祈り - みる会図書館


検索対象: トム・ソーヤーの冒険 上
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1. トム・ソーヤーの冒険 上

っさをまぎらしたくてたまらなかった。トムの手が、ふらふらとポケットにさまよいこんだ と思うと、トムの顔は、感謝の気もちで輝いた。その気もちは、祈りと言ってもよかったの らいかんはこ だが、トムにはそれはわからなかった。そして、こっそり、雷管の箱がとりだされた。トム しゅんかん はダニを箱から出してやり、長い、たいらな机の上においた。この生き物もまた、この瞬間、 かがや さだめし、祈りにも似た感謝の気もちで輝いたことだろう。だが、それはすこし、はやまっ た。ダニが感謝しながら、旅立とうとした時、トムはビンでそれをわきへ向かせ、べつの方 へゆかせてしまったのだ。 トムのとなりには、トムの親友が、おなじように苦しみながらすわっていた。が、いまや ゅうぎ その子もたちまち、大いに感謝しながら、この遊戯にひきいれられた。この親友とは、ジョ ーのことだった。このふたりは、学校のある日には、神かけて誓いあった友であ せんじんし 土曜日には、戦陣を敷く敵どうしの仲だった。ジョーは、えりの裏から針をぬくと、こ こくいっこく の捕虜の運動を手つだいだした。刻一刻、この遊びは、興味がましてきた。まもなく、トム が、これではふたりとも、じゃまをしあうばかりで、じゅうぶんにダニを活用していないと せきばんつくえ 言いだした。そこで、トムは、ジョ ーの石盤を机の上におくと、そのまんなかに、上から下 ほりよ かんしゃ かんしゃ なか かがや つくえ ちか 116

2. トム・ソーヤーの冒険 上

さんげき 9 墓地の惨劇 その夜、九時半に、トムとシッドは、いつものように寝かされた。ふたりは、夜のお祈り ねむ をし、シッドはすぐ眠った。トムは眠らずに、じっとしていられないような気もちで待って これ いた。もうじき夜があけるのではあるまいかと思われるころ、十時の鳴る音がした ! がまんがならなかった。気がいらいらするので、寝がえりをうったり、もじもじした りしたかったが、そんなことをすれば、シッドが目をさましてしまうだろう。だから、トム は、じっと寝て、やみを見つめていた。 そのうち、その静けさのなかから、かす あたりは、きみがわるいくらい静かだった。が、 、、 : はっきりしてきはじめた。時計のカチカチい 力な、ほとんど聞きわけられないほどの音カ はり う音が、耳にはいって来はじめた。古い梁が、あやしげにびしびし割れだした。階段が、か ゅうれい すかにきしんだ。たしかに、幽霊が動きだしたのだ。調子のついた、こもったようないびき かいだん 140

3. トム・ソーヤーの冒険 上

「ちくしよ、つー ずる休みしたり、しちゃいけないってこと、みんなしたから、こんなこ とになったんだな。おれだってやれば、シッドくら、 しい子になれたんだーーーああ、だけ ど、やつばり、おれは、やらなかったんだ。だけど、もし今度かんべんしてもらえれば、お れは、きっと日曜学校、がまんしていく ! 」 そして、トムは、すこし鼻をならしはじめた。 、ツクルべリも、鼻をならしはじめた。「なに言ってんだい、 「おめえが、わりいって ? 」ノ トム・ソーヤ 1 、おめえは、おらにくらべりや、まったくおけっこうなもんさ。ああ、ああ、 おめえの半分もいい子だったらなあ。」 , にムは、↓り , に、ツ クの話をとめて、ささやいた。 「見ろ、 ノ ノキー、見ろ ! 犬は、むこう向いて吠えてるぜ ! 」 、ツクは、はっと喜びながら、のぞいた。 「や、こりや、まったくだー まえから、そうだったか ? 」 「うん、そうなんだ。だけど、おれあ、考えてみなかったんだよ。ばかだなあ。ああ、こ いつあ、すてきだな、おい。だけど、やっ、だれのこと吠えてるんだ ? 」 164

4. トム・ソーヤーの冒険 上

「ここ、またいでみろ。立てなくなるまで、ぶんなぐってやるから。だれでも、この上ま たいだやつは、ひどいめにあわせてやるから。」 よそから来た少年は、すばやくその上をまたいで言った。 「さあ、おまえ、やるって言ったろ。さあ、やってみろ。」 「そううるさくせつつくな。そんなこと言うまに用心しろ。」 なぜしないんだ ? 」 「さあ、おまえ、するって言ったじゃないか 「くそっ ! そんなこと、二セントでやって見せらあ。」 その子は、ポケットから二枚の大きな銅貨をつかみだし、さもあざけるようにさしだした。 トムは、それを地面になげつけた。あっというまに、ふたりは、ネコのようにとっくみあっ て、どろのなかにころがっていた。そして、一分ばかりというもの、髪の毛や服をひつばり あい、やぶりあい、鼻をなぐり、ひっかきあって、土ぼこりと栄誉につつまれていた。やが こんらんじようたい て、このわけのわからない混乱状態は形をとって、戦闘の霧のなかから、相手の上に馬のり すがた になっているトムの姿があらわれた。トムは、両のこぶしで、相手をなぐりつけていた。 「こうさんか ! 」と、トムは言った。 せんとうきり えいよ かみ

5. トム・ソーヤーの冒険 上

「だれって、海賊がさ。」 、ツクは、さびしそうに自分の身なりを見まわした。 かいぞく 、、ツクは残念そうな声で言った。「だけど、お 「おらあ、どうも海賊らしくねえな。」と ら、これつきりねんだもの。」 ばうけん けれど、ほかのふたりは、冒険をはじめれば、上等の衣類はすぐにも手にはいるからと説 かいぞく 明した。そして、ふたりは、 金もちの海賊は、適当な衣装を着て仕事をはじめるのが、なら わしであるけれども 、、ツクのまずしいボロも、まず手はじめとしては、まにあうというこ とを、よ / 、 ハックに説明してやったのである。 しの ふろうじ そのうち、だんだんに三人の話は消えて、この小さい浮浪児たちのまぶたに、眠けが忍び かれ さつじんはん よりはじめた。。ハイプは「殺人犯」の指からころげおち、彼は、安らかな心をもち、疲れて おおうなばらふくしゅうしゃ いる者らしくねむった。「海の鬼」と「大海原の復讐者」は、それほどたやすく眠ることがで ね きなかった。ふたりは寝ながら、心のなかでお祈りを言った。ふたりをひざまずかせて、お 祈りを言わせる、こわい人はいなかったから。ほんとのところ、ふたりは、ぜんぜん、お祈 りを言わずにおこうと思ったのだ。けれど、それほど勝手なことをしたら、天から急に、特 かいぞく おに ねむ 208

6. トム・ソーヤーの冒険 上

かえってそれがうれしかった。これで、自分たちと文明社会をつないでいる橋を燃し てしまったような気がしたのだ。 三人は、すばらしく気もせいせいして、キャンプにもどって来た。しははずみ、すっかり クカ ひもじくなっていた。すぐまた、キャンプ・ファイアをばうばう燃えたたせオノ いずみ かれ 近くにきれいな冷たい泉を見つけた。彼らは、カシやサワグルミの葉をコップのかわりにし みりよくあまみ たが、このような自然林の魅力で甘味をつければ、水もけっこうコーヒーの代用になると、 三人は思った。朝食のべー コンをうすく切っているジョ こ、トムと、ツクは、つよっと ~ 侍 っていてくれるようにとたのんだ。そして、 つぶちの、見こみのありそうな、ひっこんだ ーが待ち遠しがるほどのまも 水たまりに出かけて、糸をたれた。すぐ、獲物があった。ジョ 1 チを二ひきほど、それに小さいナマズを なく、ふたりは、もうりつばなススキとサン・。ハ しよくりよう 一びきーーーっまり、かなりな家族にもじゅうぶんなほどの食糧をたずさえて、帰って来た。 三人は魚をベー コンといっしょにいためてみて、おどろいた。どんな魚もいままで、こんな にうまいと思ったことはなかった。淡水魚というものは、とってから、早く料理すればする ほど、うまいということを、トムたちは知らなかったのだ。そして、また戸外の睡眠、戸外 たんすいぎよ えもの すいみん 215

7. トム・ソーヤーの冒険 上

ムは友だちともあそばず、校門のあたりでぶらついていた。トムは病気だと言っていたが、 いかにもそうらしく見えた。そして、実際は、道の方ばかり気にしているのに、ほかのとこ ろだけ見ているようなふりをした。まもなく、ジェフ・サッチャーの姿が見えた。トムの顔 はあかるくなった。そして、ちょっとのま、じっとジェフを見つめたが、すぐ悲しげに顔を そむけた。ジェフがそばまでくると、トムはジェフに話しかけ、何かべッキ 1 のことをしゃ うわちょうし べらせようとして用心ぶかく話をもちかけていったが、上っ調子のその少年は、トムのさそ いに気がっかなかった。トムは、ひらひらする女の子の服が見えてくるたびに、あの子なら もいかと、一生けんめい、目をこらした。けれど、べッキ 1 でないとわかるやいなや、その やって来た子をにくんだ。とうとうもう女子服は、あらわれなくなった。トムは、望みも消 えて、がっかりした。そして、だれもいない校舎にはいってゆくと、腰をおろして、悲しん だ。そのとき、もう一つの女子服が校門をくぐった。トムのしは、大きくおどった。つぎの しゅんかん 日、トムはもう外にいた。そして、まるでインディアンのように「大あばれ」していた。 かきね どなったり、笑ったり、男の子たちを追いかけたり、足こしを折りそうな勢いで垣根をとび こえたり、とんぼがえりを、つったり、さかだちをしたりーーーっまり、トムに考えつける、あ わら こし すがた 192

8. トム・ソーヤーの冒険 上

まりにも大きかった。読み方の時間になれば、へまをやり、地理の時間となれば、湖を山に し、山を川にし、川を大陸にして、世界はとうとう、この世のはじまりのようなこんとん状 態におちいった。また、つづり字の時間には、赤んばうでもわかるようなことばがつづいた 1 、、まってつけて のに、やりそこなって、とうとう一ばんびりになりさがり、何か月かのもー いたシロメ をまぜた金 ) のメダルを取りあげられた。 114

9. トム・ソーヤーの冒険 上

村にある、ほかの教会のために祈り、村そのもののために祈り、郡のために祈り、州の がっしゅうこく ために祈り、州の役人たちのために祈り、アメリカ合衆国のために祈り、アメリカの教会の ために祈り、国会のために祈り、大統領のために祈り、政府の役人のために祈り、嵐多い海 せんせいせい ツ。ハの国々の王政、東洋の専制政 にゆられている、あわれな水夫たちのために祈り、ヨーロ ふくいん 治のもとにふみにじられている者のために祈り、光と福音に接しながら、見る目も、聞く耳 も持たない者のために祈り、遠い小島にある異教徒のために祈り、そして、最後に、いま自 おんちょうかご 分の言わんとしていることばが、恩寵と加護を得、よき土にまかれた種のように、いずれよ しゅうかく き収穫を得られんことを、アーメン、と祈った。 かいしゅう 衣ずれの音をさせて、立っていた会衆たちは腰かけた。この本の主人公である少年は、こ かれ のお祈りを好かなかった。彼はただがまんして聞いていただけであるーー・・しかし、そのが まんもなみたいていのことではなかった。トムはお祈りの間じゅう、反抗的な気もちでいた。 彼は、いつもそのお祈りのこまかい部分を、自分ではそれと気づかずに、前に聞いたのと照 らしあわせていた。なぜ気づかずに、かといえば、トムはお祈りをよくも聞いていなかった からだ。それでも、トムは、牧師がいつもくり返す範囲を知っていた。そして、何かちょっ きぬ いの ぼくし だいとうりよう いきようと はんい はんこうてき あらし

10. トム・ソーヤーの冒険 上

に 、、ツク。逃げだしたりなんかしな 「いや、トムは、うそっきじゃないよ。帰ってくるよ かいぞくなお いよ。そんなことしたら、海賊の名折れだってことだ「て知ってるし、そんなことするほど、 もたい、何をやってるん ケチなやつじゃないさ。やっ、何かはじめてるんだよ。だけど、 だろなあ。」 「んだけど、とにかく、ここにあるもんは、おらたち、もらっていいんだな ? そだな ? 」 、、ツク。朝ごはん前に帰ってこな 「うん、まあ、そんなもんだけど、まだわかんないよ かったら、くれるって書いてあるんだ。」 「ところが、帰って来ましたよ ! 」 しばい えらそうにキャンプにふみこみながら、トムは、芝居げたつぶりにさけんだ。 ーコンと魚のたつぶりした朝はんの用意ができた。そして、みんなでそれに まもなノ \ 、べ とりかかりながら、トムは自分の冒険をくわしく ( しかも、かざって ) 話して聞かせた。話が えいゅう 終わったとき、三人は、一組の得意げな、誇らしい英雄にな「ていた。それから、トムは、 ひるまでひと寝入りするために、木かげのひっこんだ場所へ退き、ほかの海賊たちは、釣り と探険の用意にかかった たんけん ばうけん ほこ しりぞ かいぞく っ 234