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検索対象: 小説すばる 2017年1月号
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1. 小説すばる 2017年1月号

きはいつも帝国ホテルに泊まってんの。きレストランを押さえてくれたあとは、「こ僕が田舎から東京に出てきたのは、ただ のう一緒に昼飯食ったあとにここに寄っこからは好きになさいな」と、僕たちをほ大学に通うためだけではなかった。 「ゲイであることが家族や同級生たちにば ったらかしにしてくれた。それに甘えて、 て、ケーキを置いていっただけ」 その言葉に、僕はますます目を丸くする僕たちは夜中まで遊び、忍び足で彼の家にれたら、ここでは生きていけない」 三十年前の僕はそう思い詰めていた。そ ことになった。子どもが住んでいる部屋が戻り、水のはねる音にビクビクしながらシ 同じ街にあるのに、ちゃんと距離をとるよャワーを浴びて、鍵をかけた彼の部屋でくんな思いを、生まれて初めて軽くしてくれ た大人が、彼女だったのだ。 うにホテルに泊まるだなんて。お金のあるつついて眠った。 なしだけでは説明しきれない、「粋ーのよあのとき、彼の母親は、僕たちがっきあ十九歳の僕に、「あなたたちが楽しけれ っていることを知っていたのだと思う。僕ば、それでいい」と示してくれた孝彦の母 うなもの。それを、僕は初めてのプルーベ リー。ノイ。ガ だけが東京に戻る日の朝、彼女は、「飛行親と、彼女の好きなプルーベ リーパイと一緒に学ぶことになったのだ。 ルガンチュワに立ち寄るたび、今も彼女の 「素敵なご両親だね。顔、赤くすることな機の中でお腹すかせるのも、なんでしょ と、朝食を用意してくれていた。孝彦は何姿を探してしまう。「別に孝彦に愛想を尽み んて全然なかったのに」 「だって、やつばちょっと恥すかしいよ。食わぬ顔でト 1 ストをかじりながら、食卓かしたわけじゃないけど」と言い訳したら、が 恋 親の好物食ったあとで、こういうことしての下で、僕の足をつま先でやわやわと撫で彼女はまた、粋に笑ってくれるだろうか るとかさ ている。僕は「ばれたらどうしよう」とい 刊 新 それもそうかも、と、僕が言い終わらぬう怖さやいたたまれなさで、気が気ではな 最 本 0 うちに、孝彦が僕のロをふさぐ。体が離れかった。彼女がほんのわすかな間、かすか ス な視線を僕たちの足に向けたときは、生き ると、孝彦は、 『プワ 1 頂 ~ セ た心地がしなかった。 「そっか俺、こういう味がしたんだ」 、チ千刋 o 0 ョノ都町ホ休工 と、いたずらっ子のように笑った。今度しかし彼女は、ただやわらかな笑みを浮 、 ~ 、ン . 、京幸国 集 かべたまま、コ 1 ヒーを淹れ、車を手配 は僕が顔を赤くする番だった。 ( 「一ルカ東内帝間 時日 話業休編 、ガ所 つきあいが三カ月を過ぎ、大学が夏休みし、「この子に愛想が尽きなかったら、ま 電営定 ・ホ「住 AJ に入った八月、孝彦の帰省にあわせ、彼のたいらっしゃい」と、僕を見送った。羽田 6 実家に泊まりがけで遊びに行ったことがあから電話をすると、「無事に着いたの。そ や る。東京から飛行機の距離にある、大きなれはよござんした」と、僕の長々とした礼 、カ 港町。彼の母親は、初日の夜だけホテルのの言葉を粋な調子で切り上げた。

2. 小説すばる 2017年1月号

「漂うままに島に着き」。 文学新人賞と日本推理作家協会 賞を、年「新宿鮫無間人 えくにかおり 江國香織年東京都生まれ。形ーで直木賞を、年「パンド 小説、童話、詩、エッセイ、翻ラ・アイランド」で柴田錬三郎 訳など、幅広い分野で活躍す賞を、川年、日本ミステリー文 阿刀田高肪年東京都生まれ。館綺譚」「謝肉祭の王玩具館る。年「泳ぐのに、安全でも学大賞を、年「海と月の迷 四年「来訪者」で日本推理作家綺譚」「音迷宮」がある。 適切でもありません」で山本周路」で吉川英治文学賞を受賞。 協会賞を、「ナポレオン狂」で 五郎賞を、 g 年「号泣する準備「天使の爪」「絆回廊新宿鮫 うえのあゆむ 直木賞を、年「新トロイア物上野歩年東京都生まれ。 はできていた」で直木賞を、 」「雨の狩人」「魔女の封印」 語」で吉川英治文学賞を受賞。年「恋人といっしょになるでし年「がらくた」で島清恋愛文学など著書多数。 年、紫綬褒章を受章。著書多よう」で第 7 回小説すばる新人賞を、川年「真昼なのに昏い部 おおむらゆきみ 数。 賞を受賞しデビュー。著書に屋」で中央公論文芸賞を、肥年大村友貴美年岩手県生ま 「朝陽のようにそっと」「鳴物師「大とハモニカ」で川端康成文れ。年「首挽村の殺人」で横 彩坂美月山形県生まれ。 8 年音無ゆかり事件ファイル」学賞を、年「ヤモリ、カエ溝正史ミステリ大賞を受賞しデ 富士見ャングミステリー大賞準「わたし、型屋の社長になりま ル、シジミチョウ」で谷崎潤一 ビュー。著書に「死墓島の殺 入選作「未成年儀式ーでデビュす」など。最新刊は「墨田区吾郎賞を受賞。著書に「抱擁、あ人」「存在しなかった男」「前世 著書に「文化祭の夢に、お嬬町発プラックホール行き」。 るいはライスには塩を」 ( 小社探偵カフェ・フロリアンの華麗 ちる」「柘榴パズル」「僕らの世 刊 ) 「ちょうちんそで」「はだか な推理」など。最新刊は「梟首 うちざわじゅんこ 界が終わる頃」など。 内澤旬子年神奈川県生まんばうたち」など。最新刊は、 の遺宝」。 れ。ルボライター、イラストレ森雪之丞との共著「扉のかたち いしがみまり かわはらちえこ 石神茉莉プラジル・リオデジ Ⅱ年「身体のいしオ をした闇」。 河原千恵子年東京都生ま介 ャネイロ生まれ。的年「幻想文りーで講談社ェッセイ賞を受 れ。四年「白い花と鳥たちの祈紹 おおさわありまさ 学」に掲載された「賞。著書に「世界屠畜紀行」大沢在昌浦年愛知県生まれ。り、で第回小説すばる新人賞筆 0 0 」でデビュ 「飼い喰い三匹の豚とわたし」 を受賞しデビュ 1 四年「感傷の街角」でデビュ 。著書に「人魚と提琴玩具「捨てる女」など。最新刊は 引年「新宿鮫」で吉川英治 あやさかみつき あとうだたかし 筆者紹介

3. 小説すばる 2017年1月号

だれかれかまわず、妻への愛を語ってい ことになり、明美は通っていた高校を退学「自分が一番必要とされる場所をみつけ していること。そうした諸々の事情を突きて、こんな僕でも人の役に立てるって思えた中林の表情は、篠山町に一年もいるうち に次第に曇っていく。 るのが、人間として幸せだよね」 止めた。 中林からすれば同情すべき要素ばかりの笑いながら中林はお湯割りを飲み干し彼が町の診療所からさらに奥の無医村に 目を向け、将来はそちらに移って前任者が 明美の半生だが、両親から見れば複雑で不た。 安定な家庭に育った中卒の女が嫁としてや東京からやってきた医者の語るロマン溢亡くなり無人となった医院を引き継ぎ開業 という話をした時点で、妻の心が ってくることなど考えられない。おとなしれる話を聞いた年配の男は、「この町に来したい、 そうだが何をするかわからない、と母は激てくれたのはありがたいけどよ」と前置き離れ始めた、と中林は、親しくしていた町 ののし し、「おまえさんもバカだな」と嘆息した。民に愚痴ともなく話したらしい しく罵った。 「見事な母親の勘、というより女の勘だ」「東京に戻られちゃ困るが、両親には謝っ役場の職員が隣町のショッピングセンタ ーの駐車場で夫婦が言い争っている姿を見 て、ちゃんと親孝行しろや」と別の年寄り と、長島はコメントしている かけたのはその頃だ。言い争う、というよ マンションで独り暮らしを始めた中林のは説教した。 りは、中林が何か怒鳴っていて、明美の方 その後、役場や診療所に出入りしていた ところに、半田明美は転がり込んだのだっ 生保レディに勧められるまま、中林は妻をは二言三言、低い声で何か言ったきり、中 林を見詰めていたらしい。 そして身分や学歴に固執し結婚に反対す受取人にして多額の生命保険に入る。 診療所の机の前で契約書に判を押した「殊勝な態度だけど、何か、腹に一物有る る両親に失望した中林泰之は、実家で父の って感じの女房だったな。若い女だってい 後、中林医師はそこにいた中年の看護師に 跡を継ぐのを拒み、絶縁状を叩き付ける 子 うのに」とその職員は語った。 一方、その直後に、明美が中林と同棲を話している そして長島が、地元の食料品店の店主に田 始めたマンションからほど近い踏切で、明「女房は両親ともあんな亡くなり方をした し、だれも頼るものがいないんだよね。僕聞いたところによれば、仕事を終えた中林 美の実父が亡くなっている 母と同様、父までも鉄道死してしまつが守ってやらないと。ただこっちは十八も医師は、亡くなる二、三カ月前から、その面 た。その衝撃から立ち直れない明美を連れ上だからね。平均寿命からすると一一十数年店で出来合いの総菜や加工食品を頻繁に買背 鏡 て、中林は実家のある東京を離れることを早く逝くわけじゃない。貧乏医者としてって帰るようになった。 決意する。そして知り合いの紹介で、篠山は、せめてこのくらいしかしてやれること「嫁の具合が悪い、というから、最初はお めでたかな、と思ったんだけど、それなら はないよね 町の診療所にやってくる。

4. 小説すばる 2017年1月号

くろかわひろゆき 黒川博行年愛媛県生まれ。を翔る狼ー覇王クビライー・「天師・定朝ーで新田次郎文学賞 いた作品など著書多数。「謎の 年「キャツツアイころがっ下一統始皇帝の永遠」など。 を、年「若冲」で親鸞賞を受独立国家ソマリランド」で た」でサントリーミステリー大 賞。著書に「泣くな道真大宰年、講談社ノンフィクション賞 賞を、 % 年「カウント・プラ 今野敏浦年北海道生まれ。爲 府の詩」「師走の扶持京都鷹を、年、梅棹忠夫・山と探検 ン」で日本推理作家協会賞を、年「怪物が街にやってくる」でケ峰御薬園日録」など。最新刊文学賞を受賞。最新刊は「謎の 年「破門 , で直木賞を受賞。 問題小説新人賞を、開年「隠蔽は「秋萩の散る」。 アジア納豆そして帰ってきた 「落英」「繚乱」「後妻業 [ 「勁捜査」で吉川英治文学新人賞 〈日本納豆〉」。 草」など著書多数。 を、年「果断隠蔽捜査 2 」篠田節子浦年東京都生まれ。 で山本周五郎賞と日本推理作家 年「絹の変容」で第 3 回小説寺地はるな行年佐賀県生ま くろき 黒木あるじ祐年青森県生ま協会賞を受賞。「蓬莱ー「惣角流すばる新人賞を受賞しデビュれ。Ⅱ年「ビオレタ」でポプラ れ。 8 年「おまもり」でビーケ浪」「警視庁科学特捜班」 ー。年「ゴサインタンー神の社小説新人賞を受賞しデビュ ーワン怪談大賞・佳作を、「さ シリーズなど著書多数。最新刊座ー」で山本周五郎賞を、「女 最新刊は「ミナトホテルの さやきーで『幽』怪談実話コン は「継続捜査ゼミ」。 たちのジハ ード」で直木賞を、裏庭には」。 テスト・プンまわし賞を受賞 8 年「仮想儀礼」で柴田錬三郎 ふるえ さくらいすずも ときわまさゆき し、川年「怪談実話震」でデ桜井鈴茂年北海道生まれ。賞を、Ⅱ年「スターバト・マー 常盤雅幸年東京都生まれ。 おとしあな ビュー。「狂奇実話穽ー「怪 年「アレルヤ」で朝日新人文テル」で芸術選奨文部科学大臣イラストレーター。 % 年 4 月号 の放課後ー実録怪談」「怪社奇学賞を受賞。著書に「終わりま賞を、年「インドクリスタ より本誌で初の漫画作品「真ッ 譚二十五時の社員ーなど著書であとどれくらいだろう」「女ル」で中央公論文芸賞を受賞。赤な東京」の毎月連載がスター 多数。最新刊は「怪談売買録 。単行本・文庫本が好評発売 たち」「冬の旅ー「どうし一てこ最新刊は「竜と流木」。 拝み猫」。 んなところに」「へんてこな 中 ( 小社刊 ) 。他の著書に「寸 たかのひでゆき この場所からーがある。 高野秀行年東京都生まれ。前爆発」がある。 こまえりよう ト前亮祐年島根県生まれ。 早稲田大学探検部在籍時に執筆 さわだとうこ なかじまたかし 田中芳樹氏の勧めで小説の執筆澤田瞳子行年京都府生まれ。 した「幻獣ムペンべを追え」で中嶋隆年長野県生まれ。 をはじめ、年「李世民ーでデ川年「孤鷹の天ーでデビュー デビュー。辺境探検をテーマに早稲田大学教授 ( 日本近世文 ビュー。著書に「蒼き狼の血 Ⅱ年に同作で中山義秀文学賞したノンフィクションや旅行記学 ) 。年「廓の与右衛門控え 脈ー「朱元璋皇帝の貌」「中原を、年「満つる月の如し仏の他、日本での異文化体験を描帳」で小学館文庫小説賞を受 こんのびん しのだせつこ てらち

5. 小説すばる 2017年1月号

グの紐にあてていたわたしの右手を優し を、不安に思う必要なんてないのだ。 く、けれど有無を言わさぬ強引さでしつか 名前というのは、ほかの何かと識別する ためにつけるものだった。それなら、世界翌朝はいくぶん曇りがちで、街並みもどりと握る にただひとっしかないものに名前はいらなことなくかすんで見えた。それでも風はさ「じゃあ、まだ三十九だからいいわよ ほど冷たくなく、間もなく来るはずの春をね ? 」 わたしと彼女は、わたしと彼女でしか ないのだ。ほかにどこにもないのだから、感じさせる陽気にも思えた。時刻にはまだ「しかたないなあ」と、わたしは笑う。っ きっとそれでいい だいぶ余裕がある。そのせいか、道ゆく人い今まで手袋をしていたにもかかわらず、 舞子の手はわたしと同じくらいひんやりと の姿はほとんどなかった。 「もう、眠るわ。明日も仕事で早いの , わたしは指先で彼女の頬に軽く触れ、言そんな駅への通りを、わたしは舞子と肩していた。しかしそれも、互いの体温でし だいにぬくもってゆく。かたい結び目が緩 った。 を並べて歩いた 「そうね、ごめんなさいわたしも眠る「そうだ、君香ーと、彼女は少し秘密めかんでゆくように。 した口調で言ってきた。「手、つながな「そういえば、来月は誕生日ね」 わ , どちらの、とは言わなかった。言、つ必要 「舞子も一緒に出るのよ。寝坊なんて、許 がないからだ。わたしと舞子の誕生日は一 さないから 「四十歳の女ふたりで手をつないでても、 日違い。だからその日は彼女が泊まりに来 わたしは手を引っ込めて、目を閉じる。気持ち悪がられるわよ」 ええ、と彼女が頷くのを、闇のわずかなゅわたしがそう答えると、彼女は小さく頷て、夜にわたし、朝に彼女を祝うのが毎年 らぎで感じ取った。 いて、手袋を左だけ脱いだ。そうしてバツの行事になっていた。 集英社の本 大好評発売中 あのこは” 貴族 当響、日ル 0 & 引羅 、ー、、、、アラサー女子が見出す、それぞれの幸せのかたちとは ? 野物洋 , あのこは貴族山内マリコ ( 東京生まれのお嬢様・華子と、地方生まれの O—I ・美紀。 体 出会うはずのなかった女一一人が同じ男をきっかけに巡り合って 本 東京の「上流階級」を舞台に、結婚の葛藤と解放を描く、渾身の長編小説。 137 名前はいらないーー牧村一人

6. 小説すばる 2017年1月号

絵本、図鑑、小説、漫画、雑誌、写真集 誰しもが本にふれること、本を読むことを通じて、世界を学び、新しきを知り、 その夢を広げていきます 本を通じて、一人では思いもよらない 視点や立場と出会う 距離を超えて、時空を 超えて、見たことの ない世界とつな がっていく 本は、知識や情報を あたえてくれる だけでなく、 私たちが想像力と 呼ぶもの、 思いやりと呼ぶもの、 個性と呼ふものを 一人一人にあったカタチで 育んでくれます食が「からだ の糧」であるならば、本は「こころ の糧」。ひとリひとリの今日と明日を 支えてくれる、かけがえのないものだから私たちは、 消費税が % に引き上げられたとき、食品だけでなく、 書籍や雑誌にも軽減税率を適用すべきだ、と考えています この国の文化的で豊かな毎日を支えるために。 本はいつまでも、誰もが気軽に手にとれるものであるべきだと思うのです ト。 03 。 s 。を司戸 ために、出版物に軽減税率を ) 、特定非営利活動法人函館視覚障害者図書館 ( 北海道 ) 、青森市読書団体連絡会 ( 青森県 ) 、 十勝子どもの本連 : 連合会 ( 青森県 ) 、特定非営利活動法人岩手音声訳の会 ( 岩手県 ) 、特定非営利活動法人岩手 語リの会はまな 雪城県 ) 、読み聞かせボランティア「絵本のとびら」 ( 宮城県 ) 、大欠なかよしバス図書館 ( 秋田県 ) 、 点訳の会 ( 岩手県 ) 、 ープ「つくしんぽ」 ( 秋田県 ) 、新庄市立図書館ボランティアサークルかやのみ会 ( 山形県 ) 、 秋田県南ブックコ l) 、宇都宮子どもの本連絡会 ( 栃木県 ) 、絵本の学校 ( 栃木県 ) 、小山子どもの本連絡会 ( 栃木県 ) 、 かべや文庫 ( 福島 頁市民読書会 ( 埼玉県 ) 、公益財団法人東京子ども図書館 ( 東京都 ) 、朝の読書推進協議会 ( 東京都 ) 、 栃木子どもの本連紀 町立図書館朗読ボランティア千の風 ( 山梨県 ) 、塩尻市民読書の会 ( 長野県 ) 、陽皐郵便局 ( 長野県 ) 、 けやきぶんこ ( 新潟 関音訳の会しおん ( 岐県 ) 、静岡コ。を山。も会 ( 静岡県 ) 、遊本館子どもの本の資料と交流の館 ( 静岡県 ) 、大阪府子ども文庫連絡会 ( 大阪府 ) 、 堺市子ども文庫連絡会 ( 大阪府 ) 、堺市図書館友の会 ( 大阪府 ) 、吹田子どもの本連絡会 ( 大阪府 ) 、豊中市立岡町図書館「とよ読書会」 ( 大阪府 ) 、みきおはなし会 * 絵本の森 ( 兵庫県 ) 、しらはま子どもの本の会 ( 和歌山県 ) 、「本の学校」生涯読書をすすめる会 ( 鳥取県 ) 、こころにミルク編集部 ( 広島県 ) 、板野町 読書会 ( 徳島県 ) 、おはなしひろは・ひまわリ ( 徳島県 ) 、院内石橋ゆめ本の蔵 ( 大分県 ) 、一般財団法人鹿児島県青年会館艸舎 ( 鹿児島県 ) 、鹿児島 童話会 ( 鹿児島県 ) 、一般社団法人沖縄県子どもの本研究会 ( 沖縄県 ) 、久茂地文庫 ( 沖縄県 ) 、親子読書地域文庫全国連絡会、公益社団法人日本 図書館協会、公益財団法人全国学校図書館協議会、公益社団法人読書推進運動協議会、公益財団法人文字・活字文化推進機構〔参加団体・順不同〕 0

7. 小説すばる 2017年1月号

ルけラけー天 って思ってたのに、なんかプルーベー 丿ーの表面のパイ生地の、さつくりとした歯ざ プル 1 べリ 1 パイは 味がするから : わりとバターの香り。たつぶり入ったプル 第五回 「粋」の味 孝彦の顔がみるみる真っ赤になったのが ーベリーは、火を通してジャム状になって キスの味をフルーツにたとえることを、意外だった。むしろ、そんなことを話題に いるのに、さわやかな風味がいつばいに広 出す僕のほうが恥ずかしさに身がすくむ思がる。土台のパイ生地は、プルーベリーの 最初に始めたのは誰なのだろう。 果汁を吸ってしっとりしていながらも、歯 キスを知る前、それは陳腐な言葉遊びといだったのに。 しか思えなかったのに、十九歳になる直「母親がさ、東京に来ると必ず買ってくる切れは心地いい。表面のパイ生地との明ら かな食感の違いに驚いて、もうひとロ、も 前、初めてできた恋人とキスをしたとき、んだよね。マコトも食う ? ちゃんと味がしたのに驚いた。シナモンが孝彦は僕がうなすくのも待たずに立ち上うひとロと食べ進めるうちに、あっという かすかにまじる、プルーベリーだった。 がり、冷蔵庫の中の白い紙の小箱から何か間にパイはなくなってしまった。 リーハイ、めちゃくちや美 舞い上がると味覚っておかしくなっちやを取り出し、オープントースターに入れ「このプルーベ うのかなあ。はじめはそう思った。でも、 た。ほどなく甘い香りが漂ってくる。手早味しいね。どこで買えるの ? 」 翌日、孝彦の部屋に行き、べッドを背もたく淹れたコーヒーとともに孝彦が持ってき「たしかガルガンチュワって店だったか み な。帝国ホテルの中にあるんだけど ノイがひとっ載っていた。 れに床に座ってしたキスも同じ味で、僕はた皿には、。、 思わず口にしてしまった。 「いただきますー 「そうなんだ。あれ、でも、おかあさん、 「あれって、比喩じゃなかったんだ」 皿越しに伝わる重みが、中身がぎっしりここで寝泊まりして、お店に行くの ? こた 「ん ? 何が ? 」 詰まっていることを伝えてくる。フォークこ、べッドひとっしかないのに」 ス 目を丸くした僕に孝彦は吹き出した。 「あ、いや : ・ キスの味はフル 1 ツに似を入れると、さっきしたばかりの、あのキ 「まさか。うちの両親、東京に出てくるとイ てるとか、子どものころにはバカみたいだスの香りが立ちのばってきた。 188

8. 小説すばる 2017年1月号

なんだろうと思ってみると、大きな糸瓜いよ、と笑顔で応じてくれた。この日、り 小説を書いたことは忘れようと田 5 った。 だった。 ようは別邸に泊まったが、 天知が怪しげな ( どうしてこんなものをぶら下げているの振る舞いをすることはなかった。 「でも、この新聞記事にあることは、わた だろ、つ ) ただ深夜遅くまで読書と執筆にふける気しの小説、そのままなのです」 りようが頬をふくらませると、ちょうど配を感じただけだった。 りようはため息をついた。 出てきた天知が、何があったのかを察し その後、りようは鎌倉に通って、自分が「では、小説のことを知っているのは星野 て、 見聞きした友人のことなどを材料に小説を天知という方だけなのですか」 「へちまはね、不思議と高慢な人間がわか書き上げた。 クララに訊かれて、はい、と、つなずこ、つ るみたいで、訪ねてくる奴の鼻っ柱をへし野望としては、イエス・キリストの生涯としたりようは、何か引っかかるものを感 おってくれるんだ」 を書きたい、と思って筆をとったが、できじた。思い出そうと努力すると、やがてひ と言って大笑いした。 あがったのは、男女の恋愛模様の小説だっとりの男の顔が浮かんだ。 りようは天知の冗談が面白いとは思わなた。 ああ、あの男がいた。 かったが、 鎌倉の別邸を訪れたことには満自分でもがっかりしたが、一応、天知に り・よ、つはクララに顔を・回けた。 読んでもらった。 足した。 「島貫さんの家で文学の話をしていた仲間 天知は日頃、東京にいて執筆などの時だ「これは情痴小説だね。見るべきところものひとりにあの小説を見せて感想を訊いた け別邸にくる。日頃は管理人の夫婦だけがあるとは思うが、君の年齢で書くのは早すことがあります」 いるのだ、とい、つ ぎる。いまはひたすら読書をしたまえ」 「何というひとですか」 と諭された。 クララはりようを見つめて訊いた。りよ 奥座敷から廊下まで書棚が続き、膨大な 書物がある。天知は、、 しつでも来て、好き天知にはすべてを見抜かれている。そううは思い出して、男の名を口にした。 さとうしげまっ な本を読んでもいい、と言ってくれた。り思った。 「佐藤稠松というひとです。確か東京専門 ようは、興奮が募るのにまかせて、 小説家としての才能などない 学校を中退して新聞記者となったひとで 「ここで小説が書きたいのです。よろしい すべては幻だ。 でしようか」 若さゆえなのだろうか、ひたすらに自らそこまで言ったりようははっとして、あ と一言った。 を虐めた。そして小説を書こうという野心らためて新聞を開いた。そこには、保科龍 天知はさすがに驚いたようだったが、い は捨てて、読書にふけるようになった。 の情夫として、 186

9. 小説すばる 2017年1月号

たぬきが 見ていた 第 33 回 ー、愛してます 大貫亜美 イラスト / 水江未来 おおぬき・あみ東京都生まれ。歌手ゞ 96 年、 奥田民生プロデュースによるシングル「ア ジアの純真」で PUFFY としてデビュー 20 周年という Anniversary Year を全力で 走ってきた彼女達を、結成 20 年目にして初出 場が決定した NHK 「第 67 回紅白歌合戦」 が大晦日に待ち構えている。最新情報は http://www.puffy.j p へ。 ア 亜美、 2 歳。ホテルマンの父の転勤により、お隣は韓国・ソウ ル市に移住することを聞かされ、真っ先に思ったのは「どうしょ う。日本語忘れちゃう」というアホな子供でした。一番懐いてい たと言われたおばあちゃんの二の腕にえぐられたような噛み跡を 残したうちのプードルは、いっしか知らない間にとこかに引き取 られ、わたしが引き出しの中に隠し貯めていたクレョン型のチョ コレートも処分する時がやってきた引っ越し間近の大貫家では、 川歳には韓国の情報なんて皆無中の皆無だったのに、父がこんな 話をした。「パパな、今回韓国に行く話をもらった時、実は韓国 とグアムどっちがいい ? って聞かれたんだ。そこでよく考えて みたんだけど、韓国の方が歴史が深い国だからお前の勉強にもな るしいいかなと思ってそっちにしたんだぞ : だぞ ? だぞじ ゃねーよ何言ってんだよオヤジ ! グアムってアレか ? 常夏の 楽園のアレだろ ? なんでそっち選ばねんだよⅡ ・ : と、数分経 うんぬん って沸々と思いました。川歳には歴史云々より、青い海と白い砂 浜の方が当然魅力的だったのだ。正直言って父の韓国転勤には全 く乗り気じゃないまま、未だ見ぬグアムに想いを馳せて、手には める人形のチワワと母が布のプリントから作ってくれたウサギの ぬいぐるみ (n=) を荷物に詰めて、大貫家はソウル市に移住し たのでした。 川歳の東京育ちの亜美には韓国の凍てつく冬は厳しく、耳が千 切れんじゃないかと思いながら通った学校では、あまりの寒さ 故、冬の体育は校庭に水を張って凍らせただけの簡易スケートリ ンクで競走が行われていました。ところが都会島から来たスコッ プ君のような亜美なので、アイススケートなんかやったことない んですけどと言ってる間もなくョチョチと氷の上のスタートライ なっ

10. 小説すばる 2017年1月号

青春と読書の 本の数だけ、人生がある。ーー集英社の読書情報誌 [ 1 月号 ] 1 2 月 20 日発売本体 83 円 + 税 seidoku. shueisha. co.jp ヵ 亠 第 フ 田中慎弥 習 羽見暑 『美しい国への旅』 社攸朔 パンツのゴム 錬 カゞ創 念 日 ノ以、 廳子響 本多孝好 ツ 本周 セ 年 イ 『 Good old boys 』 歴 願小 う回 説 史画 し、す 二つの " boys " へ し、す をば ーば そ新 生文 世界文学への扉 野谷文昭 し人 き学 リレーエッセイ⑩ ( 最終回 ) 「セルバンテス」 巻 て 物 佐藤賢一 テンプル騎士団④ を 曇り、ときどき 鎌田實 輝いて生きる⑩ 太田和彦 私の東京 原田マハ 。絶対絵画番外編① 梶本修身 最新科学で明らかになった疲労解消術 立′ 世界を動かす巨人たち 池上彰 [ 経済人編 ] ⑤ 矢ロ史靖 まぜるな危険 默医師の森への 竹田津実 訪問者たち④ 北風小説早稲田大学 本若松英輔 藤島大 藤沢周・編著「安吾のことば』 ラグビー部④ む大矢博子 ー原みう。モーツアルト裁判⑨ サンドラ・ブラウン「偽りの襲撃都 見本誌をご希望の方は「青春と読書」の HP 、もしくは、〒 101- 部 50 東京都午代田区ーツ橋 2 与 10 見本誌贈呈 集英社宣伝部「青春と読書」 S 係宛にハガキでお申し込みくたさい。 お申し込みは、郵便番号・住所・氏名・年齢・職業・電話番号を明記のうえ、購読料 1 年分 900 円を郵便局備え付げ の払込取扱票で、振替口座 00140-4-61838 「集英社読者購読係」へお送りください。ご記入いただいた個人 情報は、商品のお届け・お支払確認等の連絡のために利用し、その目的以外での利用はいたしませんの ~ ※内容は一部変更になる場合があります。 2017 」 anua 「 y 巻頭ェッセイ 特集 = = = 29 好評連載 20 0 今月のエッセイ 定期購読者募集