「まさか : : : 」 しっしょに空を見上げていたキュートが、苦々しげにつぶやいた。 まさか : その言葉が意味することを、理刀はすぐさま理解した。今朝方、デリへル ・シスターズの過激な訪問を受けたばかりなのだから。 空飛ぶバス群が近づいてくる。あれだけ大きな物体を空中に浮遊させ、しかも任意の方 向へ動かすとなると、いったいどれだけの能力値が必要なのだろう。想像もっかない。 「きゅうう、も、つつ、やつばり」 キュートが、舌打ち混じりの言葉を吐き出し、顔をしかめる 窓から顔や上体を出して地上を見下ろしているのは、予想通りというか、美しい女性た ちばかりだった。 「あ、あそこにキュートがいたわ。ほんとにスキュース姉様のフリしてんのね」 あふ ハスの窓から、キャーキャ 1 とピンク色の笑い声が溢れ出す。お姉様方には、キュート 襲 強の幻術がまるで効かないようだ。 浮遊するバスが列をつくり、街路樹の枝先をかすめながら、まるで銀河鉄道のように地 まひ ス 上へ降りてきた。レゾン学院前の大通りは、完全な交通麻痺状態である。 シ 章そんな迷惑などおかまいなしに、バスの窓からキュ 1 トの姉たちが手を振っている。写 四 真を撮っている者や、小さな日本国旗を振っている者も。 「キュートオ、がんばってるう ? 」