瞬間 - みる会図書館


検索対象: クインテット! 2
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1. クインテット! 2

がぜんしゅんびん った敬介だったが、寝技でその汚名を返上とばかりに俄然俊敏な動きを見せた。実際、宮崎は 先程の華麗な足技とは裏腹に、グラウンド技術には習熟していないらしく、ろくな抵抗もでき ないまま、たちまち敬介に腕ひしぎ十字固めを極められた。 「王手だ、ハゲ野郎腕折られたくなけりや大人しくしやがれ」 「そいつはどうかな、ハチマキ野郎できるもんならやってみやがれ」 敬介に腕を取られながら、宮崎が不敵に短く笑った。 敬介が宮崎の腕に力を込めよ、つとした瞬間、宮崎が自由な方の腕で首元のタオルを取り外し た。その下から現れたのは、ピンク色のチョーカーであった。 宮崎がそのチョ 1 カーに触れた直後、温室内がまばゆい光に包まれた。 「うおっ ? こ、この光はっ ? 」 思わず敬介が光に目を奪われた一瞬の隙を見逃さず、宮崎が敬介の関節技から抜け出す。 光が収まると、そこには。 「カハ 悪の秘密結社ポヘミアン・ラブソディ 1 の戦闘員が一人 ! ピンクパン サー参上だあ ! 」 毒々しいピンクのコスチュ 1 ムを身にまとった悪の改造人間の姿があった。 「うわあああ : : 。だ、だっせえ」

2. クインテット! 2

もらっていない、とい、つようなものではないか うっせき そういう不満が知らず知らずひだりの中に鬱積していて、ついに昨日爆発してしまったのだ った。 とはいえ、無論敬介のことだ。悪気がないのはわかっている わかっていたけれど、ほんの少し拗ねてみたくなったのだ。 お母さんポジションは損だな、と思いつつ、ひだりはそのまま目を閉じた。 「あたしが、ずずつ。けいちゃんの、お母さんになる : : : ぐしゆっ」 と、ひだりが鼻をすすりながらそう宣言した瞬間、敬介は一瞬キョトンとした。それからこ らえきれなくなったように吹き出した。 : ぐじぐじゅっ。ほんと 「わらわないでよ ! あたし、じゅっ。ほんとのほんきだからー にけいちゃんのお母さん、なるから ! 」 ひだりは必死で訴えた。 すると敬介はにやにや笑いながら、 「はなみずたらしてる母ちゃんなんかいるかよ」 と一言った。 けれど、その後敬介はちょっとだけ嬉しそうな顔をして、元気づけようとしてくれてありが

3. クインテット! 2

きる問題ではないのだ。 ( それでも : : : ) ひだりが声を発しようとした瞬間、 : ごめんなさい」 ・突如布団を被っていた四人娘たちがガバッと起き上がり、敬介に向かってペコリと謝った。 「なっ : 敬介、絶句。 途端四人は顔を上げ、慌てて弁解を始めた。 「 : : : あ、あの盗み聞きするつもりはなかったんですけれども」 「わ、わたしはひだりの隣で寝ていたものだから、ほら、彼女がトイレに起き出した音で目が 覚めてだね」 「ちゃちゃちゃ、ウチ、のどが渇いて目工覚めてもうて」 「んー、ボクはみんなが寝静まるのを待って敬介に夜這いかけようと機会を窺ってたら、なん かたまたま」 直後、 ごっごっごっごっごっごっー 敬介は見る間に顔を真っ赤にして部屋の壁に向かって頭を打ちつけ始めた。 かぶ

4. クインテット! 2

かぶ 一応メットを被っていたのが不幸中の幸いだったなと、亀裂が入り、すっかり使い物になら なくなったヘルメットを脱ぎながら、敬介はタメ息をついた。 それから地面に手をついて起き上がろうとした瞬間、 いイイつつ ! 」 右腕に激痛が走った。見れば二の腕の辺りが鬱血してへチマみたいに腫れ上がっている。受 け身を取ったときに、衝撃で折れてしまったらしい 「つつ : : : くくくうつー あまりの痛さに思わず泣き笑いを浮かべつつ周囲を見回すと、数メ 1 トル先でそこら中に破 片をまき散らして横倒しになっているマジェスティが見えた。前輪のホイールが完全にひしゃ げている。 「あー さて、どうしたものか。敬介がさすがに呆然としたとき、 「おや、敬介氏ではござらぬか」 突然背後から声をかけられた。 「・ : ・ : 身体痛くて振り返るのがおっくうだ。とりあえず正面に回ってこい 敬介はとりあえす背後の人物に向かってそう声をかけた。 「了解」 うつけっ

5. クインテット! 2

「謝んな、馬鹿。泣くな、馬鹿。最初つからそう一一一口え、馬鹿ー いいんだよ、迷惑かけたって いいんだよ ! 本当のこと言うのに誰かに遠慮する必要なんかねえ ! 胸張れ、洗濯板みたい なうっすい胸をよオ ! 」 「うんつ、うん : : : っ ! 毎日牛乳飲んでおっきくするさかい、助けて。旦那はん ! 」 「おうよ、任された ! 」 そうしてとうとう敬介がべンツの隣に並んだ。 敬介が操に向かって手を伸ばす。操も敬介に向かって手を伸ばした。 そのとき、操の背後から神森が窓の外に腕を突き出してきた。その手に握られているのは、 黒光りする拳銃。 「アホか」 神森が呟いた直後、 ズダアンツー 乾いた銃声が鳴り響いた その瞬間、操の目の前の光景がビデオのようにコマ送りになった。スローモーションではな く、パッパッと映像が切り替わるコマ送り。 まず最初にマジェスティの前輪がパアンと弾け飛ぶ映像が映った。次に車体がプワッとウィ

6. クインテット! 2

「とにかく、バイクはマニュアルと相場が決まってんだよ。オートマなわけねえだろ ! 」 「ふえ 5 、そうなんどすかあ。すんまへん、ウチバイクとかそういうの疎いもんやさかい。堪 忍しとくれやす」 「おう、素人はおとなしく座ってな」 「はあい 操はすっかり安心して頷いた。敬介がこれだけ自信満々に言うのだから、マジェスティには きっとクラッチがついているに違いない、と思った。 などとい、つやりとりをしている、っちに、 「待て、コラア ! 」 ばせい と、背後からドスの利いた罵声が聞こえてきた。操がチラリと声の方を振り返ると、ロータ こわもて リーに停車したべンツから強面の男が数人降りてくるのが見えた。 歌「わちゃちゃ ! 旦那はん、はよう ! 」 : 「わかってるよ ! せかすな ! 」 ぎようそう た 道 受け答えながら、敬介も必死の形相でセルモーターを回す。 極 すぐ後ろまでヤクザが迫ってきた瞬間、 話 第 ボウンツ ! と、景気のいい音を立てエンジンがかかった。 うと

7. クインテット! 2

ノ 98 だとすれば、これ以上相手をしてやる必要もない。一撃で終わらせる。 「喰らえっー りちぎ と、律儀に宣言してから、藤村は一足で間合いを詰め、宮崎の顔面へフックを放った。 瞬間、 ゴウンツツ ! 宮崎ではなく、藤村の方が後方に吹き飛ばされていた。 日本人離れした長身を誇る藤村の身体が優に一「三メートル持ち上がり、そのまま地面に叩 きつけられる。 : つつー 「ガフツ、がつ、あっ : 立ち上がることもできず「藤村はその場で胃液を吐き出しながらのたうち回った。腹部に、 すさ まるで大型トラックに追突されたような凄まじい衝撃が残っていた。 「どうだい、オッサン。まるで交通事故にでも遭ったみたいな気分だろ ? もんぜっ ゅうぜん と、悶絶する藤村の元へ宮崎が悠然と歩み寄り、藤村の顔を覗き込むようにして訊ねかけて きた。 といって、藤村に応える余裕があるはずもない。しばらくヒュウヒュウとかすれるような呼 吸を繰り返していたが、やがてカ尽きたようにぐったりとした。 「あっはははははははー のぞ

8. クインテット! 2

トの先で神森の鼻先をノックしつつ、 「おい、聞こえるか ? 一一度とウチの家族に手工出すんじゃあねえ、わかったか ? とメットの中からくぐもった声で少年は言った。 「あ : : : つい」 既に半分意識を失っていた神森がかすかに頷いたのを確認し、少年は最後にもう一度頭突き を喰らわせてから、運転席の部下に向かって神森の体を放り投げた。 「この馬鹿連れてとっとと失せろ ! 」 「ひいっ ! 」 とハンドルをつかんでいた部下が小さな悲鳴を上げながらコクコクと頷いた そうして少年は再ひべンツの周りを横切って操の方のドアを開け、ようやくへルメットを脱 、ヾ、」 0 歌「おう、今度こそ連れて帰るぞ」 挽 の ヘルメットの中から現れた無愛想な顔を見た瞬間、 ち た 道 「 : : : ちゃちゃちゃ、旦那はんつ」 極 操は少年の首に抱きついていた。 話 第 「いでつでででええ ! ちょ、首いでででつ ! おま、離れろ馬鹿あ ! 殺す気かあ ! 」

9. クインテット! 2

火を吐くような勢いで敬介はまくし立て、神森の手から強引に操を取り戻そうとした。 その瞬間、 ガンツー 突然背後から近づいてきた何者かが敬介を殴りつけた。 「がつ、あっ ! 」 こんとう すっかり話に熱中して無防備だった敬介は昏倒してその場に崩れ落ちる カシラ 「若頭 ! こんなガキになに手間取ってますねん」 と、敬介を殴りつけたいかにもチンピラ風の男が神森に尋ねた。 たんか 「いや、すまんすまん。あんまりこのニイチャンの啖呵が面白かったさかい、つい聞き惚れて しもた」 「公園の入り口に車回してあります ! はよう ! 」 敬介の頭上にせわしない足音が響いた。 「旦那はん、仕方ないねん。どうしようもあらへんねん。これが、ウチの運命なんどす。ヤク ザの家に生まれてきたんが運のつきやったんよ。短い間やったけど、ホンマお世話になりまし た。おおきに : : : 敬介はん。さいなら」 最後の最後に、操は敬介に向かってそ、つ言った。 椿家にやってきてから一貫して使い続けてきた「旦那はん」という呼び名を引っ込めて、

10. クインテット! 2

敬介の手の平の感触が伝わった瞬間、 「 : : : ぶえ」 と一言、操はこらえきれず呟いた。 そうして、あとは子供みたいにポロポロ泣きじゃくった。 ニット帽の上に置かれた敬介の手の平が温かすぎたからだ。 「げええっ 公衆トイレの洗面台に向かって、操は吐いた。 「げえつ、げええつ、エホッ工ホッ」 何度もえずき、何度も吐いた。やがて胃の内容物を全て吐き出し、操は何度か「けぶけぶ」 と小さいゲップを繰り返した。少しずつ呼吸を整え、吐き気がおさまるのを待つ。 トイレ内に蛇口から流れる水音だけが響いた。 ちょっぴり激しい運動をするとすぐコレだ。操は口元をゆすぎながら、自嘲気味に苦笑した。 「ホンマ、やわな身体やなあ」 ひとごと と、洗面台の鏡に映った自分の顔を眺めながら、他人事のように呟いた。 敬介に事情を打ち明けた後、操は泣きはらした顔を洗いに、公園のトイレにやってきてい 、」 0