赤嶺 - みる会図書館


検索対象: クインテット! 2
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1. クインテット! 2

790 とうきようとみなとくあかさか 同時刻、東京都港区赤坂。 ながた 官公庁の集まる永田町にほど近いこの町に、赤嶺グループの中核会社であるレッドピ 1 ク本 社ビルはあった。 建築面積六千平方メートル。地上五十四階、地下八階建て。 やまじろ 坂の頂上に位置するこのビルは、まさに現代の山城であった。本社ビルの周辺には傘下企業 ようそう のビルが出城のように密集し、あたかも一個の城塞都市の様相を呈している。実際、事実上赤 嶺グループの独占状態にあるこの区画には、そこだけ治外法権であるような、容易に関係者以 外が近寄れない異様な空気が漂っていた。 ともかくも、都心の一等地にある丘陵地を占領し、周囲の平地を睥睨するこのレッドピーク 本社ビルは、まさしく日本の財界のトップに君臨する赤嶺帝国の総本山というにふさわしかっ その本社ビルの最上階に、経営戦略部という部署がある ここでレッドピーク社の企業形態に触れておく レッドピーク社には、多分野に事業展開する営業部門と、企業の管理運営を担当する経営部 門の一一つのセクションがある。その経営部門は、人事総務部、法務部、業務部、監査部、秘書 部、広報部、事業開発部、ビジネスクリエーション部等々、実に十八の部署に分けられている。 そしてそれらの部署を統括し、企業の総合的な経営方針を決定するのが経営戦略部であった。

2. クインテット! 2

262 在するらしいんだ。表向き、世界的大企業として活動しつつ、その裏で日夜犯罪行為を行う悪 の組織。それが赤嶺グループの本当の姿なんだ。父さんと余韻さんはグループのうち、どれだ けの人間がこの裏の組織に関わっているのか、その構成人数や規模を調べ、最終的に組織を瓦 解させるために潜入捜査を続けているんだよ。もちろん、関わっているのはごく一部の限られ た人間だけで、ほとんどの社員はその事実を知らないんだけどね」 「はあああああっ ? と、その言葉を聞き、またしても敬介は声を上げた。 「オイオイ、親父 ! じゃあ何か ? ココの実家が悪の組織だってのか ? 「うん、ぶっちやけそうなんだ。ていうか、おそらく組織のトップは遊恋子ちゃんの祖父であ ゅうざん り、赤嶺グループ会長の赤嶺遊山氏にまず間違いないね。今は物的証拠が見つからすに手をこ まねいている段階だけど、状況証拠から判断する限り、ほば鉄板」 アッサリと楽太郎が断定した。 「ウオイ ! もうちょいオプラートに包めよ ! 身内が悪者って言われるココの気持ちも考え しいえ、敬介サマ。ココはちっとも気にしていないのですよ」 と、敬介があまりにストレートな楽太郎の物言いを諫めようとしたところで、遊恋子がかぶ りを振った。

3. クインテット! 2

あかみねゆ 。赤嶺 ) 恋子 とおåD みさお 遠野操

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として。どうしてパパさんやママさんは普 「うん。二人がエージェントなのは、まあ : : : いい 通に会社勤めをしているんだい ? もちろん、おおっぴらに公表するよ、つな仕事じゃないのは わかるけど、世を忍ぶ仮の姿なら、わざわざ実在する企業で働く必要はないだろう ? という か、サラリ 1 マンと兼業できるほどエージェントという仕事が簡単なものだとは思えないんだ けれど」 「お、いい質問だね。さすが小唄。・・ : : この話は遊恋子ちゃんにも関わりのある話になるんだが」 「・・ : : はい ? ココにですか ? けげん 不意に自分の名前が話題にのばり、遊恋子は蚤訝そうに目をばちくりさせた。 「うん、おそらくあまりいい話ではないと思うから、その、なんだ。覚悟して聞いてほしい」 と、前置きしてから楽太郎は語り始めた。 一「実をいうとね、小唄の一一一口うとおり、父さんと余韻さんはレッドピークの社員として働いてい るけれど、これは本業のカムフラージュであると同時に、本業の任務でもあるんだ。というの も、父さんと余韻さんは、もうかれこれ十年近く、レッドピークを始めとした赤嶺グループの む 潜入捜査を担当しているんだよ」 湯 んっ ? 」 話 第 と遊恋子が思わず声を上げる。 「実は、先程言った悪の秘密結社ポヘミアン・ラブソディーの本部が、赤嶺グループ内部に存

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「 : : : 既に、ココは半ば赤嶺の家から勘当された身ですし、実際おじいサマの性格ならありえ なくもないのです。とい、つかありていに言えば、ココ自身、あの方にはあまりいい感情を抱い ていないのですよ。何しろあの方は、ココを無理やり海外に留学させて六年間も敬介サマと離 れ離れにさせてくれやがった張本人でございますので、うふふふ : 「そ、そうですか」 恐ろしく酷薄な笑みを浮かべながら自分の祖父について淡々と語る遊恋子の姿を見て、敬介 は軽い寒気を催しつつ相槌を打った。どうやら赤嶺家の祖父と孫娘の間には、なかなか込み入 った事情があるらしい。 「ちゃちゃちゃ、ちゅーか、なんどすなあ。遊恋子はんにせよ、小唄はんにせよ、ツバメはん にせよ、旦那はんのお家にきはった当初は、何の接点もないように思てましたけど、なんや妙 デ なところで繋がってきはりましたなあ。ひだりはんのご両親もレッドピークの社員さんですや ナ セろ ? 結局、無関係なんはウチだけどすか ? 情 慕 と、ここまでの説明を振り返り、操が自分一人だけ仲間ハズレなことにちょっぴり残念そう 恥な顔をしつつ、そんな感想を漏らした。 湯 「無茶一一一一口うなよ、操。さすがにお前は関東圏の出身じゃねえし、いくらなんでもこの場の全員 話 第が因縁ありってわけにはいかねえだろ 「あ、操ちゃんの実家もちゃんと接点あるよ」

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あったものの、本当に腕は確かであった。 結果、宮崎は術後、わずか一ヶ月のリハビリを経て、見事全快したのだった。 が、この話はここで終わらなかった。 「実はその医者、ただの医者じゃなくて、悪の秘密結社のマッドサイエンティストだったんだよ」 宮崎の言葉を聞いた瞬間、ひだりは「は ? という顔をした。 「えっと、宮崎君 : 「で、てつきり俺はただ身体を治す手術をしてもらったんだと思ってたんだけど、どうやらそ うじゃなくて、その手術は悪の秘密結社の戦闘員になるための改造手術だったみたいなんだよ ね」 「待って ! ちょっと待って、宮崎君 ! 」 デ ひだりは宮崎の現実離れした話についていけず、慌てて制止した。が、宮崎は気にせず先を ナ セ続けた。 情 慕 「しかもめちゃくちゃ莫大な手術代請求されちゃってさあ、仕方ないからその金を返済するま む で悪の戦闘員として仕事することになったんだ」 湯 「へえ 5 、そ、そう」 話 「んで、その仕事の一環として、赤嶺グループのお嬢さんを誘拐するように命令されたんだけ ど、部下が使えなくて、ひだりちゃんをお嬢さんと間違えちゃったってわけ。まあ、俺もひだ

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さておき、 : ココとてこのようなやり方は本意ではありません。本来なら怪我で弱った敬介サマをコ コが献身的に看病し、じっくり時間をかけて親密な関係を築き上げていくつもりだったのです が」 「黒っ ! お前はあの天使のような笑顔の下にそんな腹黒い計画仕組んでたのかよ ! 実際ち よっぴり術中にはまりかけてたわ ! 」 「 : : : 敬介サマがいけないのですよ。ココの秘密を見てしまったから。好奇心は猫をも殺すと いうやつです。うふひ、うふふふふ」 笑いながら、遊恋子は優しく敬介の頬を撫でた。 こえ ・ : こ、怖えええええっ ! 誰か助けてええええ ! ) 敬介は切実に思った。 翌日、ひだりは朝から不機嫌だった。 みやざき あかみね 「うーい、今日も欠席は宮崎と椿と赤嶺だけだな。んじゃ、ホームル 1 ム終わり」 と、出席だけ取ってさっさと教室を後にする篠塚先生を尻目に、ひだりはぶすっとした顔で しきりにおさげ髪をいじくっていた。 隣の席では、操、ツバメ、小唄の三人が、 ほんい

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「ええと : : : 俺は、その、ちょっとした仕事で : と言いかけて宮崎はハッとなり、 「オイ、こりゃあ一体どういうわけだ ? なんで赤嶺のお嬢さんじゃなく、ひだりちゃんを連 れてくるんだっ ? ひだりを誘拐してきた男たちに鋭い視線を向けて訊ねた。 途端、熱川温泉の法被を着た誘拐犯たちは弾かれたように気をつけの姿勢を取り、 、え、我々はピンク様のご命令通り、髪の毛をおさげにまとめてる娘を連れてきただけ でしてーーー . 」 「確かにそう命令したけど、人違いだああああっ ! 」 男たちの返答を聞いた直後、宮崎が顔を真っ赤にして怒鳴った。 デ 「ちょ、ちょっと、宮崎君、これどういうことっ ? 人違いってなに ? もしかしてあたし遊 ナ セ恋子ちゃんと間違われてさらわれたってこと ? 」 宮崎と男たちの会話を聞き、たちまちひだりが口を挟む。 む 「ご、ごめん、ひだりちゃん。俺もこいつらのしでかしたあり得ない凡ミスを受け入れるのに 湯 精一杯だ ! 冷静になるまで待ってくれ ! 」 話 い「待てねえよ ! 今すぐ説明しろ、このハゲ坊主 ! ぐしゆっ ガクガクガクガク !

9. クインテット! 2

あかみわ れかでしたら、赤嶺家の別荘にご案内できたのですが」 みなもとのよりとも しもだ 「うーん、伊豆か。源頼朝が流された蛭ガ小島があり、日米和親条約で最初に開港された下田 にらやま えがわたろうざえもん があることでも有名だね。その他韮山代官江川太郎左衛門が幕府の要請で反射炉を製造したり と、なかなかに史跡名所のある土地なんだけれど、残念ながらわたしは小学四年生のときに一 とうは 人自転車旅行を敢行して既に踏破済みなのだよ」 ひほうかん 「ちゃ 5 。伊豆て言、ったら秘宝館くらいしか思い当たる場所あらへんなあ。なにしにいきます のん ? 」 びわこ 「ん 1 、てゆーかイズってどこ ? 琵琶湖より右 ? 左 ? パスポ 1 トなしでいける ? 」 一同から身勝手な感想が飛び出した直後、 「ぶぶぶぶぶつつ ! 」 びたたたたつつー セ突如楽太郎がロの中の米粒を敬介の顔面めがけてスイカの種のように撃ち出した。 「うおつ、きたねっ ! テメ工いきなり何しやがる ! 」 ぬぐ 敬介が慌てて顔に張りついた米粒を拭いつつ怒鳴りかかる。 「うるさいうるさい、この親不孝バカバカ息子っ ! 父さんの気も知らないで好き勝手言いや 第がって ! 」 「だからって米粒吐きかけるんじゃねえよ、ポケ ! あたかも機関銃のように連射しやがって」 ひる

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