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検索対象: 世界 2016年8月号
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1. 世界 2016年8月号

調査報道のコースでは、データ・ジャーナリズムや国際調 査報道は必修です。講師陣はアメリカにおけるトップの人々 を揃えたスター・チームです。 国谷それはとても興味深いですね。アメリカではすでに学 生によって運営されているニュース・サービスが存在し、成 果をあげています。ジャーナリズムへの貢献という点でも、 大学はとても重要な存在になりつつあります。 ルイスその通りです。アメリカでは一八の大学に報道セン ターが設けられています。アリゾナ州議会について報道して いるのはアリゾナ大学の学生だけです。大学は民間メディア の大量リストラによって作られた隙間を埋めているのです。 大学とジャーナリズムの協働ということは誰か一人が考え たことではなく、同時に出現してきたのです。民間の商業メ ディアが衰え、非営利の報道機関が浮上し、そこに大学とい るう要素が加わってきたのは最近のことで、過去一〇年ほどの 革 ことといっていいでしよう。すべてが一体となりつつあり、 変 ムそれを観察するのはとても面白いことです。 ズ ナ国谷あなたが作り出そうとしているエコ・システムの発展 ヤはジャーナリズムの変革につながるものと見ているようです 道が、一方で、非営利の報道機関が直面している大きな課題は 査どのようなものですか。 調 特集 1 ルイス非営利の報道機関が直面する最大の問題は、言うま でもなく常に資金を必要としていることです。商業メディア と一緒で、それが最大の問題でしよう。政府のことを調査す るため、政府資金は受け取りません。しかし、民主主義とコ ミュニティという考え方を捨てないのであれば、情報は必ず 必要です。そのため、資金は常にあるでしよう。 それとは別の課題として、私は非営利の報道機関の数を増 やし、その規模をより大きいものにしないといけないと思っ ています。国際的規模が必要です。 統治されていない地球上の場所について考えてみてくださ い。たとえば北極です。氷に穴をあけて原油を得ようとして いる人がいます。それを監視している人は一人もいません。 北極には記者がいないからです。非営利の報道機関によるエ コ・システムが出現しても、取材がほば不可能な領域はたく さんあるのです。 したがって、もっとも大きな課題は、このエコ・システム がどれだけ遠く、どれだけ広く、どれだけ深く進めるかです。 現在は、商業メディアの実質的崩壊によって欠けた部分を埋 めるために非営利の報道機関は存在します。この勢いを維持 し、進めるところまで行くのが最大の課題だと感じています。 ジャーナリズムの役割 ロ 国谷これは非常に初歩的な質問なのかもしれませんが、急

2. 世界 2016年8月号

ディアの独立性に懸念があることを強調しました。 への干渉とはならないように努めたにもかかわらず、実際「 メディアの自由と独立性とは、多くの点で明らかに密接に は妨げとなっています。取り扱いに注意が必要な話題を報道 できるかどうか、ジャーナリストがそうした不安を抱くのに つながっていますが、それらを区別することは重要です。 ネット空間でも現実世界でも、日本のメディアの多くには、 十分な不確定要素と深刻な罰則が、残念ながらこの法律には 強固な表現の自由があるのは明白です。たとえば、独立系の付随しています。 週刊誌は重要な話題を報道し、批判的な意見を定期的に掲載 こうした問題は、ジャーナリスト自身が独立した基盤を確 していますが、私の知る限りではそういった報道に対して罰 立することに失敗していることと相まって、日本のような民 則を科されることはありません。実際、主要報道機関のジャ 主主義社会にとって必要な、精密な調査報道を行なう人びと をひそかに傷つけています。 ーナリストの中で、自分の属しているメディアより、調査報 道の自由が相当にある週刊誌に記事を載せたくなる、と話す 「国境なき記者団」は、定期的なレビューにもとづいてそ 人も複数いました。 ういった日本の状況を明らかにし、メディアの自由に対する 私の主な懸念は二点あります。一つめは、主要メディア 意識の衰退をみてきました。日本を拠点とする国際的なジャ 日本の視聴率の多くをとる、を含む主要メディア ーナリストも、それと似た報告を行なっています。 の複合体ーーのジャーナリストが、取り扱いに注意が必要な もちろん私は、そうした分析報告とは別に、私独自の調査 話題は避けなければいけない、というかなり強いプレッシャ にもとづいて結論を導いています。 ーに直面していることです。そのことが、多くの市民に届く 放送法は改正すべき はずの情報の種類と範囲を縮小させています。の会長 総務省の高市早苗大臣は、放送局の電波停止がありうるという が政府見解と矛盾せずに報道することを求めたという話は、 自らの発言に対する批判について、ケイさんが帰国した後の記者会 立ジャーナリストや社会活動家との対話のなかで、何度も出て はきました。 見で、「政府は法律を公平、公正に運用しており、報道機関に圧力を 機 かけた事実はない」と反論しています。これについてどのように考 二つめに思うことは、日本の法律、特に特定秘密保護法や 道 えますか の放送法は、ジャーナリストが批判的な話題を取材するのを妨 日げている、ということです。官僚たちが、秘密保護法が報道 日本の放送法は、この件に関係するところで二つのことを 特集 1

3. 世界 2016年8月号

そのものは重要で、日本政府が記者会見を定期的に行なって 8 グするなど、嫌がらせが可視化されないようにするツールを しることは望ましいことだと思います。しかし、記者クラブ 個人に提供することが、民間のインターネット会社にとって 制度は、その会見から多くのジャーナリストを排除してしま 重要だと思います。 っています。記者クラブに含まれないジャーナリストのほと 一部の一言論には対処できないかもしれません。しかし、暴 界 世力的な脅迫や暴力を誘発するものを特定し、それに対抗措置んどは、おそらくインターネットで活動している人たちです。 記者クラブは主要メディアに政府への " 通行証。を配布し をとりつつ、責任の所在を明らかにし、しかるべき責任をと ています。メディアは政府へのアクセスを保っために、政府 らせることは大切なことです。 との良好な関係を維持しようと努めます。このシズテムは、 実際の世界では、いじめはそれ自身に対する嫌悪感によっ てなくなっていくものです。同じようなことがインターネッ 政府が一般に共有すると決めた情報をメモしたり報道したり する排他的クラブの速記者や事務員へと、ジャーナリストた ト上でも起こるべきです。真に恥ずべき人にこそ恥をかかせ、 ちを変えてしまう恐れがあります。それは、民主主義社会が 嫌がらせをしたり他人を煽ったりする人こそ孤立させるよう 育てるべきジャーナリズムの姿ではありません。 な倫理を作り上げるべきです。 二点目は、報道官、出版メディア、インターネットメディ メディアの社会的役割と調査報道 ア、マスメディア、公共放送、独立系週刊誌など、すべての 日本のメディアの独立性を脅かすものがあるとすれば、それは ジャーナリストを束ねる職業組織がないことです。民主主義 何だと思いますか。また、独立性を維持した自由な報道を行なうた 社会において、自分たちの独立性を主張し、ジャーナリズム めに、現在の日本の記者たちが自ら取り組むことのできる、有効な の原則と倫理についてお互いを啓発する発言力を持っことの アクションは何だと思いますか。 意味を、日本のジャーナリストは確認する必要があります。 しかし、彼らはその力を、現在は持っていません。ジャーナ これは重要な問いです。日本のジャーナリストが取り組め リストにとって最も必要となるはずの団結を作ることが必要 る二つの重要な点を強調させてください。実際に、ジャーナ です。 リストやメディア企業自身が取り組めることです。 特に、メディアの独立性への懸念を考慮すると、報道の倫 まず、記者クラブ制度が、日本の一般市民が情報にアクセ スすることを大きく制約していることです。政府の記者会見理と独立性 ( の確保 ) を目的とする組織があれば、それが対 持集 1

4. 世界 2016年8月号

8 ルーチ氏が、再処理の問題とは、第一に済合理性がないので、それはアメリカはとは、必ずしも原子力平和利用の最先端 テロリズムの問題、第二に核不拡散の問望まないと。原子力と再処理核燃料サイを行くことではなく、核不拡散分野で模 題、第三にイランとの合意も含めた今後クルの是非をきちんと分けているのです範を示すことだ、と指摘しています。す の燃料サイクルの国際的意義だと整理しが、その視点がなかなか日本には伝わらでにアメリカは、一九六〇、七〇年代当 世ていました。原子力政策も重要ですが、 時のような力を持っ存在ではなく、国際 そうした視点が確かに必要だと思います。 協力のもとで核不拡散を進めなければい アメリカは原発維持を求めているのか 吉田日本では再処理はエネルギー需要 けない中で、核不拡散のリーダーシップ を満たすためのエネルギー政策であって、 日経新聞社などによる国際シンポジウムと、原子力平和利用を維持していること 地域の安全保障の問題としてはあまり考「原子力と安全保障を考える」三〇一四年 ) でが必要だという議論はまた少し違うので えられていない、しかし分離プルトニウは、ジョン・ハムレ氏所長 ) や、ロはないのか、という指摘です。 バート・ウイラード氏 ( 原子力発電運転協会理 ムの問題はアメリカの国家安全保障に影 私が思うのは、現在の日本が最もリー 響をもたらすし、北東アジアの安全保障事長 ) が、「高い原子力技術を持つ日本と米国ダーシップを発揮すべき分野は、福島の にもかかわる。ガルーチ氏はそうも指摘の協力関係が、アジアの原子力秩序には不可事故の経験をどう教訓化するかというこ していましたね。 欠」と語っています。日本が脱原発をした場とだと思うのです。これをやらずに、他 鈴木同じような視点で、エネルギー省合には、原子力について国際的な場で発言での分野でリーダーシップをとるというこ 長官のモニーツ氏は、エネルギー政策ときなくなるという指摘もあります。こうしたとはあってはいけないと思います。リー しての原子力の重要性はアメリカも十分見方はアメリカ側で共有されているのでしょダーシップの議論が日米産業協力の枠組 認識しており、日本がそのような政策をうか。 みの中でしかできないとするなら、非常 とることは当然理解するけれども、再処鈴木さきほどのガルーチ氏は、核不拡に残念です。 理と濃縮に関しては自分の国で持っ合理散のリーダーシップを守るために日米の猿田アメリカでの調査の際、日本の脱 性・必要性はない、 と語っています。濃原子力技術が必要だという議論には違和原発政策についての質問はお会いした方 縮は国際市場でできることであり、再処感があると言っています。核不拡散につ全員に投げかけました。それへの返答は、 理してプルトニウムを取り出すことは経いて国際政治でリーダーシップをとるこ一致していません。そもそも、予想に反

5. 世界 2016年8月号

再処理にこだわるのでしようか。 る姿勢を見せることが重要です。プルトす。韓国は米国との原子力協定を改定し、 鈴木私が原子力委員会で働いていた時ニウムを減らすためにどういう技術的・日本と同じように再処理ができるような には、いわゆる青森問題、つまり青森県政策的選択肢があるのか、それにどう日環境を整えたいと言っています。中国は との過去の約東を覆すことができないと本政府が真剣に取り組んでいるかを見せ中国で、日本のような大規模な再処理施 いうことと、現実に使用済み燃料の行きる必要があるというのが私の主張でした。設をフランスから輸入することを検討し 先に困るという電力会社の事情、使用済対応の一歩として、アメリカへのプルています。もともと不安定要素が高い北 み燃料は資産という会計上のルールを崩トニウム返還がありました。量的には三東アジアなのに、北朝鮮が核開発を進め すことになる、といった問題が議論され三一キロに過ぎませんが、それでも一歩る一方で、プルトニウムが場合によって ていました。いろいろ理由はつけられるは一歩ですから、私は評価しています。は増えていく地域になりかねません。そ のですが、それでも再処理政策に合理性しかし、再処理をめぐる新法は逆の政策うなるとお互いに核拡散、核軍拡リスク がないことは明らかです。需要がないのに見えてしまう。プルトニウムをなんとに関する疑心暗鬼が強まりかねません。 にプルトニウムを生み出しつづけることか減らす政策を実行していくことが必要北東アジアの安全保障はこれからどうな るかという問題は、アメリカにとっても になるわけですし、使用済み核燃料は貯です。そのためのひとつの方法として、 蔵していけばいいのですから、今すぐ再「国際協力」という言い方で、同様にプきわめて重要な問題になっています。そ ういう大きな構図の中で、日本の方針は 処理しなければならない理由は見つからルトニウム余剰問題を抱えているイギリ ス、フランス、ロシア、アメリカと協力改めて注目されているのです。今後の日 ム 使用済み燃料の貯蔵をどれだけ真剣にして、プルトニウム処分の計画を作るの米原子力協定交渉は、実務担当者だけで はなく、広い視野でこの問題を見ていく 行なっているのかという点は、説明責任がいいのではないかと思います。 プが求められるもののひとつです。それか吉田北朝鮮が核実験を続けており、そ日米間のやりとりが必要になってくるだ す がら猿田さんが指摘されたように、これ以れに反応するように、韓国では、どこまろうと思います。 上増やさない、減らすための政策をきちで本気かはともかくとして、核武装につ鈴木 ( アメリカのシンクタンク ) を いて政治家が公然と語ったりメディアが ( 戦略国際問題研究所 ) のセミナーで、 ( 元北 関んと打ち出すかどうか、です。そのため 米 ヾート・・・カ にはプルサーマル以外の選択肢を検討す、主張したりするようなことが起きていま朝鮮核問題担当大使の ) ロノ 1 特集 2

6. 世界 2016年8月号

されないが、他国からの武力攻撃を阻止することは自己防衛 形跡はなく、また、この理解を正面から否定する意見も示さ れることはなかった。したがって、憲法九条は自衛戦力の保そのものであって、「国際紛争を解決することとは本質が違 持を禁じておらす、かかる戦力をもってする自衛戦争を許容 う」。③自衛隊はこの実力に該当し、憲法に違反するもので しているとい , ? ー・ー芦田修正により可能となったとされる はない。①は当初から一貫している。②と③については、た ーー理解が、最終的に九条の意味として制憲議会の承認を得 しかに、制憲議会においてそのような内容が明確に示された ことはない。しかし、だからといって、かかる政府見解は憲 たとすることはできないと思われる。 以上のことから、制憲者が意図した憲法九条の意味内容は、 法九条の解釈として誤っていると結論するのは早計である。 次のようなものであったということができる。第一に、侵略で 制憲議会では、他国からの武力攻撃に対して全くの無防備・ あれ自衛であれ、一切の戦争を放棄すること、第二に、自衛権無抵抗を貫くべしとの立場が積極的に表明されたわけではな は否定されていないが、その行使の方法は戦争以外のものに 戦争をするのに必要な力としての軍備戦力は一切持た ないという前提の下、自衛権の行使としていかなる措置を採 限定されること、そして第三に、そのような自衛権行使の方 ( 8 ) 法の具体化は後の世代に委ねられた課題となること、である。 りうるかは将来の課題として残されていたのであり、上記の こうして見ると、その後の歴代政府の憲法九条解釈は、必ず政府見解はこの課題に答えて憲法九条の意味を具体化し、補 しもこの九条の原意に反しているわけではないことが分かる。 充したーー新たな具体的状況における九条の意味を明らかに ものと見ることができる。 日本国憲法制定後に設置された警察予備隊、保安隊、自衛 隊といった実力組織について、政府はこれらを憲法九条の下 そして、何より重要なことは、政府が自衛隊を自国防衛の ための必要最小限度の実力として正当化した際に、自衛権行 でいかにして正当化することができるかという問いを突きっ けられたわけであるが、これに対して、一九五四年の自衛隊使の要件を明確に定めたことである。よく知られているよう に、それは、①わが国に対する急迫不正の侵害があること、 発足以来、政府は次のように答えている ( 一九五四年一二月二 ( 9 ) 一一日衆議院予算委員会、大村清一防衛庁長官答弁等 ) 。①憲法は自衛②これを排除するために他に適当な手段がないこと、③必要 か の 権を否定していない。②憲法は戦争を放棄したが、他国から 最小限度の実力行使にとどまるべきこと、という三つの要件 た である。このうち①と②は、自衛権を発動する要件であり、 わの武力攻撃に対し国土を防衛するための手段として必要最小 は限度の実力を保持し、これを行使して抗争することは認めて これが満たされない限り、そもそも自衛隊による武力の行使 法 いる。「国際紛争を解決する手段として」の武力の行使は許 は許されない。③は、一旦自衛権が発動されたのち、その行

7. 世界 2016年8月号

果敢な調査報道を行なう団体の数はとても少ないのが現状ます。私は「君たちは広告主に関する報道を行なうかい ? 」 です。とはいえ、何もないよりましです。権力についている と返します。 ともかく、これが今の私たちのモデルです。 人々を監視する目があるのですから。しかし、これまでに私 たちが失ったものとそれが同等のものだとは誰も一言えないで 非営利の報道では、支援者を公開し、私たちが誰に支援し 世しよう。残念ですが、それが事実です。 てもらっているのかを示すことが非常に重要です。数百のア メリカの慈善団体が、五年間で一億八五〇〇万ドルから二億 国谷非営利団体は、調査報道を続けるために必要な財政を ドルもの資金を、非営利メディアを支援するために寄付しま 安定的に確保できているでしようか。 した。それには理由があります。彼らの地方から報道が失わ ルイスその答えは、イエスです。「安定的」ということを れていたのです。新聞は死にかけていました。それまでジャ どう定義するかにもよりますが、少なくとも商業メディアと ーナリズムについて考えたこともなかった人たちが、交響楽 同じ程度には安定的と言えます。 団や美術館に寄付をするのと同じように、ジャーナリズムに 私はよく商業メディアのジャーナリストから、「チャック、 寄付をするようになりました。彼らは考えたのです。「ちょ 60 minutes を辞めて非営利団体で働くなんて、どうかしてい っと待て、私たちはここで何が起きているのかも知らない。 るんじゃないか、ビジネスモデルはどういうものなんだ ? 」 市長についても、州知事についても知らない。情報が必要 と聞かれます。私の回答は「個人や財団などからファンドレ だ」と。そして突然、ジャーナリズムを支援することが好ま イズしている」というものです。すると、「それはいったい しいことになり・ました。 誰だ」と再び聞かれます。私は、「私たちが目にしていない 私は過去数年で四〇〇〇万ドル以上の資金を得ることがで 情報の必要性を理解している人々がいて、そのような情報が きました。そのほとんどはメディア企業のものではありませ 重要だと感じ、そういった情報は公共のものであり、その情ん。メディア企業は競合関係にある非営利報道機関に出資な 報を得るべく調査している私たちに寄付することで民主主義 どしたくないと思っています。 を促進していると感じているんだ」と答えます。 国際的ネットワークの必要性 逆に、商業メディアのジャーナリストに「君のビジネスモ デルは何だ ? 」と聞くと、彼は「広告で稼いでいる」と答え 国谷を去った後、あなたはを始め、公表され 特集 1 ロ

8. 世界 2016年8月号

懸念を表明し、すべての加盟国が、いかなるときも、国際人 必要な枠組みを確立すべく、すべての加盟国が特別な努力を 払うことの必要性を強調する。会議は、国連事務総長による 道法を含め、適用可能な国際法を遵守する必要性を再確認す る」。すなわち、「いかなる使用」も人道上の問題を発生し、 核軍縮のための五項目提案ーーー提案はとりわけ、強固な検証 したがって「いかなるときも」「すべての」加盟国が、国際 システムに裏打ちされた核兵器禁止条約についての交渉、あ 人道法と合致するか否かが問われるという内容である。法的 るいは相互に補強しあう別々の条約の枠組みに関する協定に な力はないが、政治的合意としては極めて強い文言である。 ついての交渉を検討するよう提案しているーーーに留意する」 これを受けて二〇一三年以来、核兵器の人道上の影響に関 この文言は、最初に起草された文言よりは薄められた妥協 する三回の政府主催の国際会議が開催された。ノルウェー の産物であり、交渉を始めるための具体性を備えた合意には なっていない。それでも第六条が「核軍縮の効果的措 メキシコ、オーストリアがその主催国となった。これらの会 議は、健康、環境、経済、社会などの分野における核兵器使置について、誠実に交渉することを約束する」と定めている のみであることと比較すると、禁止条約の交渉を視野に入れ 用の影響について、事実べースの情報や科学的知見を改めて 集積し考察した。会議では、例えば、冷戦期において指摘さ た合意になった点において重要な前進であった。 れていた「核の冬」について、気象学者の最新のシミュレー いつ、どこで、どのような内容で条約交渉を始めるか、と ションは、地域的な核戦争であっても五年間にわたり地球上 いう核心問題に、やっと国際社会は向かい合うようになった。 の穀物生産を一〇 5 四〇 % 低下させ、いわゆる「核の飢饉」 公開作業部会の設置へ をもたらす可能性など、新しい科学的知見が得られているこ とを示した。核兵器使用の人道上の結末についてのこのよう 国連では、このような条約交渉の場として「軍縮会議 (o 水な再認識は、核兵器の法的禁止に向けた国際世論の高まりに 」が国連欧州本部 ( ジュネープ ) に常設されている。当然、 の貢献した。 核兵器禁止の法的枠組みの交渉もにおいて行うべきとい 止 二〇一〇年再検討会議におけるもう一つの重要な成 うことになる。ところが全会一致の議事運営ルールを定めて 禁 果は、「核兵器のない世界」の達成と維持に必要な法的枠組 いるは、毎年の議題設定にすら合意することができず、 法 器みの交渉の必要性が明記されたことである。合意文書は次の 一九九六年に交渉を終えて以来、十数年の間、全く 核ように書いた。「核兵器のない世界を実現、維持するうえで の機能不全に陥っていた ( 現在も同じ状況が続いている ) 。 特集 2

9. 世界 2016年8月号

力行使が許されるのは、わが国に対する急迫不正の侵害に対 ことは、重要な憲法解釈を示した政府見解の読み方として到 処する場合に限られるのであって、他国に加えられた武力攻底許されるものではない ( ここでも文一「ロ自体ではなく文言を用いた 者の意図が重要であることを強調しておきたい ) 。 撃を阻止することを内容とする集団的自衛権の行使は憲法上 許されない。 第二に、仮に七二年見解①②の「自衛の措置」に集団的自 安倍内閣は、この七二年見解の①と②を「基本の論理」と 衛権の行使が含まれるとすると、「必要最小限度の範囲」で 称し、それを、「わが国を取り巻く安全保障環境が根本的に あれば集団的自衛権の行使も許されるということになってし 変容した」今日の事態に「あてはめる」と、七二年当時の上 まうであろう。しかし、七二年当時もそれ以降も政府はその 記③とは異なる結論ーーすなわち、同盟国等に対する外国の ようなことを容認していない。「自衛の措置」が「必要最小 武力攻撃を阻止するための集団的自衛権の行使も憲法上許さ 限度の範囲」にとどまらねばならないというのは個別的自衛 れるーーーが導かれると主張する。しかし、これは無理筋とい 権の行使に関してのみ説かれてきたことである。集団的自衛 うものである。 権の行使はそれ自体が「必要最小限度の範囲」を超えると考 えられてきたのである ( 一九八一年五月二九日第九四国会政府答弁 第一に、七二年見解の①②にいう「自衛の措置」とは個別 的自衛権の行使を指している。歴代政府は、憲法九条を、国 書 ) 。この点からも、七二年の「政府見解そのものの組立 際紛争を解決するために武力を行使しないという原則を定め て」を根拠に集団的自衛権の行使を正当化することは許され たものと捉えつつ、自国防衛のための個別的自衛権の行使と ないことが分かるであろう。 しての武力行使だけは例外であるという解釈論を展開してき 次に、砂日 , 事件判決 ( 最高裁一九五九年一二月一六日大法廷判 た。①②の「自衛の措置」の中に集団的自衛権の行使も含ま 決 ) である。安倍内閣は、この判決で最高裁が「わが国が、 そし れると解することは牽強付会の誹りを免れない。 これに対し 自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な て横畠内閣法制局長官は、国会審議の中で、七二年の「政府自衛の措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として 見解そのものの組立てから、そのような解釈、理解ができ 当然のこと」と述べた点を捉えて、そこでいう「必要な自衛 か の る」 ( 二〇一五年三月二四日参議院外交防衛百会 ) と強弁している。 の措置」には集団的自衛権の行使が含まれると主張する。し た しかし、七二年見解の当の作成者が正反対のことを証言して わ かし、このような主張には全く根拠がない。 変 いるにもかかわらず、それを無視して、あえて「政府見解そ 砂川事件では旧日米安保条約に基づいて日本に駐留する米 憲のものの組立て」に着目して独自の主張を繰り広げるような 軍が憲法九条一一項でその保持を禁止されている戦力に該当す

10. 世界 2016年8月号

に登場する、膨大な数の人名や企業名について何もわからず、 私が創設の ) アイデアを持ったのは一九九二年の ことです。それから資金を得るのに五年かかり、一九九七年、誰がその国の政治の大物で、誰が経済における重要人物なの か知りませんでした。ハンガリー人、スロヴェニア人、ナイ 私はを立ち上げました。はバナマ文書以前 ジェリア人 : : : 、誰がこれらについて知っているでしよう ? に二五件の調査報道を手がけましたが、その中で調査の規模 そう、それぞれの国のジャーナリストです。は や範囲、手法の点で着実な向上があり、データの使い方や共 各国のジャーナリストなしに調査はできなかったし、ジャー 有方法がよりスマートに洗練されてきたと思います。 ナリストたちはデータなしにスクープを得ることはできませ 国谷ビッグデータに向きあうために、テクノロジーの進化 ん。そこには相互に保証された利益があったのです。 と世界中のジャーナリストのチームワークが必要だったので これは、このプロジェクトのすばらしい側面の一つです。 すね。しかし、ジャーナリストという存在は共同作業が苦手 プロジェクトにかかわった全員が勝ったということです。そ という印象があります。それだけに、長い期間にわたって国 して、このプロジェクトは今後も私たちにギフトをもたらし 境を越える多くのジャーナリストたちがこの調査に携わった つづけるでしよう。 ことは驚異的に思います。成功の鍵は何だったのでしようか。 付け加えると、前例のない規模のビッグデータを適切に扱 、素早く分析できる人も必要でした。このプロジェクトで、 ルイス私はただを創設しただけで、毎日そこにい るわけではなく、 ( バナマ文書の調査にかかわった ) 四〇〇人のジ より成功したのは、ビッグデータに親しんでいるジャーナリ ストでした。 るヤーナリストの一人でさえありません。私のこの問題につい 革 ての理解は、 ( のディレクターの ) ジェラルド・ライル 変 国谷パナマ文書をめぐる調査報道は、権力にある人々が、 ムとの会話で得られたものです。そのうえで言えることは、今 自分たちの富と、そして真実を巧みに隠す方法を持っている 回の成功の原因は、参加したジャーナリストが互いに互いを ナ ことを示しました。同時に、グローバルにそして大きな視占 一必要としていたからだと思います。 から調査報道を行なう重要性も世界に示したと思います。 各国の新聞やテレビ局は、バナマ文書から彼らの国の政府 が ルイスまさしくそうです。それそれの国家の領域の中では、 報や企業に関する情報を得られる可能性がありました。一方で、 それそれのジャーナリズムが機能します。秘密や不正を区別 調ワシントンにいる— O —の少数のスタッフは、バナマ文書 ー特集 1