そんな - みる会図書館


検索対象: クインテット! 1
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1. クインテット! 1

232 たいく 敬介の制止も聞かす、好奇心を刺激された操が小柄な体軅を生かしてスイスイ人 ) 」みを掻き 分けていく。仕方なしに敬介たちも後を追う。 「ちょっと操ちゃん。勝手に行動しちやダメだってば。迷子にーー」 や、そんなことより、わちゃちゃ、ホラこれー 「ひだりはん。い ひだりの言葉を遮り、先にフェンスの前に辿り着いた操が興奮の面持ちでコートの方を指差 した。 ついつい釣られて一同がコートの方に目を向けると、 「な、なにこれ ? 」 「 : : : 格闘技か何かの集まり、なのですか ? 目の前の光景にひだりと遊恋子は息を呑んだ。 ひゅ 見れば広いコートの中央で、二人の人間が戦っていた。比喩表現などではなく、本当に一一人 けんか の男がただ単純に取っ組み合いの喧嘩をしていたのである。 対峙する一一人の風貌もまた、実に対照的であった。 かたやいかにもギャングつほいプカプカな服装をした高校生くらいの少年、も、つ一方はどう 見ても仕事帰りにしか見えないスーツ姿の男性だった。 そんなミスマッチングな二人が、深夜のバスケットコートのど真ん中で、両者一歩も譲らず 本気で相手に殴りかかっているのである。

2. クインテット! 1

に引き続きこれまたずいぶん時代がかった名前だが、こちらはれつきとした男子である。 「やだー、柳くん。そんなんじゃあないって。ウチの両親が海外赴任する間居候してるだけだ ってば」 言いつつまんざらでもない様子のひだり。 ちなみに一一人が現在同居中なのは、既にクラス内では公然の秘密になっている。というのも、 おおざっぱ この学校の生徒は小中高とほとんどそのまま持ち上がりなため、大雑把に言えば大概の連中が 幼なじみみたいなもので、ちょっとした変化でもすぐにそれとなく知れ渡ってしまうのである。 現にクラスの大半の人間が幼少の頃、台風みたく暴れまわるガキ大将とその後ろにちょこちょ はなた こ引っ付いている洟垂れ娘の姿を目撃した経験を持っている。 この場合それが悪い方に作用したわけだ。 といって、実は主水を含めクラス中の誰もが今さらこの二人の関係に進展が起こるなどとは テ 考えておらず、まかり間違って進展があったとして驚く者もなかったのだが。 「オ、オイ ! お前ら、話を拡大解釈するな ! あらぬ誤解を招くー っゅし し しかし敬介の方はそんなこととは露知らず、慌てて自分に着せられた疑惑を払拭しようと躍 起になった。 話 そして、 「 : : : ど、同棲 ? 」 ふっしよく

3. クインテット! 1

「うん、はて ? ひだりは何を憤っているのだろう ? 仮にわたしがアニさんに恋愛感情を抱 いたとして、君に迷惑がかかるとも思えないんだけれどね」 どうもこの娘は微妙に常人の感覚とは違うそれで会話を進める癖があるようだ、とひだりは 思った。昨日の敬介との会話もそうだったが、どこかで会話の論点が変な方向に逸れていく。 言動から相手の心境を読み取るというのが苦手なのか、相手の言葉をそのまま呑み込んだ上で そのまま論理を展開していくので、正論なのに違和感を覚えてしまう。 要するに小唄は本音と建前を区別するのが下手くそなのだ。 今ひだりは倫理道徳の方面から兄妹の恋愛について論旨を展開しているが、その実婉曲的に、 「そ、そんなことじゃあなくて ! 大体どうして小唄、そんな、昨日敬ちゃんと知り合ったば つかりじゃん。いきなり、恋愛感情とかそ、ついうの、おかしくない ? 」 とまあ、「昨日会ったばかりでいきなり敬介に告白するとはどういうことだ」というのが訊 冖きたかったのである。 「ふむふむ、なるほど。とどのつまりひだりはアレだな ? わたしにヤキモチを焼いているの 凵だね ? 」 「ふええっ ! なっ、ち、違うよおっ ! 」 話 第そのくせ、勘は鋭かった。ひだりは図星を指され激しく動揺した。 「別に隠すことでもないと思うのだが : : : まあいい。そういえば話していなかったね」 いきどお えんきよく

4. クインテット! 1

中学校の校舎裏、顔を真っ赤にして告白する男子に向かって、小唄はにべもなく応えた。だ けではなかった。 「大体なんだい、その告白の仕方は ! つくつくつくつく、噛みまくりじゃあないか。君の先 祖はキツッキか ? これくらい男の子ならもっと堂々と一一一口うがいいー 人間何が恥ずかしいって、大事な場面で大事な台詞を噛んでしまったときほど恥ずかしいこ とはない。ましてそれを好きな女の子に指摘された日には、一生モノのトラウマを抱える羽目 になる この男子も例外ではなく、そこそこサワャカな顔を見る間にクシャクシャにし、ずっしりと した負のオ 1 ラを背負い込んで膝から崩れ落ちた。 いちべっ が、小唄はそんな男子に冷たい一瞥をくれるや、不機嫌そ、つに靴音を立ててその場を後にし みぞう 高校入試を間近に控えたその時期、小唄の通う中学校は未曾有の告白ラッシュの到来を迎え ていたのだった。男子も女子も先輩も後輩も、想いを寄せる相手と離れ離れになる前に胸に秘 ロめた想いを伝えておこうと浮き足立っていた。 小唄もまたご多分にもれす、そんな強制イベントに「想いを打ち明けられるヒロイン役」と 話 して参加させられているという次第だった。実際、今週になってこれで五人目だった。 が、このイベントにおける小唄の受け答えは、おおむね今ほどの男子とのやり取りと同じ内 、」 0

5. クインテット! 1

と小唄はかぶりを振った。 実際、それが事実だとすれば教育機関としては致命的な怠慢である。否、学校を挙げて不正 行為を奨励しているようなものである。とても信じられるような話ではない。 「いや、まあ、そこには色々事情があってね : : : 」 と、いまだ半信半疑の娘たちに、ひだりは説明を始めた。 話は今から五年前にさかのほる 当時も今と同じく、偏差値そこそこ、部活動に力を入れているわけでもなく、取り立てて伝 さくらがわ 統もなかった都立桜川高校は、そのためお世辞にも芳しいとは言えない入学率にあった。私 立人気、少子化の影響もあいまって入学希望者は年々減少傾向にあり、一時は近隣の学校との 統廃合が検討されるほどの状態だった。 やしろ そんなとき赴任してきたのが、現校長の八代という人物だった。 こころざ プ この八代校長、若い頃芸術家を志して世界中を渡り歩いたという逸話の持ち主で、その後 夢半ばにして教育者に転向してからも、やつばり様々な問題を起こして全国の高校を渡り歩い もん 雨たという逸話の持ち主であった。なぜそんな人が校長にまで昇進できたかというと、親戚に文 梅ぶかがくしよう むすめむこ 部科学省に勤めるエリート官僚がいたためだとか、実は都教育委員会の教育長の娘婿だとか、 話 第まあ、とにかく色々と噂の絶えない人物だった。 で、この校長、性格の方も年中フェスティバルな感じの型破りな人で、赴任早々この学校の かんば

6. クインテット! 1

と、小唄は繰り返した。 「楽さん。はい、あ 5 ん 「・・ : : あ 5 ん」 そしてそんな中、余韻さんと楽太郎は敬介たちそっちのけで、すっかり一一人の新婚生活を楽 しんでいるのだった。 「はあ : : : 」 翌朝、椿家のトイレに腰を下ろしてひだりはタメ息をついた。 「展開急すぎてついていけないよお , ついつい愚痴をこばしてしまう。 ンヤー、ヾ テ トイレを出て洗面所に向かうと、 「おはよう、涼原さん」 早速小唄と顔を合わせた。 「あ、と。お、おはよう」 話 第ひだりはちょっぴりおどおどしながら挨拶を返す。 「あ、ていうか、ひだりでいいよ、同い年なんだし。あたしも名前で呼んでい

7. クインテット! 1

ったのは、ほんの一週間前のことだった。 # 2 「ソロ」 「じゃあ、ひだり。お父さんたち行ってくるから」 けいすけ らくたろ・つ 「敬介くんや楽太郎さんに迷惑かけちゃあだめよ」 「わかってるよ」 すずはら 両親を玄関先で見送りながら、涼原ひだりは頷いた。 「お父さんたち行ってくるから、行っちゃうから ! 」 「わかったってば」 せつば 切羽詰まった表情でもう一度繰り返す父親にひだりはも、つ一度頷いた。 「心配いらないよお、半年くらい。ちゃんとやっていけるって。お父さんたちこそ体に気をつ けてね」 そんなお父さんの心配を取り除くように、ひだりは両サイドでアップにしたおさげをつまん でニッコリ笑ってみせた。 「ようし、娘にそこまで言われたらアレだ。お父さん、もう心配しない。向こうで頑張ってバ リ仕事してくるぞ ! 」 うなず

8. クインテット! 1

248 ゆかい 「ま、待て、ダメだ。どうやらあなた自身はかなり愉央な人間らしいが、あなたにこのまま語 られ続けるのは非常に不愉快だ」 慌てて小唄は制止した。 「どこまで話したかな ? そうだ、俺が男女差別する理由だったな。何故ならば」 しかし藤村は強引に先を続けよ、つとする 「 : : : ちっ ! 」 いい加減小唄もカチンと来たらしい。鋭く舌打ちすると一足で藤村の懐に飛び込んだ。凄ま じい踏み込みの速さである。 そのまま流れるような動作で胴タックルをしかけようとした瞬間、 「何故ならば俺はゲイだからだっ ! 」 藤村の魂の叫びが、会場中に鳴り響いた し、 瞬間、小唄はその場でピタリと動きを止めた。 こお ギャラリ 1 もみな凍りついた。 ( な、何故この場でそんなことをカミングアウトするつ ? ) 誰もがそう田 5 った。 「わかるか、この辛さが ! いつだってそうだ。俺が好きになる相手にはいつだって女の影が

9. クインテット! 1

〃 8 「オーケイ、とりあえずこの娘がアイドルだってのはわかった。変身ヒロインだってのもな」 たいめん 日曜日の朝、敬介はダイニングに腰かけ対面の父親に向かって言った。 「 : : : で ? それが何でウチにいる ? それから、視線を自分の真横に泳がせる 「ん 1 、あれ ? 見えない : : 目が見えにやい つぶや ねぼまなこ 視線の先には、そんな呟きを繰り返しながら、寝惚け眼でポロポロおかずをこばし続けてい じんない る陣内ツバメの姿があった。彼女の目の前にある塩鮭はどんどん鮭フレークへと変貌を遂げて いる 「だから何べんも言ってるだろ ! 彼女が悪の秘密結社に改造されてるところを助けたんだっ てば ! 」 らくたろう と楽太郎は言った。 「楽太郎さん、それはもうわかったから」 せりふ 「いい加減他の台詞が聞きたいものだな、パヾ 第 1 話私鉄沿線プルース 0 けい亠 9 け えんせん 0 ノさん」

10. クインテット! 1

「そんな薄ら寒い台詞死んでも口にするか、ポケ」 台無しである。敬介は咳払いしてから改めて、 「あー、まあ、その、なんだ : : : よろしく」 なんとも締まりの悪い台詞で新しい家族を歓迎した。 「・・ : : ありがとう、アニさん。これからよろしく」 新しい妹さんがニッコリと笑って言った。 新しい母さんはそっと目元を拭っている。 「それじゃ、タご飯にしようよお。 : : : すっかり冷めちゃってアレだけど」 そしてその場を取り成すようにひだりが口を開き、 「いただきマッスル ! 」 「いただきます」 テ ようやく椿家の面々は料理に手をつけた。 「そうそう、アニさん。さっきの話だが」 と、音を立てずにスープを口に運びながら小唄が敬介に話しかけた。 「ん ? 何だ ? 小唄さん」 話 第皿の中のカボチャを取り除こうとして、ひだりと「こら、好き嫌いしちゃあダメだってば」 「うるせえ、お前俺がカボチャ嫌いなのわかってて入れてるだろ」「敬ちゃんの食べず嫌いが直