そして、ジョーは、すこし鼻をならした。 「うん、それじゃ、位き虫は、おっかさんとこへかえそうや、なあ、、ツク ? かわいそ うにーーおっかさんの顔、見たいって ? じゃ、見られるようにしてやろうや。おまえは、 。、、、よ、、ツク ? おれたちは、ここにいるな ? 」 、ツクは、すこしも気のないようすで 「あ・・・・ : ああ。」と言った。 「死ぬまで、おまえなんかとロきくもんか。」ジョ 見ろ ! 」 そして、ジョーは、むずかしい顔をしてむこうの方へ歩いてゆくと、服を着はじめた。 「ご勝手に ! 」と、トムは言った。「だれも、おまえなんかと口をききたいなんて、思って かいぞく わら 0 、ツクと ませんよだ。さっさと家へ帰って笑われるがいいや。ああ、りつばな海賊だなあ 力い去」たけ・りや、 おれは、位き虫じゃないぞ。おれたちはここにいるな、ハック ? ジョ さ。ジョ ーがいなくたって、おれたちゃ、やってかれるだろうさ。」 いカせるかもし 1 が、むっとした顔で、どんどん服を けれど、トムはやつばり心配だった。そして、ジョ ーが立ちあがりながら言った。「ざまあ 240
トムは、顔をそむけた。べッキーは、おずおずこっちへ向いて、息でトムの髪の毛がふる えるくらいかがみこむと、小さい声で言った。 「あたしーーあなたがーーーすきょ ! 」 それから、べッキーは、ばっととびのき、机ゃいすのまわりをぐるぐるまわりはじめ、ト ムはそれを追いかけた。そして、とうとうべッキーは、部屋のすみへ逃げこみ、小さな白い かた エプロンで顔をかくした。トムは、、、 ヘッキ 1 の肩に手をかけておねがいした。 「ねえ、べッキー、もうおしまいだよ。キスだけすれば、すっかりおしまいだよ。こわが らないでさ なんでもないじゃないか。ねえ、べッキー。」 そして、トムは、べッキーのエプロンや手をひつばっこ。 そのうち、とうとうべッキーは負け、両手をさげた。べッキ 1 は、トムとやり合「たため に上気した顔をあげた。 トムは、キスすると、 「そうら、すんじゃったよ、べッキー。それでね、べッキー、これから、ぼくよりほかの ものを、けっしてすきにな「ちゃいけないんだよ。それから、け「して、け「して、永久に つくえ へや かみ 124
こともない ほんのちょっとトムより大きい少年が、まえに立っていたのだ。セント・ビ ひんじゃく ータースヾ ーグのような貧弱な、小さい、みすぼらしい村では、年とか男女の区別なしに、 ノ こうきしん よそから来た者は、強い好奇心をそそるものである。 おまけに、その子は、、い服を着ていた。これは、まったくたまげたことだった。帽子は スホンも 優美なもので、きっちりボタンのついている青い上着は新しくて、しゃれていた。。。 そうだった。靴もはいていた きようは、金曜日だというのに。おまけに、その子ははで なリボンのネクタイさえしていた。その子の都会ふうなところが、ぐっとトムのかんにさわ みもの った。トムは、このりつばな、おどろくべき見物をまじまじとながめた。しかし、まじまじ とながめればながめるほど、そして、なんだ、そのおしゃれと、さもばかにしたような顔を ふうさい して見せれば見せるほど、トム自身の風采は、自分の目にも、だんだん、みすばらしく思え てくるのだった。どちらも、だまっていた。かたほうの子が動けば、かたほうも動いた が、うしろへはゆかず、横へ横へと円を描いてまわった。ふたりは、じっと顔と顔、目と目 を向けたままだった。 その、っち、とうとうトムが言った。 ゅうび くっ えが
三ニ ! 一を なら しの に並んで、忍び足で出かけた。いびきをか いている人間から、五歩ともはなれないと ころまでいったとき、トムが棒をふみつけ、 が、。、シッという音をたてて折れた 男はうなり、すこし身をもがいて、その顔 を月の光のなかにさしだした。男は、マ フ・ポッターだった。その男が動きだした しんぞう とき、ふたりの心臓はほとんどとまり、も うこれでおしまいだという気さえしたのだ が、顔を見てからは、もう恐ろしくはなか った。ふたりは、やぶれた下見板をくぐり ぬけ、忍び足で外に出ると、すこしいっこ ところで立ちどまり、別れのことばをかわ いんき した。あの長い、陰気な犬の鳴き声が、ま ぼう 166
方へはかからないように顔をそむけながら、相手の顔へ水を手ですくってはひっかけ、すく ってはひっかけ、だんだん近づいていって、とうとうつかみあい、とっくみあいになり、 ばん強いものが、相手の顔を水につつこむ。と思うまに、みんないっしよくたに白い足や腕 をからみあわせて沈んでゆき、やがて、水をはきながら、笑いながら、はあはあしながら、 どっといっしょに浮かんでくる。 みんな、いいかげんくたくたになると、陸にかけあがって、かわいた熱い砂の上に腹ばっ たり、ねている自分たちのからだを砂でうずめたりした。そして、やがて、また水にかけこ ゅうぎ み、そのきばつな遊戯をくりかえす。そのうち、三人は、自分たちのはだかの皮膚が、サ 1 カスのひとたちのタイツによく似ていることに気がついた。そこで、砂の上に円をかくと、 サ 1 カスをはじめた , ーーそのサーカスには、道化が三人いた、というのは、だれもこの一ば んりつばな役を、人にゆずろうとしなかったからだ。 ・かれ つぎに、彼らはビ 1 玉を持ちだして、「ナックス ( 手を裏返し、指 00 けねを 地面につけておいてはじく」や「リンク・トウ 玉をまるくなら・ヘ、は じき玉であててゆく ) 」や「賭け「こ」をあきるまでや「た。それから、ジ = ーと ( ックは、も つ一度泳いだが、トムは、気がすすまなくてやめた。さっき、ズボンを蹴ってぬいだとき、 しず どうけ わら すな ひふ はら うで 236
なかった。それは、がっかりさせられるような仕事だった。ジョ 1 は、とてもしずみきった 顔つきで、棒で砂をつついていた。 と、つと、つ、ジョ 1 は = = ロった。 「おい、おまえたち、もうやめようよ。おれ、うちへ帰りたくなったんだ。とてもさびし くなっちゃった。」 「いやあ、ジョー、そのうち、だんだん元気になるよ。」と、トムは言った。「ここの釣り のこと考えてみろよ。」 「おれは、釣りなんかしたくないんだ。おれはうちに帰りたいんだ。」 「だけど、ジョ こんな泳ぎ場所は、ほかにはないぜ。」 「咏ぎなんて、つまんないよ。どういうもんだか、も と、泳ぎたくなんかないや。おれは、うちへ帰る。」 「ちえつ、赤んばだな。おっかさんの顔、見たくなったんだろ。」 おまえだって、見たいだろ、おっ 「そうさ。おれは、おっかさんの顔、見たいんだ かさんがいれば。おれが赤んぼなら、おまえだって赤んばだ。」 ばうすな っ 、っちゃいけよいっていう人がいない っ 239
「だれだ、だれだ ? 」と、二十人もの人間がさけんだ。 「マフ・ポッタ 1 だ ! 」 「ほうれ、とめられたー 気をつけろ、むこうから逃げるぞ ! 逃がすな ! 」 トムの頭の上の木の枝にぶらさがっていた人たちが言うには、ポッタ 1 は逃げようとして いないということだったー・ーマフはただ、どうしていいカわからず、途方にくれているよう すをしているだけだった。 「いまいましい面の皮だな ! 」と、ある見物人はいった。「おのれの仕事を、ちょっと一目 だれもいないと思ってな。」 みようとしてやって来たんだ 群集は、いま、左右に分かれ、その間を、保安官がいばって、ポッターの腕をつかんでや かれ って来た。あわれなポッターの顔はやつれ、彼がどのくらいおそろしい思いをしているかを、 ちゅうき その目が物語っていた。殺された男の前に立ったとき、ポッタ 1 は、まるで中気にかかった 人間のようにふるえ、両手で顔をかくすと、わっと泣きたした。 「みなの衆、おれがしたんじゃねえ。」と、ポッターは、すすり泣きながら言った。「ほん とに、神かけて、おれがしたんじゃねえ。」 しゅう えだ うで 174
「まあ、トム、はずかしくないの ! そんなにいうことをきかなくちゃ、だめよ。水つけ たって、いたいことなんかないでしよう。」 トムは、ちょっとまごっいた。金だらいには、また水がつがれた。こんどは、トムも、し ばらく金だらいの上にかがんで、決心をかためた。それから、大きく息をすうと、やりはじ めた。まもなく、両方の目をつぶり、手さぐりでタオルをさがしながら、台所へはいってい ったときには、名誉の証拠であるせつけんのあわと水とが、顔からたれていた。けれど、タ りようぶん ォルのなかから出て来た顔の成績は、まだかんばしくなかった。きれいな領分は、あごのと ころで、お面のようにとまっていた。そして、その線から外は、前は、のどの方へ、うしろ みかんすいちたい は、首をまわってひろがっている、黒い、広い、未灌水地帯がのびていた。メアリは、自分 でトムのせわにのりだした。そして、身支度が終わってみると、トムはもう、黒白のまだら などない、 りつばな人間だった。 かみ 水をつけた髪は、きれいにプラシをかけられ、みじかいまき毛は、きれいに、つりあいの とれたウェーヴになでつけられていた。 ( トムは、こっそり、苦心さんたん、そのちちれつ毛 をのばし、頭に。へったりはりつけた。まき毛は、にやけていると考えていたので、自分の毛 しようこ かな みじたく
「ここだ。」と、三ばんめの男が言った。そして、その声の主が、カンテラをもちあげたと わか き、照らしだされたのは、若いロビンソン医師の顔だった。 ポッターとインジャン ジョ 1 は、手押し車を押していたが、その上には、ロ 1 プとシャ ベルが二丁のっていた。ふたりは、その荷をおろすと、墓をあばきだした。医師は墓の上に カンテラをつるして、ニレの木のところまで来てすわると、そのうちの一本に背をもたせか かれ けた。子どもたちは、手をのばせば、彼にさわれるくらいそばに、こ。 「いそいでやってくれ ! 」と、医師はひくい声で言った。「いまにも月が出るからな。」 ふたりの男は、うなるような返事をし、掘りつづけた。しばらくの間は、シャベルで土と すな 砂をすくってなげる、ガラガラという音のほかは、何もきこえなかった。それは、単調なひ かん びきだった。が、とうとうシャベルは棺をさぐりあて、にぶい、木につきあたったような音 をたてた。それから一、二分ののち、かれらは棺を地面にひきあげていた。ふたりの男は、シ ャベルで棺をこじあけると、死がいをとりだし、乱暴に地面へほうり出した。月が雲のかげ てお から出てきて、青白い顔を照らしだした。手押し車が用意され、毛布でおおわれた死がいが のだ。 てお らんばう 148
ムは友だちともあそばず、校門のあたりでぶらついていた。トムは病気だと言っていたが、 いかにもそうらしく見えた。そして、実際は、道の方ばかり気にしているのに、ほかのとこ ろだけ見ているようなふりをした。まもなく、ジェフ・サッチャーの姿が見えた。トムの顔 はあかるくなった。そして、ちょっとのま、じっとジェフを見つめたが、すぐ悲しげに顔を そむけた。ジェフがそばまでくると、トムはジェフに話しかけ、何かべッキ 1 のことをしゃ うわちょうし べらせようとして用心ぶかく話をもちかけていったが、上っ調子のその少年は、トムのさそ いに気がっかなかった。トムは、ひらひらする女の子の服が見えてくるたびに、あの子なら もいかと、一生けんめい、目をこらした。けれど、べッキ 1 でないとわかるやいなや、その やって来た子をにくんだ。とうとうもう女子服は、あらわれなくなった。トムは、望みも消 えて、がっかりした。そして、だれもいない校舎にはいってゆくと、腰をおろして、悲しん だ。そのとき、もう一つの女子服が校門をくぐった。トムのしは、大きくおどった。つぎの しゅんかん 日、トムはもう外にいた。そして、まるでインディアンのように「大あばれ」していた。 かきね どなったり、笑ったり、男の子たちを追いかけたり、足こしを折りそうな勢いで垣根をとび こえたり、とんぼがえりを、つったり、さかだちをしたりーーーっまり、トムに考えつける、あ わら こし すがた 192