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検索対象: イズミ幻戦記 4 烙都紅蓮編
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1. イズミ幻戦記 4 烙都紅蓮編

細い声で、ひっそりと静が答える。 たくま ひっそりとーー・ではあるのだが、外見的には身長二メートル強、筋骨逞しい巨漢である香ケ 沢静の『ひっそり』には異様な印象を与えずにいないものがある。 クライシス 背丈も肩幅も如月をうわまわる、立派な体驅をもっ香ケ沢静は、〈崩壊〉以来、優秀な せいけ ) エンジニア 技術屋として生計をたてている人物だ。 れつきとした男性である。 口を開きさえしなければ無愛想な大男ですむのだ。顔のほとんどを覆う作業用ゴーグルがな こわもてはくしゃ おさら強面に拍車をかけるのだが、実際にはただひたすらシャイな性格のために人前でゴーグ ルをはずせないだけなのだという。そんな内面のギャップも彼の個性だと如月は認めていた。 さと そのきめこまかい観察力と、人の心に敏いデリケートさは信用に足りるものだ。叱られるま 編 でもなく鈍感な冷血漢を自任する如月としては、正直に、友人の資質を賞賛したいと思う。 烙思うのだが。 「はいはいはい、ちょっとお邪魔するわよー うんぬん リビングスペース上方からいきなり、デリケート云々とは縁遠い声が降ってきた。簡易梯子 にとりつけたスライドバー をんで身軽に、ポッドの内側に滑りおりてくる。 ズ ラガー イ 「お酒ある ? 」 栗色のつややかな髪をばっさり払い、埃まみれの戦闘服の胸をはってな・せか堂々と尋ねる来 ばし′」 クル

2. イズミ幻戦記 4 烙都紅蓮編

ゅうきゅうごう システム ーヒーロ そ 0 物理的な仕組、ま 0 たく解されな」〈有機融合〉な奇怪な現象 = = 0 、 = 0 現 実の三次元世界に出現する自称スー 〈イズミ〉と、一匹狼の戦争屋を名乗る co ナ キサラギシロウ ・サイボーグ如月士郎との縁は、前年七月〈横浜〉で実施された基地攻略戦に端を発す る。 やっかいごと もともと図抜けたお人好しとして厄介事を拾ってくるのは得意な男だ。だがこれまでなら、 じトでっと、つ 連れるだけ連れてきておいてあとの世話は師にまかせきりというのが如月の常套手段だった。 〈崩壊〉以後の七年間、どこの所属物にもならずーーそれは長い過去への反動にちがいないの リスキー だがーー頑なに自由でいつづけた男が、たのまれもせずにすすんで危険な超能力少年のお目付 役をかってでている。今もって、師の目には不思議なことだとしか映らない。適当につきあっ 編 ておいてヤ・ハくなったら放りだせ、と、親友の立場からは、早いうちに口をぎわめて助言して 烙おくべきだった。ひとりの親友に徹するならば。 たづな しかし如月という手綱をはずしてイズミを野放しにしてやることは、できないのだ。すで 記 ( イズミがーー ) ズ イ なるべくなら、と。 ( 派手な動きをおこして〈ジュリア〉の目をひきつけるなら都合はいい ) よこはま フ

3. イズミ幻戦記 4 烙都紅蓮編

若木未生 イズミ幻戦記 4 烙都紅蓮編 集英社スーバーファンタジー文庫

4. イズミ幻戦記 4 烙都紅蓮編

I S B N 4 ー 0 8 ー 6 1 5 2 3 8 ー 9 C 0 1 9 5 \ 4 5 8 E 9 7 8 4 0 8 6 1 5 2 5 8 1 1 9 2 0 1 9 5 0 0 4 5 8 0 定価 460 円 体 438 円 ( 再活用図書 ) リサイクル資料 スーバーファンタジー文庫 行く手には最強のアーマノイドくカスミ〉の影もあり・・・ 十字の岐世子」とは、すべての鍵を握るあのく響子〉なのか。 合によ ? て出現するイズミが向かう先は京都。関西を牛耳る「白 人々の希望の星となっていった。拓己と省吾のふたりの有機融 は、行方不明のく響子〉を求めて旅を続ける過程で、しだいに に対抗しうる唯一 2 な在、超美形のスーパーヒーロー・イズミ ノイドによる人類への迫害が続く、統一世界暦 307 年。ジュリア マザーコンピュータくジュリア〉の暴走により、人形やアーマ 除籍済

5. イズミ幻戦記 4 烙都紅蓮編

著者紹介 若木未生 ( わかぎみぉ ) 1968 年 12 月 2 日、埼玉県生まれ、都内在住。 射手座、 A 型。早稲田大学文学部中退。 1989 年、『 AGE 』で、第 13 回コバルト・ノベル大 賞佳作入選。仕事の能率アップを狙ってパ ソコンを新調。インターネットも O KO だ がしかし肝心のセッティングをする暇が作 れず、いつまでたっても新品のバリュース ターがダンポール箱から出てこない今日こ の頃。誰かー、かわりにパソコンラック組 んで一 ! ( バカ・・・・・・ ) スーパーファンタジー 文庫に『イズミ幻戦記 1 ~ 3 』、『イズミ幻戦 記外伝砂上の旋律』、コバルト文庫にくハ イスクール・オーラバスター〉シリーズと して『天使はうまく踊れない』セイレーン の聖母』『十字架の少女』『迷える羊に愛の手 を』炎獄のディアーナ ( 前編 ) ( 後編 ) 』『天 冥の剣 1 ~ 4 星を堕すもの ( 前編 ) ( 後編 ) 』 『アーケイディアふくグラスハート〉シリー ズとして『グラスハート』『薔薇とダイナマ イト』『ムーン・シャイン』、他に『エクサー ル騎士団 1 ~ 3 』『エクサール騎士団翠玉 の王』 rXAZSA ver. 1 ~ 2 』などが、また 単行本に「天使 / 来撃』がある。

6. イズミ幻戦記 4 烙都紅蓮編

主要登場人物 イズミ・・・・・・拓己と省吾の有機融合によっ て誕生する痛快無比のスーノヾーヒー 渡辺拓己・・・・・・無邪気で元気な 17 歳の少年。 省吾と共に、子の行方を捜索中。 叶省吾 ・・・ 7 年来、拓己の相棒を務める。 理知的でロが悪く、拓己のイジメ役。 如月士郎・・・・ゲリラの庸兵で生計をたて る、すこ腕の一匹狼サイホーグ。 師英介・・・・・・ゲリラ組織・師ファミリーの 隊長。如月とは旧知の仲でもある。 来見川翠・・・栗色の髪を持つ美女。自ら 情報屋と名乗るが、正体は不明。 風間祥・・・・ S ( サイボーグ ) ナンバー 419 田 89 。 新生命体。合成人間 ( アーマノイド ) 。 ・・・ジュリアが創りだした最強の カスミ ジュリアの新兵器 ( ? ) の監査役。

7. イズミ幻戦記 4 烙都紅蓮編

不運というものが、世の法則に沿って、必ず重なるとすれば。 コンディション その時点での、イズミの状態は最悪だった。 カガサワシズカ せめて香ケ沢静が彼らに同行していたなら、いくら機嫌がすぐれなかったとしても少年が常 ふしん め日頃とくらべものにならず無ロであることを、少しは不審に感じたはずである。だが静はなり きゅ、つま」よ くらま イワマグミ 紅ゆきで急遽、臨時の修理工として〈鞍馬〉山中に置きざりにされており、『岩間組』がとった ほろ 作戦行動は夜闇に紛れたトラックでの移動であったため、幌のかかった真っ暗な荷台のなかで わざわざイズミの顔色に気をつかう者はなかった。 記 戦 ただし組員がその存在に、冷たく無関心であったわけではない。 うドレオ・ 2 レト 6 、つ ズ なにしろ、氏素性経歴正体その他は知れないまでもあのイズミ、である。名声だけは、不明 うわさばなし イ 確な噂話のレベルではあっても広く伝わっている。 いわく、とにかく最強、とにかく無敵、とにかく何がなんだかわからぬが凄い戦力なのだと 「手数料、割り増し決定」 契約外労働よと文句をこ・ほしつつ翠がそれを追った。 しかし、風間祥が機に際して、決して凡庸な男でないことを如月は知っている。致命的な遅 れを彼らがすでにとってしまっているのは、明らかたった。 ぼんよう

8. イズミ幻戦記 4 烙都紅蓮編

に、ほのめかす。ならば撃たねばならなかった。殺さぬまでも足を止めねばならなかったの ど。イズミの為ならばー 明白すぎる帰結だ。にもかかわらず ( なぜ撃てなかった ためら ありえない躊躇いが生じた。 みすみす自由な機会を、敵に与えたことになる・ : 「・ : ・ : イズミはどこにいる ? ・ きふね 「〈貴船〉からさっき、兵隊つれて鬼退治に出たわよー すかさず、翠が横から回答を返す。もともと、それを『お供』に伝えるためにここへ来たと もいえる。 「追っかける ? クルマは上にあるけど」 ちえん だが未だに如月の反応速度は倍以上に遅延し、甚大なレベルで狂わされているかに見えた。 けんのん 痺れをきらして翠がぐいと目の前の男の顎を指でみ、剣呑に、脅しをかける声音でつめよっ こ 0 「おら、車なら上だつつってんだよリどーすんの ? 」 「 : : : 恩に着る」 のど かすれた喉で如月が呟いた。次いで、はじかれる足取りで階段の上へと駆けだす。 しび じんだい

9. イズミ幻戦記 4 烙都紅蓮編

「ちょっとっリ」 階段を駆けおりた来見川翠が、如月の耳元で怒鳴った。それさえもピアノが鳴る酒場の賑わ いのなかでは、衆目をひくものにはならなかった。 「あんなお客と密会のお約束だとは聞いてないわよ、どういうこと卩」 は きらりと、翠がこれまでには遭遇したことのない種類の光が、如月の冥い双眼をかすめ、剥 がれ落ちるように消え去った。その一瞬の奇妙な状態は、虚脱、と呼ぶにふさわしかったかも めしれない。 不可解なーーマイナスの力が、正常な意志の働きを拒んだ、空白の時間だった。 「しまった : ・ 呟きとともに如月の精神が中心軸をとりもどす。 タイムラグ 幻とりかえしのつかない悔恨を、ひどい時差をおいて不意に呑みこんだ。そんな認識があっ イ ( どうして見逃した ? D 風間祥が〈京都〉にいる。のみならず、まるで『キョコ』側の内幕にかかわりをもつよう 一 = ロ かいこん きょだっ くら

10. イズミ幻戦記 4 烙都紅蓮編

146 ( 二度と、過去には戻れない ) かたく いくたびの誘いにも彼が頑なに、ゆるがぬ拒絶をくりかえすのなら、それでもなお風間の対 れいこく 峙する世界に如月士郎が在りつづけることが今は、何よりも冷酷な現実なのだ。 ほんろう 皮肉な巡りあわせだと片付けて終われるほどに、彼らは運命に翻弄されているわけではなか せいさん った。根の部分より断絶されたふたつの道筋は、このまま置けばさらに凄惨な未来を招くであ ろうとわかっていた。 もはや、わかっているのだ。 みずか なぜ、知っていて敢えて、自ら彼がそれを、選びとらねばならぬのかと・ : 「如月」 我が身を無力なものと思いさだめながら、再び、呼びかけずにいられない。 空虚な挑戦を。 「俺からも忠告する : 。いい機会だ。今は、動くな。イズミを試せ」 ぬぐいされぬ憂いをおびた風間の声を、是とも否とも語らず如月は黙して聴いた。 「試してみると、 しい。イズミの力を。本当におまえの居場所が、そこにあるのかを 見据える視線は動かさずに一歩、背後に退き、そして風間祥は宿敵に背を向けると、その目 すみ すいきやく 前より速やかに立ち去った。すべてを見守ったユキが、酔客の間をすりぬけ、影のごとき身の こなしで彼のあとに従った。 たい