放射線量 - みる会図書館


検索対象: 本当は怖いだけじゃない放射線の話
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1. 本当は怖いだけじゃない放射線の話

もし放射能が外部に出れば、長いあいだ放射線の影響を受けることになる。そのため、 厳重に管理したうえで、放射線や放射能に対する配慮が不可欠となるのは、むろんだ。 現実にどの程度の放射線が出ているか 現実の問題として、これらの放射性廃棄物が、原子力発電所の周辺に日常的に出ている という、い配はないのだろうか 発電所で生まれる放射性廃棄物は、その形態に応じてさまざまな処理がなされて、外に 出すときには必ず放射線や放射能の量をチェックする。その結果、いまでは気体廃棄物や 液体廃棄物の放射線のレベルは、ほとんど検出限界値以下となっている。 「検出限界値 [ とは言葉のとおり、測定器がどこまで測れるかの限界を示したもの。測定 器そのものの性能に加えて、自然界の放射線といった測定環境によって、その限界値は変 わる。このため、検出限界値「以下」というのは、含まれている放射性物質がかならずし も「ゼローということではない。正確にいえば、測れないほど微量なレベルで存在するか もしれないし、何もないかもしれない、そのどちらかを意味している。 192

2. 本当は怖いだけじゃない放射線の話

まり注意が払われていないようである。 放射線は、放射線を出すもとになる物質があって、はじめて出るもの。たとえば、宇宙 、ら地球に降り注いでいる放射線も、もともとは太陽や銀河から出てくるものだ。きれい 」・〕物備された歩道よ軈をの量が多いといわれるが、歩道に敷かれた花崗岩などの石から 放射線が出ているためである。 こうした放射線を出す物質は、「放射性物質」と呼ばれている。いいかえれば、放射性 し 物質は放射線を出す能力をもっているわけで、この能力のことを「放射能」と呼ぶ。とき 進 によって放射性物質そのものを放射能というのも、こうした能力からである。 で 中 放射能のことを英語で「 adioactivity というが、では、放射線を出す能力とはいったい の 、の何なのか。 射 とんな原子核 放射線は、物質をつくっている原子のなかの原子核から出てくる。だが、。 放 からも出てくるわけではない。 生 原子核がつくられるとき、あるいは核分裂などで新たな原子核ができるときに、中性子 章 のが决ま・つた数よグず・れるごど桝刺る。この場合、本来の原子がもっているはずのエネ 第 ルギーにくらべ、余分なエネルギーが封じ込められることになる。そこで、原子が安定し

3. 本当は怖いだけじゃない放射線の話

「正しく怖がる」・ : いきなり結論めいたことをいうようだが、これが放射線・放射能に 対するときの正しい姿勢なのだといわれる。 日常生活のなかで放射線や放射能といった言葉を聞くときは、大抵の場合が事故や災害 といった人的な被害にかかわるケ 1 スだから、クとにかく布いものクというイメージがあ っても不思議ではない。実際に、放射線関連施設はどれも立ち入り禁止だし、その管理方 法は見るからに厳重を極めている。 その一方で、放射線は日常的な存在でもある。 じつのところ、この地球上に棲むすべての生物は、これまでク放射線ゼロの生活環境 きで生きてきた経験を持たない。この宇宙が誕生したいきさつから、ありとあらゆる物質に え放射性物質が含まれていて、生命活動を行っているかぎり放射線や放射能との縁は切りよ ま 、つ、かかよい 0 ま、んかき

4. 本当は怖いだけじゃない放射線の話

射性物質があって、アルファ線を放出することが知られている。 「放射線漏れーならば、放射性物質は外部に出ていないのだから、その物質をすみやかに 隔離すれば、それ以上の放射線漏れは起こらない。 ところが「放射能漏れ」が起きると、 つまり放射性物質が外部に拡散してしまうと、その物質からの放射線の放出が長いあいだ つつくことになる。 ヨーロッパ各国で食物の流通や摂取を制限したのは、食物についた放射能が体内に入る と「体内被曝ーを起こすためである。放射性物質が体外に排出されるか放射能をなくすま 合 場で、食べた人が過度の放射線にさらされる可能性がある。 もちろん、土壌中などに留まった放射性物質からも放射線は出され、体外被曝の原因と リなる。だが、 その場を離れれば被曝せずにすむ、という性質のものでもある。ところが体 イ プ内に入った放射性物質は、どこまでもついてくる体内被曝をよぶため問題となる。 チェルノブイリ原子力発電所の事故現場で働いていた人びと、そして消火のためにかけ 工 チ つけた消防士の人びと、彼らは大量の ( 放射能ではなく ) 放射線を浴びた。そのため急性で 章 8 強度の放射線障害を発生させることになって、死亡したり重傷を負った。それは痛ましい 事実なのだが、これに加えて事故を大きくしたのが放射性物質が漏れて、大気中に広まっ 167

5. 本当は怖いだけじゃない放射線の話

違ういいかたをすれば、核分裂によってつくられた放射能 ( 放射性物質 ) によって、放 射線が生み出されるという順序になる。 なお、原子爆弾の核爆発では、最初に発生した放射線が地上の建造物などにあたって、 その物質に放射能をもたせるという現象が起こる。この放射能 ( 放射性物質 ) から、さら に放射線が出されることになるわけだ。 162

6. 本当は怖いだけじゃない放射線の話

第 9 章原発から放射線が出ているか 原子力発電と放射線 煙突の不思議 どこで放射性物質ができるか 放射性廃棄物というゴミ 現実にどの程度の放射線が出ているか 安全性に対する考えかた どれだけ安全ならじゅうぶんか 【コラム】放射線のつくりかた 第章放射線を活かして使う知恵 放射線なくしてヒトは誕生しなかった ? 特性を利用した品種改良 技術の次元を変えた 放射線・放射能の工業利用 181

7. 本当は怖いだけじゃない放射線の話

地球が放射線を放っ理由 そもそも放射性物質とは何か 太陽の恵みには放射線もある オーロラは何を示しているか 【コラム】放射線と放射能 第 3 章自然放射線を浴びて平気なのはなぜか 放射線の基本的な作用とは 電離作用とはど、つい、つことか 活性酸素は遺伝子にどう影響するか 塩基が破壊されるとどうなるか 人体には予防・修復機能がある 損傷した細胞の修復システム 修復不可能だとガン化するか アポトーシス ( 細胞死 ) が発動されるとき 【コラム】放射線の種類と特徴

8. 本当は怖いだけじゃない放射線の話

放射能という言葉は「放射線を出す能力ーをさすから、「原爆の放射能による被害」とは 原爆が爆発 ( 核分裂 ) を起こしたときの放射線、分裂によって生まれた放射性物質から出 た放射線、これらの放射線によって受けた被害と読みなおしてもよいだろう。このような 原爆にかかわる放射線が人びとを襲って殺したのは事実だとしても、放射線によって広島 では十万人以上の人が死んだというのは、正しい認識ではないことがわかったのだ。 ヒロシマ原爆の被害の実態とは 何 と ヒロシマ原爆の核爆発によって生じたエネルギーが、どのような姿をもって人びとを襲 被ったか。前代未聞のできごとだけに、その実態をつかむまでには時間が必要だった。 射 さまざまな調査やシミュレーション研究などの結果、原爆の爆発によって放出されたエ 放 の ネルギーの五〇パーセント、つまり半分は猛烈な爆風となり、三五パーセントは熱エネル 爆 原 ギーとなったのがわかった。 章 爆発によって数十万気圧という超高圧がつくられ、周囲の空気が瞬間的に大膨張するこ 5 第 とで爆風が生まれた。その風速は、爆心地付近で秒速二百八十メートル、三・二キロ離れ

9. 本当は怖いだけじゃない放射線の話

測定結果は、電力会社が勝手に測定して発表しているわけではなく、自治体などのダブ ルチェックによる結果ということなのである。 しったいどの程度なのだ ちなみに、原子力発電所から日常的に出ている放射線の量は、、 ろうか。たとえば気体状のヨウ素 131 の場合の検出限界値は、放射能の量として一立方 センチメートルあたり「七 x 十のマイナス九乗」べクレル以下、つまりそれによって受け る放射線の量は年間にすると〇・〇〇一ミリシーベルトよりもはるかに低くなる。 原子力発電所を設計するときの安全性確保に関する基準のひとっとして、「通常運転時 る の周辺住民に対する線量目標値ーが定められている。これでは、年間で〇・〇五ミリシ 1 出ベルト以下となるように設計をするよう推奨されている。しかし実際には、国際放射線防 護委員会の「合理的に達成可能なレベルにまで放射線の量を低くする、という基本理念を 放追求して、〇・〇〇一ミリシーベルトにまで下げる措置をとっているのである。 このようにしても、「ゼローとはいえないたが、年間〇・〇〇一ミリシーベルトといえ 発 原ば、自然放射線の二千分の一ほどにしかならない。さらには、自然放射線の量そのものに 地域差があって、日本国内でみても最大 ( 岐阜県 ) と最小 ( 神奈川県 ) の差として約〇・四 第 ミリシーベルトとい、つ数値がある 195

10. 本当は怖いだけじゃない放射線の話

しかも、呼吸して食事するという基本行動に加えて、温泉に行ったり飛行機に乗ったりす ればク被曝 ( 被爆ではない ) 量は若干だが増える。石畳を歩いただけ放射線の量が上がる、 ということも珍しくない。だからといって、その被害を訴える人が出てくるものではない し、温泉だ旅行だといったレジャーは人生に欠かせない。 つまり、放射線や放射能というもの自体はあってはならないものではなく、存在するこ とが異常事態というわけでもない。だが、 ある値を超えるとク生命に対して牙を剥くク存 在・現象であることも間違いない。 いったい、 このギャップをどう考えたらよいのだろうか。そもそも、ク日常的な放射線ク とみ異常な放射線クとのあいだに、どの程度の距離があるものなのか。どこまでが安心な ( 無視できる ? ) 放射線で、どうなると要警戒 ( そして危険な ) 放射線となるのか。 見えない・ド 瑁こえない・感じない・匂わない : ・ : と、私たちの感覚では量どころか存在 さえも捉えることが難しい。それだけに、放射線情報にどう対応するかという問題では、 その人なりの理解度が問われかねない ク正しく怖がるという言葉は、そのような意味を持っていると考えてもらえばよいだろ う、というのが私の意見であり、本書のテーマでもある。