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検索対象: トム・ソーヤーの冒険 上
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1. トム・ソーヤーの冒険 上

その晩、ふたりは、タはんのとき、あまりしゃべらなかった。ふたりは、はずかしそうに していて、 ノクが食事のあと、 ハイプの用意をし、ふたりの分も用意しようとすると、 や、自分たちは気もちがよくないから・ーー昼はんにたべたものが、あたったらしいから、タ ヾコはいらないと言った。 夜なかごろ、ジョーが目をさまして、ほかのふたりを起こした。あたりには何事か起こり そうな、おもくるしい空気がたれこめていた。三人は、ひとところにかたまった。そして、 よどんだ空気はすこしも動かず、息づまるくらい暑くるしかったのに、親しみのある火がほ しくなり、たき火をした。それから、じっとすわって用心ぶかく待ちかまえた。おごそかな 静けさがつづいた。あかるい火のむこうがわは、すべての物が、まっ黒いやみにつつまれて いっしゅん いた。まもなく、ふるえる光がひらめいて、一瞬、木の葉をぼんやり照らしだしたと思うと、 消えた。やがて、もうすこし強いやつが、また光った。そして、もう一度。それから、森の えだえだ 枝々をかすかにゆるがして、ひくいうめき声がした。少年たちのほおを、息のようなのが さわってすぎたとき、彼らは、夜の精がそばを通っていったような気がして、身ぶるいした。 ちょっと静かな間があった。が、たちまち、きみ悪い光が、夜を昼に変え、三人の足もとに ばん かれ 248

2. トム・ソーヤーの冒険 上

せんさい で、船載ボートの役目をしている軽舟のなかへよじのばった。それから軽舟の腰かけ梁の下 あら 横になり、荒い息をつきながら、じっと待った。 かね まもなく、ひびのはいった鐘の鳴る音がし、「ともづなを解け」の命令が聞こえた。一、 どうよう 分ののち、軽舟の頭は、船の動揺につれて高く持ちあがり、船は動きはじめた。トムは、自 分が成功したので、気をよくしていた。これが、この船の最終便だったのを、トムは知って そのころ、ミシシッビ川を渡る船は、まし J 水車のカで航行するのが多かった いた。待ちどおしい十二分か十五分がすぎると、水かき車 ( ま「た。トムは、甲板から川へとびこみ、くらがりを岸まで泳いだ。岸にあが「たのは、船 から五十ャ 1 ドも川下だったので、おそくまで 船つき場にうろっく人に見つかる心配もなかっ それから、あまり人どおりのない小路をとぶ ように走り、まもなく、おばさんの家の裏塀の ところに出た。 塀をのりこえ、家の袖に近づき、灯のついて かるぶね かんばん かるぶね そで こうじ うらぺい 225

3. トム・ソーヤーの冒険 上

だいくうふく の運動、水泳、それに大空腹という何拍子かがそろえば、まずいものなしなのだということ を、考えてもみなかったのだ。 、ハックは一服した。それから、森へ遠征に出 朝食がすむと、三人は、木かげにねそべり かけた。くさった丸木を越えたり、からみあう下生えをくぐったり、冠から地面まで、ツタ きしよう カズラの徽章をたらしている、おごそかな森の王者たちの間を、にぎやかに分けていったり した。時どき、宝石のような花をちりばめた草が、もうせんのようにしきつめている、気も ちのよい場所へ出た。 三人は、いろいろなものを見つけて喜んだが、何もびつくりするようなものには出くわさ レ、一。田四分の一マイルで、陸 なカった。かれらが発見したところによると、島は長さ三マイノ中 に一ばん近いところでは、向こう岸との間に二百ャードあるかなしかの流れが通っているだ けだった。一時間おきくらいに咏いでキャンプにもどって来たときには、午後もなかばをす ぎていた。あまりひもじくて、釣りをしてもいられず、かわりにハムをたらふくたいらげた。 それから、木かげに寝そべり、おしゃべりをした。けれども、話はすぐとだえがちになり、 やがて、まったくとぎれた。森のなかにたれこめる静けさ、おごそかな空気、それに、さび ほうせき まるき ね っ なんびようし したば かんむり えんせい 216

4. トム・ソーヤーの冒険 上

らないもののように思われるのだがーーーその理由は、よくわからない。なぜかというと、賛 じゅなんしゃ 美歌の本も楽譜も、その受難者たちは、けっして使わないのだ。 校長先生は、茶色の髪の毛はみじかく、ヤギひげも、しよばしょぼの、三十五になる、や せた人だった。かたい、幅の広いカラ 1 をしていたが、カラ 1 の上のはしは、もうすこしで 耳までとどき、前のするどくとんがった先は、ロのすぐわきまでつき出していた。そのよう かきね すは、まるでカラーの垣根をめぐらしているようで、そのため、ぜひともまっすぐ前を見て いなければならず、横を見たいときは、ゝ カらだ全体を動かさなければならなかった。あごは、 札くらい広くてながい、 へりかざりのついたネクタイの上にのつかっていた。靴の先は、当 かっそうぶ 時の最新式で、そりの滑走部の先のようにきゅうとっきたっていたが、それは、青年たちカ かべ 何時間もその靴の先を壁にあてて、じっとしんぼうづよく腰かけていたあげくに得た結果で あった。 ウォルタ 1 ズ先生は、態度も非常にまじめで、気だてもたいへん真実みのある、正直な人 しゅうきようてき ぞく だった。そして、宗教的なものとか場所とかを、たいへんたっとび、ほかの俗つほい事がら とは区別をつけていたので、自分でも知らないまに、先生の日曜学校むけの声には、ほかの さっ かみ くっ

5. トム・ソーヤーの冒険 上

1 をとりまいていた。そこで、べッキーはすわって、また泣きだしながら、自分をせめた。 力なしみを そして、このころになると、生徒たちがまた集まりはじめたので、べッキーは、ゝ 分けあう人もなく、ひとりこの嘆きをかくし、胸の傷をいたわりながら、長い、わびしい、 苦しい午後をたえしのばなければならなかった。 なげ むねきず 128

6. トム・ソーヤーの冒険 上

わす ため息をつき、カプトムシのことは、まったく忘れて、その上へおすわりした。とたんに、 けたたましいなき声がおこって、むく犬は、通路を走りだした。なき声はつづき、犬もとま せいだん らなかった。犬は聖壇の前を横ぎり、もう一つの通路から、後ろの入口の方へと走りぬけた。 それから、折れて、いくつかのドアの前をつつきり、また折れて、なきわめきながら、 しよいよっのり、ま オカし犬の苦しみは、、 まで走らなかった通路に走りこんだ。走るにしこゞ、、 もなく犬は、光の輝きと速度をもって軌道を走っている、毛皮につつまれた彗星のように見 えて来た。とうとう、気も狂わんばかりになったこの受難者は、そのコースをはずれて、ご 主人のひざにとびのった。ご主人は窓の外に、犬をほうり出した。かなしみの声は、急速に 遠のいて、消えた。 もうこのころになると、教会じゅうに集まった人たちはみな、まっかな顔をして、笑いを たちおうじよう こらえるのに、もつまりそうになっていた。お説教も、まったく立往生だった。まもなく、 お話は、またはじめられたが、どうも、つまりがちで、人の心を動かすなどということは、 げんしゆく とてもできない相談になっていた。もっとも厳粛な意見をのべている時でさえ、まるで、こ の気のどくな牧師さんが、めったにないほどこつけいなことを言っているように、どこか遠 ばくし かがや そくど くる まど きどう じゅなんしゃ すいせい わら

7. トム・ソーヤーの冒険 上

いう考えだった。しかし、トムの意見を聞いてからは、罪の生活の方が、はるかに有利な点 みと のあることを認めた。そこで、ジョーは海賊になることに賛成した。 セント・ピ 1 タ 1 ス。 ーグから三マイルの川下、ミシシッビ川が一マイルちょっとの広さ になっている地点に、長細い、せまい、木の茂った島が一つあった。島の上のところには、 あささす 浅い砂州があって、これは集合地には便利のいい場所だった。島には、人が住んでいなかっ た。そして、この島は、対岸のイリノイ州がわにずっと近く、そちらの、ほとんど無人の密 りんかた 林と肩をならべていた。そこでふたりは、このジャクソン島を選んだ。だれがふたりの海賊 かぎようひがいしゃ 稼業の被害者となるかという問題については、ふたりは考えてみなかった。それから、 なかま クルべリ フィンをさがしにゆくと、 ノクもすぐ仲間に加わった。ハックにとっては、ど んな生活も、みんな同じで、どれでもよかったのだ。 それから、まもなく、三人は別れたが、その時にはもう、村から二マイル川上のさびしい やくそく 場所で、彼らの好みの時間ーーーすなわち、ま夜中に会う約束ができていた。そこにある、 ぶんど ひょうろう さい丸太のイカダを分捕るつもりであった。それぞれ、釣り竿と釣り針、それから、兵糧も、 きようあく いかにも海賊に似つかわしく、一ばん凶悪な、神秘的な方法で盗み出して持ってゆくことに まるた かれ かいぞく この かいぞく しんびてき つみ ざお ぬす かみ かいぞく みつ 197

8. トム・ソーヤーの冒険 上

トムのクラスは、おなじような型の子どもがそろっていたーーーすなわち、おちつきのない、 あんしよう うるさい、やっかいな子どもたちだった。暗誦するときになると、だれひとり、聖句をちゃ んとおぼえている者はなく、最後まで手つだってもらわなくてはならなかった。しかし、と もかくも、みんな暗誦をしてのけて、みんな青い札をごほうびにもらった。青札には、聖書 の句が書きつけてあって、聖句二節を暗誦するごとに青札一枚がもらえるのであった。青札 は十枚で、赤札一枚と交換でき、赤札は十枚で、黄色い札一枚になった。黄色い札が十枚集 まれば、校長先生は、ごくそまつなっくりの聖書 ( 物の安い、そのころでは、四十セントくら いなもの ) をその生徒にくれた。この本の読者のうちで、たとえ、ドレ・バイブル画家ギ あんしよう きんべん ターヴ・ポール・ドレ ) をくれると言われても、二千節の聖句を暗誦する勤勉さと熱心さを持。て が挿画をかいた聖書 しる者が、はたしていく人いるだろうか。けれども、メアリは、この方法で、もう一一冊も聖 トイツ人の 書をもらっていた。それは二年もかかる、しんぼうづよい勉強の結果であった。。 両親を持つ、ある少年は、四冊か五冊もらった。その子は、いっか三千句をたてつづけに暗 誦したことがあった。が、それは、その子のあたまには、あまりにもむりな仕事だったので、 その日からというもの、その子はほとんどばか同様だった。ということは、この日曜学校に こうかん ふだ さっ

9. トム・ソーヤーの冒険 上

けっこん 「なにつて、結婚する約束さ。」 もいえ」 「したいとおもう雀」 「だとおもうわ。でも、あたし、わからないわ。どんなことするの ? 」 「どんなこと ? つん、どんなことって、くらべる物なんかないのさ。ただ、その子のほ 、、、、けっこん かには、けっして、けっして結婚しませんて言って、その子にキスして、それでおしまいさ。 だれだってできるんだ。」 「キスするの ? どうしてキスするの ? 」 「うん、そりや、あのーーーだって、みんなそうするんだもの。」 「みんな ? 」 「うん、そりや、すきな人は、みんなそうするのさ。ばくが石盤へ書いたこと、きみ、お ぼえてる ? 」 ええ。」 「なんて書いてあった ? 」 やくそく せきばん 122

10. トム・ソーヤーの冒険 上

な、ツクは、多くの人たちからありがたくもな さそうな目で見られ、どうしたらいいカどこ にかくれたらいいかわからずに、どぎまぎしな がら、きまりわるそうに立っていた。ハックは、 ためらっていたが、やがて、こそこそ逃げ出そ うとした。トムがっかまえて言った。 。、ツクだって 「ポリーおばさん、わるいよ だれか喜んでやらなくちゃ。」 「ああ、喜んでやるともさ。わたしは、喜ん でますよ、かわいそうな、かあさんのない子。」 そして、ポリーおばさんが、やさしくちやほ やしてやったので、 よいよそこに いたたまれない気もちになった。 とっぜん、牧師が、あらんかぎりの声でさけ 261