言葉 - みる会図書館


検索対象: クインテット! 1
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1. クインテット! 1

だったのだ。 そしてまた、一方の小唄も小唄で、母子家庭だったせいか物事を自分で解決することが当た り前になっていて、言ってみれば頼り馴れしておらす、それ故、両者の間にはボタンを一つず っ掛け違えたような微妙なちぐはぐ感があった。 いそうろう もっともそれは、幸か不幸か、同時期にやってきた他の居候娘たちが間に入っていたおかげ で、表面化することなく済んでいたのだが、あるいは彼女たちがやってこなければ、敬介と小 唄の関係はもう少し違ったものになっていたかもしれない 「 : : : なんとか兄妹、やっていけそうだな」 不意に敬介が、視線を空に向けながら「兄妹ーという言葉をある種の役割のように使って言 一方の小唄もその言葉の意味を何となく理解したらしく、 プ ・ : うん、そ、つだね」 「うん。 と同じ空を見上げながら、噛みしめるように頷いた。 線 「お待たせー」 その後、遅れて他の娘たちが合流してきて、敬介たちは連れ立って家路に就いたのだった。 話 第 「我が校にはたった一つ、不名誉な学校行事が存在します。 った。 っ

2. クインテット! 1

346 「 : : : 俺が、んな命令素直に聞くと思うか ? 」 敬介が言葉の中に怒気を込めて訊ねる。 「オイオイ、滅多なこと考えるなよ。大事な幼なじみがどうなってもいいのか ? 」 「やってみろ。撃った瞬間、俺にぶちのめされる覚悟があるならな」 敬介はポキポキと指を鳴らし、余裕たつぶりに言った。 「はん、ハッタリだな」 が、敬介の台詞を聞いた主水は怯んだ様子もなく薄く笑った。 「強がったってダメだぜ、敬介。お前にはできねえよ」 「ああ ? 眠たいこと言ってんじゃあねえぞ、コラ。テメ工ぶちのめすなんざ、一秒もかから ねえぜ」 「なるほど確かに、俺をぶちのめすのは簡単だろう。けど、いくらお前でもこの距離じゃあ、 銃弾よりも早く俺を殴りつけることはできない ・ : それに、ロじゃあなんだかんだ言っても、 、や、できない。、 お前はひだりちゃんを見殺しにしたりしない。しし カキの頃さんざんお前の子 分やらされてたんだ。ようく知ってるさ。劉備と違って、、お前は自分の身内を見捨てたりしな 絶対に、だ」 「ぐっ : 全てを見透かしたような主水の台詞に、敬介は思わす言葉に詰まった。 ひる

3. クインテット! 1

「ぎゃあ ! 」 身代わりにさせられた乗客が悲鳴を上げてその場に倒れ込む。 くや するとツバメはその乗客を見下ろして、くっと悔しそうに唇を噛んだ。 1 プル。ボクの体を改造したばかりか、罪のない一般市民にまで : 「おのれー、ドクタ 1 許さないぞ、この悪党めつ ! 」 「いやいやいやいやっ ! しれっと私に責任をなすりつけようとするな ! ナウは明らかに君 がスケ 1 プゴートに むだ 「ふん、そんな言葉で惑わそうとしても無駄だぜよ ! 悪の言葉に傾ける耳なんか、ボクには ないのだ ! 」 「ちょっ、ええええええっ ! そこは傾けなくちやダメだろう ! 」 「あーもう、ごちやごちゃうるさいにゃあ ! 悪者のくせに正論吐くな ! 」 ス 「うぐおおうつ ? 微妙に説得力のあることをー ル プ ープルは必死に抗議したが、ツバメは勢いで強引に押し切った。 線 鉄 一方、一一人が押し問答を続けている間に、他の乗客たちは巻き添えにされてはかなわんと、 私 車両の反対側まですっかり避難を終えていた。 話 それを意図していたわけではなかったのだろうが、結果的に乗客の安全と思う存分戦えるス ペースを確保したツバメは、途端に俊敏な動きを見せた。一足でパープルとの距離を詰めると、

4. クインテット! 1

否、むしろその方が自然と言えるはずだ。ではなぜ彼らが上位ランクに食い込めなかったのか それは」 と、藤村はもったいぶった調子で言葉を切り、一呼吸置いてから続ける。 「怪我だ。プロにとって試合に負けることよりも恐ろしいもの、それが怪我だ。長期的に戦い 続けることこそが至上目的の彼らにとって、その資本ともいうべき身体を故障するのは何より きひ も忌避するものだ」 その言葉に小唄はふむ、と納得した。確かにプロとなれば、このようなファイトマネーも出 のじあい し ( ( し力ないだろ、つ ない野試合で屋我をするわナこよ、、 「人間の身体というものは想像しているよりはるかに硬いものだ。よほど喧嘩馴れした者でも 裸拳で殴り合えばまず間違いなく拳を傷めてしまう」 「だろうね」 かくいう小唄が打撃技を用いない理由の一つもそれである。 「同様のことが俺にも言える。俺はここまで拳を使わなかった。実をっとな、主催者側から ロ この試合に勝ったら一一位に挑戦させてやると言われていたんだ。試合は再来週。そんな大事な 試合の前に怪我をしては敵わないと思って、ずっと拳を封印していた」 話 第 言われてみて、小唄はそういえば藤村が一度もパンチを放っていないことに気づいた。 「が、今からその拳を使わせてもらう。お前の実力に敬意を表して、と思ってくれてい

5. クインテット! 1

787 第 2 話学園ラウドロック 小唄はあいまいに頷いてから、 「それで、できれば総合格闘技のクラブがあったら紹介して欲しいんだ」 と一言った。 「うーん、ないな」 対する敬介はアッサリとかぶりを振る。 「そっかまあ、高校の部活ではあまり見かけないか。それじゃあアマレスとか・ : 「あー、いや、それもないー 敬介はもう一度首を横に振った。 「え ? じゃあ、この学校の格闘技の部活は、空手とかボクシングとか、立ち技系の部活だけ 「いや、えーとそういう意味じゃあなくて、あるにはあったんだけど : : : 」 と、そこで敬介はなぜだか歯切れ悪くなり、代わって主水が答えた。 「妹ちゃん。残念だけど、この学校に格闘技の部活はないんだよ」 その言葉に小唄はキョトンとなる。 「ないって : : : えっと、一つもないのかい ? 」 「ああ、格闘技系の部活は去年敬介と十兵衛が全部潰しちまったから」 つぶ

6. クインテット! 1

から家来になりたいと志願してくる相手には出会ったことがなかったからだ。 しつばい泣かせてほしいですよー 「 : : : だから、家来になったら、、 遊恋子は屋敷の外のことをほとんど何も知らなかった。なので彼女はこのとき、世界中の人 間はみんな、泣きたくなったらこの少年に抱きしめてもらって泣いているのだと思ったのだっ だから、この少年の家来になればいつばい泣ける。空つほの世界に閉じこもって泣く必要は なくなるのだ。 「だめだ、おれは泣きむしはきらいなんだ」 「 : : : でも、その泣きむしのこはあなたの家来なんじゃないのですか ? ー 少年は言葉に詰まった。 テ と、そのとき、 「じゅっ。ねえ、けいちゃん、はやくもどってきてよお : : : ぐし」 し 塀の向こうから少年を呼ぶ声が聞こえてきた。 「お、わすれてた」 話 第そうして少年は引き止める間もなく再び松の木を登り始めた。 「 : : : あっ ! 」 、」 0

7. クインテット! 1

273 第 3 話メロコア FC と、続いて遊恋子と操の泣き声も聞こえてきた。 「仕方ねえだろ、電車ないんだから。あと少しなんだから我慢しろよ その言葉で、小唄はようやく状況を理解した。 どうやら藤村との試合の後、今の今まで自分は気絶していたらしい。そして敬介たちは池袋 から徒歩で帰路に就いているようだった。 「アニさん、も、ついいよ。降ろしてくれ。ここからは自分で歩くから」 しりもち 「あ ? 馬鹿一言え。今のお前じゃ降ろした途端、尻餅ついちまうぞ」 そういえば、藤村のパンチをもらったせいですっかり脚がへなへなになっていることを思い 出した。 ・ : ごめんよ、アニさん」 「謝るなよ、妹さん」 と敬介は気楽に応える。 「けしかけた俺の方にも責任あるんだからさ」 「だけど : : : 」 「いいから喋るなって。ロの中だって切れてんだろ」 「うん」

8. クインテット! 1

ゃねえしな。ただ」 と、そこで敬介は真顔になった。 「黙って出歩くのは感心しないな。余韻さん、心配してたぞ」 : ごめんなさい 「う、ん。 小唄は素直に詫びた。 「帰ったらちゃんと自分のロで説明しろ。そんときや俺も一緒に叱られてやっから」 「ふふ、言ったね ? 今の言葉しかと覚えたよ」 「安心しろ。俺は顔色一つ変えないで説教を聞き流すエキスパートだぜ。何時間でも付き合っ てやるよ」 と、敬介と小唄は楽しそうに笑い合った。 一方、その光景を眺めていたひだり、遊恋子、操の三人はむっとしていた。 まだ知り合ってほんの一週間程度だのに、この二人はしつかり兄妹している。その事実が三 うらや 人にはちょっぴり羨ましかったのだろう。 そうして最後に、アニさんは小唄に向かってこ、 2 言った。 「おう、やるからには絶対工負けんなよ」 「 : : : うん しか

9. クインテット! 1

の女子の姿があった。 あいがさ ござるの人こと、相笠十兵衛だった。 「な、なんだ ? 」 その様子を目の当たりにして、何事かと驚く小唄をよそに、 「おー、やってるやってる」 「巻き添えになると危ないから、みんな退がってた方がいいよ」 「朝からご苦労なこって」 敬介、ひだり、主水の三人が慣れた様子で呟いた。 「え ? と、止めなくていいのかい ? なんだか険悪な雰囲気だけど」 という小唄の言葉通り、男子生徒たちは体中から物騒なオーラを醸し出しながら、十兵衛に まなざ 敵意の眼差しを向けている。 「まあ見てろって」 が、敬介は気楽に言った。 実際、十兵衛も落ち着いたもので、 学 ・ : 五人でござるか。今日は少なめでござるな」 「ひい、ふう、みい 話 第 と、自分を取り囲む男子を見回し平然と言った。 「皆様方、元の所属は つぶや かも

10. クインテット! 1

新参者の遊恋子もまた、その言葉に含まれる意味にとらわれ、顔を真っ赤にして瞳をグルグ ルさせた。 「ふむん、敬介氏はモテモテでござるな」 「まあーったくだぜ ! けつ、やってらんねえよ。あだち充のラブコメみたいなシチュエーシ ョン楽しみやがって ! 」 「むう 5 つ、ぐしゆっ 「 : : : 同棲、同棲、同棲」 「やめろ、お前ら ! どんどん事実から遠ざかってんだろが ! ひだり、また鼻水出てるー ココ、目工回しすぎだ、トンポみたいになってるぞー 初夏の日差しが差し込む教室の中に、敬介の甲高い声が響いた。 # 4 「トリオ」 「 : : : そうですか、敬介サマのお父サマがご再婚なさるですか」 「おう、まあな」 「そういうわけであたしと敬ちゃん、これから再婚祝いの準備しなくちゃだから。ね ? 敬ち ゃん」 けいすけ みつる