じよ、フちょう さあ、これらの主張はデメリットの 3 条件を満たしているでしようか。冗長にならない よう、簡潔に解説していきますね。 デメリットの 3 条件 ①発生過程 ( 論題の行動を取ったときに、新たな問題が発生する過程 ) ②深刻性 ( その問題が深刻であること ) ③固有性 ( 現状ではそのような問題が生じていないこと ) まず、「就活を続けることで、さらに多くの時間を消費することになる」。 これはもうそのままですね。就活を続けることで、「さらに多くの時間を消費する」とい う新たな問題が発生します。それは大学 4 年の夏という、卒論の準備・作成などもしなけ ればならない貴重な時間を無駄にすることなので深刻な問題です。で、いまはまだ「さら に多くの時間を消費する」という問題は起きていないけれど、就活を続けることでその問 題が起きるわけで、この主張はデメリットの 3 条件をすべてクリアしていると言えるでし 1 2 イ
ないかー とツッコミを入れたいのはわかります。そういった「反論」については、つぎ の時間にちゃんと説明するので、ここでは 3 条件を満たしているかどうかだけをシンプル に考えてみてください ではつぎ、「就活自体を成長の機会として活用できる」はどうですか ? 就活をやめてしまえば成長の機会はそこで終わります。それを問題だと捉えました。 それは深刻な問題か ? そこで成長が止まってしまうので深刻だと言えます。これは「機 会費用ーの一例でもありますね。 就活を続ければ、さらなる成長の機会が多々あるので、問題は解決します。 3 条件を満 たしていると言えそうです。 最後、「他の内定が取れなかったとしても、就職先への納得感が高まるーはどうでしよう 就活をやめてしまえば、 >< 社でよかったのだろうかという気持ちがいつまでも残ります。 これを問題だと捉えました。 3 時間目どんなときも「メリット」と「デメリット」を比較する 121
はそのような問題は生じていない , ーーまとめると以下のようになります。 デメリットの 3 条件 ①発生過程 ( 論題の行動を取ったときに、新たな問題が発生する過程 ) ②深刻性 ( その問題が深刻であること ) ③固有性 ( 現状ではそのような問題が生じていないこと ) メリットのときは内因性でしたが、デメリットでは「発生過程」という言い方をします。 づか まあ、言葉遣いなんてどうでもよくて、覚えておいてほしいのは、新たな間題が生じる過 程をきちんと説明するということです ここがちょっとだけ、むずかしいかもしれません。 「日本は原発を全廃すべきか、否か」の例でいえば、原発を全廃することによって、その おぎな 分の電力を他の発電所 ( 火力、水力発電など ) で補わなければならなくなる。しかし、原発 以外の発電所だけでは補いきれないため、電力が多く消費されたときには大規模な停電が 発生してしまう。 3 時間目どんなときも「メリット」と「デメリット」を比較する
「なんとなく問題だ」ではなく、「なぜ問題なのか」「どう問題なのか」をきちんと説明で きなければ、重要性をクリアしたことにはなりません。原発が大爆発する可能性があると 言ったところで、爆発するとなんか危険じゃない ? ではお話になりませんよね。 最後は解決性のところですが、その行動によって問題が解決できるかどうかをきちんと 検証してください 圧縮機でふとんを圧縮したところで、「一枚につきセンチ厚みがあったものがセンチ になるでは、問題が解決するとは言えないわけです。 相手を説得する、相手にダマされない 以上のように、メリットには 3 条件あることを頭に入れて、それぞれの条件を満たして いるかどうかをひとつずつ確認していく。 これを習慣にすると、自分で自分の主張が正しいかどうかをチェックできるだけでなく、 相手をうまく説得することもできるし、逆にダマされにくくもなります 相手に「こうしたほうがいいですよーと言うとき、特に注意すべきなのが重要性の部分 です。自分にとっては重要な問題であっても、相手にとってはたいして重要ではないこと 108
その行動 ( 原発の全廃 ) を取ったときに生じる良いこと ( Ⅱメリット ) と悪いこと ( Ⅱデ メリット ) を比べて、メリットのほうが大きければやったほうがいいし、デメリットのほ うが大きければやらないほうかいい。たったそれだけのことなのです。 ディベート思考の考え方 ・ある行動を取ったときに生じるメリットとデメリットを比較する もちろん、メリット、デメリットと一概に言っても、ひとつひとつの重みは違うわけで、 そこはちゃんと比較しなければなりません。とはいえ、日本人にありがちなのが、比較と いう考え方がないので、デメリットばかりに目がいってしまって、なかなか行動を取れな 、というパターン たとえば、大学通学のためにバイクの免許を取ろうと思ったとき、電車で行くよりバイ クで行ったほうが時間もお金も圧倒的に節約できるのに、親の「事故に遭ったらどうする のというひと言で簡単にあきらめてしまう。 また、政策レベルでも、メディアや市民団体、などはデメリットの話ばかりして、 8
べきか、否か」 ) から考えはじめて、徐々に小さな枠組み ( 「文系に行くべきか、否かー「法学 部に行くべきか、否か」「法律学科に行くべきか、否か」 ) に落とし込んでいくようにしてくだ さい >< 社への就職か、大学院への進学か 就職活動中の学生くんを例にとってみましよう。 彼はもともと、就職するか大学院に進学するかで悩んでいました。なかなか結論が出な いから、とりあえず就活は他のみんなと同じように進めてみた。すると、それまであまり 話したことのない社会人の人たちと接することになり、仕事に対する具体的なイメージも わいて、「就職も悪くないな」と考えるようになった。 しかし、時代は就職氷河期です。なかなか内定が出ません。 結局彼は、第二志望群 ( こういった言い方をするそうです ) からしか内定をもらえません でした。しかも >< 社のみ。 さて、彼はここでまた悩みます。 その X 社の内定を受けるべきか ? それとも、辞退して大学院に進むべきか ? しゅうかっ
結論よりも大切なこと ディベート思考とは、最終的にはディベートを個人ひとりの頭の中で行うことによって、 いまの最善解を出していく思考法になります。 となると、ここでみなさんはつぎのような疑問を持つかもしれません。 「特定のルールに基づいて、賛否両方の立場の意見をぶつけ合うことはわかるけど、最終 的に判定するのも自分となると、どうやって公平なジャッジが、きるの ? ーと。 もっともな疑問でしよう。 ここではっきりと言っておきたいのは、完璧な判定は不可能だということです。異なる 意見、複数の意見を戦わせて、認識のゆがみをいくら是正したところで、 100 パーセン トの結論なんてものは出てきません。 でも、それでいいのです。 それでも、まったく無思考に脊髄反射でものごとを決めていくよりかは、はるかに優れ た結論が出てくるはずですし、実はいちばん重要なのは、どういう結論を出したかという こと以上に、どういった思考を経てその結論を導き出したかということなのです 要は、決断にいたる筋道が重要だということ。
そういった経験から言えることは、これからの時代、意思決定の方法を学ぶことは最大 のリスクへッジになるということです いきなりレールがなくなったり、いままでのやり方が通用しなくなったりしても、うま く意思決定ができれば、個人のカで対応することができるのです。 時代は確実に「カードの時代ーへとシフトしていっています。 これまでは、まず計画を立てて、それをもとに着実に行動していくことが求められてい ました。要は「計画の時代」だったわけです ( だから、何十年も前の都市計画がいまごろ動き 出したりもします ) 。 でも、くり返すように、時代は大きく変わりました。計画を立てたときの前提や条件が どんどん変わっていく。だから、古い意思決定もその変化に合わせて更新していかなけれ ばなりません。 それなのに、計画主義の人にはなかなかそれができない。一度決めたことはずっとやり 続けないといけないと思っているのでしよう。 いくらトランプゲームの「大富豪」で強いカードをそろえたところで、革命が起きてし ガイダンスなぜ「学ぶ」必要があるのか ?
そうすれば、自分の人生を自分のカで切り開いていくことができるようになるでしよう。 「知識ではなく考え方を学ぶ , というのは、言い換えると、「答えではなく、答えを出す方 法を学ぶ」とも言えます。 ビジネスにも人生にも、「正解」なんてものはありません。自分のカでひとつずつ答えを 出していかないといけない。 でもこれまでは、ビジネスにしろ人生にしろ、なんとなくモデルがあって、一生懸命そ れを真似して、みんなに合わせていれば特に問題はありませんでした。 要は、正解 ( みたいなもの ) があったのです。 10 0 点満点のテストで 10 0 点を目指していれば、それでよかった。 東日本大震災の際、新宿駅でタクシ 1 の列に 500 人以上の人間が並んでいる光景を見 て私は心底驚きましたが、自分で答えを出せるようにならないと、本当に行列に間時間並 しんぼう ぶだけの人生になってしまいます ( それでも、これまでは辛抱していれば必ずタクシーがやっ てきて、乗ることができました。でもこれからの時代は、行列に並んだところで、タクシーが来 ない可能性すらある : : : ) 。 どうしても帰宅しないといけないなら、ヒッチハイクして相乗りを提案するとか、民家
その他すべての企業活動に対する横断的な知識・経験をもとに、トップが決断するための 手助けをします。 これは、プロフェッショナルの定義とまったく同じです。 特にエキスパートとの比較で際立つのが②の部分。 エキスパートは、大ざっぱにいえば、「〇〇しろ」「これが正解だ」という言い方をして 自分のやり方を押しつけますが、プロフェッショナルは相手側を理解して、相手側の条件 に合わせて、トータルなサ 1 ビスを提供することができます。 要は、相手の立場に立って、相手の代わりに考えてあげることができるのです。そして そのためには、①の横断的知識・経験が必須のものとなります。 歯医者の例でいえば、ただ虫歯を治すのがエキスパート。虫歯にならないように、予防 から治療、もっといえば生活習慣の改善まで提案できるのがプロフェッショナルでしよう。 マーケティングの事例でよく出てくる話ですが、電動ドリルがよく売れている状況を見 て、「もっと高性能のドリルを売ろう」と考えるのがエキスパートであるならば、もっと根 本的なところまで考えて、「お客さんが欲しいのはドリルではなく穴であるーと考えるのが プロフェッショナルです。