学校 - みる会図書館


検索対象: 無頼のススメ
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1. 無頼のススメ

今にして思うと、良い教育だったなと思います。 子どもたちが進学する際には、父の前に正座して「どうか行かせてください」と頭を 下げてお願いするのが決まりごとになっていました。父はその目の前で母親から成績を 聞いてこう命じるのです。「だったら一校だけ、この一番難しいだろうというところを 受けさせる。それで落ちたらもう行くな」。 今は受験というとほとんどの場合、まず本命とスペリ止めがあって、それ以外にも試 験なれするために受けておこうか、みたいなものだという。親の収入が子どもの教育レ ベルに比例するという話もよく耳にします。 でも、昔のほうが家は貧しくてもいい学校に入ることができたのは、一校しか受けら れないという追い込まれた状況があったからこそ、怠け者でも「ここぞ」と頑張って集 中することで、何倍も力が出せたのではなかったか。 九世紀の初め、弘法大師空海はエリート官僚や学僧たちが集まる難しい遣唐使の選抜 にパスして、普通だったら四十年も五十年もかかるような密教の教義を、唐の高僧から

2. 無頼のススメ

中学生レベルの感性 この何年か直木賞などの選考委員をしていて若い人の小説を読む機会が増えました。 もちろん、よくできた小説もあるのですが、一つ共通した欠点があることに気がっきま す。それは、自分が過ごした学校でのあり方にしたがって、登場人物たちの性格や存在 価値までを決めていることです。 つまり、その人が学校で何をしたか、成績は良かったか悪かったか、異性にモテたか モテなかったか、そういうモノサシに高い価値基準を置いていて、社会に出た後の人生 でも、それらをずっと引きずって書いているのです。 人間を描くのに学校を持ち込まない 118

3. 無頼のススメ

中学三年や高校三年の時にどう見えたかではなくて、卒業して学校の門を出た後、そ の人にどんな世の中の風が当たったか、その中で人としてどう生きてきたのか。それを ト説というもので、都合よく管理された学校内のことや、生徒同士でどう見ら 描くのカ / = = れていたかなんて、言葉は悪いが「屁」みたいなものじゃないか 学校に寄りかかるのは子どもの小説で、大人の鑑賞にはたえない そう苦言を呈すると、「でも学校をベースにすると読者にわかってもらいやすいから」 まと言、つのですが、それは読者の共感以前の欠陥小説だと私などは思います。 いくら分かりやすい、読みやすいからといって人間を単純化してはいけない。 校私に言わせれば、そもそも人間というのは、自分の中にどうしようもない連中が何人 学 も集まってできているよ、つなもの。小さいうちはよくわからないが、大きくなるにつれ て、そいつらがあちこちでのさばりだしてきて、自分でも「うるさい、出てくるな」み 間たいな混沌とした状態になってきます。 それがおそらく自分というものの正体で、個人だといっても実は個ではない。いいも 月 9

4. 無頼のススメ

のも悪いものもたくさん抱えながら、何とかかんとか生きていく。そうでないと何も教 えられてないのに小説なんか書けるはずがないと思うのです。 書き手の考え方やものの見方が、学校にいた頃から少しも先へ出ていなくて、読者も そうだとしたら、単純さと平たい言い方しか好まない小中学生レベルの感性、人生観が 当たり前になってきているということかもしれません。 学校が教えるのは、人としての感性や本性より規範や論理だから、世間とは常に別も のです。学校というシステムは生きていく上で本質的なことを教えてくれるものではな い。そこで得たものは卒業した時点で一度捨てるぐらいでちょうどいいのです。 成績で人は見抜けない そもそも、子どもの時分から人はこうあるべきだとか、こうして生きるのだとか、そ ういうことをろくに考えてこなかった教師が、、 少々テキストを読んで勉強したぐらいで 子どもの教育なんかできるのかな、とも思うことがあります。 720

5. 無頼のススメ

「そんなの無理だ、やられちゃう」と言っても、「向かっていってやられたっていいんだ。 後のことは後で考えればいいじゃないか」。 そう言ったものでした。最近は、いじめを目にしたり、知っていたりしても、ほとん ど他人事として避けたまま学校を出てくるようです。いじめた側の人たちも、その後グ レてヤクザになるわけでもなく、意外と成績もよくて、けっこう名の知れた会社で真面 目なサラリー マン生活を送っていたりすることが多いという。 いずれにしても、いじめのような「基準からの逸脱は人間につきもので、現実の世 の中では、人は人を殺したりもする。そういうことがありうるのだと想像し、予測して 対応することを身につけなければいけないのです。 建前は裏切られる 学校的な教えというのは、数学的なものの考え方の初期みたいなものです。つまり、 いくらの買い物をすればお釣りがいくらかという当たり前のことからはじまって、ウサ

6. 無頼のススメ

というのもありました。学校というのは出たらそこでおしまいだから、私は同窓会な ど行かないし、世の中に出た大人たちが何をしているか、そちらのほうがよほど面白そ うに見える。とうの昔に卒業した学校の仲間と何年もたってつるんでみても仕方ないだ ろ、つ、と田 5 、つのです 自分が今つきあっている彼氏や彼女のこと。 進路をどうするか、会社の所属部署が気に入らない、取引先とうまくいかない 背が高い、太っている、クセ毛だとか、自分の身体に関すること : 何かもっと他の読者にも通じるような普遍的、相対的な悩みとい、つのは浮かばないの かね、と田ハってしまいます。 も、つ一つ気になるのは、お金を儲けている人イコール偉いのだ、とのつけから信じて いる質問が多くなっていることです。 「世の中で金をたくさん儲けたやつの八割は悪党だと思っておけ」 それが私の理論で、昔も今も世の中では悪党のところに金は行く。金を儲けるやつは

7. 無頼のススメ

づいて来たらすぐわかるからな」 学校で得られるような分かりやすい教訓としてではありませんが、そういう記億の積 み重なりが、確実に私の生き方に影響を与えています。

8. 無頼のススメ

人は基準から逸脱する 近頃の若者は幼稚になったという声を耳にすることが多くなりましたが、私が感じる のは、人間というものに対して予測ができなくなっている、ということです。 想像できないことは考えない。だから大人になりきれない なぜそうなるのか。 誰でも最初は生まれ育った家庭でーー、、・人によっては養護施設だったりするかもしれな いかーーー人間はこのように振舞、つべきだという基準を、親によって目の前に置かれます。 しかし、いざ家から出て学校という集団の中に行くと、まずはいじめに出会います。 理不尽こそか人を育てる

9. 無頼のススメ

誰でも「事情」を抱えて生きている ゴンタクレにも事情がある人間という哀しい生きもの 人間を描くのに学校を持ち込まない 中学生レベルの感性成績で人は見抜けない幼少期の記憶が大事 長生きするには「術」が要る 色川武大さんに言われたこと死とは自分の路地へ帰ること 自分のフォームで流れを読む 「九勝六敗」を狙え天の運、地の運、人の運 努力、才能、そして運が左右するもの クラッチ・ヒッターの「弱点」説明のつかない「神の手 , 作家にも運がある 虚しく往くから実ちて帰れる 先入観を捨てられるかエリ 1 トが抱える難しさ 〃 2 ノノ 8

10. 無頼のススメ

色川武大さんに言われたこと 学校では学べない、人生についての智恵というものを持っている人にこれまで多く出 る 腰会うことができた。 " ギャンプルの神様 ~ と呼ばれた色川武大さんと出会ったのは亡く 術なる数年前のことで、そう長い付き合いにはなりませんでしたが、とにかく発想がユニ ークで、驚かされることが何度もありました。 る 例えば二人で映画『インディ・ジョーンズレイダース失われた聖櫃』を観ていた す 生時のこと。ラストに近いところで、聖櫃の蓋が開いてプワッと亡霊がとび出してくる場 長 ーグって、実際にこういう場面を見てるんだよね , と一一一一口うのです。 面を見て、「スピルバ 長生きするには「術」が要る せいひっ アーク 725