っちゃって、わたしにやちっともぶてなくなるってことも知ってるんだ。わたしや、たしゝ にあの子の身のためになるような教育はしていない。そりや神かけてほんとの話だよ。聖書 に・もあるよ、つこ、 子どもがかわいけりや、ムチで育てろってね。わたしや、わたしたちふた りのために罪をおかして、ふたり分の罰をちょうだいしてるのさ。あの子のなかには悪魔が 住んでるんだが、ああ、あの子は、わたしの死んだ妹の子どもなんだ、かわいそうに。わた しにや、あの子がぶてない。あの子を許せば、わたしの気はすまぬし、あの子をぶてば、こ の老いの胸はうんといたむし、やれ、やれ、ほんとに、聖書にも、『おんなの産む者は、その かんなん 日すくなくして、艱難多し』とあるけれど、まったくそのとおりさね。あの子は、きようも、 ずる休みをきめこむだろうが・、わたしは、あしたまた、こらしめにあの子を働かせなくちゃ なるまいよ。ほかの子どもたちが遊んでるのに、あの子を働かせるということはむずかしい が、あの子は、仕事が何よりきらいなんだから、わたしはむりにもそうやって、すこしでも 義務をはたさなくちゃならないんだ。さもなけりや、わたしは、あの子をだいなしにしてし まうからね。」 案のじよう、トムはずる休みをして、たいへんおもしろくあそんだ。そして、夕方帰って むね ばっ あくま せいしょ
あのかわいそうな、ひどいめにあった子に、もう二度とーーー二度とこの世で会えないと思え そして、 ー夫人は、胸もつぶれそうにむせび泣いた。 「トム、いままでよりもしあわせになってると、 もいと思うなあ。」と、シッドが言った。 「だけど、もし、生きているうちに、も、つすこしーーー」 「シッド ! 」トムには見えなかったが、おばさんがぎろっと、シッドをにらんだというこ ひとこと とが感じられた。「もう死んだんだから、わたしのトムの悪口は、一言でもお言いでないー あの子は、神さまが見ていてくださるーーーーおまえが、自分でどうこう言うことはありません よ ! ああ、 もいやら ! ーのおくさん、わたしやどうしてあの子をあきらめたら、 ノ もいやら ! あの子は、年とったわたしを、いやというほ どうしてあの子をあきらめたら、 ど苦労させはしましたが、ほんとにわたしにとっちゃ、なぐさめだったんでね。」 たも みな けれど、つらいことでご 「主は与え、また取り去り給うーーー主の御名はほむべきかな ! ざいますーー・ああ、つろうございますよ。ついこの間の土曜日のことなんですが、うちのジ ョ ーが、わたしの鼻さきでかんしやくだまをはれっさせましたんでね、わたしは、あの子を しゅあた ノ はな むね 228
匪ま = 一亠 砲だったんでねえ。まるで、子馬みたいなもん で、分別もなにもあったもんじゃありませんよ。 あの子は、何も悪い気はありやしませんでした よ。まったくあんなに気のいい子は、ござんせ んでしたがねえ。」 といって、おばさんは位きだした。 「うちのジョ 1 も、まったくおなじでござい ましてね いつもあくたれてばかりいて、さ んざんいたずらはしましたけれど、わがままな ところは、これっぽっちもなくて、親切でござ いましたよーー・それなのに、わたしときたら、 あのクリ 1 ムがすつばくなったのを自分で捨て わす たこともすっかり忘れて、とったのだろうと言 って、あの子をぶったことを思えばーーーそれに、 227
ポリ 1 おばさんは、ちょ っとのま、あっけにとられ て立っていたが、すぐ静か に笑い出した。 「ほんとにあの子ときた 一ら。わたしも、何度やられ ても懲りないんだからね。 もういままで、さんざあの手で、わたしをだましてきたじゃないか。いいかげん、わたしも、 あの子のすることにや、ゆだんをなくなりそうなものなのに。でも、年と「たばかほど、 ばかなものはない「ていうからね ~ お、ばれ犬には、新しい芸は仕こめない「て、ことわざ にもあるじ ~ ないか。だけど、まとにあの子ときたら、二日とおんなじことをやる「てこ とはないんだから、このつぎに何をやり出すかなんてことは、まったく見当もっきやしない よ。どのくらい、じらしてれば、わたしがかんしやくをおこすか、あの子にはちゃんとわか ってるんだし、あと一分ごまかすか、わたしを笑わすかしてしまえば、それでおしまいにな / / 叫ル わら わら
少年は、逃げようとして、もがいただけだ「た。その子は、、たいというよりも、くやし さに位いていた。 なおもこぶしはつづいておちた。 「こ、つさんか ! 」 ついにこの少年は、おしつぶしたような「こうさん ! 」をはき出した。そこで、トムは、 その子を立たして、言った。 「さあ、これで思い知ったろう。こんどから人をばかにするときは、相手をよく見てから にするんだぞ。」 よそから来た少年は、服のほこりをはらいながら、すすりあげ、しやくりあげ、ときどき、 うしろをふりかえ「ては、頭をふり、「こんどっかまえたら」トムをひどいめにあわせるから おうしゅう と、おどしながら歩いてい「た。トムは、わいわいはやしたてて、それに応酬し、意気揚々 と出かけようとした。と、トムがうしろを見せるが早いか、よそから来た子は、石を拾「て、 うまくトムの背なかのまんなか目がけてぶつつけた。それから、くる「と向きなおり、カモ シカのように逃げてい「た。トムは裏切り者を家まで追いかけてい「て、その子の住みかを ちょうせん つきとめた。それから、門のところに陣ど「て、敵に出てこいと挑戦したが、敵はただ家の うらぎ じん いきようよう
こともない ほんのちょっとトムより大きい少年が、まえに立っていたのだ。セント・ビ ひんじゃく ータースヾ ーグのような貧弱な、小さい、みすぼらしい村では、年とか男女の区別なしに、 ノ こうきしん よそから来た者は、強い好奇心をそそるものである。 おまけに、その子は、、い服を着ていた。これは、まったくたまげたことだった。帽子は スホンも 優美なもので、きっちりボタンのついている青い上着は新しくて、しゃれていた。。。 そうだった。靴もはいていた きようは、金曜日だというのに。おまけに、その子ははで なリボンのネクタイさえしていた。その子の都会ふうなところが、ぐっとトムのかんにさわ みもの った。トムは、このりつばな、おどろくべき見物をまじまじとながめた。しかし、まじまじ とながめればながめるほど、そして、なんだ、そのおしゃれと、さもばかにしたような顔を ふうさい して見せれば見せるほど、トム自身の風采は、自分の目にも、だんだん、みすばらしく思え てくるのだった。どちらも、だまっていた。かたほうの子が動けば、かたほうも動いた が、うしろへはゆかず、横へ横へと円を描いてまわった。ふたりは、じっと顔と顔、目と目 を向けたままだった。 その、っち、とうとうトムが言った。 ゅうび くっ えが
部屋じゅうにくすくす笑いがおこったので、トムは、きまり悪がっているように見えたが、 すうはい ほんとうは、そのはじらいは、まだ知らない、崇拝する人をおそれあがめる気もちと、この まついた すばらしい幸運を大いに喜ぶ気もちからおこっているのであった。トムが松板のべンチのは しにかけると、女の子は、頭をつんとさせて、むこうのはしにいってしまった。部屋じゅう の者がつついたり、目くばせしたり、こそこそ言ったりした。が、トムは、その長い、ひく も机の上に手をおいて、じっとこしかけたまま、勉強しているようすだった。 そのうち、みんなの注意も、だんだんトムをはなれ、みんなのがやがや勉強する声がまた、 ぼやっとした空気のなかにひびきはじめた。まもなく、トムは、女の子の方へ横目をつかい はじめた。女の子もそれに気がっき、トムに「しかめつ面」をしてみせると、一分ばかり、 くるっと向こうをむいていた。その子が用心しながら、またこっちへ向いたとき、その子の 前には桃がのっていた。その子はそれをトムの方へ押しやった。トムは、そっと押しかえし た。その子は、また押しかえしたが、まえよりいやそうではなかった。トムは、しんばうづ よく、その桃をもとの場所までもどした。すると、女の子は、もう押しかえさなかった。ト つくえ わら 109
が ま た 村 じ ゅ っ の 子 ま ど も ノ、 ッ ク を 尊 敬こて し わがち か く れ て と あ そ び、 が り 解さ ッ ク の そ れ ッ ク な ま け で 世 の な か 0 ) お き に ず ロロ で 亜 で あ た カゝ ら だ 評 判 の 酔よ ば ら し、 の む す だ っ た 町 じ ゆ つ の 親 ツ ク を き ら お そ・ れ て た が ま も な く ト ム は 村 の 宿 な し , 少 年・ ノ、 ツ ク ノレ フ ン - に 出 あ ッ ク は 町 で た 英まと 雄穹 0 ) よ っ な て ど か へ 消 え て い ′つ た さ 除呈 装 ; 武ぶ て れ わ と み し お ' に も ど 子 の り と ひ つ も も ど れ た っ ロ や た 男 の 子 急 に 名 声 を 失と 墜し し お つ き が ひ と り も な く な っ た そ の 子 が か り し 心、 な も っ ぞ か ん な と く 吐は を ば つ た み ヤ ソ ム ト て せ 見 を 色 の 蔑 軽は い な も に そ の 演 技 を 見 物 し た そ で 指 を け が し た た め に み な の を ば い : 尊 敬 さ れ て と と な て し ま た ト ム の ま わ り に は ず し、 ぶ ん 大 ぜ も、 の 少 ろ ぞ ろ っ て 歩 し、 て ら め ず ら し い す て き な や り か た が 吐 け る と し、 っ の で へ て の 少 年 の 羨莞 望粤 の ま れ ど が あ れ ま オこ 楽 も き と っ て く る も 0 ) で あ る ト ム は ぬ け た 目リ 歯 0 ) 間 カゝ ふ に ト ム の 鼻 . さ き に っ き つ け た す る と 歯 は べ ッ ド の 柱 ぶ ら と ぶ ら さ っ た し る と の 方 の は し は の 柱 し ば り - つ け た そ れ ら お、 き、 を む と 96
たたきのめしちゃったんでございますよ。こんなに早く、こんなことが起ころうとは、まっ たく・ーーああ、もう一度、そういうことが起こってくれるんでしたら、わたしは、あの子を だいて、ほめたたえてやりますよ。」 「そうでござんすとも。そうでござんすとも。あなたがどんなお気もちか、わたしにやち ゃんと、わかっておりますよ。たったきのうの昼のことでしたがね、うちのトムが、ネコを ちんつうざい つかまえて、鎮痛剤を一ばいのましたところが、ネコのやっ、あばれましたのでね、わたし や、家をぶちこわされるところじゃないかと思ったんでござんすよ。それで、ああ、神さま、 お許しくださいまし、わたしや、ト ムの頭を、指ぬきでごっんとやったんでございます。お お、カわいそうに、かわいそうに、ト ムや。けれど、もうあの子は、、 しまじゃ、そんな苦労 もないところにいっておりますがね。そして、あの子は、最後に、わたしをうらむようなこ とばを残していったんでござんすよーー」 そして、その思い出は、おばさんにとってはあまりにも悲しいことだったので、おばさん 。か、にム」かーカ はよよとばかり泣きくずれた。これを聞くと、トムもすすりあげはじめた わいそうに思ったのは、だれよりも、自分のことだった。メアリも位き、時どきトムにつし 229
「ああ。」 「なんとなら、とっかえる ? 」 「きみ、なに持ってるんだい ? 」 かんぞう あま」草の根。子」もが ) すこしと釣り針。」 「甘草 ( お菓 「見せろ。」 トムはならべた。品物は満足のいくものだった。そこで、おたがいの財産は、交換された。 あかふだまい それからトムは、白いビー玉二つと赤札三枚をとりかえ、それから、ちょっとした物二つ三 あおふだ っと青札二枚をとりかえた。そのあとで、また、十分か十五分、ほかの男の子たちがくるの を待ちぶせて、いろいろな色の札を手に入れた。さて、それから、さつばりした、うるさい 子どもたちの群と一しょに、教会にはいり、自分の席につくと、一ばん近くの子どもとけん かをはじめた。まじめそうな顔をした、かなりの年の先生が、それをとめた。けれども、先 生がうしろを向いたとたんに、トムは、となりのべンチの少年の髪をひつばり、その子がふ むちゅう へつの子に「あいた 、、、こ。しかし、また、まもなく、、、 り向いたときには、夢中で本を読んてもオ 「 ! 」と言わせたくなって、ビンでチクリとやり、また先生からお目玉をいただいた。 かみ こうかん