死 - みる会図書館


検索対象: 無頼のススメ
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1. 無頼のススメ

書かれています。 極端な言い方をすると、フランス人というのはいかに良いセックスをするかを考えて これまで生き延びてきた人たちじゃないのかな、と考えることがあります。そして彼ら の何より偉いところは、「セックスの中にある小さな死ーを見つけたことです。 「セックスとは、果てるたびに小さな死と出会うこと」 ジョルジュⅡバタイユのこの言葉は、それだけで人類史に残るものではないかな。 ハミンが最も出るのは死と隣り合わせにある擬死みたいな状態にあ 人間の脳内でドー るときだといいますが、その意味では、人は今まで何万回も死んでいるのです。 セックスと同じように、喧嘩でもとにかく倒れすに立ち続けていると、「あ、ここで 死ぬのかな」という瞬間がやってきます。それはギャンプルにも一言えることで、ギャン プルというのは一つのレースを終えるごとに我を忘れるような熱狂のあとに「小さな 死」を迎える。だからこそ面白いのです。 負けるな、最後まで倒れるな、かりそめの死、そしてまた復活する。

2. 無頼のススメ

しい一一一一口い方だな、と思、つよ、つになりました。 死とは自分の路地へ帰ること と思っている。彼 前に、亡くなられた久世光彦さんが、「伊集院はいっ死んでもいい は五十歳ぐらいか締切りじゃないか」ということをどこかで書かれていました。 確かに、ある程度の歳まで生きられたら一応は自分の区切りとして、それ以上はもう けものと考えたほうがいい。けれど、その後は余禄の、幸福な時間とはかぎらないのか る 腰人生というものです。 私は、床の間で家族みんなに囲まれて安らかな死を迎えるとか何か形のよすぎる発想 ははほとんど間違いだと考えているし、病院で何本も身体にチュープをつながれながら、 る 「お爺ちゃん、死なないでーとすがりつかれるのも勘弁してほしいと思います。 す 生平穏死、尊厳死、終活とか断捨離プームだとか色々言い方があるようですが、人間は 長 ほとんどが半端もので、それが人間そのものではないのかな、と考えています。 729

3. 無頼のススメ

八十歳を超えたから大往生で、二十代や三十代の死は夭折だと世間は言います。でも それは程度の問題にすぎなくて、死というのは誰にとっても、どんな形であっても「そ うであった」ということでしかないのではないか。 お前は永遠に生きるだろう、なんて言われたら私は恐ろしくて気が狂ってしまうにち がいありません。ある時代に生を享け、多少の時間差はあってもみんなその時代に生を 終えるから、安堵もあるのではないかと思うのです。 「お前の村へ帰りなさい。もう自分の路地へと帰りなさい それが私の考える「死ーというものです。つまり、自分が初めて「孤」であると知っ た場所へと帰っていくこと。あくせくした都会ですっと生きていたなら、自分の路地へ 帰るからもう静かにしてくれ、といって一人で死ぬ。 「戦場の兵士が見る夢は、勝利の日のことでも敗北のことでもない。それは彼の故郷の 美しい山河である」 ざんごう あるイギリス詩人はそう言っています。戦場の塹壕の中にいる兵士が、死と隣り合わ 730

4. 無頼のススメ

2 例えば「無頼の流儀」とは 無頼で小説が書けるか滅亡の情念を忘れない 物乞いをするのは廃人と同じ 健康は自分が決めること物乞う人に与え続けるか先へ進んでこそ中庸 終わリなき愚行への想像力を 日本はまた戦争をするのか己れの怒りを抱けるか 同時代を生きる者の責任 恋愛は出合い頭、セックスという「小さな死」 恋は一目でするもの いっか別れはやってくる 愛する人の死が教えてくれた 亡くした妻のこと流れのような死を想う 人間は何をするかわからない生きものだ 「いい人」のほうが恐ろしい 人間の抱える悪を見つめる 104 怖がって大勢に流れる

5. 無頼のススメ

長生きするには「術」が要る そ ば自 れ だ 、際分生 の オ寸目 と で す 、戦 田、と 路生 死す し願 な死 いが こ存 と在 です 131 て い る と だ か ら だ な い そ れ は 自 分 ま だ て か ら で す 生 き て る か ぎ り 単它 と は 後 ま で 立 - つ な ぜ 死 な な い か 久 世 さ ん の わ れ た よ っ に っ / レ で も な と しゝ つ 甲 ム も あ ま す 行 の 葉 詩 な の だ と 私 は い ま ノ、 が 死 に し て 必 要 . な の は 甲、人地 間 ク ) 情 を 葉 し も の そ れ 小 説 で な く や は り や っ り 自 の を い を 田 っ カゝ な い そ は 間 逞 い よ っ で 分 の を つ き き た し、 と ・つ て も 方 ら は - つ き り と き 彼 は

6. 無頼のススメ

妻の願いであったことを知ったのは、死別して二年後のことでした。 最近では付き合いの長かった男が三人、次から次に亡くなりました。 彼らの死を小説で描いたとき、角田光代さんが、「伊集院は死を川の流れのように書 く」とどこかで書いていました。そうかもしれない、と思います。 近親者の死というのは、当人にしかわからない苦節を残します。それを経験した年齢 が若いと、それだけ心身をゆさぶられるものです。なぜ死んでしまったのか、という答 えの出ない問いを繰り返したり、時の経過や理屈とは別に不意に記憶がよみがえったり れもします。 えでも一つ言えることは、そのときは分からなくても、どんな哀しみにも終わりはある がということ。生き続けてさえいれば時間が解決してくれる。 の 時間がクスリという言葉はほんとうです。 人 る す 703

7. 無頼のススメ

その繰り返しで、人生には小さな死が何回も訪れる。つまり、「百万回生きた自分 , しいか、もしれない みたいなものだと田 5 えば、 いっか別れはやってくる 死 「世の中で何が愚かと一一一一口えば、恋愛にまさるものはない。人生の大切な時間を恋愛に費 やすのは賢明な者のすることではない 。しい歳をして別れ話でモメたり別れた後でも相手 そ、ついう言葉もあります。確か ' A 」 スを追いかけまわしたり、あげくに殺傷事件まで起こす人もいるから、なるほど先人は鋭 セいことを言うとも思います。でも、生涯不犯を実践するのは微々たる人でしかない。 恋愛は少なくとも最初の出逢いは時間がいらない。そして誰でもできる。 合 ほとんどは恋愛を経験し、あるいは進行中であれこれ悩んだりもがいたりしている。 出 それが世の中というものであって、たとえ付き合ってから後は辛抱ばかりだったとし 恋 ても、それが生きることの素晴らしさでもあると私は思います。 ふぼん 9

8. 無頼のススメ

もともと自然と自分の身体が頼りで、生きるとは国に頼ることではない、というスタ ンスがはっきりしている。だから、年をとってもしゃんとしていられるのです。 都会から遠い僻地であるほど、不便で厳しい環境のもとで生きているほど、精神的に 強くいられるということは、やつばり都会暮らしというのはどこかで人間性を変質させ たり壊したりしているにちがいない 昔から多くの本にも書かれているように、 5 者会人は仕事でも家庭でもいつも世間体を 気にかけてあくせくしている。せつかちな都会で長く生きるうちに、物事の本質、人間 じ 同にとって肝心なことを忘れているのです。 廃「昔は誰でも、果肉の中に核があるように、人間はみな死が自分の体内に宿っているの のを知っていた。 ( 中略 ) それが彼らに不思議な威厳と静かな誇りを与えていた」 す リルケは、『マルテの手記』の中でそういうことを書いています。かっては男も女も を みんな死を意識して生きていたのに、便利や情報や文明がそれを奪っているという。 物 健康でいたい、老いても健康が大事。

9. 無頼のススメ

そうやって物事を決めることでずいぶん楽にはなりましたが、愛する人の死をもって それを理解しなければならないなら、ずいぶん哀しいことだと思います。 流れのような死を想う 今までを振り返ると、最初に好きだった子は原爆症で死にました。 二十歳前後の頃、私は野球部でライバルだった親友と、四歳年下の弟を半年のあいだ に相次いで亡くしています。友人は自殺で、高校生だった弟は海難事故で。 台風が接近する中、弟は一人で沖に漕ぎ出したが、浜に流れ着いたのは空のポートで した。冒険家になることを夢見ていた弟の命日が来るたび、何とか助けてやれる方法は なかったかと今でも考えてしまいます。 そして妻をがんで亡くした。仕事を休んで入院治療に付き添いましたが、二百九日間 の入院の後、還らぬ人となりました。私は動揺し、しばらくは何もする気が起こらず、 酒とギャンプル漬けの茫然自失したような日々を送りました。私が小説家になることが 702

10. 無頼のススメ

たとえ来世があっても一切思いをかけない、死をもって自分は跡形もなくなる。 そう考えているのです。 それでは何だかさびしくはないか。そう思う人もいるだろう。 しかし、こう考えていたほうが、案外楽なこともあるのだよ。