億年前だから、現在のウ一フン 238 の放射能は半分になっている計算だ。 これにくらべると、コバルトの半減期は五・三年とかなり短い。ところが、ラジウム ' 田田生一、」いたゴてま約四冐物質によっては数秒でもとの放射能の半分になってしまう ものさえある。 このような放射性物質の特徴を利用したものとして、古代の遺物の年代測定がある。 象 炭素という放射性の炭素は宇宙からの放射線によって上空で新生していて、地球上で 現 ス はつねに一定量が存在しているという特徴がある。生物の細胞にも取りこまれて新陳代謝 シ するから、そこでも一定のレベルで存在することになる。 ホ しかし生物が命を失うと、新しく炭素を取りこむことがなくなり、体内にある炭素 めの崩壊だけが進む。つまり、植物の場合は枯れたり伐採された時点から、含まれる炭素 をの放射能が下がりはじめるわけだ。 機 炭素の半減期は五千七百三十年であるのがわかっているから、この減り具合を時計と 物 生 して使うことができる。たとえば、木炭を使って描かれた古い壁画の年代を、 0 法によっ 章 て測定するとしよう。 第 木炭に含まれる炭素の量を測定して、その濃度が生きている樹木の半分であったら、 10 ろ
必須元素とも呼ばれて体内に大量に含まれ、日常的に食料などで摂取する必要があるとさ れている。 カリウムは水に溶けてイオンの状態でいるのだが、細胞の内部には高い濃度で、細胞の 外部には低い濃度で含まれている。そして、この濃度の高低差を利用して神経情報などを 伝達するという役目を負う。 体内に含まれる量が多すぎても少なすぎても健康にとって問題があるため、身体にはカ カリウムの摂取量と排泄量のバランスをコントロールする生理機能がある。こうして体内カ の も リウムは、体重一キログラムあたり約二グラムと、一定の数値を保っている。 訊その一方で、カリウムは脂肪組織にはほとんど含まれないのが特徴だ。ということは、 常同じ体重の人をくらべた場合、筋肉質の人ほどカリウムの量が多く、脂肪太りの人ほどカ 異 リウムの量は少なくなる。 線 この関係から、体重がわかっていれば、カリウム量を測定することで「肥満度ーも測定 射 放 できることがわかるだろ、つ 章 問題はカリウムの量を身体の外から測る方法なのだが、ここで登場するのが「カリウム 第 から出る放射線ーというわけだ。
原子力発電所では、周囲の環境のなかでの放射線や放射能に関して、継続的に監視をし ている。発電所の敷地の境界にモニタリングボストという測定器をおき、空気中の放射線 のレベルを測定している。さらに、他の測定器によって放射性物質の濃度も測定している。 このモニタリングボストで測定された結果は、電力会社のホームページでも簡単に見る ことができる。その結果を見ると、一時間あたり、四十 5 五十ナノシーベルト ( 〇・〇〇 〇〇四 5 〇・〇〇〇〇五ミリシーベルト ) ほどの数値を示すことが多い。この数値は、東京 で放射線のレベルを測った数値と変わらないから、自然界の放射線を測っていることにな る。 電力会社では発電所が運転される以前から、発電所の周辺の土壌、海水、農作物や海産 物、牛乳などを採取し、それらのなかの放射性物質の濃度を測定してきている。これらの 測定値を見ると、ごく一部の放射性物質をのぞいて、原子力発電所が起源とされうる放射 性物質は見られない。 こういった周辺環境のモニタリングは、電力会社のみではなく、発電所が建っている県 でもおこなっている。これらの結果は、立地県、市町村などが定期的に集まり、評価する 仕組みができており、その評価結果も公開されている。 194
第 9 章原発から放射線が出ているか 原子力施設周辺のモニタリングの仕組み モニタリング ステーション 環境放射線の測定に 加えて空気中に浮遊 する塵に含まれる放 射能や気象データを 測定している。 環境試料採取 ( 陸土 ) 葉菜、牛乳、土壌、雨 水、河川水などをサ ンプリングし、放射 能を測定している。 モニタリングカー 放射線や放射能を測 定する機器を積んで、 広い地域でモニタリ ングしている。 0 モニタリング ポスト 原子力施設の敷地 周辺では、環境放 射線を連続して測 定している。 環境試料取 ( 海洋 魚介類、海草、海水 などをサンプリング し、放射能を測定し ている。 原子力施設 195
じつは、カリウムとひとくちにいっても、原子の構成としてはいくつかの種類に分類さ れる。原子核に含まれる中性子の数の違いから、カリウム、カリウム、カリウムれと いう三種類に分かれるのだ。 このうちのカリウムとカリウムが多数派として大半を占めているのだが、カリウム がカリウム原子一万個に約一個の割合で含まれている。自然界に存在するカリウムの一 万個に一個がカリウムだから、食料などで取り入れた体内カリウムにも一万分の一だけ 存在すると表現してもよい。 そして、このカリウムから放射線が放出される。つまりカリウムは「放射性物質ー とか「放射性同位元素」と呼ばれる原子で、人間の身体からつねに出ている放射線の発生 、しとし、つわナだ。 この放射線は目に見えず匂いもないのが大きな特徴だが、電気的な方法による測定が可 能だ。したがって、一定時間に体内から放出される放射線を測ることで、体内に含まれる カリウムの量がわかり、そこからカリウムの全量が割り出される。 そうなれば、脂肪にはカリウムがないという特徴から、脂肪組織を除いた体重が計算で き、つづいて体重に占める脂肪量の見当がつく。
放射性廃棄物というゴミ もし、燃料被覆管に目に見えないような小さな孔があいていたら、どうだろう。核分裂 生成物は原子炉の水のなかに大量に出てきて、復水器へと移動していく。そして、復水器 では非凝縮性ガスと一緒になって移動する。これを放っておいたら、排気と一緒になって 煙突から外部に出てしまうかもしれない。 る そういった事態を想定して、また不純物として存在するウランもあることから、復水器 出から抜かれたガスは活性炭をつかった濾過装置を通す。この仕組みによって放射性物質の 線放射能を大きく減らしてから、大気中へ放出することになっている。 放 これに加えて、監視システムも設けられている。つねに、復水器から抜かれたガスの放 ら 射線のレベルを、濾過装置の前後と排気筒の三カ所で測定している。また、定期的に原子 原 炉の水を少し抜き取っては分析している。もし、そこで燃料被覆管から放射性物質が漏れ 9 ている予兆があったら、その状態や量に応じて原子炉を停止するなど、適切な措置が取ら 9 れることになっている
こうして、放射線測定室のなかに座るだけで肥満度が測れるのである。 雨の銀座はなぜか放射線が強い 人の身体から放射線が出るくらいなら、そのほかの生物だけでなく、周囲の物質から放 射線が出ていても不思議ではないだろう。 この地球上で、というよりこの宇宙のなかでというべきなのだが、放射線が測定される の も 線がない場所を探すほうがずっとむずかしい。実際には、地球上の 場所を探すより、 訊あらゆる場所で放射線が測定されるのであって、場所によって異なるのは放射線の有無で 常はなく強さとい、つことになる 異 たとえば東京の銀座通りは、東京や関東地方の他の場所にくらべて約三倍もの強さとな 線る放射線を出しているのがわかっている。 放 その原因は歩道に敷きつめられた花崗岩にある。その昔、銀座通りを路面電車 ( 都電 ) 章 が走っていた時代があったのだが、この花崗岩は線路の敷石として使われていたもので、 第 都電を撤去した後は歩道の敷石として使われている。
もし放射能が外部に出れば、長いあいだ放射線の影響を受けることになる。そのため、 厳重に管理したうえで、放射線や放射能に対する配慮が不可欠となるのは、むろんだ。 現実にどの程度の放射線が出ているか 現実の問題として、これらの放射性廃棄物が、原子力発電所の周辺に日常的に出ている という、い配はないのだろうか 発電所で生まれる放射性廃棄物は、その形態に応じてさまざまな処理がなされて、外に 出すときには必ず放射線や放射能の量をチェックする。その結果、いまでは気体廃棄物や 液体廃棄物の放射線のレベルは、ほとんど検出限界値以下となっている。 「検出限界値 [ とは言葉のとおり、測定器がどこまで測れるかの限界を示したもの。測定 器そのものの性能に加えて、自然界の放射線といった測定環境によって、その限界値は変 わる。このため、検出限界値「以下」というのは、含まれている放射性物質がかならずし も「ゼローということではない。正確にいえば、測れないほど微量なレベルで存在するか もしれないし、何もないかもしれない、そのどちらかを意味している。 192
一年に一回おこなう定期検査のときには機器が分解されるが、このとき建物のなかに放 射性物質が飛び散る可能性がある。このため、ビニ 1 ルハウスなどで作業場所を覆い、そ のなかで作業をおこなうなどの工夫をしている。 また点検では、不要になった鋼材などさまざまな不燃性のゴミや、床や機器などを拭い たペー ータオルなどの可燃性のゴミが出てくる。これらは「固体廃棄物」と呼ばれてい るが、不燃性のものはドラム缶に詰められて、発電所のなかにある施設に一定期間保管さ れた後、青森県六ヶ所村にある施設に最終処分される。 る 可燃性の固体廃棄物は、発電所のなかにある焼却炉で焼却される。そのときに生じる灰 て はドラム缶に詰められ、不燃性の固体廃棄物と同じ処置がなされる。 出 線原子力発電所で大量に使われる水は、濾過して再利用されるか、一時的にタンクに溜め 放られる。タンク中の水の放射性物質の濃度を測定して、安全を確認したあと、放水口から 海に放出される。 発 原 換気のための排気があって、排水があって、固体のゴミ出しがある、という点では一般 9 の家庭と大差ない感じがする。しかしながら、発電所と家庭とでの決定的な違いは、発電 所から出るゴミには放射能が含まれている、またはその可能性があることである。 191
第 10 章放射線を活かして使う知恵 放射線はこう利用されている 田の 0 〇 02 化合物の合成 プラスチックなど の性質の改良 熟成などの調整 品種改良 食品の保存 X 線検査 各種病気の診断 ガンの治療 非破壊検査 溶接検査 厚みの測定 ゲージング 潮流・水流の調査 化学分析・各種測定 アイソトープ電池 3 ( 当 ~ 、囈放射線の利用 ( 出典 : 「放射線のはな凵日本原子力文化振興財団 ) 211