となります。 ーオイラーの公式 この複素数と、三角関数のサイン、コサインの間にはお もしろい関係があります。その関係を見つけたのは、 18 世 紀を代表する数学者、オイラー ( 1707 ~ 1783 ) です。オイ ラーが見つけたのは、次の式の関係で、これを、オイラー の公式と呼びます。 ます。オイラーの公式の右辺の cosO 十 isin0 の絶対値 この関係は、図 2 ー 1 上では、白抜きの点 ( 〇 ) に対応し =cos 日十 isin0 の 2 乗は、 / は ) = 4 十十 c ェ 2 十ゐ 3 十・・ る関数 / は ) を、 ますが ( この部分は高校数学ではありません ) 、これはあ ます。テイラー展開は、普通、理工系では大学 1 年で学び このオイラーの公式を導くには、テイラー展開を利用し ているわけです。 数 ( 複素指数関数と呼びます ) に対応していることを示し は、この円上の点が、虚数を肩に乗せた e ・という指数関 は半径 1 の円上にあることがわかります。オイラーの公式 です。三角関数の公式 cos2 日十 sin2 = 1 により、この点 (cos 十 isin の (cos O—isin の =COS20 十 sin20
すると、前式のように、それぞれがコサインとサインのテ イラー展開に等しくなります。これが、「オイラーの公式 =cos 工十 / sin 工」です。 このオイラーの公式を使うと、複素数の極座標表示も、 十 = 2- ( cos 日十 / sin の と書くことができます。また、複素共役は ■複素指数関数の微分 になります。 の微分の知識だけで十分です 言っても、硬くなる必要はありません。コサインとサイン この複素指数関数の微分を身に付けておきましよう。と にこで〃とは実数 ) 数に分けます。すると、 します。したがって、オイラーの公式を使って、実数と虚 を求めます。複素数の微分では、実数と虚数を別々に微分 (cos 十 / sin の
第 2 章複素形式への拡張 向 ) に進む波になることを頭に入れておきましよう。 ■ 18 世紀を代表する数学者、オイラー 「オイラーの公式」を生み出したオイラーは、 1707 年に フーリエより約 60 年早く、スイスのバーゼルに生まれた、 18 世紀を代表する数学者です。オイラーが生まれたとき、 微積分の創始者であるニ ートン ( 1642 ~ 1727 ) とライプ ニツツ ( 1646 ~ 1716 ) はまだ存命していました。オイラー は神童で、 13 歳でバーゼル大学の哲学部に入学し、 15 歳で 卒業しました。その 2 年後の 17 歳で修士の学位を得まし た。ライプニツツが没したのはオイラーが 9 歳のときで、 ートンが没したのはオイラーが 19 歳のときでした。 バーゼル大学でオイラーは、優れた科学者を生み出し続 けたベルヌーイー族の知遇を得ました。オイラーの父も、 ベルヌーイ家と親交がありました。オイラーの父は牧師 で、かってバーゼル大学でヤコプ・ベルヌーイ ( 1654 ~ 1705 ) の講義を受けてお り、かっ、ヤコプ・ベル ヌーイの自宅に下宿してい ました。オイラーはヤコプ の弟のヨノ、ン・べノレヌーイ ( 1667 ~ 1748 ) から数学の 指導を受けました。もっと も講義を受けたわけではな く、数学書をオイラーが自 習し、疑問点のみを教えて オイラー 69
ます、オイラーの公式を使うとコサインやサインは次の ( 2 ー 1 ) 式や ( 2 ー 2 ) 式のように書けます。オイラーの公式 の ==cos 十 iSin 〃 と —in0 =cos ( ー〃の十 / sin ( ーの ==cos 〃日ーZ ・ Sin の両辺どうしを足すと cos % 日が求められ、引くと sin 日 が求められて、 e ezn0 十 e 2 / ( 2 ー 1 ) COS 〃日 = 2 —in0 ( 2 ー 2 ) Sin % = となります。 このコサインとサインを使うと、 ( 1 ー 13 ) 式のフーリエ 級数は び加十 e 沺 ーー十の 〃れ一 2 ろ〃日〃〃十われ 2 2 〃 2 4 2 / ( の = ーー十 ( の cos 日十房 s ⅲ〃の 2 e 十
しかし、ロシアのエリザヴェータ女帝が亡くなるという予 期せぬ偶然によって、危機は去りました。ェリザヴェータ の後継者として即位したロシアのピョートル三世はドイツ 生まれのドイツ育ちで、フリードリヒ二世を信奉していた のです。『ヒトラー最期の 12 日間』という映画がありまし たが、追いつめられたヒトラーが見上げた肖像画がフリー ドリヒ二世です。 オイラーはベルリンでも数多くの業績をあげました。 「オイラーの公式」の発表は、ベルリンに滞在中の 1748 年 でした。 1766 年にフリードリヒ大王との関係がまずくなる と、オイラーは 25 年間滞在したベルリンを離れ、再びサン クトペテルプルグに戻りました。 時のロシアの支配者は、こちらも啓蒙専制君主として有 名なドイツ生まれの工カチェリーナ二世 ( 1729 ~ 1796 ) に なっていました ( ちなみに、江戸への航海中に遭難しア リューシャン列島に流れ着いた大黒屋光太夫がェカチェ リーナ二世に面会したの は、 1791 年のことです ) 。 ピョートル三世は、絶体絶 命のプロイセンを救った講 和によってロシア国内で不 人気となり、 1762 年にェカ チェリーナ皇后を中心とす るクーデターにより廃位さ れたのでした。 オイラーは、ロシアに 工カチェリーナニ世 / 2
複素形式への拡張 虚数の導入 5 4 複素数を座標に表示する方法 5 6 オイラーの公式 58 複素指数関数の微分 6 0 波を表すのに便利な虚数 6 1 波動関数 66 1 8 世紀を代表する数学者、オイラー 6 9 複素形式への変換 7 3 周期の拡張ーー 2 から 2 もへ 77 フーリエ級数と量子力学 80 53 フーリエ変換への拡張 フーリエ級数からフーリエ変換へ 84 フーリエ級数の係数を求める 85 方形波の間隔が広がった場合 8 8 方形波と方形波の間隔がさらに大きい場合 9 1 83
S1n 工・ e - わ工 または cos 〃ェ・ e で表せます。例えば cos ・ e-bx では、 = 1 でわ = 0 の場合は振動する波、すなわちコサイン波を表し、〃 = 0 , わ = 1 の場合は減衰波を表します。 〃とわがともに 0 ではない場合はどうなるでしようか。 この場合は、振動しながら減衰する波 ( あるいは振動しな がら増大する波 ) になります。 この式はオイラーの公式を使えば、もっと簡単かっ便利 に表せます。先ほどの S1n 4 工・ e という波は、オイラーの公式を使えば れ 0 十わ ) 工 ~ 0 工 - わ工 = COS 〃工・ e ーエ十 / Sin 〃工・ e ー の虚部 ( 右辺の第 2 項 ) をとればよいということになりま すにこで、〃とわは実数です ) 。コサインで振動する波 のときには、実部 ( 右辺の第 1 項 ) をとればよいのです。 虚部をとる場合は、 ImCe れ 0 + ) 工 ] 実部をとる場合は、 Re [ e ナ工 ] ==ReCcos 工・ e ー = S ln 〃工・ e = ll れ CCOS 4 工・ e¯ 十 i ・ Sin 〃・ e 十 / Sin 工・
さくいん 【数字】 【あ行】 1 階微分 44 アップルトン 208 2 の周期性 35 アーベノレ 99 3 次方程式 55 アポガドロ 99 アレクサンダー 12 アンく一ノレ 99 【アルファベット , ギリシャ文字】 裏関数 167 AM 波 工カチェリーナ二世 118 72 C-b and 124 工コーノレ・ノノレマノレ 14 CT スキャン 工コール・ポリテクニク 152 14 , 49 D 層 エジプト 208 12 エネルギーの分解能 208 123 FI 層 208 工ノレミ 158 F2 層 演算子法 208 187 オイラー FWHM 106 , 115 , 119 58 , 69 オイラーの公式 MRI 152 58 , 69 RC 時定数 表関数 193 167 RL 直列回路 201 s 関数 167 s 推移則 173 ー関数 階段関数 167 ー推移則 ガウシアン 173 X 線 CT ガウシアンのフーリエ逆変換 152 ö関数 131 112 ガウシアンのフーリエ変換 112 ガウス 128 ガウス型関数 106 【か行】 132 , 167 106 228
cos 4 日十 / 第 2 章複素形式への拡張 Sin と書き直せます。右辺の微分は三角関数の微分なので ー Sin 十 COS 日 = / 〃 ( i ・ sin 日十 cos 4 の 指数関数の形に戻しています。これをまとめると となります。最後の行では、再びオイラーの公式を使って となります。 これは、実数の指数関数の微分 e = ae とほとんど同し形をしています。指数関数の肩に乗ってい る項のうち、変数日以外の項 ( 前々式ではで、前式で はのを前に付け足すというものです。 ・波を表すのに便利な虚数 虚数は、電子・電気工学や量子力学でよく使われます。 どのように使われるのか見ておきましよう。虚数を使うの は、波を表すのに都合がよいからです。波には 2 種類あり ます。 1 つはすっと振動しつづける波で、もう 1 つは、だ 61
虚数 Sin 日 第 2 章複素形式への拡張 4 + ル = ( cos 日 + / sin 日 ) = = COS 日十 / Sin 日 一日 cos 日 実数 4 ー / わ = / を田 = cos ( ーの + / sin ( ーの } 〃ー = 7- (cos 日一 / sin の の位置にあります。偏角を使って表示すると、 共約の数は、図 2 ー 1 のように、実軸を対称軸とする線対称 この〃ーあを元の十の複素共役と呼びます。複素 ふくそきようやく 朝十ル ) 朝一 = が + わ 2 ばよいことがわかります。 の 2 乗〃 2 十わ 2 を求めるには、〃十に〃ーをかけれ からの距離は 42 十わ 2 です。複素数 4 十ルから距離 表されます。複素数は〃十と表されますが、図の原点 図 2 - 1 複素平面とオイラーの公式