トで暮ら すぐ回復できるものではなかった。ふたりは、水曜日と木曜日を、まるまる、べ " し、しかもだんだん疲れが出てくるような気がした。トムは、木曜日にすこし起きて歩き、 金曜日には外へ出た。そして、土曜日には、ほとんどまえとおなじくらいになっていた。け はいびよう れども、べッキーは、日曜日まで自分の部屋を出ないで、それからも、肺病でもしたあとの ようなようすをしていた ト . ム・十ま、、ツ もにたたが、寝室へは入れてもら クの病気の話を聞いて、金曜日に会、 えなかった。土曜日にも、日曜日にも会えなかった。それからあとは、毎日、寝室へ入れて ばうけんだんこうふん もらったが、あの冒険談や興奮するような話は、何も話してはいけないととめられた。ダグ ラス未亡人は、トムが命令を守るように、そばについていた。トムは、カ 1 ディフ山の事件 できしたい や、渡し船の船つき場の近所で、とうとう「ばろの男」の溺死体が発見されたということは、 に 家の人たちから聞いていた。たぶん、その男は、逃げようとして、川に落ちて死んだのだろ 0 ほう・もん ほらあな トムは、ツクを訪問に出かけた。ハックは、も、つ 洞穴から救われてから、二週間たって、 こうふん くら いかなりよくなっていた。そこで、トムは、、ツクに興味 興奮する話を聞いてもいし みばうじん わた つか しんしつ 199
わすぜ。いや、あかりの消えるまで待っこととしよう。いそぐこたあねえ。」 ゞ、、ツクにはわかった それからしばらく、だんまりがつづくのだということカノ 、、ツクはを殺し れは、血なまぐさいことをうんと聞かされるよりも、なお悪かった。で かたあし あと ながら、用心ぶかく後ずさりしはじめた。あぶなっかしく片足で立ち、あっちへひょろひょ へいきん ろ、こっちへひょろひょろ、もうすこしでひっくり返りそうになりながら、やっと平均をと り、用心ぶかく、しつかり、その足を地面につけた。それから、またおなじように苦心さん たん、同じようにあぶない思いをしながら、もう一歩後退。そして、またもう一歩。それか らもう一歩。そしてーーービシッ ! 小枝が ( ックの足の下で折れた。急もとまりそうになっ まったくしんとしていた。そのあり て、ハックはじっと耳をすました。なんの音もない かべ 、、ツクは、ヌルデの木々が、壁のようにな がたさは、なんとも言いようがなかった。さて らんでいる間で、まるで舟にでもなったかのように、用心ぶかく向きをかえ、それから、す ばしこく、けれども、用心ぶかく歩きだした。石切り場まで来ると、もうだいじようぶと思 早い足を利用して、飛ぶように走った。下へ、下へ、ウ = 1 ルズ人の家に着くまで、 くつきよう ックは走りつづけた。戸をドンドンたたくと、まもなく、主人の老人と、ふたりの屈強なむ ふね こえだ ヾゝ、 149
もう、くたびれて死ぬところだとわかっているし、死にたいのだから、そんなばかな話で、 トムが苦心さんたん、それがほんとの話だ 気をいらいらさせないでくれと言った。そこで、 ということを、やっとわからせ、べッキ 1 も手さぐりで這いだして、自分の目で、その日光 の青い点を見つけたときには、べッキ 1 はうれしくて、もうすこしで死ぬところだ「た。ト ムは、その穴からむりに這いだすと、べッキ 1 もひつばりだし、そこで、ふたりはすわって、 かるぶね うれし泣きに声をあげて泣いた。それから、数人の男が軽舟に乗ってやって来たので、トム は男たちを呼びとめて、自分たちの事情とおなかのへっていることを話した。すると、男た かれ ちははじめ、そのとてつもない話を信じなかった。というのは、彼らの話によれば、「おまえ ほらあな たちは、洞穴の入口のある谷間から、五マイルも川下にいるんだぜ。」ということだ「た けん それから、男たちはふたりを舟にのせ、一軒の家へつれてゆき、ふたりにタはんをたべさせ た。そして、二、三時間やすませてから、日暮れすぎ、家へつれて来てくれたのであ「た。 夜あけ前に、サッチャー判事と小人数の捜索隊は、彼らがあとに残していった糸の目じる しで、いる場所がっきとめられて、この重大ニースはったえられた。 くうふく みばんほね ほらあな 洞穴のなかの三日三晩の骨おりと空腹は、トムとべッキ 1 にも、まもなくわか「たように、 ひぐ そうさくたい かれ 198
からなかった。ふたりは腰をおろし、トムが、前の壁に土をすこしく「つけて、ロウソクを 立てた。ふたりはすぐに、考えこんでしま「たので、しばらくの間、何も言わなか「た。そ れから、べッキーが口をきった。 「トム、とてもおなかがへっちゃったわ ! 」 トムは、ポケットから何かをとりだした。 「これ、おばえてる ? 」と、トムは言った。 びしよう べッキーは、微笑のようなものをもらした。 「あたしたちの結婚式のお菓子だわ。」 「そう これ、たるぐらい大きけりやいいなあ。だって、これつきりたべるものないん だもの。」 「あたし、それ、ピクニックのごちそうのなかから、記念にとっておいたのよ。おとなの けっこんしき だけど、これ、きっとあたしたちのーーー」 人が、結婚式のお菓子をとっておくように べッキーは、そこでことばをきった。トムが、そのお菓子を半分にわると、べッキーは、 がつがったべ、一方、トムは自分のぶんを、ちびりちびりとかじった。ごちそうのあとにの けっこんしき こし 185
ほらあな うだった。そして、ポリーおばさんもまた、・ こ同様だった。サッチャー判事は、洞穴から希 望と激励のことばをつたえてよこしたが、それには、すこしもほんとの元気はこもっていな 。カ子 / 老ウェールズ人は、夜あけ近く、ロウソクのしずくをあちこちにくつつけ、泥まみれにな り、ほとんどくたくたになって帰って来た。見ると、 ックのために用意さ ほらあな れたべッドに寝て、熱に浮かされていた。医者はみな洞穴に出かけていっていたので、ダグ みばうじん ラス未亡人が来て、病人のめんどうをみていた。未亡人は、自分にできるかぎり、その子の めんどうをみると言った。なぜならば、よい子であろうと、悪い子であろうと、また、その どっちでもない子であろうと 、、ツクも神の子だからと、 いうのである。神の子であるもの は、何であろうと、なおざりにすることはできないのである。老ウェールズ人は、、ツクに もいところがあると言った。すると、未亡人は答えて、 「そのとおりでございます。それが、神さまのお手のあとでございますもの。どんなもの にも、きっとそのあとはお残しになりますよ。かならずでございます。ご自分のお手から出 たものなら、神さまはどんなものにも、どこかへあとをおつけになります。」 げきれい しゃ どろ 168
「そんなことをする必要もないと存じましてな。やつらはーー・道具をとられてしまったし もうもどって来そうなようすもなし、あなたを起こして、びつくりさせてもしかたがな めしつか いことだ。あれからずっと、うちの召使いの黒人三人に、お宅を見はりさせておきました。 あれらは、いま帰って来ました。」 ほうもんきやく 訪問客は、またふえた。そして、それから二時間というもの、老人はおなじ話を、何度も くり返さなければならなかった。 だれかれ 夏休みの間は、日曜学校はないのだったが、誰も彼も、早くから教会に集まって来た。そ とうろん して、このおどろくべき事件について、じゅうぶんに討論した。ふたりの悪漢の消急は、ま だすこしも発見されないというニ = ースがはいった。お説教が終わったとき、サッチャ 1 夫 人は、人びとの群といっしょに通路を流れ出ながら、 ノ 1 夫人の横にならんで言った。 たく 「宅のべッキ 1 は、一日寝ているところでしようか ? 死ぬほどくたびれてしまうだろう とは思っていましたが。」 「お宅のべッキー ? 」 「ええ。」と、たいへんおどろいた顔で たく ね 「ゆうべ、お宅へごやっかいになりませんでし たく ノ たく あっかん 164
き、べッキ 1 は立ちあがって、アルフレッド・テンプルのことを言いつけてやろうという気 にさえなった。でも、べッキーは、自分をおさえて、じっとしていたーーーベッキーは、しの おくでこう言っていたのだ。 「きっと、あの人、あたしのこと言いつけるわ。あたし、あの人のいのちを助けてやれる ひとこと としたって、一言も言うの、よそう。」 トムは、ムチをうけ、すこしもしょげずに自分の席へ帰っていった。トムは、自分がいっ か悪ふざけをしたとき、知らないで書き取り帳にインクをこばしたのだろうと思ったのオ そんなことをしないと言いはったのは、形式上やったことで、また、そうするのが、トムの 習慣だったからだ。主義の上から、トムは、しませんとがんばったというわけなのだ。 ぎよくざ それから、まる一時間がゆっくりすぎていった。先生は、玉座で船をこぎ、部屋じゅうが 勉強する子どもたちのたてる、ねむくなるようなつぶやきでいつばいになっていた。やがて、 つくえ かぎ ドビンス先生は立ちあがると、のびをし、あくびをしてから、机の引き出しの鍵をあけた。 本をとろうとして、手をのばしたが、とろうか、とるまいかとまよっているふうだった。た いていの生徒は、めんどうくさそうに目をあげただけだったが、なかにふたり、先生のよう ミ 0
れいたん 「あら、あたしもいっていい ? 」と、グレイシ 「ええ、 「それから、あた・しも ? 」と、サ 「ええ、 「それから、あたしもね ? 」と、ス 1 ジ 1 ・ 「ええ、 そうして、たのしそうに手をたたきながら、そこにいたみんなが、ビクニックにいきたが 。こけになった。すると、トムは、まだおしゃべりしながら、 残ったのは、トムとエミ 1 オ 冷淡なようすでくるっと背を向け、エミ 1 をつれていってしまった。べッキーのくちびるは なみだう ふるえ、目には涙が浮かんだ。べッキーは、そんなようすはかくして、むりに元気なふりを まとなっては、ビクニックも、ほかのことも、すこしもたのしくな し、話しつづけたが、い くなった。べッキ 1 は、すきを見て、大いそぎでその場を逃げ出し、人にかくれて、女の人 たちがよく一言うように「よよとばかり」に泣いた。それから、傷ついた誇りを抱いて、始業 しゅうねん の鐘が鳴るまでしずみこんですわっていた。さて、鐘が鳴ると、べッキーは執念ぶかそうな かね せ リ 1 ・ロジャースが = = ロった。 ー・ミラーか一一 = ロった。 ハーが言った。「それから、ジョ 1 も ? 」
してしまって、まったくばかなことをしたと、気がいらいらした。けれども、あのときはや はり、宝物でないと思っただけでーー・・そうでないと、はっきりわかっていたわけではなかっ たーーーで、何か荷物が見つかったと聞いたときには、とてもがまんができなかったのだ。だ ことだった、と、 が、いろいろ思いあわせてみれば、この小事件がおこったのは、、、 ノ 。ゝ、はっきりしたのだカ クは思った。そのおかげで、あの荷物は、例の物でないということカ ら。そこて いまとな : 、ツクは安心し、たいへんのんびりした気もちになれた。まったく、 ってみれば、何もかも、うまいぐあいになって来たようだ。宝物は、まだ第二号にあるにち ろうや 力もない。ふたりの男は、きようのうちにつかまり、牢屋にはいるだろう。そこで、自分と トムは、今晩、なんの心配もなく、なんのじゃまもなく、あの金貨をつかめるというわけな のだ。 ちょうど、朝はんが終わったとき、戸をたたく音がした。ハックは、とびあがって、かく れ場をさがした。こんどの事件には、すこしもかかりあいになりたくなかったのだ。ウェ しんししゆくじよしよう ルズ人は、、 しく人かの紳士淑女を招じ入れたが、そのなかには、ダグラス未亡人もまじって いた。そして、またそのほかにも、何組かの村びとたちが丘をのばってくるのが見えた。踏 こんばん おか みほうじん 162