ショウゴ - みる会図書館


検索対象: イズミ幻戦記 4 烙都紅蓮編
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1. イズミ幻戦記 4 烙都紅蓮編

210 ざしを投げつける。 視界をわずかに補うだけのグラススコープをわざと乱雑にもぎとり、自らの肉眼で壁の遠さ を確認した。 ( ーーーあるはずがない ) 分離を拒む意図など、抱くわけはない。あったとしたら、それはイズミのものだ。 もう、目 ~ に : ・・〈京都〉が。 届いてしまうのに。 ( 響子 ) その名はあまりに儚く、さしのべた指はどうしても触れない。 スコープのバンドを握りしめた腕をおろしたまま、つかみとれぬ壁との距離をずっと見つめ つづけた。 : それは、どういうことなのか ? 来てはならなかったのか ? ショウゴ おかん 瘧のような悪寒に、一瞬、省吾は身を震わせた。なにか、とりかえしのつかぬものを失うこ 、迫的な思考に見舞われてやま とになるのではないか。今度こそ。どうしても。わけもない弓、 かびん なくなる。過敏にざわっく心を癒す救いの手は、今はなかった。 ここには、まだ。 おこり おぎな はかな

2. イズミ幻戦記 4 烙都紅蓮編

194 「いまさら何を蒸しかえしてるんだ、おまえは ? 最初に僕が言ってやったとおりだ、おまえ が初めつからバカなんだ、まじめに僕の話を聞いてりやいいんだ、いいなよくわかったな ? ・ : それよりもいいかげん、僕は疲れすぎだ。眠い」 眠らなければもう、体機能の回復をはかれない。 イズミで在ること自体が、とうに限界をこえていた。 傷を癒すぶんの力を使いきったのちに〈分離〉がおこなわれるだろう。 ショウゴ らにーー拓己にも省吾にもだーー今度こそ、抵抗の余地はない。 「如月」 消えかかる細い呟きで、ぼつりとイズミが呼びかけた。 「どうした ? 」 「・ : : ・僕は、やつばり不自然だと、わかった。分離が、ないと、疲れる : : : そのままじゃ、負 担が強すぎる、生きていかれやしない : 「なぜなんだろうな ? ・ : それは、僕がスー ーヒーローだからじゃないのか。僕が、究極 イデア 的において実存ではなく、結局はただおまえたちの理念になるからだ : : : 」 「違う」 はざま おそらく無自覚な、夢とうつつの狭間で漂っているイズミの独白めいた一一 = ロ葉に、如月はすか タクミ いくらなんでも、彼

3. イズミ幻戦記 4 烙都紅蓮編

斜めに傾けた体勢で、溜めてゆく力の舵をとるように右拳に神経を集中し。 不敵に。 ークラーッシュ 「豪華大爆発リスペシャルエクセレント・。フルーナルシス・ビューティーサンダー・ア、タ ああ つ、ク、どかあああんんリ」 ごう、と熱に似た圧迫感が、少年の細い腕から一気に、如月の身をかすめ、撃ち放たれてい せつな ったのはコンマ秒以下の刹那。 だいごうおん 稲妻が疾り、ひきつづいて破壊の大轟音が中継基地のかたちを四角く呑みこんだ。 ショウゴ 「なんだかこのごろ、拓己ちゃんも省吾ちゃんも見かけないわねえ : : : 」 キャンピング・ロ ふもと 山脈の麓、地中に埋めるかたちで据えた居住用ポッド、正しくは変形式大型荒地駆動車の内 リビング つぶや カガサワシズカ 部、ひとが立って歩けるほどには広く造ってある生活スペースで香ケ沢静がひかえめに呟い たのは、〈鈴鹿〉基地攻撃作戦終了後の、夜も更けてのことである。 「・ : ・ : そうか ? 」 静の特製カモマイルティーを口許に運ぶ途中で、数瞬の空白をはさみ、はたと胸をつかれて 如月が問い返した。自分の考え事に気をとられていたのだ。 「そうよ。やつばり、士郎ちゃんは、そんなふうには思わなかったのね」 タクミ

4. イズミ幻戦記 4 烙都紅蓮編

212 ツリそれよ ツリお願い また次もマジにもっと面白いです。早く早く読んでえええ りテメ工がさっさと書きやがれ若木 ぜぜ、ぜえぜえ。いてもたってもいられんので そくざ ひきつづき 5 巻も即座に行きます。 4 巻は、大復活の、「だーいふ」くらいかな。 のこりの「ーっかーっリーを出すまでは、気がすまんのです。 しじよう そのへんまでしばし、おっきあいいただけましたら、至上の喜びにございます。 ええと今、私の膝の上で拓己とゆーでかい猫 ( 赤トラ。四歳。ま ) がころがって仕事の邪魔 ひまんたい をしています。重いよー。体重が八キロあるんだよ ! ( しかし肥満体ではない。なんっーか、 体格がいいの。変な猫 ) ショウゴ うちの猫に『拓己』と『省吾』っつー名前をつけたのは私ではなくて、奴らを拾って連れて きた友人 ( さしずめ如月 ) なんですが、名は体をあらわすってのは本当です。今回の原稿の修 羅椦中、世話ができないんで一一匹を動物病院に預けておいたら、獣医の先生が。 ぼ、つこ、つ、えん 「省吾 ( 黒シマ。四歳。ま ) ちゃんがまた持病の膀胱炎をおこしていまして、投薬してるんで すよ : : : 拓己ちゃんはいつもとても元気なんですけど」 「げつ。それはあのう、やはりストレスなんかも関係あるんでしようか ? 」 「ストレスがかかると免疫力が低下しますね。心当たりはありますか」 めんえきりよく タクミ ッ とうやく しゅ

5. イズミ幻戦記 4 烙都紅蓮編

「うるさいなおまえはリ僕には邪魔だから邪魔なんだ、大事なのは響子だけで充分だ」 「そうか」 きまま りちぎ 道徳者であるとはとてもいえない勝手気儘な一言動のわりに、イズミには妙なところで律儀 せっそう ストイック な、いやに節操にこだわるふしがある。その潔癖さも若さの産物なのだろうと推測しつつ如月 ーヒーロー は、隣にいる『超能力者』の姿をあらためて視界の中心においた。 あまいろ 砂に洗われたような濃い亜麻色の髪を、冷たく吹きぬけていく北風にゆだねてなびかせ、組 しょこう みあわせた両腕はほどかずに、薄い曙光の先を睨む。 ひたすらにそうして、イズミは動かない。 「 : : : おまえが鈍感だからあえて教えてやるが、響子が僕にとって何なのかは僕にもわからな 。もつのっすつごっく大事なんだがどう大事かはわからない。僕が思う『太陽』は、やはり タクミ ショウゴ うつわ 僕自身だからだ。だが僕が何なのか、何の因果で拓己やら省吾やらの器に僕が縛られるのか 半ばまで語った声をイズミが止めた。 如月の双眼がまっすぐ彼ひとりに向いていたのに気づき厭な顔を作ると、そっちを見ろとい うように東側へ顎を振った。 かたまり 強さを増した、白色の陽光が、曇りがちな空にもひろがりだしている。射しこむ光の塊を正 まぶ 面からそのするどい美貌の上にうけとめ、眩しげに目を細めてイズミがぼつりと告げた。 なか