉の仕事を続けなが 最低賃金を上げること、それから、公立大学の授業料を無償 ら、シングルマザーとして二人の子どもを育てた池田真紀さ 化することが掲げられました。イギリスの労働党でもコービ んが無所属で立候補して、若いお母さんや学生が池田さんを ン党首は同じような政策を出しています。 浜アングロサクソン資本主義の総本家であるアメリカと 応援するため集まった。従来の選挙とはかなり違った雰囲気 のキャンペーンが展開されたと思います。 イギリスで、それに大きな疑問を差しかざす人たちが出てき 竹信池田さんを約一万二〇〇〇票の差で破って当選した ているということですね。一 % の金持ち対九九 % の貧乏人。 のは自民党新人の和田義明氏でしたが、日本の進路が、二人 このような構造をつくり出したものに対して怒りを炸裂させ、 の候補にそれぞれ体現されているように見えました。山口さ 変えなければいけないと言っている。日本でも「一対九九」 んも言われたように、池田さんは大変な苦労のなか、子育て になる前に、新自由主義的な経済のひずみを大きくする政治 しながら大検を経て大学院に行ったシングルマザーです。女 を変えていかなければいけないと思います。 性が本当に働きやすい社会、そして望む人皆が働いて、豊か 議山口しかしアメリカでは民主党のクリントン氏やオバマ ン に暮らせる社会へと日本のシステムを変える。そうした方向 大統領、あるいはイギリスだとプレア時代の労働党がそうで ホ ム を示していました。一方、対立候補の和田さんは有名政治家 したが、リべラルが選挙で勝っために、ビジネス界と仲良く の の娘婿です。公開討論会で、保育園の整備を一応掲げながら ニしなければいけないという強迫観念があって : も、「世帯主が家族を養っていける収入を手にすることがで 山浜ま、。 媚の政治経済学のような格好になっています ( 笑 ) 。